記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「起業に興味はあるが、十分な自己資金がない」「将来的に起業してみたいが、今の会社の仕事も気に入っている」という方は、会社員を続けながら個人事業主としても仕事をする「週末起業」がおすすめです。
最近は、従業員の副業を推進・容認する企業が増えてきました。しかし、エイチ・アイ・エス(HIS)のように、二重就労は認めないが個人事業主として働くことは認めるという企業も多くあります。これが副業と週末起業の違いです。
- 副業 ⇒ 本業以外に就労先がある(アルバイト)
- 週末起業 ⇒ 本業を持ちながら個人事業主(或いは法人)として仕事をする
週末起業(本業と個人事業主との両立)は、副業とは異なる働き方です。
会社員と個人事業主を両立する週末起業は、ローリスクな起業法のひとつです。本業と両立する以上、時間的な制約もあるため、自然と固定費や先行投資をかけないスモールスタートになる傾向があり、自己資金が乏しい方でも気軽に始められます。
また、本業からお給料を継続的に得られるため、もし始めた事業が上手くいかなくても、生活に困ることはありません。
この記事では、会社員と個人事業主を両立したい方に向けて、そのやり方がおすすめな理由や、小さくスタートする際の注意点を解説します。
会社員と個人事業主をの両立が注目される4つの理由
起業に興味を持っていても「高額な資金が必要」「失敗したときの損失が大きい」というイメージをお持ちの方が少なくありません。確かに、いきなり脱サラして独立したり、無理な資金調達をすると、起業後の失敗リスクが高まります。
しかし、週末起業から始めて準備すれば、必ずしも「起業=ハイリスク」にはなりません。会社員を続けながら個人事業を始めるならば「超ローリスク」にできます。
実際、週末起業をすると起業成功率が高くなるというデータ(日本政策金融公庫「2020年度起業と起業意識に関する調査」)が出ています。「勤務しながら起業した」割合は起業家で22.5%、パートタイム起業家では51.6%となっています。(※パートタイム起業家とは、事業に充てる時間が1週間当たり35時間未満の人。約半数が副業。)
ではまず、起業に関心を持っている層が、具体的にどのような点をリスクと捉えているか、データで見てみましょう。
2019年に日本政策金融公庫が行った調査では、興味はあるが「まだ起業していない理由」として「自己資金が不足している」と回答した人が全体の46.8%を占めています。2番目に多い理由が「アイデアが思いつかない」で35.7%、次いで「失敗したときのリスクが大きい」で、こちらは全体の34.4%です。そのほか、税金や法律の知識などのノウハウの不足、製品・サービスについての知識や、仕入れ・広告宣伝などのマーケットに関する知識の不足などが挙がっています。(データ:日本政策金融公庫「起業と起業意識に関する調査(2020年)」)
つまり、一般的に「起業のリスク」として理解されているのは、資金不足・失敗への恐れ・知識やノウハウの不足の3点であることがわかります。
会社を辞めずに週末起業で経験を積めば、これらのリスクの殆どを回避できます。小さく事業を始めれば、多額の自己資金を準備する必要がありませんし、もし週末起業が失敗してしまっても、本業の安定した収入源が残っています。
それでは、会社員と個人事業主を両立する「週末起業」の3つのメリットを見てみましょう。
1.両立なら自己資金が少なくてもOK
いきなり脱サラして独立する場合は、多額の自己資金が必要になります。事業規模が大きくなるほど、設備投資や店舗、事務所などに掛かる経費が増大します。個人事業ではなく法人化してスタートする(合同会社や株式会社を設立する)場合も、定款認証や会社の設立登記などの開業準備そのものに、数十万円単位のお金がかかります。
こうしたイニシャルコストに加えて、電気光熱費や通信費、従業員の人件費、税金や保険料の支払いなどのランニングコストも考慮しなければなりません。
会社を辞める場合には、当面の生活費も準備しておく必要があります。一般的な目安としては、およそ半年~1年分の生活費を準備しておく必要があります。
しかし、サラリーマンをしながら個人事業主になるならば、自己資金が少なくても大丈夫です。
2019年に中小企業庁が行った調査では、働きながら起業する「副業起業家」の開業費用として、10万円未満・10~100万円未満の層が6割近くを占めています。また、開業費用「10万円未満」の層については、特定の組織に属さずフリーランスとして起業したケースや、副業・フリーランス以外のケースと比べて「副業起業家」の割合がもっとも多くなっています。(参考:中小企業庁「2019年版 中小企業白書・小規模企業白書概要」)
本業と個人事業、2つの仕事をする場合には、自ずとスモールスタートになります。事業規模を小さくしたり、ネットビジネスのようなイニシャルコストの小さい業種を選んだり、独立する場合よりも低リスクなスタートを選ぶことが多くなります。
小さくスタートする場合、開業届を出さずに週末起業を始め、事業と言えるレベルに達してから開業届を提出します。形から入りたい気持ちもわかるのですが、実態が追い付かないうちに手続きだけ進めても意味がありません。少しずつ育てていきましょう。
会社を辞めずにじっくり取り組めば、失敗リスクを小さくすることができます。実際、上述の中小企業庁の統計でも「副業から事業を始めた人」のうち、実に68.0%が本業への移行に成功していることがわかっています。
2.失敗を恐れずにチャレンジできる
会社員と個人事業主の両立なら、失敗のリスクを恐れる必要はありません。先ほどの日本政策金融公庫の調査でも、全体の3分の1の人が起業後の失敗を恐れていることが浮き彫りになりました。同調査では、失敗した時のリスクとして、次のような項目が挙げられています(複数回答)。
事前に投下した資金を失うこと | 80.3% |
---|---|
借金や個人保証を抱えること | 74.2% |
安定した収入を失うこと | 70.5% |
再就職が困難であること | 24.6% |
事前に投下した資金を失うこと | 80.3% |
週末起業で小さく始めれば、投下する資金はそれほど大きくなりません。
たとえば、人気のあるネットビジネスを例に挙げると、初期投資はパソコン購入費とネット回線の契約料程度です。同様に人気が高いネットショップでも、ドロップシッピングを利用すれば在庫を抱えずに始めることもでき、失敗しても損失は殆どありません。
事業の種類にもよりますが、イニシャルコストが掛からないビジネスを選択すれば、損失など無視できる程度のもので済みます。
週末起業で小さくスタートすれば、資金調達をする必要もありません。初めてのビジネスでは、補助金以外の資金調達は極めてハイリスクです。政府系金融機関であれば金利も安いですが、借金は借金です。
民間銀行は事前の信用調査が厳しく、業歴がない個人が融資を受けるのは困難ですので、政府系金融機関から借りられない場合には、個人借入や金利が高い消費者金融からの借入、知人や親類からの借入に頼ることになりますが、危険ですので絶対にやめておきましょう。
本業の仕事を辞めなければ、お金の心配は要りません。自己資金でじっくり取り組みましょう。廃業することになっても本業がありますから、痛くも痒くもありません。週末起業で会社員と個人事業主を賢く両立させながら、ビジネスにチャレンジしましょう。
3.知識やスキルを身につける時間がある
週末起業で会社員と個人事業主の両立することは「独立に必要な経験がない」「知識やスキルを身につけるまで不安」という方にも向いています。日本政策金融公庫の調査でも、起業の不安要素として経験不足やスキル不足を挙げている人が大勢いました。
上司や同僚のフォローを得られるサラリーマン時代と違い、起業すると経営者として自分で決断をしなければなりません。正しい判断をするためには・・・
- 売上を伸ばすための販促やマーケティングの知識
- 収支バランスやキャッシュフローを分析する会計・経理の知識
- 事業運営でかかわってくる法律の知識
- 所得税や個人事業税といった税金についての知識
を始めとした、あらゆる知識と経験が欠かせません。
マーケティングの知識 | モノやサービスを売りつづけるためには、市場を分析し、ターゲットに合わせた販売戦略をとる必要がある。とくにインターネットを活用したWebマーケティングのスキルがあれば、効率的な宣伝広告ができる。 |
---|---|
会計・経理の知識 | 日商簿記検定3級~2級程度の知識があれば、大まかなキャッシュフローを把握し、中長期的な収支目標を立てられる。 |
法律の知識 | 商取引の基本となる民法をはじめとして、起業後の法的トラブルを避けるために必要。モノやサービスを販売するなら「景品表示法(景表法)」化粧品や健康食品を取り扱うなら「薬事法」など、業種によっても学ぶべき法律は変わってくる。 |
税金の知識 | 税金について詳しいかどうかで、手元に残るお金が変わってくる。どんな税金を支払う必要があるか、いくら納税するかといった基本的な知識だけでなく、節税対策の知識があると強みになる。 |
会社を辞めなければ、独立するまでに様々な経験を積むことができます。いきなり辞めてしまうと、日銭を稼ぐことに時間と意識を取られ、スキルアップの時間を割くことが難しくなります。
一方で、起業する前に資格の習得ばかりする人もいます。しかし、30代後半になったら、資格を取って食べていこうと考えるのは無謀なことです。その道のプロ、実務経験たっぷりのライバルに勝てる理由が見つかりません。そんなことよりも、できることで早く起業することが大切です。実務経験のない座学だけの知識では、いつまでも競争に勝つことはできません。
会社員のまま始めるビジネスとは?
会社員のまま複数の仕事をする方法は、大きく分けて3種類あります。会社員として勤めながら自ら事業を行う「週末起業」と、本業以外にも仕事を持つ「副業」です。その他にも、月に数万円程度を稼ぐことを目的とする「プチ起業」というジャンルもあります。
ここでは、この3つの違いを解説します。
会社員のまま個人事業主として「週末起業」
会社員として本業を持ちながら、誰かに雇われることなくオーナーとしてもうひとつの仕事をすることを「週末起業」と言います。
※開業届を出して個人事業主として活動している人もいますが、開業届を出すと、失業保険がもらえなくなるリスクがあるので、最初はそのような手続きはせず、そのままスタートするのが良いでしょう。
事業と言えるレベルになったら、腹を決めて開業届を出して個人事業主になりましょう。手続きは、税務署の窓口で「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出するだけです。申請費用も一切かかりません。窓口での手続きなら1日で完了します。国税庁の「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」を利用している人なら、オンラインでの手続きも可能です。
個人事業主を飛び越えて、法人を設立する人もいますが、開業の際に数十万円単位の費用が必要になります。会社の基礎となる定款の作成や、公証人役場での定款の認証、法務局での設立登記など、様々な手続きも必要です。自己資金が少ない方や、起業するのが初めての方、法人格が特に必要のない方にはお勧めしません。
週末起業は、従来よりもずいぶんと簡単になりました。安価に利用できるWebサービス、クラウドソーシングの普及によって、個人で様々なサービスを展開することが可能になっています。アルバイトのような時間の制約がないため「副業サラリーマン」の課題となりがちな本業・副業の両立もしやすいです。
米ペンシルベニア大学の2019年の調査では「世界各国との関係」「教育を受けた人口」「起業家精神」「革新性」「資本調達の容易さ」「熟練労働者の人口」「技術的な専門知識」「商慣行の透明性」「十分に発達したインフラ・法体系」の9つの観点を比較した結果、世界80カ国のうち日本がもっとも起業に適した国だということがわかっています。(データ:ペンシルベニア大学「Best Countries for Entrepreneurship」)
会社に勤めながら起業すれば、さらに良い環境を手に入れることができます。
まずは月収数万円を目指す「プチ起業」
週末起業よりも、さらにローリスクなのが「プチ起業」です。プチ起業とは、数万円程度の収益を目指す「お小遣い稼ぎ」のことです。家事や育児との両立が必要な主婦・主夫の方や、学業で忙しい大学生・専門学生の方だけでなく、サラリーマンでも「プチ起業」から始めるケースが増えています。
プチ起業もアルバイト副業とは異なり、自分で好きなことを、好きなタイミングでする働き方です。時給でお金をもらうものではありませんので、稼げるようになるまでに時間が掛かりますが、ビジネスを学ぶのに良い経験になります。(参考:「プチ起業ならローリスクで誰でも始められる! 3ステップを解説」)
起業サポートを行っている東京都の公益財団法人「TOKYO創業ステーション」も、本格的な起業のためのきっかけとして「プチ起業」を推奨しています。
たとえば、起業してみたい女性をサポートする場である「女性プチ起業スクエア」では、プチ起業を通じて自分の価値観を再発見し、好きなこと・やりたいことから「対価を得る」方法を学び、さらなるアクションへとつなげるためのきっかけづくりを行っています。
- 働きながら週末起業して、ゆくゆくは独立くしたい
- 自己資金ができたら、法人化も視野に入れたい
という方は、起業を体験するきっかけとして「プチ起業」がお勧めです。
会社員でも始められる! サラリーマンがビジネスをすべき3つの理由
日本政策金融公庫が「開業時の勤務状況」をまとめた調査によれば「起業家」の5.7%と「パートタイム起業家」のうち42.4%が「現在も勤務しながら事業を行っている」と回答しています。(※パートタイム起業家とは、事業に充てる時間が1週間当たり35時間未満の人。)統計から見ても「働きながら起業すること」は、全く珍しくないことだとわかります。(データ:日本政策金融公庫「「2020年度起業と起業意識に関する調査」)
サラリーマンの副業というと「会社に迷惑をかけてしまうのでは」「会社に勤めながら内職をするのは体裁が悪いのでは」というイメージをお持ちの方がいるかもしれません。確かにそういう考え方をする企業もありますが、近年は副業を許可・容認する企業が増えています。
企業側が副業を推進・容認する理由としては「とくに禁止する理由がない」「社員の収入増につながる」といったものの他「人材育成・本人のスキル向上につながる」といったポジティブなものもあり、今後も副業解禁の流れは続くと思われます。(参考:株式会社リクルートキャリア「兼業・副業に対する企業の意識調査(2019)」)
これから起業したい会社員は、いきなり脱サラするのではなく、会社を辞めずにスタートできないかを検討してみましょう。なぜ、いきなり辞めない方が良いのか、その理由は・・・
1.サラリーマンは経済的に安定している
会社を辞めず、会社員と個人事業主の両立から始めるべき理由は、サラリーマンが経済的に安定しているからです。本人の能力や勤続年数によって金額は異なりますが、会社に勤めている限り、定期的な給与所得を得ることができますよね。これは幸せなことです。
国税庁の令和元年のデータでは、サラリーマンの平均年収は約436.4万円とのこと。事業をしながら、毎年約400万円の固定収入を得ることができるのは大きな助けですね。
サラリーマンの平均年収は、国税庁の民間給与実態統計調査(令和元年)によると436万4000円です。日本経済団体連合会(経団連)の調査だと平均年収は約663万2000円(※)、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和2年)だと平均年収は459万8000円となります。
サラリーマンであれば夏と冬のボーナスも期待できます。毎月の入金があるため、生活には困りません。もちろん、事業資金も確保できます。
すでにご紹介した日本政策金融公庫の調査でも、副業を本業に移行する際に必要だった資金は、多くの場合100万円を上回りませんでした。特にネットビジネスなど、イニシャルコストの低い業種で起業する場合は、資金で困るケースは殆どありません。
ランニングコストについても、会社員であれば、給与所得から補うことができます。いきなり脱サラすると、毎月の生活費さえ厳しくなってしまうことがありますが、サラリーマンならその心配はありません。
会社に勤めて安定収入を得つつチャレンジできるサラリーマンは、起業で成功できる条件が整っています。
2.サラリーマンは社会保険を利用できる
サラリーマンの強みは、所属する会社で社会保険に加入できる点にもあります。サラリーマンとして働いていると「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5種類の社会保険に加入することができます。
このうち、健康保険料(介護保険料も含む)と厚生年金保険料については、会社と労働者で折半する取り決めがあります。これはとってもありがたいですよね! その他、雇用保険料は大部分が会社負担、労災保険料にいたっては全額を企業側が負担してくれるため、保険料の支払いについてサラリーマンは非常に有利な立場にあります。
サラリーマンを続けながら個人事業主を両立できれば、こうした社会保険の会社負担をそっくり利用できますので、保険料の支払いを抑えながら自らの事業に打ち込むことができます。当然、会社を辞めてしまうと、これらのメリットを享受できなくなります。
また、そもそも自営業者では加入できない社会保険も存在します。自営業者とサラリーマンの社会保険の違いを表にまとめました。
サラリーマン | 自営業者 | |
---|---|---|
健康保険 | 健康保険組合、健康保険組合(協会けんぽ)などに加入。労使折半に基づき会社が半分を負担。 | 国民健康保険に加入。原則として全額自己負担。 |
年金 | 国民年金と厚生年金の2階建て構造で加入できる。労使折半に基づき会社が半分を負担。 | 国民年金のみに加入。原則として全額自己負担。 |
雇用保険 | 加入できる。労使折半に基づき会社負担分あり。 | 加入できない |
労災保険 | 加入できる。 労使折半に基づき会社が全額を負担する。 |
加入できない |
介護保険 | 40歳以上の人は健康保険と同時に加入。 | 40歳以上の人は健康保険と同時に加入。 |
いきなり脱サラすると、健康保険や年金については全額自己負担となるだけでなく、雇用保険や労災保険などのサポートを受けることもできません。国民健康保険は月々の負担が大きいだけでなく「傷病手当金」や「出産手当金」などの支給を受けることができません。
そのため、仕事中に病気や怪我をしてしまったり、出産や育児などで仕事を休んだりした場合でも、すべての費用を自分自身でやりくりしていかなければなりません。
このように、サラリーマンであることは様々なメリットがあります。会社を辞めなければ、こうしたメリットを活かしつつ、自分のやりたい事業をすることが可能なのです。
3.サラリーマンは本業の知識を活かせる
サラリーマンは、本業の知識や経験を自分の事業に活かすこともできます。特に、経験のある業界で起業する場合は、経験を活かせるため成功率を高めることができるでしょう。
別の業種で起業する場合も、自分の強みを活かすことができます。たとえば、BtoBモデルの企業に勤めているサラリーマンは、製造業者~卸売業者~小売業者といった業界構造についての知識や、顧客やサプライヤーと良好な関係を構築するスキルを活かせるでしょう。
Webマーケティングの会社に勤めているなら、ネットを利用した販売促進の知識、顧客の属性(パーソナルデータ)を分析するスキルや、モノやサービスの流通・価格設定などのスキルを幅広く活かすことができます。
専門的な知識やスキルを持っていない場合でも、日頃から経営者目線に立って仕事をすることは、ビジネスパーソンとしての成長につながります。漫然と仕事をするのではなく、タスク管理やスケジュールを意識するだけでも、業務効率化や自己管理能力の向上につながります。
本業から学んだことを自分の事業に活かし、さらに自分の事業で学んだことを本業に還元すれば、効率的なフィードバックループを構築することが可能です。
会社員と個人事業主を両立する時の4つの注意点
会社員が起業する際は注意すべきポイントがあります。思わぬトラブルに発展する可能性もあるため、次の4つの注意点を抑えておきましょう。
1.就業規則は要チェック
まず、就業規則をチェックしましょう。意外と、就業規則で副業・兼業を禁じていない場合もあります。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によれば、副業・兼業をすることそのものは法律で禁じられていません。
ですが、公務員は副業・兼業が禁じられている点に注意が必要です。
会社員の場合は「届け出ればOK」という企業も増えていますので、その場合には堂々と届け出た方が安心です。ただし、副業(週末起業)が容認・推進されている企業でも、副業の内容によっては就業規則の「懲戒」に該当してしまう可能性があります。たとえば、下記のようなケースに注意が必要です。
- 競合関係にある副業を営み、会社の利益を損なったケース
- 副業を行った結果、会社の社会的信用を失墜させたケース
- 副業と本業の両立ができず、会社の業務に著しく支障をきたしたケース
特に会社の顧客を自分の事業のために利用したり、会社のサプライヤーや仕入れルートを流用したりした場合は「会社の利益を損なった」と見なされる可能性が高くなります。同業種での起業は法律違反ではありませんが、会社の就業規則で「競業・利益相反」が禁じられている場合は注意が必要です。
もちろん、会社の機密情報を流出させたり、会社の名前を使って反社会的な勢力と関係したりするなど、会社へ直接損害を与える行為も懲戒処分になります。
また、本業と自分の事業の両立が上手くいかず、会社の業務に明らかな悪営業が出てしまった場合も、減給や解雇などの懲戒処分が課される可能性があります。たとえば、長時間の仕事を行ったため、本業への労務提供ができなくなった労働者に対し、懲戒解雇処分が課された事例があります。
会社に所属するということは、価値ある労務を提供する義務を負うということです。本業に支障をきたさない範囲でスケジュールを管理しましょう。
現時点で、副業や兼業に関する法的規制は存在しません。しかし、会社の利益に相反する可能性のある副業(週末起業)は、余計なトラブルを引き起こす可能性があります。実際、過去の裁判所の判例でも、就業規則を根拠として、懲戒処分を正当とみなしたケースがあります。サラリーマンをしながら副業する場合は、あらかじめ会社の就業規則の内容に目を通しておきましょう。
2.社内の人間関係にも配慮しよう
就業規則や社内規定で副業(週末起業)が容認されている企業でも、職場の人間関係には最低限配慮しましょう。
たとえば、外回りや営業活動中にカフェで作業をしたり、時間前に帰宅したりすれば、いつか同僚や上司にバレてしまうかもしれません。特に繁忙期にそんなことが露見すれば、悪印象を持たれることは避けられません。もし懲戒処分に当たらなかったとしても、職場での評価や求心力が大きく低下してしまいます。
職場の人間関係でしくじってしまうと居心地が悪くなり、週末起業のパフォーマンスにまで影響してしまいます。
「社内のルールや人間関係に縛られたくないから起業する」という方も少なくありませんが、本業・週末起業の両立を目指す以上、自分から波風を立てるようなことは止めておきましょう。
3.本業と両立するには体調管理も重要
よくあるのが、本業と週末起業のリソース配分を誤り、オーバーワークになってしまうことです。体力を消耗し、本業が疎かになる人は少なくありません。精神的・体力的に負担がかからないよう、適切に時間配分する必要があります。
特に初めて起業する場合には、ライフスタイルを考慮して余裕を持ってスケジュールを立て、無理のない範囲でリソース配分を行いましょう。
4.本業とは別に税金を支払わなければならない
また、意外と盲点になりがちなのが、税金の支払いです。サラリーマンとして支払う税金は、会社がほぼ全て手続きをしてくれています。起業すると、自分で確定申告をしなければなりません。
確定申告は、その事業年度の1月1日~12月31日までの所得を合計し、税務署に申告します。副業所得が20万円を越えない場合は、所得税の確定申告は不要になります。「所得」は「売上」ではなく「売上-経費」が20万円を超えない場合ですので、売上が20万円を越えていても、確定申告を行わなくて済むケースがあります。
尚、確定申告を行わなかった場合でも「住民税」の申告は必要です。
通常、住民税の納付金額は所得税と同じタイミングで計算されるため、確定申告をすると自動で「住民税の支払決定通知書」が送付されてきます。しかし、所得税の申告をしていない場合は、自分で金額を計算しておかなければなりません。お住まいの市区町村の窓口に行き、必ず申告を行いましょう。
開業届は必要? 開業届を提出する3つのメリット
週末起業をする際に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を出すか出さないかで悩む人が、少なからず存在します。
メリット・デメリットを上のページでご紹介していますので、チェックしておきましょう。
情報収集も必須! 勝敗を分ける3つの情報収集術
ビジネスを成功させるには、事前の情報収集も大切になります。本やネットで調べたり、セミナーへ積極的に参加している人は、様々な発想や考え方に触れることができます。自分の強みや弱みを理解できれば、事業の客観的な評価もできるようになります。
手持ちの情報が多ければ多いほど、判断材料が豊富になります。ビジネスは自分1人で行うものではなく、競合他社やマーケットなど、外部環境に大きく左右されます。日頃から新しく確実な情報を収集していると、現在の状況が自分にとってチャンスなのかその逆なのか、迅速に判断することができます。
ここでは、起業を成功させるために欠かせない、3つの情報収集術をご紹介します。
1.まずは本やネットで手軽に情報収集を
本やSNSは、最も手軽な情報収集術のひとつです。
今は、TwitterやnoteなどのSNSを通じて発信する起業家が多く、コストをかけずに先輩の教えや考え方を学ぶことができます。起業に関する情報を集積したドリームゲートのようなポータルサイトも利用すれば、有益な情報を集中的に手に入れられます。同業者の情報だけでなく、幅広い分野の情報を収集することを心がけましょう。
また、起業の成功談だけを追うのではなく「自分はなぜ起業に失敗したか」「あの時どうすれば事業が成功していたか」といった失敗事例から学ぶことも大切です。ただし、SNSで公開されている情報は裏付けがないことも多いため、釣り、フェイク情報には気を付ける必要があります。
そして、起業本を探す場合は、発行年に注意しましょう。起業家を取り巻く環境は年々変化しています。なるべく鮮度の高い情報を手に入れることが大切です。
2.セミナーに参加する
民間・公的機関を問わず、起業家の支援を目的としたサロンやセミナーは多数あります。起業の心得や、経営ノウハウを講師が解説するセミナー形式のものや、先輩起業家と直接会って話ができる相談会形式のものがあり「生の情報」を得たい方には良い方法です。
その分野の専門家と直に会ってコミュニケーションがとれる機会は滅多にありません。ビジネスアイデアが固まっていなかったり、税金や法律についての知識に不安があるなど、悩みがある方はぜひチャンスを活かしましょう。
起業初心者を対象としたものから、起業経験があってステップアップしたい人向けのものまで、日々、様々な人をターゲットにしたセミナーが開催されています。これから起業してみたい方は、自分の興味関心やレベルに合ったサロンやセミナーを選んで参加してみましょう。
3.国や地方自治体の起業家支援サービスを利用する
民間企業だけでなく、国や地方公共団体が運営する起業家支援サービスも、これから起業する人にとって情報の宝庫です。たとえば、次のようなサ―ビスが利用できます。
国や地方自治体は、起業家育成のため様々な取り組みを行っています。公的機関が運営するセミナーは情報の信頼度も高いため、開催場所が近くにある場合や、オンラインセミナーがある場合は検討してみましょう。
ただし、地方公共団体が主催するサービスは、その地域に在住している人しか利用できないことも多いため、あらかじめ公式ホームページなどで確認が必要です。
会社員と個人事業を両立するには?
今回は、会社員におすすめの起業方法や、個人事業主と両立して起業する際の注意点を解説しました。
サラリーマンは経済的に安定していて、社会的信用が高いだけでなく、多くの権利で守られているので、万が一の事態にも強いです。ですので、簡単には辞めずに、その立場を利用してしっかりと起業準備を進めましょう。
しかし、週末起業や副業は、会社によっては就業規則で禁止されていたり、社内の人間関係に悪影響を与えてしまったりするケースもあるため、周囲の理解を得られるような形で行いましょう。
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