記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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ロコロールとは、テレビ番組「マネーの虎」で取り上げられた、ハワイで有名なロコモコ(丼)を巻き寿司状にしたファーストフードです。
また、志願者さんのご本名もここでは伏せさせていただきます。予めご了承くださいませ。
今回は「ロコロールの最初から最後まで」を通して、起業に必要なことと大切なことについて、一緒に考えてみましょう。
テレビ番組「マネーの虎」とは?
テレビ番組「マネーの虎」は、2001年から2004年まで日本テレビで放送された人気番組です。吉田栄作さんもかっこよかった。私も楽しみに見ていた記憶があります。
起業を夢見る一般の人が、自分なりの事業計画や企画を持って登場し、出資してくれるかもしれない社長たちの前でプレゼンテーションを行います。社長たちは「マネーの虎」と呼ばれる起業家、成功者たちです。
志願者は、出資してほしい希望金額を提示します。プレゼンテーションを聞いて「これは投資する価値がある」と判断され、出資額が希望金額に到達すれば「マネー成立」となり、出資を受けることができます。
「マネーの虎」の魅力の一つに、出資を受けた志願者の後日談があります。社長によっては、出資した志願者を手厚くサポートし、一人前に育てていく物語を見せてくれます。番組放送当時に、志願者の後日談として放送されたものもあれば、数十年がたった今、当時の虎達がYouTube(令和の虎)などで語ってくれる後日談もあり、そのストーリーの全てが見応えのある「伝説の番組」なのです。
「ロコロール」とは?
ロコロールとは、ハワイのローカル料理である「ロコモコ」を海苔で巻いて食べ歩きできるようにした、志願者さんオリジナルのファーストフード。
ロコモコとは、上の写真のようなライスの上にハンバーグ、半熟卵、グレイビーソースのかかった料理で、ハワイに行けばレストランやドライブインには必ずあると言ってよい、地元で愛されているフードです。
ロコロールは、海苔がスムーズに噛み切れなかったり、歯に挟まってしまうなど、ちょっと食べにくいかもしれませんが、動画で見る限りはとても美味しそうに見えますね。若者向けに400円弱で売られているとすれば、今でも売れる可能性はあるかなぁと思います。
出演した虎(社長)たちはどんな人?
ロコロールがプレゼンテーションされた回には、5人の虎(席順に左から/堀之内社長・尾崎社長・加藤社長・川原社長・安田社長)が出演しました。
- 堀之内九一郎(55歳当時)年商67億
(株)生活倉庫 代表取締役社長 - 尾崎友俐 年商10億
(株)オリエンタル 代表取締役CEO - 川原ひろし(38歳当時)
(株)なんてんかんでん 社長 - 加藤和也(31歳当時)
美空ひばりの長男・音楽プロデューサー - 安田久(40歳当時)年商18億
(株)エイチ・ワイ・ジャパングループ 代表取締役
登場する志願者さんは「ロコロールテイクアウト」での起業を目指します。マネ虎登場時はまだ会社員だったようで「この男、マネー成立になったら今の会社を辞める」と、ナレーションが流れていました。番組の中では、商品開発の実績として、あの牛角の醤油タレの開発、そして某お弁当チェーンのわらじカツのメニュー開発に関わったとの話も。
ところがこの志願者さん、ロコロールが美味しい、まずい、の話になる前に、虎たちに「会社員としての在り方(不義理)」を指摘されます。このマネーの虎に出てくる前に、会社にきちんと独立を考えていることについて説明するべきだという趣旨のことを言われるのです。これはいかにも昭和。今では、会社に退職の意志を伝える前に次の準備をするなんて当たり前ですよね。
志願者さんは、ヘッドハンティングを経験し、実績も残している優秀な人であるにも関わらず、当時の価値観では否定的に受け入れられてしまいました。しかし、試食した料理が好評だったこともあり、安田社長が希望額500万円を出資し、マネーが成立します。
後日談で、安田社長はこの志願者さんにお金を出した理由として、2チャンネルでお金を出さないと書かれていて、そろそろ出さないとやばいのかなぁと思っていたから、と告白されています。
ロコロール初売上! しかしその後は・・・
志願者さんは会社を辞めて、テイクアウト専門店開業のために動き始めます。希望物件は渋谷のセンター街、広さ4坪、予算は300万円でした。しかし、目を付けていた物件は他社に取られてしまい、新しい場所が中々見つかりませんでした。
安田社長の厳しくも愛のあるアドバイスを受けた志願者さんは、物件探し、そして新メニュー開発にさらに力を注ぎます。ついに見つけた物件は原宿、竹下通りの出口付近のショッピングセンター内。イカ焼きの店が失敗したちょっと不安な場所に決定。それでも彼は開き直り、売上目標、休日25万円、集客人数500人に向けて突き進みます。
この物件選定については、安田社長は後日談で「物件を探したのは僕だった」と語っています。さらに安田社長は「スタッフも僕の紹介」「商品は後から再現したら美味しくなく、ほとんどうちで商品開発した」とぶっちゃけています(笑)
開店当日、既にお店はオープンしているのに、お客さんは来ません。その理由は「存在を知られていないから」に他なりません。志願者さんはビラ配りを行い、ようやく初めてのお客様から売上390円を稼ぎ出します。
これはまさに、起業18の会員さんも通る道。全く同じで笑ってしまいました。営業経験がない人ほど、商品を出して、ぼーーーーーっと待ってしまうのです。誰にも知られていないのですから、これでもかと情報発信をして、そして初めて「検討してもらえる(売れるではない)」というステージなのです。知られていないのは、存在していないのと同じです。
ロコロールは、行列ができるタイミングもありましたが、結果、初日のノルマは達成できませんでした。実はこれについても、安田社長が後日談で「当日は雨で寒く、集客できなさそうだったから、さくらを動員した」と完全にぶっちゃけ過ぎています(笑)
その後、ロコロールは1年ほどで2号店、3号店を出店。順調に拡大していきます。しかし、その後の番組の追跡によると、お店は急拡大を狙い過ぎたせいなのか、2年も持たずに失敗に終わったようです。
ロコロール失敗から学ぶ! 起業に必要なこと・大切なこと
ロコロールは失敗に終わりました。日本では珍しいロコモコを海苔で巻く斬新さ、見た目も味も良さそうでしたし、視聴者もまさかこんなに早く失敗するとは思わなかったと思います。
なぜロコロールは失敗したのでしょうか? 私たちが「ロコロール失敗」から学べることは何でしょうか?
大きな起業には冷静な客観的視点が不可欠
ロコロールは、出資希望額を500万円に設定していました。他の志願者は1,000万円以上を希望することも多かったマネーの虎ですが、起業18の常識で考える起業資金と比べると巨大な投資額という印象を受けます。
当初、渋谷のセンター街からのスタートを考え、当然、スタッフも数名雇うことが前提だったでしょう。そして、リスクを負ったとたん、まさかの成功物語。。。冷静さを失ってしまう、ある意味では天狗になってしまうのは仕方のないことだったのかもしれません。
結果的には失敗してしまいましたが、安田社長は、2店舗目、3店舗目と拡大していく中で「もう少し待った方が良い」とアドバイスしたと語っています。飲食店経営者ならではのリスク計算ができていたのでしょう。ビジネスにタラレバは禁物ですが、志願者さんがアドバイスを受け入れていれば、違った結果になっていたかもしれません。
起業するなら商品力と営業力が必要
ロコロールの志願者さんには、商品開発の実績と経験がありました。しかし、事業で成功するには商品力だけでは足りません。お店は、拡大を急ぎ過ぎ、開店資金が嵩んだという理由から廃業に向かっていったという情報が出ていますが、最終的には集客力、営業力が足りなかったということになると思います。
飲食店は立地に左右されることが殆どだとは思いますが、テレビや支援者の力を借りずとも、新規の顧客を取れるだけの営業力、集客力がなければ、生き残ってはいけないのですね。今のようにSNSがあれば、もう少し違ったとも思うのですが・・・。
事業は「継続」してナンボ
業種業態にもよりますが、私の先輩の経営者たちは「事業は5年」と、いつもおっしゃいます。最初はうまくいっても、5年も経つと次第に話題性もなくなり、市場から当たり前のものとして認知され、差別化ができなくなるというのです。
ロコロールの場合は、5年どころか2年も継続できなかったわけですが、現場に満足することなく、また調子に乗ることもなく、きちんとリスク管理をし地に足をつけた経営をしていれば、このような結果にはならなかったのかもしれません。これはすべての起業家にとって、忘れてはいけない初心だと思います。
ロコロールの起業にもっとも足りなかったものとは?
志願者さんに足りなかったものは「仕事は人を相手にすること」という意識だったのかもしれません。昭和の価値観かもしれませんが、最初に堀之内社長や加藤社長に指摘された退職後の迷惑や影響を考えず、お金や損得勘定で判断し行動してきたところ。
そして、ロコロール失敗後も、安田社長と音信不通になっているところなど、これが事実だとするならば、もう少し違った意識があれば、結果は変わったのかもしれません。
おわりに
「ビジネスに血も涙もない」と考えることもあります。しかし人を相手にするビジネスだからこそ、人の心がわからなければ成功するはずがありません。
ロコロールのエピソードには、起業に必要なこと、大切なことがたくさん詰まっていますね。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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