記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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東京商工リサーチが2024年に公表した「全国女性社長」調査では、女性社長の数が64万9,262人に達し、女性社長率は15.24%と初めて15%を超えました。14年間で約3倍に増えた計算で、女性の独立起業が「特別なこと」から「ふつうの選択肢」へ変わってきた象徴的な数字です。
とはいえ、現場で26年・60,000人の起業準備をサポートしてきた立場から見ると、女性の独立起業には男性と違う固有のリズムと壁があります。本記事では2024年最新の公的データ・社会背景・支援制度・起業18フォーラム会員の実例を組み合わせ、「なぜ増えているのか」「いま始めるなら何を意識すべきか」を整理します。
2024年最新データで読み解く女性独立起業の現状

まずは2024年時点の公的データを更新しておきましょう。「女性社長は増えているらしい」と聞いてはいても、具体的な数字を押さえている人は多くありません。
女性社長が初めて15%を超えた
東京商工リサーチ「2024年 全国女性社長 調査」によると、全国の女性社長は64万9,262人(前年比6.0%増)。女性社長率は15.24%と過去最高を更新し、調査開始の2010年から14年間で約3倍に達しました。2018年時点では13.4%・約45万人だったので、その後の6年でさらに約20万人増えた計算になります。
都道府県別では、最高が沖縄県の20.62%。次いで山梨県17.36%・東京都17.21%・茨城県16.99%・大阪府16.82%と続きます。意外にも「東京都が1位」ではなく、沖縄や山梨など地方圏で女性社長率が高いのが2024年の特徴です。
新規開業者の女性比率も25.5%へ
日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」では、新規開業者に占める女性の割合が25.5%と過去最高に達しました。法人化していない個人事業主としての独立も含めると、いま新しく事業を始める4人に1人が女性という時代に入っています。
とくに目立つのは、30代〜50代の女性層が「会社勤めを続けながら準備し、子育てや介護のフェーズに合わせて立ち上げる」スタイルです。男性に多い「30代で勢いよく独立」型と違い、女性はライフイベントを織り込んだ段階的な独立を選ぶ傾向が強くなっています。
2024年の女性独立起業 主要数字(公表ベース)
- 全国の女性社長:64万9,262人(前年比6.0%増・東京商工リサーチ2024)
- 女性社長率:15.24%(初の15%超・調査開始から14年間で約3倍)
- 都道府県別最高:沖縄県20.62%
- 新規開業者の女性比率:25.5%(日本政策金融公庫2024年度・過去最高)
女性の独立起業がこれほど増えた3つの構造変化

「女性活躍が叫ばれているから」だけでは説明がつきません。26年の現場で見えてきた構造変化は、大きく3つあります。
①在宅起業のインフラが揃った
コロナ禍以降、Zoom・Slack・電子契約・クラウド会計が中小企業や個人にも一気に普及しました。通勤・出社が前提だった商談・契約・経理が、オンラインで完結する仕組みに変わったのが大きな転換点です。
子育てや介護で時間が読みにくい女性にとって、これは独立の心理的ハードルを大きく下げる要因になりました。
起業18フォーラムでも、2020年以降に独立を相談に来る女性会員のうち、「最初の数年は在宅メインで運営したい」と希望する割合は約8割に達しています。
②支援制度・コミュニティの厚みが増した
経済産業省「わたしの起業応援団」や日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」など、女性の起業準備を金融・相談の両面から支える制度が定着してきました。
育児支援付きコワーキングや女性専用アクセラレータープログラムなど、孤立しがちな初期フェーズを支えるコミュニティも増えています。
男性起業家の多くが「ひとりで頑張る」スタイルなのに対し、女性起業家は「同じ立場の仲間と励まし合いながら進める」コミュニティ型を好む傾向が強いです。これを支える制度が育ってきたことが、女性独立の追い風になっています。
③スモール起業の最低資本が劇的に下がった
SNS発信・ノーコードのネットショップ・SaaS型ツールの登場で、初期投資が数十万円以下で立ち上げられる業態が増えました。「自宅の一室から始める」「商品在庫を持たない」「サブスクで毎月の固定費を抑える」といった選択肢を組み合わせれば、かつての数百万円規模の準備資金は必要なくなっています。
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』にも書いたのですが、ライフイベントの中で時間が細切れになりやすい女性こそ、「小さく始めて固定費を絞り、検証しながら拡張する」スタイルが最適です。これは男性向け起業書には書かれにくい現実的な視点でもあります。
起業18会員さんに見えたV字パターン

会員のTさん(35歳・元IT企業勤務・2人のお子さんを育てながら準備)の事例を紹介します。これは「最初から順調」ではなく、自己流の停滞からの軌道修正パターンです。
スタート時の状況(自己流フェーズ)
育休中に「ハンドメイドのベビー用品をネットショップで売る」アイデアを思いつき、独学で開業。半年運営しても、月の売上は3万円前後で頭打ちでした。SNS発信を強化すれば伸びると思い込み、毎日2時間投稿しても反応は変わらない状態が1年続いたといいます。
転機(起業18フォーラム参加)
育休が終わり職場復帰した直後、家計負担とのバランスで「このままでは続かない」と感じてフォーラムに参加。最初の面談で出てきたのは「ハンドメイド販売そのものではなく、子育て中の女性向けに『時短整理術』のオンライン講座を提供する」という方向転換の提案でした。
勉強会で「商品力×発信力×信用力」の3つを分けて棚卸ししたところ、Tさん自身がIT企業時代に培った業務効率化のノウハウは、ハンドメイドより講座型サービスのほうが価値が出やすいと見えてきました。
修正(6ヶ月計画)
そこから180日(4ステージ)計画に沿って準備を組み直しました。最初の60日で「子育て中の時短整理術」というテーマで無料のZoom体験会を月2回開催し、悩みヒアリングを徹底。次の60日で講座カリキュラムを固め、最後の60日で初回有料講座を実施しました。
現在地点
独立から1年半後の現在、Tさんの月収は32万8千円。週4日の稼働で、子どもの送り迎えと両立できる体制が組めています。「ひとりで悩み続けていたら、たぶんいまも月3万円のままだった」と語っているのが印象的でした。
Tさんの軌道変更ポイント
- 商品設計:物販→講座サービス(在庫リスクゼロ)
- 発信設計:毎日2時間SNS→月2回の体験会+少量のSNS発信
- 稼働設計:時間が読みづらい育児期に合わせて「週4日・午前中中心」
- 収益設計:単発販売→月会員制度を一部組み合わせ
女性の独立起業を後押しする支援制度と注意点
制度を知っているかどうかで初期の資金繰り・人脈づくりは大きく変わります。代表的なものを押さえておきましょう。
活用しやすい支援制度
- 日本政策金融公庫「女性、若者/シニア起業家支援資金」(金利優遇)
- 経済産業省「わたしの起業応援団」(メンタリング・コンテスト)
- 各自治体の女性起業セミナー・伴走支援(特定創業支援等事業)
- 育児支援付きコワーキング(保育併設施設の認証拡大中)
気をつけたい落とし穴
- 「女性向け」起業塾の中には実態の伴わない高額講座も混在
- 融資を急ぐと、検証していない事業計画で借入だけが膨らむ
- SNSフォロワー数を目的化し、実際の顧客ヒアリングを後回しにする
- 家族との時間配分を曖昧にすると、稼働が伸びるほど消耗が早まる
独立に近づくほど周囲の善意の提案が増えるので、何を取り入れて何を断るかの基準を自分で持っておくことが大切です。
家族と話し合うときは「半年後・1年後・2年後にどう働いていたいか」を具体的な数字(月の稼働日数・想定月収・必要経費)に落として共有すると、感覚論の押し付け合いになりにくくなります。数字で語れる女性独立起業家は、家族や金融機関からの信頼も得やすい傾向があります。
よくある質問

Q1.子育てしながら独立するのは現実的ですか?
現実的です。2024年の新規開業者のうち女性比率は25.5%で過去最高ですが、その多くが在宅・時短型のスモール起業です。最初から専業でフル稼働を狙わず、「家計のサブ収入+家族との時間」を起点に設計すると続きやすくなります。
Q2.資金はいくら必要ですか?
業態によりますが、SNS発信・オンライン講座・ノーコードショップなどを中心にすれば10万〜30万円規模で始める例も珍しくありません。融資を考えるなら、まず日本政策金融公庫「女性、若者/シニア起業家支援資金」の要件を確認してください。
Q3.会社員を続けながらでも準備できますか?
できます。むしろ独立直後の収入の不安定さを考えると、会社員の安定収入を残しつつ準備するのが現実的です。起業18フォーラムでも、会社員のまま準備して1年半〜2年かけて独立する女性会員が増えています。
Q4.家族の反対が心配です。どう説得すればいいですか?
説得というより、計画を「数字」で共有することをおすすめします。月の想定稼働時間・想定収入・経費・最悪のケースのキャッシュフロー、これらを書面で見せると、家族の反応は感覚論から具体的な相談に変わります。
数字で語れる独立準備に踏み出す

女性社長率15.24%・女性新規開業者25.5%という数字は、単なる統計ではありません。「女性が独立する」が珍しい選択肢ではなくなり、社会のインフラがそれを支える形に変わってきた証拠です。
あとは、自分のライフイベントに合うサイズと順番で動き出すこと。最初から大きく構えるより、小さく検証を始めて確かめながら拡げていく形が、女性の独立では結局いちばん早く実を結びます。

もし「自分の場合はどう設計すればいいかわからない」というところで止まっているなら、起業18フォーラムの女性会員の実例をのぞいてみるところから始めてみてください。誰かが先に通った道を見ると、自分の次の一歩は意外と見えてくるものです。
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