記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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何か新しいことを始めようとするとき、セミナーに行ったり、メンターに教えを請うたりすることは正しいことです。起業で言えば、いわゆる「起業塾」と呼ばれるところが多くありますし、そこで知識を得て起業し、成功している人もたくさんいます。
しかしその一方で、起業塾に通ったのに事業がまったくうまくいかなかったと言う人や、それ以前に起業すらできなかったという人も一定数います。なぜでしょうか? それは本人の問題の場合もあるでしょうが、通っても意味のない危険な起業塾のせいかもしれません。
ここでは、危険な起業塾とはどのようなところかを紹介したいと思います。
日本は起業者数が少ない
日本に起業家が少ないのは、言わずと知れたことです。
まず、どれぐらい少ないかを見ていきましょう。起業家の数を比較するための指標に「総合起業活動指数(TEA)」というものがあります。これは、起業の準備を具体的に始めた人と創業3年半未満の人が、成人人口100人あたり何人いるかを表したものです。
みずほ情報総研株式会社が行った「平成30年創業・起業支援事業(起業家精神に関する調査)」のデータによれば、2001年から2018年の間、日本の総合起業活動指数(TEA)は3%台後半から5%台前半を行ったり来たりしています。
一方、独立精神旺盛なアメリカは十数パーセントで推移。イギリスは日本の2倍程度で推移しています。またアジアでは、中国がほとんどの年で10%を超えていて、最高では15.5%という年もあります。
(注)国によって調査していない年がある。
日本は2013年頃から政府が「起業創業を支援して日本経済を活性化しよう」と言いだしたのですが、今ひとつうまくいっていないようです。
それでも、これらの政府の支援を活用しようという動きはあり、ノウハウを教える団体や個人がますます活動を活発にしました。これが一般的に「起業塾」や「起業コンサル」と呼ばれるものの増加につながったのですが、その内容やレベルは玉石混交。結果として、危険な起業塾が多くなったから起業者が増えなかった・・・とまでは言いませんが、実際につらい思いをした人もいます。
実際、さまざまな起業塾や起業コンサルを見てきましたが「もっと別のことを伝えないと起業できない」と感じることや、セミナー参加が増えることで主催者側が儲かる仕組みになっているというところもあります。
非常に残念なことであり、同じ思いをする人がこれ以上でないように、以下に危険な起業塾の特徴を挙げていきます。
参加する前によく考えた方が良い起業塾とは?
個性を活かすよりもマニュアル作業者を探している
起業塾に通おうとする人や起業コンサルを受けようとする人は、何らかの希望や要望を持っています。はっきりとした起業アイデアがなくても「今の働き方を変えたい」「組織ではなく1人でやりたい」「お客様と近い場所で働きたい」など、何らかの意思があるのです。そして、それを形にしていくことを望んでいるでしょう。
ところが、危険な起業塾は、個性を完全無視。決まった作業をするためのマニュアルを渡され、その通りにやらされます。一番大変な集客や営業部分は、参加者がリスクを負うようになっていることが殆どで、つまらない作業をひたすら繰り返すことになります。それでも本当に儲かるマニュアルなら良いですが、簡単にはいきません。
もちろん、50代を過ぎての起業などでは、全てをゼロから構築するよりも、ある程度のパッケージがあった方が良い場合もあるでしょう。フランチャイズ加盟なども、ひとつの良い選択肢です。
誤解しないでいただきたいのは、ここで言っている危険な塾とは、そのような良質なフランチャイズやそこへの加盟のことではなく、高額な参加費を取り、サポートもろくにせず、営業部分(たとえばネット転売のリサーチや出品作業など)を参加者にさせ、受注後業務を請け負うことでさらに儲ける企業やコンサルを指しています。
起業塾と言うより退職塾と言った方が合っている
こんな時代でも、将来的に独立したいと考える人は増えています。このままずっと今の会社にいる自分がイメージできないと考え、転職しても根本的な問題解決にはならないということに、多くの会社員が気づき始めているからでしょう。
しかし「起業するなら会社を辞めなければならない」「退路を断ってこそ成功を手に入れられる」「今すぐ独立して夢を掴もう」などと言い、やたらと退職を迫るところがあります。確かに、会社員のままいれば環境的に甘くなり、それ故に努力を続けることができない人が出てくるのは事実です。起業塾としては都合が悪い。
ですが、恵まれた環境にいるとか、有り余るほどの貯蓄があると言うなら別ですが、多くの人は定収入を途絶えさせるのは大きなリスクです。これにより、独立してみたものの、結局はアルバイト三昧の日々となる人もいます。
退職ありきの起業を進める塾は避けるべきです。
主催者だけが得をする
リーダーやメンターなどの中には、カリスマ性があり、お金儲けがやたらと上手い人がいます。そのせいで、会社組織からは出たものの、結局はそのリーダーやメンターの言いなりになり、本当の意味での起業ができない人がいます。
先日、動画制作の仕事で独立した人とお話する機会がありました。あるサロンに入り、そのメンバーのショップで設備を揃え、技術を磨いてきたのですが、仕事は主催者から来るものしか受けていません。報酬は折半という条件なため、安い単価の仕事を夜も寝ずにひたすらにこなしていました。
「人間関係があるからその主催者以外の仕事は受けられないし、時間的にも対応できない」とのこと。また、初めてのセミナー参加時に「君は選ばれた人だから」と、主催者と現役塾生たちと一緒に勧誘され、200万円を超える参加費を既に払ってしまったので辞められないと言うのです。
これでは起業したとは言えません。会社という後ろ盾を失って事業主になったにも関わらず、仕事のやり方はブラック度が増す。このようなところは結構多いので、注意すべきでしょう。
年齢や性別により居心地の悪さを感じる
起業はいくつになってもできるものであり、定年後に起業しようという人も増えています。また、小さな子どもを育てながら起業する人もたくさんいます。
しかし、起業塾によっては「40歳を超えると起業しても頑張れない」とか「女性は大局的に物事を見れないから事業を広げていくのは無理だ」と言い切ってしまう先生もいるようです。時代錯誤も甚だしいのですが、こういった言葉により自信を失い、起業を諦めてしまう人がいるのも確かです。非常に残念です。
また、講師が明確に言わずとも、参加者が「金儲け優先主義」で成果が出ていない人をバカにしたり、キラキラ女子ばかりで年齢が上だと居心地が悪かったりするケースもあり、100万円以上の参加費を払ってしまった後に実態を知り、とても後悔しているという人もいます。
困ったことに、そのようなところに限って団結力が強く勢いもあり「私も一緒に成功を手に入れたい」と思わせる雰囲気があります。起業塾に限らず、コミュニティに入るときには、体験参加をしたり、主催者と話をしてから決めるなど、ある程度の調査が必要でしょう。
起業すること自体が目的になっている
起業塾に入って知りたいのは、起業アイデアを明確にする方法であったり、売上をあげる方法だったりするはずです。しかし、起業に関する事務手続きしか教えないところや、自己啓発的なフワフワトークでメンタルばかり膨らませて、後はSNSの使い方を教える程度で終わってしまうところが多くあります。
しかし、多くの人が望んでいるのは、起業して何かをなすことのはずです。ある人は、夢や希望を散々膨らませて起業したものの、どうやって顧客を取るのか全く分からず、資料作りもできない状態でした。当然、同業者との差別化の必要性すら感じておらず、収入がないまま途方に暮れていました。
起業塾に入ったからには、夢ノート、ビジョンマップも大切ですが、それで満足するだけでなく、具体的に事業を構築し、講師と相談できる仲間に背中を押してほしいもの。それでこそ起業塾ではないかと思います。起業塾に入るときには、体験参加をして生徒さんの声を聞くのはもちろん、卒業生の姿を見たり、WEBで評判を調べたりして、自分に合った指導をしてくれるところを選ぶようにしましょう。
まとめ
起業したいと思ったとき、起業塾に入るのはとても良い選択だと思います。しかしそこで得たいのは、それまで知らなかった情報を知り、自分に足りないところを埋め、具体的な計画を立て、実践できる状態になることです。夢を膨らませるだけでは売り上げを得ることはできませんし、ましてはやる気を搾取するようなやり方は望まないはず。
起業の目的は、起業して何かを得ること。それは人によって違うでしょうし、知りたい情報も違うはず。まずは起業塾の情報を集め、自分に合ったところを探してください。また「何かが違う」と感じたら、起業塾を変えることで早くゴールにたどり着けるかもしれません。決断は自分次第です。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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