記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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起業したい業種を9つ並べても、「自分にはどれが合うのか」で止まってしまう方は少なくありません。人気ランキングを眺めるうちに時間だけが過ぎ、結局どれにも手をつけられない。そんな話をよく耳にします。
大切なのは、業種の名前を覚えることではありません。9業種の中から自分に合うひとつを「選ぶ順序」を持てることです。順序さえ持てれば、今日から3業種に候補を絞り、来週には家計の余力を数字にして判断まで進めます。

日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表)によると、開業費用の中央値は600万円でした。開業費用が250万円未満の人は20.1%、500万円未満まで広げると全体の41.8%を占めます。大金を用意しないと始められない時代ではなくなっています。
起業して稼ぎたい、それでいてリスクは抑えたい。そう考える方が選ぶ業種には共通点があります。
- 利益を残しやすい業種
- 固定費が低く、身軽に始められる仕事
- AIを敵ではなく道具として使える仕事
この3つを満たす業種ほど、初心者でも生き残りやすくなります。市場が伸びているからといって、自分に合わない仕事に人生を賭けるのは現実的ではありません。参入障壁が低すぎる仕事は、AIを使いこなす同業がどっと増えるため、結果を出しづらくなります。

ここでは、これから起業するなら検討してほしい、初心者でも稼ぎやすいおすすめの業種9種と、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。そのうえで、9つを「初期費用の低い順」と「続けたときに収入がストック化しやすい順」で並べ替え、自分に合うひとつの選び方まで踏み込みます。
起業でおすすめの業種9選|個人で始めやすい仕事

起業するならどんな業種がよいか悩んでいる方に向けて、個人でも低資金で始めやすい9種を挙げます。まずはそれぞれの中身を見ていきましょう。
1.アフィリエイト・SNS運営
商品やサービスを紹介するサイトを作ったり、読者の役に立つ発信をしたりして、広告収入を得るビジネスです。
かつてはブログが無料で始められる手軽さで人気でした。検索の仕組みが変わり、生成AIで情報が手に入るようになったことで、薄い記事は読まれにくくなっています。
総務省「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」でもYouTubeの利用率は8割超、Instagramは5割超と、SNS動画の受け皿は広がっています。ブログ単体で戦うより、SNS動画と組み合わせて発信する形が現実的です。
2.ネットショップ経営
手作りのアイテムや、仕入れた商品をネットで販売するビジネスです。BASEやSTORES、Shopifyといった、専門知識がなくても店を開けるサービスがそろっています。円安を追い風にした越境EC(海外への販売)にもチャンスがあります。
扱う商品も売り方も自分で決められるのが魅力です。Amazonでの単純な転売は価格競争が激しく、初心者にはおすすめしません。
3.ライティング
アフィリエイトサイトや企業メディアの記事を書く仕事です。パソコン1台あれば、いつでもどこでも作業できます。
これまでと同じやり方では通用しません。ネット上の情報をまとめるだけの記事はAIに代替され、取材や自分の実体験をもとに、専門性の高い記事を書ける人だけが残っていく流れです。
4.代行業
- 家事代行
- お墓参り代行
- SNS運用代行
- 買い物代行
自分の持っているスキルや時間を、人に代わって提供する仕事です。アイデア次第で幅が広く、ちょっとした得意ごとがあれば始められます。総務省労働力調査(詳細集計)の長期時系列でも、2025年まで共働き世帯が専業主婦世帯を大きく上回る状態が続いており、家事代行のような暮らしまわりの代行はニーズが厚い分野です。
5.コーチング・コンサルタント業
自分の知識やコツを伝えて収入を得る仕事です。
- スマホで商品写真をきれいに撮るコツ
- 人前で緊張せずに話すポイント
- 怒りをコントロールするアンガーマネジメント
- SNSで反応を集める投稿の作り方
何かひとつ、人より秀でた経験があれば仕事になります。資格が要ると思われがちですが、たとえば離婚の経験を相談相手に伝えるなど、資格のない領域でも十分に成り立ちます。
6.プログラマー
フリーランスのプログラマーとして案件を請ける道です。技術があれば高い報酬を得られます。ここもAIで景色が変わりました。簡単なプログラムはAIが書けてしまうため、平均的なレベルでは仕事が減っていきます。
AIを使ってさらに上を狙える人、顧客との対話が得意な人にとっては、むしろ追い風です。
7.サロン経営
ネイルやエステなど、小規模なサロンは細く長く続けやすい仕事です。人の身体に触れるサービスはAIに置き換わりにくく、安定した需要があります。
出張サービスを軸にすれば初期費用を抑えられますし、働きたいときだけ予約を取る運び方もできます。講座化してオンライン収入を足すなど、店舗の家賃をかけずに広げる工夫を先に考えておきましょう。
8.動画投稿
動画を投稿して広告収入を得たり、自分の商品を売ったりする働き方です。
役立つ内容やコアな内容を発信して知名度を得れば、企業から案件をもらえることもあります。まずはショート動画から始めて、少しずつ見てくれる方を増やしていくのが現実的です。
9.レンタル業
車や自転車などのモノを貸し出すほか、「自分の時間」を貸すというユニークなサービスも生まれています。先駆者のなかには、ネット上で有名になった方もいます。
コーチングと似た面があり、相手に似合う服を見立てる、話し相手になる、一人では入りづらい場所に同行するなど、隠れたニーズに応えられるのが強みです。
9業種を初期費用と向く人で比較する

9業種を並べて見ても、初期費用や向いている方はそれぞれ違います。下の表で、自分の手持ちや性格に近いものを探してみてください。
| 業種 | 初期費用の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|
| アフィリエイト・SNS運営 | ほぼ0円 | 発信を続けられる人 |
| ネットショップ経営 | 数千円〜数万円 | 商品を見立てるのが好きな人 |
| ライティング | ほぼ0円 | 調べて書くのが苦でない人 |
| 代行業 | 数千円〜 | 体を動かすのが好きな人 |
| コーチング・コンサル | ほぼ0円 | 人に教えるのが好きな人 |
| プログラマー | ほぼ0円 | 技術を磨き続けられる人 |
| サロン経営 | 数万円〜数十万円 | 手に職をつけたい人 |
| 動画投稿 | 数万円〜 | 表現や企画が好きな人 |
| レンタル業 | 数万円〜 | アイデアを形にできる人 |
おすすめ業種9つのメリット・デメリット

こうして並べると、9業種のうち多くがパソコンやスマホ1台と数万円以内で始められることが分かります。先ほどの公庫データが示すとおり、開業費用は250万円未満の人が20.1%を占め、中央値は600万円です。私たちの支援現場でも、最初の元手は10万円以下という相談者の方が一定数います。
稼げそうな業種でも、自分に合っていなければ時間を無駄にしてしまいます。予算やかけられる時間、理想の運び方を思い浮かべながら、9業種の長所と短所を見ていきましょう。
アフィリエイト・SNS運営:低コストだが根気が要る
メリットは、事業のすべてを個人で完結できる点です。スマホがあれば、無料のSNSだけで始められます。
デメリットは、成果が出るまでに時間がかかる点です。継続的な発信とファンづくりが前提になるため、根気と分析力が求められます。
ネットショップ経営:好きな商品を売れるが目利きが要る
メリットは、趣味の作品や得意分野の商品をそのまま収入に変えられる点です。
デメリットは、商品の品質や見せ方が弱いと売上につながらない点です。在庫を抱えるようになると、保管場所の確保も課題になります。
ライティング:元手なしで始められるが向き不向きが大きい
メリットは、文章力と調べる力さえあれば元手なしで稼げる点です。
デメリットは、AIの普及で情報をまとめるだけのライターは価格が下がっている点です。向き不向きの差も大きく、書くこと自体が苦手だと続きません。
代行業:個人で始めやすいが利益は小さめ
メリットは、アイデアとフットワークの軽さがあれば稼げる点です。
デメリットは、人口の多い地域でないと需要を見つけにくい点です。1人で動ける時間にも限りがあるため、単価設定や予約の組み方を先に考えておく必要があります。
コーチング・コンサルタント業:実力次第で伸びるが営業力が要る
メリットは、自分の体と知識だけで始められる点です。実績を重ねれば、本の出版やイベント開催に広げる道もあります。
デメリットは、人に教えるのは想像以上に難しく、集客のための営業力も欠かせない点です。
プログラマー:単価が高いが習得に時間がかかる
メリットは、大きな案件だと1件で数十万円から数百万円規模になる点です。技術があれば、短時間で月給ぶんを稼ぐこともできます。
デメリットは、実力がなければ案件を取れない点です。企業から仕事を受けるには、技術と並んで営業の準備も欠かせません。
サロン経営:気軽に働けるが固定費に注意
メリットは、好きなときに気軽に働ける点です。店舗を持たなければ、週末だけ、予約が入ったときだけといった運び方も選べます。
デメリットは、定期的に営業しないと身内中心の集客になり、収入が安定しない点です。広告費が高騰しやすいので、Instagramやショート動画で土台を作っておきましょう。
動画投稿:当たれば大きいが手間と情報管理に注意
メリットは、当たったときの見返りが大きい点です。動画は残り続けるので、宣伝費を抑える資産にもなります。
デメリットは、原則として高い頻度で投稿が必要な点です。撮影や編集に時間がかかり、外注すると1本あたり数万円かかります。有名になると個人を特定されるリスクも出てきます。
レンタル業:アイデアで伸びるがセンスが要る
メリットは、アイデア次第で大きく育てられる点です。モノを長く使う流れにも合っています。
デメリットは、知名度を高める工夫と、お金になるニーズを見つける発想力が要る点です。隠れた需要を掘り当てるセンスがないと、思うように稼げません。
ストック性で見比べる|長く続くほど楽になる業種を確かめる

9業種を眺めて迷ってしまうのは、初期費用と向き不向きだけで見ているからです。もう1本だけ軸を足すと、選ぶ順序がはっきりします。それが「続けたときに収入がストック化するか」という軸です。
拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』第4章では、時間を切り売りする「フロー」を、自分がいなくても回る「銀の卵」に育てていく順番を紹介しています。要は、同じ時間を使うなら、積み上がる仕組みに変えていく業種を選んだほうが、長い目で楽になるという話です。
- ストック性が育ちやすい業種:
サロン経営(定期予約・回数券)/コーチング・コンサル(月謝・オンライン講座化)/動画投稿(過去動画が残り続ける) - ついで買いで単価を伸ばせる業種:
ネットショップ経営(関連商品・定期便)/レンタル業(追加オプション・法人契約) - フロー中心で仕組み化に工夫が要る業種:
ライティング/代行業/プログラマー(時間切り売りから抜けるにはチーム化が必要) - 広告収入型:
アフィリエイト・SNS運営(発信が資産になるが立ち上がりが長い)
この並べ替えで見ると、9業種は「はやく現金が入る順」と「長く続けたときに楽になる順」が違うことが分かります。初期費用の低さだけで選ぶと、フロー中心の業種に流れやすいので、同じ顧客に繰り返し使ってもらえる仕組みを持つ業種を1つ混ぜて候補にするのがおすすめです。
たとえばライティングを軸にするなら、途中から「取材・実体験の講座」に育てる。代行業を軸にするなら、月契約・定期契約を先に設計しておく。プログラマーなら、AI活用の教材化を早めに考える。同じ業種でも、積み上がる収益源の道筋を最初に持てるかどうかで、3年後の景色は大きく変わっていきます。
自分に合う業種を確かめる|市場性・実現可能性・差別化で点検する

9業種と並べ替えの軸を見比べても、結局どれにすればいいのか迷う方は多くいます。そこで役立つのが、候補を3つの問いで点検する方法です。要は次の問いを自分に投げかけるだけです。
- 市場性:
その仕事に、お金を払ってくれる人は実際にいるか - 実現可能性:
今の自分の時間・お金・スキルで、無理なく始められるか - 差別化可能性:
ほかの人と少しでも違う色を出せるか
たとえばライティングに惹かれていても、書くことが続かない方は実現可能性で引っかかります。家事が得意で近所づきあいも多い方なら、代行業は市場性と実現可能性の両方で丸がつきます。3つすべてに丸がつく業種ほど、最初の壁を越えやすくなります。
中小企業庁「2025年版中小企業白書」(2025年閣議決定)によると、2023年度の開業率は3.9%、廃業率も3.9%と拮抗しています。ひとりで働く方はもう珍しくない時代ですから、差別化可能性という3つ目の問いは、これからますます効いてきます。
安さで戦っていた広瀬さんが、選ぶ順序を変えて抜け出した話
40代でWeb制作を始めた広瀬さんは、最初の半年、相場より安い料金で次々と案件を引き受けていました。安ければ選ばれると思って、価格表を作らないまま「まずは受けよう」で走ったからです。安い仕事ほど細かい修正依頼が増え、手を動かすほど赤字に近づいていきました。ご本人いわく「安売りマラソンで最下位を目指していたようなものです」と笑って振り返ります。
転機は、起業18フォーラムの勉強会でストック性の考え方を教わったことでした。同じWeb制作でも、単発で作って終わる仕事と、月々の運用サポートまで含めて受ける仕事では、翌月の入りが違います。会員間の個別相談でも「飲食店に絞って月契約を作ってはどうか」と助言があり、広瀬さんは価格表を書き直し、飲食店向けの月額運用プランを新設しました。
16ヶ月目には、本業と副収入の比率が変わり始めました。半年目までは本業7:副収入3だったのが、月額運用プランのご紹介が続いた結果、本業4:副収入6へと逆転していきました。仕事の数はむしろ減ったのに、手元に残るお金は増えたのです。価格表を新設してから、月額運用プランの契約は毎月1件のペースで積み上がり、単発案件の比率は半分以下にまで下がりました。
まとめ|低コストで個人で始められる業種から選ぼう

これから起業するなら、初期費用が少なく、個人で営業できる業種から選ぶのが堅実です。日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」でも、開業業種はサービス業が27.7%と最も高く示されています。ひとりで始めるサービス業は、いまや起業の主流と言えます。
同じように低コストで始められても、向き不向きは必ずあります。自分の得意なことを軸に業種を選び、そのうえで「ストック化の芽」がある業種を1つ候補に入れておきましょう。気になる業種が見つかったら、いきなり開業する前に、知り合い1人に有料で1件だけ引き受けてみてください。お金をもらって成立するかどうかが、どんな調査よりも確かな答えになります。
まずは今日、9業種の中から候補を3つに絞り、来週までに家計の現金余力を数字にしてみます。融資を検討する段階になったら、日本政策金融公庫の支店に「面談前の相談はできますか」と一本問い合わせるところからで十分です。
よくある質問

Q.初心者が一番始めやすい業種はどれですか?
初期費用がほぼ0円のアフィリエイト・SNS運営やライティングは、金銭的なハードルが最も低い業種です。ただし「始めやすい=続けやすい」ではありません。発信や執筆が苦にならないかを、先に1件だけ試してから決めるのが安全です。
Q.資格がないと起業できない業種はありますか?
今回の9業種は、いずれも資格がなくても始められます。コーチングやコンサルも、国家資格ではなく実体験や得意分野が元手になります。サロン経営の一部など、人の身体やお金を扱う仕事には届け出や許可が要る場合があるため、選んだ業種ごとに公式の窓口で確認しておくと安心です。
Q.AIに仕事を奪われない業種はどれですか?
サロン経営のように人が直接ふれるサービスや、取材・実体験に裏づけられた発信は、AIに置き換わりにくい分野です。逆に、情報をまとめるだけのライティングや単純なプログラミングは影響を受けやすくなります。どの業種でも、AIを敵にせず道具として使う姿勢が、これからの分かれ目になります。
Q.複数の業種を同時に始めてもいいですか?
最初のひとつに手応えが出るまでは、業種を絞ることをおすすめします。同時にいくつも始めると、どれも中途半端になりやすいからです。ひとつが軌道に乗ってから相性のよい業種を足すほうが、結果的に早く前に進めます。
どの業種を選ぶかに、たった一つの正解はありません。順序さえ持てれば、迷いの時間は行動の時間に変わっていきます。

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