記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
起業を考えているのですが、まず何か資格を取得してから始めるべきか悩んでいます。心理系のコーチング資格、中小企業診断士、または簿記を検討していますが、どれが起業に一番役立つでしょうか?
逆に、時間とお金をかけても起業には結びつかない資格があれば教えてください。
資格を持っていると、お客様にも信頼してもらいやすくなるのではないかと思っているのですが、甘い考えでしょうか?

● 回答
「資格を取ってから起業しよう」という考え方は、一見、まじめで堅実に見えます。でも起業18フォーラムに届く相談のなかで、「資格を取ったのに、お客様がひとりも来ない」と悩む方は少なくありません。資格を持つことと、お客様が来ることは、まったく別の話なのです。
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に「3つのチェック」というフレームがあります。起業のネタを評価する基準として、①一人で始められるか、②一人で続けられるか、③大きなお金がかからないか、の3点で判断するというものです。資格取得を「起業の前提条件」にしてしまうと、この3つのチェックに通る前に時間とお金が消えていきます。
日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」によると、新規開業者のうち「開業前に同じ業種で仕事をした経験がある」と回答した割合は68.8%でした。つまり、多くの起業家は新たに取得した資格ではなく、会社員時代に積み上げた実務経験を武器に事業を起こしています。資格よりも「誰のどんな悩みを解決するか」という設計が先に必要なのです。
現場で見た「資格取得→起業」の落とし穴
起業18フォーラムの会員Gさんは、40代前半・大手製造業の人事部に10年在籍していた方です。「コーチングで起業したい」と心理系資格を2つ取得し、受講費に合計40万円を使いました。ところが、資格取得後も受講生がゼロのまま6ヶ月が経過しました。10ヶ月目に相談にいらしたとき、話し合いのなかで「採用担当者として面接官に伝えてきたノウハウこそ、誰かの役に立つ」という気づきが生まれました。Gさんはその後、面接官向けの採用面接トレーニング講師として起業準備を開始し、資格なしで月収8万円の受注を得ることができました。
起業18フォーラム代表 新井一の現場より:「26年間で6万人を支援してきましたが、『資格があるから起業できた』という方より、『自分の経験が起業の武器になった』という方のほうが、はるかに多くいらっしゃいます」
- 独占業務のある国家資格(税理士・宅建士・建築士・社会保険労務士など)
- 資格そのものが信頼の証明になる専門国家資格(理学療法士・管理栄養士など)
- 開業後の実務で直接使える知識を持つ資格(簿記・FPなど財務系)
- 民間資格を取得しても集客の仕組みがなければ受講生はゼロ
- 「資格取得=起業の準備」と思い込み、商品設計・ターゲット選定が後回しになる
- 資格発行団体のビジネスモデルに組み込まれ、次々と資格を取り続けるだけになる
まず「会社員時代の経験のなかで、誰かの役に立てることは何か?」から起業ネタを探してみてください。資格は、そのネタに本当に必要かどうか確かめてから検討すれば十分です。
起業に必要なのは、「誰のどんな悩みを解決するか」という明確な設計図です。その設計が先にあれば、資格は「あれば便利な道具」になります。逆に、設計なしに資格だけを揃えても、使われないまま棚に並んでしまうことが多いのです。

「資格はないけど、経験はある」という方こそ、起業のチャンスは身近にあります。あなたが当たり前にやってきたことが、誰かにとっての宝になるのです。
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