記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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近年、起業へのハードルが下がったこともあって、起業の道を選ぶ人が増えています。
どこでも好きなだけ働けるネットビジネスや、社会貢献と起業の架け橋となるソーシャルビジネスの隆盛によって、以前よりも起業する人が身近な存在になりました。
そもそも「起業」とは何でしょうか? フリーターや会社員ではなく、起業して自ら経営者となることには、どのようなリスクとリターンがあるのでしょうか?
この記事では、これから起業を考える方のために、起業するうえで必要になる基礎知識を網羅してお届けします。「起業して自由な働き方をしてみたい」「起業を通じて自己表現や社会貢献をしたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも起業とは? 「事業を起こす」状態を具体的にイメージしよう
起業してみたいとお考えの方は、実際に起業する前に、一度「起業している状態とはどういうものか」をイメージしてみましょう。
起業とは、文字通り「新しく業を起こす」ことを意味します。より具体的にいえば、営利を目的として、金銭・物品・サービスのやりとりが発生する経済活動を新しく立ち上げることを起業と呼びます。
個人でネットビジネスやフリーランスエンジニアなどの「事業を起こす」のも、新たにベンチャー企業やスタートアップ企業などの「企業を起こす」のも、どちらも起業と呼ばれます。
新しく事業をスタートさせるという意味では「創業」という言葉が使われることもあります。
たとえば、Webサービスを例に挙げてみましょう。
個人でブログやホームページを作成しただけでは、まだ起業とは呼べません。ブログやホームページを外部に公開しているだけで、そこから経済活動が発生していないからです。しかし、ホームページにアフェリエイト広告を貼り付け、広告収入を得るようになると「事業を起こした」状態といえるでしょう。
また、ホームページ制作会社を設立し、ホームページの作成代行や保守から収入を得るようになれば「企業を起こした」状態と呼べます。事業の規模にかかわらず、なんらかのビジネスモデルから事業収益を得ることを目指すのが、一般的に「起業」と呼ばれるものです。
よくある勘違いが「起業とはイノベーションを起こすためのもの」「起業とは数十億円を超える収入を得るためのもの」といった考え方です。
起業は、これまでになかったようなビジネスモデルを生み出すものでも、最初から莫大な収益を追求することを目的としたものでもありません。
ベンチャー企業やスタートアップ企業に限らず、ほとんどのビジネスは既存のアイデアの組み合わせから生まれています。
今では大企業となった会社でも、いきなり大成功を収めたのではなく、小さな収益をすこしずつ積み重ねて成長していったケースがほとんどです。とくに起業するのが初めての方は、いきなり大風呂敷を広げるのではなく、まずは小さな事業からスタートし、こつこつ事業規模を大きくしていくのがおすすめです。
起業の仕方は2種類ある! 個人事業主と会社設立の違いを知ろう
起業の仕方は大きく分けて2種類あります。個人で事業を起こす「個人事業主」と、会社を新しく設立する「会社設立」の2つのパターンです。
まずは、それぞれのメリットやデメリットを簡単に表にまとめてみました。
個人事業主 | 会社設立 | |
---|---|---|
起業の仕方 | 開業届を税務署に出す。 | 定款の作成や、法務局での会社登記(法人登記)が必要。 |
事業をやめるとき | 廃業届を税務署に出す。 | 法務局での解散登記や、官報への公告、債権者への催告が必要。 |
社会的信用 | 低い。企業との取引や従業員の採用で不利。 | 高い。銀行からの融資や大手企業との取引、従業員の採用で有利。 |
税金の支払い | 所得税を支払う。経費として認められる項目が少ない。 | 法人税を支払う。保険料や経営者への給与なども経費として計上できる。ただし、赤字決算でも法人税の均等割(最低7万円)を支払う。 |
経理業務 | 確定申告を行う。個人でも簡単にできる。 | 事業年度ごとに決算書と申告書の作成が必要。税理士への依頼が必要なケースも。 |
赤字が出た場合 | 3年間繰り越せる(青色申告のみ)。 | 9年間繰り越せる。 |
個人事業主は手続きが簡単で、お近くの税務署の窓口で「個人事業主の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出するだけで、誰でも簡単に事業を始められます。
開業届を提出しなくても事業を始めることはできますが、確定申告の際に税制上の優遇措置を受けられません。副業がOKの会社にお勤めだったり、既に退職している場合で、すぐに起業したいという方には、個人事業主も有力な選択肢の1つになります。
しかし、会社を設立する場合と比べて、社会的信用が低く、税金面での優遇が少ないのがデメリットです。将来的に大手企業との取引や、従業員の採用を考えている場合、個人事業主であることが不利に働く可能性があります。
また、個人事業主となった人は、収入から経費をのぞいた所得全体にかかる「所得税」を支払います。個人事業主は経費として計上できる範囲が狭いため、税制上の優遇措置が受けられる青色申告をした場合でも、節税効果の点では法人の方が優れています。赤字が出た場合も、繰り越せる期間が3年間までです。したがって、翌年度以降の黒字と相殺して節税できる期間が短くなります。
一方で、会社を設立する場合は、起業するまでの手続きが大変です。まずは会社実印(代表者印)や定款の準備をしたうえで、登記申請書や法人設立届出書の作成・提出が必要となります。また、会社を解散する場合も個人事業主のように簡単にはいかず、法務局での解散登記と、官報への公告が必要です。
しかし、事業をスタートするまでの手続きが大変な分、税金面での優遇が大きく、事業の幅を広げられるのがメリットです。法人は個人事業主と違い、国や地方自治体に「法人税」を収めますが、法人税は所得税よりも累進性が低いという特徴があります。とくに高額な事業所得を得ている場合は、節税対策の点でより有利に働くでしょう。
法人は経費として計上できる項目も多く、加入している生命保険の全額や、法人代表者の所得も経費で落とすことができます。赤字を繰り越せる期間も最大9年間と長いため安心です。
また、法人は個人事業主よりも社会的信用が高いため、銀行からの融資や、大企業との取引、労働者の採用がスムーズです。株式上場する場合は、株式を発行して資金を調達するという選択肢もあります。
一般的には、起業してからの売上予想が1,000万円を下回る見込みの場合、個人事業主を選ぶことをおすすめします。事業を続けるうちに売上1,000万円を越えた場合は、法人を設立すると税金面でお得になります。
会社は設立するのも解散するのもお金や手間がかかります。初めて起業をする方は、まずは個人事業主からスタートし、ある程度事業が大きくなった段階で法人化を検討しましょう。
起業と副業との違いは? 事業を起こすには一定の責任が伴う
起業とよく似た言葉として「副業」や「サイドビジネス」が挙げられます。起業と副業には、どのような違いがあるのでしょうか。
起業 | |
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メリット | ・本業に時間をとられない ・働く曜日や時間を自分の思い通りに決められる ・自らが経営者となって事業計画を立てられる ・成功すれば成功しただけ自分の収入になる |
デメリット | ・事業を起こす際にさまざまな手続きが必要 ・税金の支払額がより大きくなる ・ある程度の開業資金や運転資金が必要 ・本業がないため事業がうまくいかないときの撤退が難しい |
起業と副業の最大の違いは「本業があるかないか」という点です。副業はサイドビジネスとも呼ばれ、本業を持ちながら個人で別の事業も行うことを意味します。一方、起業とは個人事業主であれ会社設立であれ、本人が事業主となってビジネスを展開することを意味します。
副業は、比較的低リスクに始められるのが特徴です。片手間に事業を展開しながら、本業での収入を継続的に得られるため、万が一事業がうまくいかなくなっても撤退が容易です。
事業を始めたての頃は、赤字経営となることが少なくありません。
副業であれば、赤字が出ても本業の給与所得の黒字部分と損益通算できるため、むしろ本業の所得税を節税できるというメリットがあります。もちろん、副業の所得が年間20万円を越えない人は、そもそも所得税の申告が必要ありません。
一方で、副業は本業との両立が常に課題となるでしょう。繁忙期に差し掛かって本業が忙しくなったり、だんだん副業が軌道に乗ってきたりすると、精神的・身体的な負担が増大します。オーバーワークにならないよう徹底した自己管理が大切です。
とはいえ、片手間にビジネスがしたい方や、低リスクに起業したい方にとって、副業は有力な選択肢となりえます。
起業する場合は、副業と比べて自由に事業展開できるのが魅力です。しっかりと事業戦略を立てて、売上を上げるための努力をすることで、副業よりも事業を大きく育てられます。
たとえば、ハンドメイド作品を販売するネットショップの例を挙げてみましょう。副業としてやっていくのであれば、趣味で作った作品を売るだけでも十分です。しかし、ハンドメイド作品の材料の仕入れルートを確立し、従業員を雇うなどして生産効率を上げる努力をすれば、どんどん売上を伸ばすことができます。
もちろん、事業主となる以上は責任が生まれます。ある程度の開業資金や運転資金は必要ですし、本業へ逃げ込むこともできないため、あらかじめ事業計画をしっかり練っておく必要があります。
また、副業をする場合と比べて、開業届や法人登記などの法的手続きや、税金の計算・申告などに時間をとられ、作業量が大きく増加してしまう点にも注意が必要です。
初めて起業をする方に多いのが、まずは副業として事業を起こし、軌道に乗ってきた段階で本格的に起業を考えるパターンです。副業なら低リスクに始められますし、事業に集中したくなった場合は、そこから改めて個人事業主や法人に転ずることもできます。
低リスクに起業したい方は、まずは副業から小さく始めてみましょう。
なぜ起業するのか? 起業する人の4つの理由を解説
起業した人は、どうして自分で事業を起こそうと考えたのでしょうか? ここでは、実際に起業した人によく見られる4つの動機を分析します。
1.会社員よりもお金を稼ぎたい!
起業を考えた理由として多くの人が挙げているのが、サラリーマンとしての給与への不満です。特に専門的なスキルや経験を必要とする高技能職に就いている人や、労働時間の長さに対して給与が見合っていないと感じている人が、起業を検討する傾向にあります。
自分のスキルや経験を活かし、会社を辞めて独立すれば、ビジネスモデルによっては会社員時代よりも高い収入を得られる可能性があります。別の会社に転職する人も少なくありませんが、現在の会社と同じ問題を抱える結果になるかもしれません。
起業してやっていけるだけの事業計画やアイデアがある方は、転職よりもむしろ起業を選ぶケースが近年増えています。
また、サラリーマンをしながら副業をしていて「副業の収入のほうがサラリーマンの給与よりも多くなった」という方も少なくありません。こういったケースなら、サラリーマンをやめて副業を本業にすれば、より多くの時間を事業に当てることができます。
副業がうまくいった段階で会社を退職するため、いきなり脱サラして起業するケースよりも低リスクです。
2.自分らしい働き方がしたい!
また、会社での働き方に不満を感じ、起業を決意する方もいます。会社という組織のなかで働くことや、上司や部下との人間関係に息苦しさを感じ、自分らしい働き方ができていないと感じる方が少なくありません。
起業であっても、仕事である以上人間関係のしがらみは発生しますが、自分が事業主となって仕事をコントロールできるようになります。働く曜日や時間をはじめとして、多くのことを自分自身で決めることができます。
また、近年はITインフラの発達とともにワークスタイルが多様化し、在宅ワークやリモートワークといった新しい働き方を選べるようになりました。働き方改革に取り組んでいる企業もだんだん増えつつありますが、起業すれば自分自身で理想の働き方を選べます。
3.経営者としてのスキルを身に付けたい!
特に成長意欲の高い人によく見られるのが「経営スキルを身につけたい」「経営者として成長したい」という動機です。中小企業庁の調査によれば、起業後の成長意欲が強いグループのなかで、起業する動機となった体験が「経営に関する授業・セミナー」の人は全体の23.4%「ビジネスプランの作成」だった人は19.9%でした。(データ:中小企業庁「2019年版 中小企業白書」)
ほかのグループよりも回答者の割合が多く、成長意欲が高いほど経営スキルへの関心が高いことがわかります。
起業するということは自らが経営者となって、直接事業に関わることを意味します。事業計画やビジネスプランの立案はもちろん、商品やサービスの宣伝広告、取引先とのパートナーシップ作り、従業員の雇用、会計・経理業務などをすべて自分で行わなければなりません。
事業主となる以上は相応の責任も生まれますが、経営スキルを実地で学びたい方にとって、起業は最善の選択肢の1つです。
4.起業までのハードルが下がったから
日本は「起業するハードルが高い」というイメージを持たれがちですが、近年は起業家を取り巻く環境が大きく変化しています。
米ペンシルバニア大学の2019年の調査によれば「世界各国との関係」「教育を受けた人口」「起業家精神」「革新性」「資本調達の容易さ」「熟練労働者の人口」「技術的な専門知識」「商慣行の透明性」「十分に発達したインフラ・法体系」の9つの観点で、日本が80カ国中もっとも起業家にとってよい国だと評価されています。(データ:ペンシルベニア大学「Best Countries for Entrepreneurship」)
とくにITサービスの領域では、従来よりもコンピューターやサーバーの値段が下がったため、起業する際の購入費や通信費が大きく低下しました。
安価で利用できるクラウドサービスも数多く登場しています。「必要なときに必要なだけ」サーバーやストレージを利用できるため、導入コストを抑えられます。
日本ではもともと高速インターネット網が整っていることもあって、インターネットサービス事業を打ち出しやすい環境です。また、資金調達についても、インターネットを通じてさまざまな選択肢を選べるようになりました。
特にユーザーから支援金を募るクラウドファンディングは、明確な事業コンセプトを持っている方にとって、資金を調達する有力な選択肢の1つになりつつあります。日本政府も起業家を支援するWebサイトを立ち上げたり、会社設立の手続きの完全オンライン化を進めたり、起業環境の改善へ向けて積極的に取り組んでいます。
起業のメリット・デメリットは? 起業する前にリスクとリターンを比較検討しよう
ここまで「起業とはどういった状態を意味するか」や、起業が選ばれる理由について解説してきました。
近年は起業までのハードルが下がったこともあって、個人事業主や会社設立といった選択をする人が増えています。しかし、起業はリターンばかり得られるのではなく、方法を間違えれば大きなリスクを背負う可能性がある点に注意が必要です。
これから起業してみようとお考えの方は、起業にどういったリスクとリターンが存在するか比較検討しましょう。
起業することで得られる4つのメリット
起業すれば自らが事業主となるため、会社員時代よりも自由な働き方を選べ、大きな経済的リターンを得られる可能性があります。起業することで得られるメリットは次の4つです。
- 事業が成長すれば高い経済的リターンを得られる
- 社会貢献と自己実現につながる
- 自由な働き方ができる
- 定年がないため生涯現役で働ける
フリーターや会社員として働いていて「がんばって働いているのに、収入がなかなか増えない」という状態に悩む人が少なくありません。組織の一員として働く以上、どうしても得られる給与には上限があります。また、企業の方針によっては、始めから学歴や年齢などで収入が限定されてしまうケースもあります。
起業している人が一番やりがいを感じている点の1つは、事業が伸びれば伸びるほど、自分のリターンとなる点です。適切な事業計画を用意し、事業をコツコツ伸ばすことができれば、サラリーマン時代に存在していた収入のボトルネックを取り払うことができます。事業を法人化し、株式市場への上場を果たすことができれば、会社から得られる給与とは桁違いの収入を得られるでしょう。
また、起業は事業収益を得られるだけでなく、実は社会貢献と自己実現の両方につながる可能性を秘めています。
社会貢献という点では、近年はソーシャルビジネスの分野で起業を目指す人が相次いでいます。ソーシャルビジネスとは、貧困や差別、環境汚染や地域振興などの社会問題の解決を対価として、事業収益を得ることを目的としたビジネスです。
自らが起こした事業を通じ、さまざまな社会問題を解決していけるため、起業は社会貢献を目指す人の有力な選択肢の1つになりつつあります。
もちろん、自分の好きなことややりたいことをビジネスモデルに落とし込み、自己実現の手段として起業を選択する人も少なくありません。
たとえば、ハンドメイドやイラスト作成などのアートの分野、プログラミングやゲーム開発などのテクノロジーの分野など「自己実現×起業」を両立できるビジネスは数多くあります。
アメリカの心理学者マズローの欲求5段階説でも、自己実現欲求が最上位に置かれているように、より自分らしく生きたいという欲求は、実際に起業した後でも強い心の支えになりつづけます。
同様にして、自由な働き方をしたい人にとっても、起業は有力な選択肢になりえます。
「会社員時代は残業が月○○時間を越えた」「家族や友人と過ごす時間を削ってまで働かなければならない」といった状況を経験してきた人でも、起業をきっかけに自分の時間を持てるようになったケースが少なくありません。
起業すれば、働く曜日、休日、一日の労働時間などを自分の裁量で決められます。毎日オフィスに出勤する必要もなく、自宅や近所のカフェ、コワーキングスペースなどで、好きなときに好きなだけ働くことができます。
また、自分のビジネスプランと合わなかったり、どうしてもやりたくなかったりする仕事は、断わるという選択肢も選べます。サラリーマン時代のように、上司や先輩に業務を割り振られ、仕事のルーチンに口を出されることもありません。
起業すれば自分が事業主となるため、経営者としての責任において仕事や取引先を選べるからです。
起業すれば定年とは無縁のため、生涯現役で働くことができる点も大きなメリットです。
会社員や公務員であれば、ある一定の年齢に達すると定年退職制度に基づき退職・退官しなければなりません。最近は継続雇用制度を導入する企業が増えたり、定年退職までの年齢が引き上げられたりと、高年齢者でも長く働ける環境が整ってきていますが、それでもいずれ雇用関係が終了するときはやってきます。
しかし、起業して自らが事業主となれば、身体が健康である限り、自分で引退する時期を決めることができます。老後になっても収入が途絶えないため、老後の生活保障という点でも少なからぬメリットがあります。
起業する際に注意が必要な4つのデメリット
起業にはさまざまなメリットがある一方で、ある程度のデメリットが伴う点も知っておく必要があります。
もっともよく知られるデメリットは、収入のアップダウンが激しく、収入が不安定になる可能性がある点です。
また、起業すると新たに事業主としての責任が生まれますし、事業を成功させるためには常に勉強しつづけることが大切です。起業する際に注意が必要なデメリットは次の4点です。
- 事業収益が不安定になるリスクがある
- 成功するためには常に成長し続ける必要がある
- 事業主として常に決断の連続に迫られる
- 同期が存在しないため気軽に相談できる相手がいないこともある
起業家になると、サラリーマン時代のように安定して給与を得られなくなります。事業主として、自らの事業から得られる収入に頼って生活することになります。
しかし、起業して間もない時期は、事業収益がゼロになってしまう方も少なくありません。事業を立ち上げてから、軌道に乗るまではある程度の時間がかかります。起業してから最初の数ヵ月~1年間は、赤字経営を迫られるケースも多々あります。
また、最初の数ヵ月~1年間を乗り切っても、その後の収入が保証されるわけではありません。事業がうまくいかなくなって事業収益が低下することもあり、少なからず収入のアップダウンが発生します。収入が不安定になるリスクを避けるためには、十分に貯金してから起業するか、本業を続けつつ、まずは副業として小さく事業を起こすことをおすすめします。
また、起業で成功するためには、常にアンテナを張り巡らせ、事業主として成長しつづける必要があります。今はうまくいっているビジネスでも、10年後や20年後も通用するかどうかはわかりません。
特にITサービスの領域では、事業のコアとなる情報通信技術の発展スピードが速いため、年々起業家を取り巻く情勢が変化しています。常に最新の情報を追いかけていなければ、せっかくのビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。
「常に勉強しつづける」という心構えで起業することが、起業家として成功するための近道です。
同様にして、起業する以上は事業主としての責任を避けられません。事業主として、事業方針やビジネスプランを自由に考えることができますが、その結果もまた自分自身で背負うことになります。
大口顧客と契約するチャンスが訪れたときや、簡単には取り消せない決定をしなければならないときなど、さまざまな局面で重要な決断を迫られることもあります。「幸運の女神には後ろ髪がない」という慣用句のように、決断にはスピードが必要です。
しかし、決断することにプレッシャーを感じ、ストレスを抱え込む方も少なくありません。起業には会社員にはない自由が得られる一方で、相応の責任が伴うことを知っておきましょう。
仕事をやめて起業すると、信頼できる同期の仲間がいなくなるのもデメリットです。
会社員時代であれば、仕事でつまずいたり、人間関係の悩みが生じたりしても、世代の近い仕事仲間に相談するという選択肢がありました。起業して個人事業主になれば、気軽に相談できる仲間が周囲にいなくなってしまいます。会社を設立する場合も、自分自身が事業のトップになるため、周囲にいるのは自ら雇用した社員のみです。
小さなデメリットのように感じられるかもしれませんが、起業してから孤独感に悩む方も少なくありません。もちろん、自分1人ではなく何人かの仕事仲間と共同で起業する場合は、この限りではありません。
また、社長と社員の距離を縮め、どんなことでも相談できる関係を構築することに努めている企業もあります。起業する際は、起業前後での人間関係の変化にも注意しましょう。
起業に向いている人・向いていない人は? 12の項目で起業家としての適性を診断
本業の片手間に起業するのか、新しく会社を設立するのかにかかわらず、起業には向いている人と向いていない人がいます。将来的に起業を考えていて、自分に起業家としての適性があるか知りたい方も多いでしょう。
ここでは、起業に向いている人・向いていない人の特徴を合計12の項目で解説します。
一般的に起業には向いていないとされる人でも、診断結果をもとにメンタル面や行動様式を改善することで、起業家としての適性を高めることが可能です。
起業に向いている人の5つの特徴
起業家としての適性が高い人には、次の5つの特徴があります。
- 決断するのがとにかく速い人
- ゴールまでの道筋を組み立てられる人
- 「できない理由」よりも「どうすればできるか」を探す人
- 既存のやり方に疑いを持つことができる人
- トライアンドエラーができる人
起業家として成功した人に最もよく見られる特徴の1つが、決断するのがとにかく速く、フットワークが軽いということです。
思いついたらすぐに行動する即断即決タイプの人は、起業して成功を収める可能性が高くなります。事業を軌道に乗せるためには、決断のスピードが求められます。
事業の命運を左右するような決断を迫られたとき、リスクを恐れるあまり決断を先延ばしにしてしまう人がいます。しかし、ぐずぐず迷っている間に競合他社が同じ決断をして、先を越されてしまうかもしれません。
また、よいプランを思いついたとしても、実行するかどうか迷っている間は一切の事業収益が発生しません。二手先、三手先を見通そうと手を止めて考え込む人よりも、思いついたらすぐに手を動かす人のほうが、起業家としての適性があるといえるでしょう。
しかし、やみくもに即断即決すればよいわけでもありません。
同じくらい成功した起業家に多いのが、ゴールまでの道筋を組み立てて行動するのが好きだという特徴です。
事業を成功させるには、あらかじめ経営方針や収支目標を設定することが大切です。短期的な目標だけでなく、中期的・長期的なビジネスプランを持ち、事業収益を伸ばすための道筋を絶えず考える必要があります。
学生時代に勉強やスポーツに取り組んで、ゴールを設定して毎日コツコツがんばってきた人は、起業家になっても成功する可能性を秘めています。
また、ポジティブな思考パターンを持っている人も起業家に向いています。
新しく事業をはじめると、さまざまな壁にぶつかります。このときに「自分にはまだ難しいかもしれない」「来年度に先送りすることも可能だ」と「できない・やらない理由」ばかり探す人は、事業を成長させるチャンスを失ってしまいます。
今の自分には難しそうに思えても「どうすればできるようになるか?」と生産的に考えることで、問題解決への思わぬ糸口をつかめるかもしれません。
多くのビジネスチャンスは、既存のやり方に疑いを持つことから生まれます。もちろん、まったく新しい発想や、これまで誰も思いつかなかったようなイノベーションが必要なわけではありません。
周囲にアンテナを張り巡らせ、何事にも疑問を持つことで、小さな「気づき」が生まれます。仕事を効率的に進めるちょっとした改善案から、事業収益を伸ばすアイデアまで、日々「気づき」を積み重ねることが、起業家として成功するための近道です。
いきなり起業して成功する人はほとんどいません。とくにはじめて起業する人は、最初のアイデアではうまくいかず、何度も試行錯誤を迫られます。
起業に向いているのは、スタートダッシュに失敗してもすぐに諦めず、トライアンドエラーを繰り返して、アイデアをじっくり磨き上げていける人です。
現在では大企業として知られる会社でも、創業してから何度も何度もアプローチを繰り返し、ようやく事業が軌道に乗ったというケースが少なくありません。
洗練されたやり方だけが結果につながるとは限りません。泥臭いやり方でも、我慢強くトライアンドエラーを繰り返せる人が起業家に向いています。
起業に向いていない人の4つの特徴
一方で、起業に向いていない人には、次の4つの特徴があります。当てはまっている人は、まずは小さなことから自分の意識や考え方を見直してみましょう。
- 行動を起こすのがとにかく遅い人
- 「リスクヘッジ」ではなくリスクを過剰に恐れている人
- すぐに他人や環境のせいにしてしまう人
- 起業することが目的になってしまっている人
起業家に向いていない人の特徴としてよく挙げられるのが「アクションを起こすのが遅い」「決断まで時間がかかるタイプ」です。とくに多いのが、決断に対して慎重になりすぎるあまり、調べ物に時間をかけすぎてしまう人です。
もちろん、あまりよく知らない分野については、事前に一定の調べ物が必要です。しかし、調べ物ばかりしていて、肝心の決断のタイミングが遅れてしまうと、貴重なビジネスチャンスを失ってしまいかねません。
また、起業ではとにかく行動してみて、その結果から実地に学ぶことも大切です。
一度自分でやってみなければわからない事柄もたくさんあります。用心の上に用心を重ねることも大切ですが、考え込むよりも先に手を動かしてみた方が、より早く正しい方法を発見できることもあります。
調べ物をする場合はタイムリミットを設定し、期限が近づいたらすぐに行動を起こすように心がけましょう。
また、リスクを過剰に恐れてしまうのも、起業家にとってプラスの特徴ではありません。
リスクを恐れるあまり、起業してから積極的にアクションを起こせなくなる人がいます。もちろん、あえてハイリスクハイリターンな決断をする必要はありません。また「リスクヘッジ」の考え方そのものを否定しているわけではありません。
決断に伴うリスクを想定したうえで、あらかじめ対処法を考えておくことは、事業を継続するために欠かせない資質です。
たとえば、会社をやめて脱サラするのも、本業からの収入が途絶えるため1つのリスクです。だからといって起業を躊躇するのではなく、まずは副業から小さく事業を起こすなど、リスクをふまえつつ行動を起こす考え方が大切です。
リスクを恐れるのではなく、リスクを織り込んで前進していく意識を持ちましょう。
起業しても長く続かないのが「失敗したらすぐに他人や環境のせいにしてしまう」人です。
物事の原因をすぐ他人や環境に押し付ける傾向のことを「他責」と呼びます。逆に、失敗した原因を突き詰めて考え、自分の内面を掘り下げて分析する傾向のことを「自責」と呼びます。
起業する前はスキルが伴っていなくても、起業してからどんどん成長できるのは「自責」型の人です。すぐに他人や環境のせいにしてしまう人は、それ以上失敗の原因を追求しないため、起業してもほとんど成長しません。
「他責マインド」を持っている人は、他人や環境のせいにするのをやめ、少しずつ考え方を変えていきましょう。失敗は悪いことばかりではなく、自分が成長するためのチャンスです。
意外と多いのが「起業することそのものが目的になっている」人です。起業はあくまでも、事業を起こすことを通じて目的を達成するための「手段」でしかありません。
たとえば、現状よりも高い収入を得るために起業する人がいます。起業を通じて、社会貢献や自己実現がしたい人もいます。こうした人は、起業してからピンチに陥っても、自分にとって大切な目的を達成するために粘り強く取り組むことができます。
しかし、起業することがゴールの人は、起業した段階で満足してしまい、そこから上積みできる要素がほとんどありません。
起業を考えている人は、まず「起業することで自分は何を実現したいか」を徹底的に突き詰めてみましょう。現状を変えたいという強い思いが、起業してからの力になります。
起業するのに必要な3つのものとは? 事業計画書・資金・ビジネススキルが大切
起業するために欠かせないものは、大きく分けて3つに絞ることができます。まずは事業計画書を作って、ビジネスプランを実現するために必要な資金とスキルの準備をしましょう。
まずは事業計画書を作って経営方針と収支目標を定めよう
起業するための準備で最も重要といえるのが、ざっくりでも良いので事業計画書を作ることです。
事業計画書とは、短期的・中期的・長期的にどうやって事業を進めていくか、毎年どれだけの売上高や利益を得ることを目標にするかを定めたものです。
事業計画書がなければ起業できないわけではありませんが、事業計画書を作成する過程で、自分の思い描くビジネスプランを具体化することができます。
また、将来的に銀行や投資家から資金を調達することを考えるなら、事業計画書の作成が必要です。
事業計画書の作成が不安なら、専門家の支援を受けることも可能です。お住まいの市区町村の窓口や、商工会議所などで相談すれば、事業計画書の書き方からアドバイスまで、さまざまなサポートを受けることができます。
事業計画書では、主に「経営方針」と「収支目標」の2点を設定します。
経営方針としては、事業の概要や、取り扱う製品・サービスの詳細、市場分析、販売戦略やプロモーション戦略などを記載します。とくに「市場のなかで自らの事業がどのような立ち位置にあるか」「事業を成長させていくために何をするか」といった視点から、ビジネスプランを検討してみましょう。
収支目標とは、文字通り「どれだけの売上高や利益を上げるか」「どうやって資金を調達するか」といった財務計画のことです。将来的に予想される収支、キャッシュフロー、貸借対照表などをまとめ、財政上健全に事業が続けられるか予測しましょう。
事業計画書に基づいて必要な資金を調達しよう
事業計画書をまとめたら、ビジネスプランに基づき資金を調達します。ここでいう資金とは「設備資金」と「運転資金」の2つに分かれます。
設備資金 | 事業をはじめたり、規模を拡大したりするために必要な「設備投資」にかかる固定費です。具体例を挙げると、事業に使う車両、物件の購入費、店舗・事務所の内装費、機械、コンピューターやサーバー、オフィス用品などの購入にかかるお金を意味します。あくまでも一時的に発生する出費です。 |
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運転資金 | 設備資金とは対象的に、事業を運営するための継続的な出費のことです。ランニングコストと呼ばれることもあります。具体例を挙げると、商品の仕入れ費用、従業員への給与、外部サービスの利用手数料、商品やサービスの広告宣伝費、店舗・事務所の家賃、消耗品費などがあります。 |
起業するための準備として、事業を始める際に必要な初期費用である「設備資金」と、事業を始めてから必要なランニングコストである「運転資金」の両方を確保することが大切です。
すべて自己資金で賄うのが理想的ですが、別の手段で資金を調達することもできます。
たとえば、銀行からの融資を受ける方法や、起業家向けの補助金や助成金を利用する方法、信頼できる友人・知人から借り入れる方法があります。
特に起業するのが初めての方は、いきなり多額の資金調達に頼るのはおすすめできません。
事業をスタートしてから、数ヵ月~数年ほどは赤字経営の期間があるのが一般的です。借入金を返済する目処が立たないまま多額の資金調達をしてしまうと、毎月の利息の返済だけで手一杯になり、あっという間に経営破綻することになりかねません。
資金調達がむずかしい場合は、まずは副業やスモールビジネスとして、小さく事業を展開するのも1つの選択肢です。事業が軌道に乗ってきて、ある程度貯蓄が増えた段階で本格的に起業すれば、資金調達のために大きなリスクを取る必要がありません。
副業であれば、自己資金がほとんどなくても始められるのもポイントです。
事業で損失が発生しても、本業の所得の黒字部分と損益通算することもできます。「起業=多額の資金調達」という固定観念を持たず、副業やスモールビジネスなどの選択肢も考慮し、手元の自己資金と相談しながら起業しましょう。
資金を確保しながらビジネススキルを磨こう
資金を調達するのと並行して、事業主としてのビジネススキルも磨きましょう。
最近は起業家を対象としたセミナーやサロンが多数開催されているため、興味がある方は利用してみましょう。とくに「お金の知識」「法律の知識」「マーケティングの知識」の3つがあると、起業してから有利です。
お金 | 資金調達、補助金・助成金、税金の支払い、会計・経理業務など |
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法律 | 開業するのに必要な手続き、業種によっては商品やサービスの販売に関わる薬事法や景品表示法など |
マーケティング | 営業スキル、集客スキル、Webマーケティング、コピーライティングなど |
お金の知識について詳しくなれば、資金調達や節税対策の点で有利になります。とくに起業家を対象とした補助金や助成金は、起業直後に陥りやすい赤字経営をカバーする強力な手段になります。
補助金・助成金は大きく分けて4種類あります。
お住まいの地方自治体や公益団体が主催しているもののほか、創業期の企業や中小企業を対象とした経済産業省の補助金、従業員を雇う際に利用できる厚生労働省の助成金・補助金などが利用可能です。自己資金が少なく、資金調達が難しい方は、こうした支援制度を利用するのも1つの手段です。
また、所得税や法人税などの税金の知識に詳しくなることで、損益通算や赤字の繰越控除といったテクニックを駆使し、税金の支払いを抑えることができます。健全経営を続けるためにも、お金についての知識を習得しておきましょう。
法律についての知識も、開業するための諸手続きに必要になります。
また、特に会社を設立する場合は、会社が守らなければならない取り決めを定めた「会社法」従業員を雇う際に遵守しなければならない「労働基準法」特許を申請したり使用したりする際に関係する「特許法」なども、余裕があれば学んでおきましょう。
個人事業主の方でも、税制上の優遇を得られる青色申告制度について定めた「税法」の知識があると、節税対策のうえで有利です。
そのほか、業種によっては、特定の法律が関わってくることがあります。
特に商品やサービスの宣伝広告を行う場合、景品表示法の知識が必要です。景品表示法とは、過大なキャンペーンや虚偽表示を防止するための法律で、違反すれば行政指導および是正勧告を受ける可能性があります。
また、化粧品や健康食品などを販売する場合は、薬事法に配慮して、消費者へ誤解を与えない広告表現を心がける必要があります。重大な違反があった場合は、営業停止を命じられる可能性があるため、これらの法律には注意しましょう。
最後に、マーケティングについての知識があると、事業収益を高めるうえで有利です。
たとえば、WebサイトやSNSなどを舞台にマーケティングを行うなら、Webマーケティングやコピーライティングのスキルが必要です。スマホやタブレットが広く普及している昨今では、有力な集客方法の1つとなります。
また、顧客や取引先とのコミュニケーションが発生するなら、営業スキルを学びましょう。クライアントの言葉からさまざまな情報を引き出し、相手のニーズに合わせた商品やサービスを提案する力を身につければ、事業運営に欠かせないさまざまなステークホルダーと良好な関係を築くことができます。
起業するときに注意したい5つのポイント
ここまで、起業するメリット・デメリットや、起業するために必要なものを解説しました。
実際に起業する前に、次の5つの注意点をチェックしましょう。起業準備や資金調達に見落としがないか、もう一度確認することが大切です。
1.起業に必要な法的手続きを忘れずに
個人事業主であれ、会社を設立する場合であれ、会社を辞めて起業する際は手続きが必要です。
実際に事業がスタートする段階になって、あわてて役所へ駆け込むことがないように、あらかじめ手続きを済ませておきましょう。
個人事業主の場合は、お近くの税務署の窓口で「個人事業主の開業・廃業等届出書(開業届)」を出す必要があります。法人設立の場合は、法務局での登記に加えて、税務署で法人設立届出書、源泉所得税関係の届出書、消費税関係の届出書の3点の提出が必要です。
これらの書類は作成するのに時間がかかるだけでなく、定款の写しなど合計6点の添付書類も求められるため、なるべく時間に余裕を持って準備しておきましょう。書類の作成に自信がない場合は、利用手数料が必要ですが、司法書士に設立代行を依頼する方法もあります。
2.可能なら自己資金を用意しておこう
事業を始めるにあたって、なるべく自己資金を用意しておきましょう。
物件の購入費や設備投資など、起業にはある程度の初期費用がかかります。法人を設立する際は、定款作成や法人登記といった雑費もかかります。
また、事業がスタートしたあとのランニングコストのことも考えておく必要があります。起業した翌年には所得税や法人税の支払いが発生します。法人であれば、事業収益が赤字であっても、均等割として最低7万円の法人税支払いが必要です。
起業する前にある程度の資金があれば、キャッシュフローが安定するまでの時間を稼ぐことができます。
もし十分な自己資金を用意できない場合は、無理に融資や借り入れを受けるのではなく、副業やスモールビジネスとして小さく事業展開するのがおすすめです。事業が軌道に乗ってきた段階で事業規模を拡大すれば、自己資金が乏しい方でも低リスクに起業できます。
3.あらかじめ家族からの理解を得ておく
起業するにあたって、家族からの理解を得ておくことも大切です。
かなり前のデータですが、中小企業庁の2014年の調査によれば「起業家が起業を断念しそうになった際に直面した課題」として「家族の理解・協力」を挙げた人は全体の約10%「家庭(家事・育児・介護)との両立」を挙げた人は約5%存在しています。合計約15%の人が、家族に関する問題で起業の断念を考えていて、事業と家庭の両立がいかに難しいかを表しています。(データ:中小企業庁「平成26年 中小企業白書」)
これから起業をはじめる方は、まずは身近な家族と話し合い、あらかじめ理解を得ておきましょう。家族に起業を反対された場合は、感情的になるのではなく、冷静に事業の見通しについて説明しましょう。
その際に「事業計画書」を作成しておくと、説明に説得力をもたせることができます。「なぜ起業するのか」「どのようにして事業を軌道に乗せるのか」をきちんと説明し、しっかり家族と話し合うことが大切です。
4.中期的・長期的な視野を持とう
起業する前に短期的な視点だけでなく、中期的・長期的な視点を持てているか再確認しましょう。
新しく事業を起こしてから、すぐに成功を収められる人はそれほど多くありません。とくにはじめて起業する方は、最初の数ヵ月~一年ほどは赤字経営を強いられるケースもあります。
中期的・長期的な視点を持ち、しばらく事業収益が赤字になっても持ちこたえられるように経営方針を考えておくことで、経営が行き詰まるリスクを抑えられます。目先の利益を追うのではなく、中期的・長期的な事業経営を目指しましょう。
5.起業する前にもう一度コンセプトをはっきりさせよう
最後にもう一度「どのような事業を展開するのか」「この事業は何を目的としたものなのか」といったコンセプトを再確認しておきましょう。たとえば、商品やサービスを販売するのであれば「何を」「誰に」「どうやって」売るのかの3点を簡潔に答えられるかチェックしてみましょう。
事業コンセプトの全体像がはっきりしていなければ、事業経営は成り立ちません。行き当たりばったりな経営になってしまい、迷走する可能性が高くなります。
事業を始めるにあたって、法的手続きや資金調達をするのも大切ですが、起業する際のコアとなるのが事業コンセプトです。筋の通ったビジネスプランになっているかどうか、事業を立ち上げる前にもう一度確認しておきましょう。
起業するか迷っているなら副業から始めるのもあり!
今回は、起業するために必要な基礎知識を解説しました。
個人事業主になるにせよ、法人を設立するにせよ、中長期的な事業計画を立てたうえで、経営者としてのスキルを身につけておくことが大切です。お金や法律、マーケティングについての知識があれば、起業してから有利に働きます。
もし起業するかどうか迷っているのなら、まずは副業として、小さく事業を展開するのがおすすめです。
本業からの収入を継続的に得られるため、事業がうまくいかなくても持ちこたえる事ができます。事業が軌道に乗ってきて、自己資金がある程度溜まった段階で、改めて脱サラや法人設立といったリスクをとるか考えることもできます。
起業のリスクが気になる方は、まずはローリスクな副業から始めてみましょう。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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