記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
デザインの仕事を長く続けてきたので、その経験を生かしてブランディングのコンサルタントとして独立を準備しています。ノウハウをブログとSNSで発信していたところ、あるファッション雑誌メディアからDMで取材依頼が届きました。
名前も顔もブログへのリンクも載せてもらえると聞いて喜んでいたのですが、よく話を聴くと、こちらが30万円から100万円の費用を払って掲載される仕組みでした。料金によって誌面のスペースが変わるとのことです。これは取材なのでしょうか? また、効果はあるのでしょうか?

● 回答
まず、言葉を分けて考えましょう。それは取材ではなく、こちらが費用を負担するタイアップ広告(ペイドパブ)です。費用対効果と「広告である明示」の有無で判断してください。飛びつく前に、ひと呼吸おく価値があります。
こうした連絡は、起業準備中の方ほど舞い上がってしまいがちです。私は26年間で同じ相談を何度も受けてきましたが、断った方が損をしなかったケースのほうが多いというのが正直な実感です。まずは取材と広告の違いを言葉にするところから始めましょう。
「取材」と「タイアップ広告」はそもそも別物
取材は、メディアが自分の判断で価値があると考えて、無料で記事にするものです。一方でタイアップ広告(ペイドパブ)は、こちらが掲載料を払い、記事や番組の体裁を借りて出す有料広告です。見た目が似ているために、混同されやすいだけです。
最近は、広告を取材と言って連絡してくる例や、営業をスカウトと言ってくる例が増えています。SNSのDMやメッセージ機能を使った声かけが手軽になったぶん、起業準備中の個人を狙った同種のオファーも目立つようになりました。「無料で載せます」ではなく「費用がかかります」と途中で出てきた時点で、それは取材ではなく広告だと考えて差し支えありません。
取材か広告かを見極める3つのチェック
本物の取材か、有料の広告かは、雰囲気では判断できません。次の3点を静かに確かめてください。どれか一つでも引っかかれば、広告と考えるのが安全です。
取材か広告かを見分ける3つのチェック
- 費用を負担するのは誰か:
こちらが掲載料を払うなら、それは取材ではなく広告です - 記事の編集権は誰にあるか:
原稿の内容や見せ方をこちらが決められるほど、広告の色が濃くなります - 「広告」「PR」の表記が付くか:
媒体側が広告表記を付けるなら、それは広告だと媒体自身が認めています
今回のケースは、料金でスペースが変わると説明されています。これは編集判断ではなく出稿プランそのものです。スペースが値段で決まる時点で、内容を評価して載せる取材ではないと判断できます。
2023年10月のステマ規制で見極めはやりやすくなった
見極めの後押しになるのが、2023年10月に始まった、いわゆるステマ規制です。消費者庁は「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」と公表し、景品表示法第5条第3号の指定告示と運用基準を定めました。
規制の対象になるのは、商品やサービスを提供する事業者、つまり広告主の側です。ここから読み取れるのは、広告であるのに広告とわからない見せ方は、媒体や広告主にとってリスクになったということです。だからこそ、まっとうな媒体ほど「PR」「広告」といった表記を付けるようになり、表記の有無が取材か広告かを見分ける材料になりました。
逆に、費用を取りながら広告表記を曖昧にしようとする話には、二重に注意が必要です。その媒体に出すこと自体が、読者の信用を損なう見せ方に加担する形になりかねません。費用対効果の前に、関わってよい相手かという視点を持ってください。

払う価値があるか=費用対効果で考える
もちろん、有料の掲載がすべて悪いわけではありません。利用するかどうかは、費用対効果があるかどうかで判断するものです。判断の軸になるのは、その媒体にどれだけの読者がいて、どれだけ知られているかです。
今回で言えば、その雑誌を自分が知っているか、買ったことがあるか、周りの方に聞いてみるのが手早い確認になります。多くの場合、こうしたタイアップ広告は、雑誌そのものの広告効果よりも、「取材されました」という実績を自分のサイトで使える2次利用が最大の価値になります。
インタビュアーと撮った写真を一定期間ウェブで使える権利が付くこともあります。ただ、その2次利用に30万円から100万円を払う価値があるかは、独立直後の立ち上げ時期には冷静に見たいところです。費用負担型のオファーを類型で整理する考え方は、こちらの記事でも紹介しています。

露出を買うより、現場の実績で信用を積むほうが早い
独立直後はとにかく露出が欲しくなり、お金で買える掲載が魅力的に見えます。けれど、信用は買った肩書きではなく、目の前の仕事の積み重ねからしか生まれません。
拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』の第2章「資格より大切なもの」では、資格を前面に出すと、せっかくの個性が埋没してしまう、という考え方を紹介しています。これは有料の掲載にもそのまま当てはまります。お金を払って露出や肩書きを買うより、自分の現場の言葉と実績で信用を積むほうが、結局は近道になります。
実際に、こんなケースがありました。
蒲生さん(仮名・42歳・店舗内装デザイナー)の場合
独立準備のために実績をSNSで発信していた蒲生さんのもとへ、あるデザイン誌から「特集で取り上げたい」とDMが届きました。掲載料は40万円。最初は名前が載る高揚感のまま、自己流で契約寸前まで進んだそうです。
転機は、起業18フォーラムの個別相談でした。その媒体を担当者も周囲の取引先も誰一人読んでいないと気づき、出稿を見送ったのです。代わりに蒲生さんは、過去に手がけた店舗の改装前後を写真で丁寧にまとめ直し、近隣の飲食店オーナーに直接見せて回りました。
2024年の秋に1件目の内装案件、翌年初めまでに紹介で3件目を受注しました。今は月22万8千円の収入を、広告費ゼロの口コミだけでつくっています。「あのとき40万円を払わなくて本当によかったです」と蒲生さんは振り返ります。
もし利用しないと決めたなら、丁寧に対応する必要はありません。先方は業者やツールを使って多くの人へ一斉にDMを送っている場合が多いので、返信しなくても問題はありません。直接電話が掛かってきたときは、忙しくて対応できないと丁重にお断りすれば十分です。
判断に迷ったときは、セミナーでも具体的な見極め方をお話ししています。まずは、届いたオファーに「費用は誰が払うのか」と一つ質問してみてください。本物かどうかを確かめる一歩は、それで十分です。

よくある質問
Q.「広告ではなく取材です」と言われたのに費用を求められました。信じてよいですか?
費用が発生する時点で、呼び方が取材であっても実態は広告です。こちらが掲載料を払い、スペースが料金で変わるなら、それは出稿プランであって編集判断ではありません。言葉ではなく、誰が費用を負担するかで判断してください。
Q.有料掲載に効果はまったくないのでしょうか?
まったくないとは限りません。読者数が多く知名度の高い媒体なら、相応の露出になります。ただ、独立直後は「取材されました」という実績の2次利用が中心の価値になりやすく、30万円から100万円の費用に見合うかは慎重に見たいところです。その媒体を周囲が読んでいるかを先に確かめてください。
Q.広告かどうかを手早く見分ける方法はありますか?
「PR」や「広告」の表記が付くかを確認するのが手早い方法です。2023年10月のステマ規制以降、まっとうな媒体ほど広告表記を付けるようになりました。表記を曖昧にしたがる相手には、関わること自体を避けるのが安全です。
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