記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:2026年06月01日
最近では民間も行政も、個人も株式会社も、石を投げれば当たるくらい起業支援事業、副業、起業のセミナーが溢れています。
物価高、円安、人手不足、AIによる仕事の再編、そして将来不安。こうした空気のなかで、「会社にいるだけでは不安だから、自分でも稼ぐ力を持ちたい」と考え、起業や副業を見据えて動き出す人がさらに増えています。

セミナーポータルサイトを見ても、起業とは言っても意識の高い自己啓発色の強いセミナーから、AI副業、SNS集客、創業融資、補助金活用を前面に出したタイプのセミナーまで、様々なタイプのものが見られるようになりました。
背景には、終身雇用制度の揺らぎ、黒字リストラ、物価高による家計圧迫、そして何より2025年度の企業倒産件数が10,425件と2年連続で1万件を超え、人手不足倒産も441件と過去最多を更新したことがあります。さらに2026年5月の商工会議所LOBO調査では中小企業の景況感が悪化する一方、日本政策金融公庫の令和7年度創業融資実績は29,320先・1,681億円と3年度連続で増加しており、「会社員のままで守る」より「小さく始めて備える」へと意識が移っているのです。
問題の本質:セミナーの「質」と「順番」の格差

私たち起業18も、実践的なビジネス構築系セミナーを週1ペースで開催していますが、世の中の起業セミナーを見ているといろいろと思うことがあります。
2つのタイプの起業セミナーと、それぞれの問題点
- 特徴:「成功マインド」「自動化で稼ぐ」「AIに任せれば月30万円」など
- 問題点:
- 具体的な商品設計や販売導線が身につかない
- SNSやLINEで高額講座へ誘導するケースがある
- 感情的な高揚感だけで終わり、実践に結びつかない
- 「誰に何を売るか」が曖昧なまま、ツールの話ばかりが先に進む
2.創業融資・補助金最優先系セミナー(行政や士業系に多い)
- 特徴:「1,000万円の融資を受ける方法」「採択される事業計画書の書き方」など
- 問題点:
- ビジネスモデル自体が曖昧なまま資金調達を急がせる
- 創業融資や補助金には条件とリスクがあることを十分説明しない
- 「資金が取れれば前に進める」という誤った認識を植え付ける
- 返済計画や継続的な売上づくりの現実性が軽視される
起業希望者が陥りやすい3つの罠

上のようなセミナーを選んでしまった場合、以下のようなリスクがあります。
- 「簡単に稼げる」という甘い誘惑 AI副業や投資、副業アプリのライセンス販売など、仕組みが曖昧なのに「放置で稼げる」とうたう案件に惑わされる
- 「融資や補助金があれば安心」という錯覚 借入や採択はスタートでしかないのに、売上づくりより先にお金の確保ばかり考えてしまう
- 「SNSの実績演出」を実力だと誤認 フォロワー数、豪華な写真、派手な肩書に引っ張られ、実際の支援品質や再現性を見落としてしまう
見極めるべき重要なポイント
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良質なセミナーを見分けるには、以下の点をチェックしてください。
- 講師の実績が具体的で、できれば受講者側の成果まで検証可能か
- 失敗例やリスク、向いていない人についても正直に話しているか
- 高額商材の販売を前提にした無料説明会になっていないか
- 小さく始めて検証することの重要性を説いているか
- 特定商取引法表記、返金規定、運営者情報が明確か
特に、2026年6月のように物価高や国際情勢の不安、中小企業の景況感悪化が重なる局面では、「大きな夢」よりも「小さく試して早く学ぶ」を重視するセミナーを選ぶことが賢明です。石を投げれば当たるほど溢れている起業支援の中で、本当に価値のある情報を見極める眼を養うことが、何より重要になってきています。
代表的な分類
1.行政の起業・創業支援系セミナー
市区町村や公益財団法人、公社などが主催し、主に税理士や中小企業診断士の先生が講師として招かれていることが多いです。
内容としては、今すぐ知りたい気持ちを刺激するものの、創業前の人にとっては順番が早すぎるテーマも多く、行っただけでは実行に結びつかないということが少なくありません。
- 補助金・助成金系
- 金融機関・資金調達系
- 価格転嫁・資金繰り改善系
- AI・IT活用系
- 会計・税務・インボイス対応系
今は特に、補助金、資金繰り、AI活用関係のセミナーが花形です。
ですが、創業前の人にとって、このようなものは確かに気になってしまうのもわかるのですが、創業、起業する時点では実際は優先順位が低いものも多く、いきなり習う必要がないケースが多いです。多くの起業を目指す人が必要な情報は、そういう制度や手続きだけではなく、もっともっと起業の土台、ベースになるものです。
例えば、誰のどんな困りごとを解決するのか、という部分です。
多くの人が起業、独立をしたいと考えているのにも関わらず、それを実現することができません。セミナーでいくらノウハウを学び、情報を仕入れても、最初の商品案を作らず、見込み客に話を聞かず、小さく売ってみなければ何も始まらないからです。
創業塾で学んでも、殆どの人が習っただけで終わりになってしまうのは、行政系のセミナーでは、実際の行動に落とし込むための伴走が弱いことが多いからです。
2.民間企業の起業(準備)支援系セミナー
民間企業の起業セミナーは以下のタイプのものに別れます。
- モチベーションアップ系
- 創業塾(体系化ノウハウ提供)系
- 商材+ノウハウ提供系(売るモノが提供される)
- 部分ノウハウ提供系(名刺・AI・マーケティング・アイデア出しなど)
- その他
さらにそれぞれが、情報提供型(バックエンド講座)と、顧客獲得型(フロントエンド講座)に分かれています。
3.フリーランス・個人の起業・独立支援系セミナー
士業の先生や個人事業主、一人企業の社長が、自らの体験をベースにコンサルティング、コーチングなどを用いて起業支援をしているものがこれに相当します。
こちらも上記の5種類、そして、それぞれが情報提供型(バックエンド講座)と、顧客獲得型(フロントエンド講座)に分かれています。士業の先生の場合、バックエンドは講座ではなく無料相談を経た顧問契約になることが多いです。
失敗しない起業セミナーの選び方

1.あなたの立場(ステージ)で選ぶ
- 今すぐ起業したい
- やりたいビジネスが決まっている
- やりたいビジネスが決まっていない
- 副業から始めたい
- 副業のアイデアが決まっている
- 上手くいったらすぐにでも起業したい
- 副業はするがサラリーマンでいたい
- 副業をしたいがアイデアがない
- まだ考えてないがそのうち起業したい
あなたが現在どのステージにいるかによって、選ぶべき起業セミナーは異なります。誤ったセミナーを選んでしまうと、成果がでないばかりか、貴重な時間もお金も失ってしまうことになりますので、気をつけて選びましょう。
今すぐ起業したい人は、実務、スキルを具体的に教えてくれる、授けてくれるセミナーを選んでください。そして、それをセミナー後にすぐに実行しましょう。特に2026年は、商品案、価格設定、見込み客へのヒアリング、SNSやWebでの発信、初回販売までを扱うセミナーが役に立ちます。
そのうち起業したい人、とりあえず様子を見てみたい人、副業から始めたい人は、いきなり細かい実務を学んでも役に立ちません。学びたくなるものですが、学んだところでピンとこないでしょうし、AIツールや資格を増やしても、それだけで終わってしまうことが多いです。(とりあえずスキルを学びたいというのも、もちろんOKです!)
起業を目指す人で今現在このステージにいる人は、まずは顧客獲得型でもよいので、低額で人と交流ができるタイプのセミナーを選び、経験者や仲間の話を聴くことから始めましょう。
起業でも副業でもやりたい、しかしアイデアがないという人の場合、いわゆる短時間でやるアイデア出しワークのようなセミナーには出ない方がよいでしょう。中途半端なものを受けてしまうと迷いが深まるだけです。
どうせやるのなら、数カ月にわたって自己分析や振り返りから始めるものを選びましょう。
また、多くの人にとって起業アイデアは「ない」のではなく「決められない」「選べない」だけです。「とりあえず選んで何かをやってみよう」「失敗してもいいや」と思えるようになるまでは、何を勉強しても何もできません。
「失敗したくない」「あれもこれもやりたい」というのも同じことです。
2.あなたのやりたいビジネスで選ぶ
- 物販をしたい! 例えば・・・
- 自分で何かを作りたい
- アクセサリを売りたい
- 越境EC(輸入販売・輸出販売)をしたい
- Web問屋をやりたい・そこから仕入れたい
- リユース販売をしたい
- Amazon・ヤフオク・eBay販売をしたい
- ネットショップ(Amazon・楽天出店)を運営したい
- ネットショップ(オリジナル)を運営したい
- 小売店を持ちたい
- カフェを経営したい
- ネットビジネスをやりたい
- アフィリエイトをやりたい
- 資格やスキルを生かしたい! 例えば・・・
- ネイルサロンを開業したい
- エステを開業したい
- 趣味で起業したい
- コンサルタントになりたい
- カウンセラー・コーチになりたい
- ライターになりたい
- デザイナーになりたい
- 研修講師になりたい
- セミナー講師になりたい
- 教室を開きたい
- イベント・セミナー・交流会を開催したい! 例えば・・・
- セミナーを開催したい
- 朝活を主催したい
- ランチ会を主催したい
- 女子会を主催したい
- コミュニティを主催したい
- 婚活支援をしたい
- フランチャイズに参加したい! 例えば・・・
- 本部の選び方を知りたい
- 特定事業の説明会
- 不動産に投資したい! 例えば・・・
- マンション投資をしたい
- アパート経営をしたい
- 駐車場を経営したい
- REITに投資したい
- ネットワークビジネスに参加したい! 例えば・・・
- 金持ち父さん系
- その他
何をやりたいのかが具体的になったら、その業界の先駆者が開催するセミナーや講座に参加し、具体的なノウハウを習得するのもよいと思います。資格を取ったり、ビジネスに必要な人脈を増やしたり、充実の毎日が待っているでしょう。
ここでの課題は、商品・サービスの設計と、それを組み合わせたビジネスモデル作り。そして開業の準備や、業界特有の解決しなければならない問題、資金集めなど様々です。
これらはやることが具体的になったからこそ見えてくることですので、逆に言えばその時点まで心配する必要はありません。
3.あなたの抱えている問題で選ぶ
- お金の知識が必要! 例えば・・・
- 資金調達
- 会計
- 税金・インボイス対応
- 法律の知識が必要
- 事業計画作成の知識が必要
- 集客の知識が必要 例えば・・・
- キャッチコピー
- Webマーケティング・SEO
- SNS発信
- YouTube動画
- プレゼンテーションスキル
- ブランディング
- 出版
- 商業出版
- 自費出版
- 電子書籍
- 不動産投資の知識が必要
- 副業の知識が必要
- モチベーションを上げたい
- 好きなことを見つけたい
- 自己分析をしたい
- ビジネスアイデアを見つけたい
お金のことは税理士、金融機関、税務署。法律や規制のことは業界の先輩や弁護士、業界団体。ビジネスモデルの創り方はマーケティングコンサルタントや先輩に訊く。そのつながりを作るためにセミナーに行く。
考えてみればシンプルなことです。
よく「法人化を学びたい」というような人もいらっしゃいますが、一生で会社を作るのはせいぜい数回です。この場合は、セミナーに行くよりも本を買うか、行政書士などのプロに任せるか、直接訊いてしまう方が早いです。

好きなことを見つけたい、自己分析をしたい、ビジネスアイデアを見つけたいというステージにいる方は、繰り返しになってしまいますが、低額で人と交流ができるタイプのセミナーを選び、経験者や仲間の話を聴くことから始めましょう。
4.あなたが作りたい人脈で選ぶ
- 成功者の話を聴きたい
- 起業に興味のある人とつながりたい
- 同じ境遇の仲間とつながりたい
- 事業パートナーを探したい
- 特定の業界とつながりたい・学びたい
- 有名人とつながりたい
セミナーの選び方として、その内容よりも参加者を軸に選ぶ場合もあります。講師はもちろん「高額な費用を払ってその講座に参加している人」や「すでに行動している人」とのつながりを必要としている場合です。
もちろん高額なものには限りません。ステージに合わせて、自分が必要としている人のいそうな場に、自分の身を置いてみましょう。
5.あなたの本気度で選ぶ
- 成果にコミットする高額講座
- 個別指導の高額講座
- 有名人が主催する高額講座
いわゆる顧客獲得型ではない、情報提供型のセミナー、バックエンド講座がこれに相当します。高額であるが故に参加者の真剣度、意識、熱も高く、得るものが多いでしょう。
信用できるのであれば、情報提供型を飛ばしていきなりこちらから受講してしまった方が早い場合もあります。
6.あなたが受けたい場所・時間で選ぶ
- 自宅で学ぶ! 例えば・・・
- オンラインライブ
- 動画
- 通信教育
- 外で学ぶ! 例えば・・・
- 会社の近く
- 自宅の近く
- 合宿・研修旅行
- 時間の制約! 例えば・・・
- 週末
- 平日夜
- 平日昼
- 朝
一般的なセミナーは、指定の時間に開催場所に行かなければならないので、行きたくても行けないということがよくあります。ですが、よく考えてみれば、それは「その予定をキャンセルしてセミナーに行くよりも、予定をキャンセルしないことを自分で選択している」ということです。
本当に行きたいコンサートがあれば早退をする人もいます。旅行に行くために有給を取る人もいます。何を重要と考えるかです。無理をし過ぎない範囲で、自分の目標のために時間とお金を使う判断をしてください。
7.あなたが習いたい主催者・先生で選ぶ
- 有名人
- 社会起業家
- 成功者
- パイオニア
- 実績のある企業
実績を見る場合、この1年以内の「セミナー受講者」や「クライアント」の実績を見るとよいでしょう。何年も前の実績をいつまでも掲げているような場合や、自分の事例しか言わないような講師の場合は要チェックです。
加えて、2026年はSNSやセミナー経由の儲け話トラブルについて国民生活センターも注意喚起を更新しています。登録の有無、運営者情報、契約内容、断りにくい勧誘の有無まで確認してください。
これだけ変化の早い時代です。起業支援の業界では、老舗であることが強みになることはありません。有名人だからよいという業界でもありません。
あなたのステージで学ぶべきところを押さえつつ、色々なセミナーに参加してみてください。
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。


