記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
情報を売ることで起業したいと考えています。会社員で残業も多く忙しいので、元手のかからないこれくらいしか選択肢がなさそうです。ネットでよく見かける、起業やお金儲けに関するマニュアルを売って、本当に稼ぐことはできるのでしょうか?

● 回答
情報を売る起業は2026年も可能ですが、数万円のマニュアル一発売りはほぼ消滅し、今は300円〜1,000円の電子書籍を積み上げる売り方が王道になっています。情報そのものではなく、その先の講座やコンサルティングへつなぐ設計で利益が出ます。
インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2025」によると、2024年度の国内電子書籍市場規模は6,703億円で、前年比3.9%増。市場は今も拡大しています。読者が情報そのものへ対価を支払うことに慣れてきたのです。ただし、勝ち方は10年前から大きく変わっています。
情報販売で稼ぐ人の3つの型
これまでの起業支援の現場で見てきた限り、情報を売って稼いでいる方の取り組み方は、大きく3つに分かれます。
- 高額マニュアル一発型:数万円のPDFやBrain商材を、一度の購入で完結させる売り方
- Kindle積み上げ型:Amazon KDPで300円〜1,000円の電子書籍を継続的に出し続ける積み上げ式
- コンサル発展型:noteやKindleの読者をLINE公式へ案内し、月数万円の講座やコンサルへつなげる発展式
このうち、いまの時代に長く稼げているのは2つ目と3つ目です。1つ目の高額マニュアル一発型は、レビューや返品のトラブルで継続が難しく、現場で見ても新規参入は厳しくなっています。
高額マニュアル型がほぼ消えた3つの理由
インターネットの黎明期には、PDF1本で30万円や60万円という商材が成立していました。今はその構造が崩れています。理由は大きく3つあります。
- 消費者庁「特定商取引法ガイド:通信販売」の運用強化で、誇大広告と返金条件への規制が厳しくなった
- SNSとAmazonレビューで購入後の評価が瞬時に広がり、誇張表現が淘汰されやすくなった
- 生成AIの普及で、一般的なノウハウ情報は誰でも無料に近い形で手に入るようになった
結果として、いまの読者は「中身を確認できない数万円商材」へ財布を開きにくくなりました。それでも高額商材の販売を続けようとすると、誇大広告や返金拒否の領域に踏み込みやすく、特定商取引法に違反するリスクが上がります。逆に、低単価で透明性の高い販売へ振り切れば、無理なく長く続けられます。
Kindle積み上げ型の収益構造
Amazon KDP(Kindleダイレクト・パブリッシング)の収益源は、大きく2つあります。1つ目は、読者が買い切りで購入したときの印税で、価格の35%または70%です。2つ目は、読み放題のKindle Unlimited(KU)で読まれたページ数に応じた分配で、KENPC換算で1ページあたり0.4円から0.5円程度の単価が続いています。
たとえば、200ページの実用書をKU向けに整え、月100名に通読してもらえると、KU分配だけで月8,000円から1万円ほどが入ってきます。これを3冊出せば月3万円、10冊そろえば月10万円が見えてきます。
- 1冊300円〜1,000円のKindle本を、まず3冊から10冊そろえる
- Kindle Unlimitedで読まれる前提で章立てし、最初の20%で核を伝え切る
- 各書籍の末尾に、自社サイト・LINE公式・noteへの導線を1つだけ置く
- 本で集まった読者にだけ、月数千円から数万円の講座やコンサルを案内する
情報販売の本当の利益は、本そのものではなく、本を読んだ人へ提供する次のサービスから生まれます。ここを取り違えると、印税収入だけで食べようとして消耗してしまいます。
そのため、最初の1冊で売上を狙う必要はありません。むしろ、狙いに行かないほうがうまくいきます。
1冊目は売上ではなく「読者の信頼」を取りに行く本と決め、収益化は3冊目以降からと割り切って始めてください。最初から稼ぐ前提で書くと、章立てが逆算的になりすぎて、読者の心が離れてしまいます。
会員Pさん(30代後半・在職中スタート)の軌道
起業18フォーラムの会員Pさん(30代後半・IT企業の業務改善担当)は、質問者様と同じく、数万円のマニュアルを購入して中身の薄さに愕然とした経験をお持ちでした。「自分のほうが誠実な情報を出せる」と考え、会社員を続けたまま、平日朝の1時間だけを執筆にあてる生活を始められました。
1年目は実用書を3冊出版し、月収は平均4,800円。買い切りの印税はほとんど発生せず、KU分配で月3,000円から6,000円という、典型的な立ち上げ期でした。2年目は出版数を10冊に増やし、読み放題層に向けて章立てを「最初の章で結論を出し切る」型へ全面的に改訂したところ、月収は22万8千円まで上がりました。
3年目になっても、Pさんは会社に勤めながら運用を続けておられます。退職して専業ライターになる選択肢もあったそうですが、家族との時間と本業の安定収入を優先された結果、現在は月平均47万円の規模で着地中です。LINE公式の登録者は1,200名を超え、年に2回ほど開く10万円の講座は、毎回満席が続いています。
Pさんは、最初に買った数万円のマニュアルを「自分が販売する側に回ったとき、絶対にやらない設計のお手本になった」と振り返っておられました。失敗の経験こそ、その後の販売スタイルを決めてくれます。
情報を売るなら知っておきたい特商法の表示義務
拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』にも書いたのですが、会社員が始められる起業準備のネタは「プロダクト・スキル・ノウハウ・スペース」の4分類で整理できます。情報販売は、このうち「ノウハウ」を売る一形態です。販売方法が通信販売(インターネット販売)にあたるため、特定商取引法の表示義務が発生します。
具体的には、サイトや販売ページに、次の項目を明示する必要があります。
- 販売事業者名・所在地・連絡先(個人名・自宅住所でも可)
- 販売価格と、支払いの時期・引き渡しの時期
- 返品の可否とその条件、返金の方法
- 動作環境や、必要なソフト・アカウント
「購入後の返金は一切受け付けません」という記載を見かけることがあります。特商法上は、商品に欠陥がある場合や、記載と異なっていた場合の返金まで否定することは認められません。返金条件まで含めて、最初から良心的に表示できる商品設計にしておいてください。

情報販売は、地味で時間のかかる起業です。1冊300円のKindle本を地道に書き続けながら、その先の講座やコンサルを設計していく。質問者様も、まずは自分が誇れる中身の電子書籍を1冊書き上げるところから始めてみてください。書き上げた1冊が、次の1冊を呼び込みます。
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