記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
海外の暮らしに関心の高い主婦層に向けて、輸入雑貨のネットショップを開きたいと考えています。海外各地に住む友人から、現地の雑貨を仕入れて販売するつもりです。まず手続きとして何を確認すべきでしょうか?
また、現地メーカーとの契約や、このビジネスの可能性についてもどう考えればよいですか?

● 回答
最初に押さえてほしいのは、販売目的の輸入は「個人輸入」とは法律上の扱いが別物で、必要な手続きは商材によって決まるという一点です。ここさえ整理できれば、輸入雑貨の開業準備は迷路ではなくなります。歩く道順から先に決めていきましょう。
「個人輸入の延長」で売ると、どこでつまずくのか
自分で使うために海外から買うのが個人輸入、売るために仕入れるのが販売目的の輸入です。見た目は同じ荷物でも、税関での扱いが変わります。
たとえば個人使用の輸入には、課税価格を海外小売価格の6割として計算する特例があります。ところが販売目的の仕入れにはこの特例が使えず、商品代金に送料や保険料を加えた金額が課税のベースになります。個人輸入のつもりの値付けで利益計算をすると、販売目的に切り替えた瞬間に採算が崩れます。
輸入実務の全体像は、ジェトロ(日本貿易振興機構)の貿易投資相談や、ミプロ(対日貿易投資交流促進協会)の輸入相談窓口で無料で確認できます。独学で書籍を読むより先に、扱いたい商材を持ってこの2つの窓口に相談するほうが早く正確です。
商材で決まる規制の線引き(ここで売れる物が絞られます)
雑貨とひとことで言っても、法規制の有無は商材ごとにはっきり分かれます。販売目的で輸入する場合の代表的な線引きは次のとおりです。
| 商材 | 必要な手続き | 根拠・窓口 |
|---|---|---|
| 布小物・木工品・アクセサリーなど一般雑貨 | 商材固有の輸入届出が不要な場合が多い(通常の通関、素材・表示・知財は確認) | 税関 |
| 食器・カトラリー・調理器具 | 食品等輸入届出が必要 | 食品衛生法第27条・検疫所 |
| 乳幼児向けのおもちゃ | 食品等輸入届出が必要 | 食品衛生法第27条・検疫所 |
| 照明・電気式の雑貨 | 事業開始30日以内の輸入事業届出とPSEマーク表示 | 電気用品安全法・経済産業省 |
つまり、北欧の食器を売りたいなら検疫所への届出、海外のかわいいランプを売りたいなら経済産業省への届出と技術基準への適合が前提になります。最初の商材は規制のない一般雑貨に絞り、届出が要る商材は事業が回り始めてから足すのが現実的な順番です。判断に迷う商材は、輸入前に検疫所や税関の事前相談で確認してください。
関税と消費税の実務は、ちょうど今が変わり目です
現在は、課税価格の合計が1万円以下の貨物は関税と消費税が免除される少額免税の仕組みがあります(関税定率法第14条第18号。革製品など一部の品目は対象外)。ただし、この前提が動き始めています。
財務省や税関の資料でも、海外通販の拡大を背景に少額輸入貨物が増えていることは論点になっています。そのため、少額免税や個人使用貨物の簡易な課税価格の扱いは、今後の見直し対象になり得ます。実際の適用時期や経過措置は制度改正の内容で変わるため、仕入れ時点の最新情報で確認してください。
少額免税だけを前提にした薄利の値付けは、制度が動いたときに崩れやすくなります。経過措置などの細部も含め、仕入れを始める時点で税関か通関業者に最新の取り扱いを確認してください。
一方で、インボイス制度については心配しすぎなくて大丈夫です。海外の仕入先は日本の適格請求書を発行できませんが、輸入時に税関へ納めた消費税は、税関が発行する輸入許可通知書を保存すれば仕入税額控除の対象にできます(国税庁タックスアンサーNo.6497ほか)。海外仕入れだから控除で損をする、ということはありません。

「現地の友人から仕入れる」ルートが続かない理由
ご質問の仕入れ方法には、先に注意点をお伝えします。現地の友人が小売店で買って送る形だと、小売価格に国際送料と税金が乗るため、日本の販売相場ではほぼ利益が出ません。メーカーや卸と直接取引できるかどうかは、現地に住んでいることとは別の問題です。代理店契約や独占販売権の要否もメーカーごとにスタンスが違うので、取引を打診する段階で先方に確認することになります。
会員の庄司さん(仮名・30代・経理職)も、最初はこの友人ルートで欧州の食器と布小物を20品ほど仕入れました。食器に届出が要ることを知らずに荷物が通関で足止めされ、売値も相場より高くなって、初回分はほとんど在庫として残ったそうです。起業18フォーラムの個別相談で仕入れの組み立てから見直し、規制のない布小物の1ジャンルに絞って、現地の卸サイトの小ロット仕入れに切り替えました。
いまの庄司さんのお店は、派手に数を追わない代わりに、注文の半分近くが2回目以上のお客さまです。新作より先に再入荷の問い合わせが届くようになり、仕入れの読み違いも減ってきたと話しています。
商材の入れ替えは、失敗ではなく前提です。フィリピン支援やラム酒輸入が不発に終わったあと、4回のピボットを経て中東のデーツの販売権にたどり着いた氏家さんの事例は、拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』に書いた話です。最初の商材は「当てる」ものではなく「試して入れ替える」ものだと決めて、撤退できる小さなロットから始めてください。
よくある質問

つまずきやすい点に先回りして答えます。
Q.開業にあたって許可や免許は必要ですか?
新品の一般雑貨を輸入して売ること自体に、許可や免許は要りません。税務署への開業届と、ネット販売なら特定商取引法にもとづく表示が基本セットです。ただし中古品を仕入れて売るなら古物商許可、前述の食器・おもちゃ・電気製品ならそれぞれの届出が加わります。
Q.語学に自信がなくても仕入れはできますか?
できます。海外の卸サイトの多くは定型的な英文のやりとりで完結しますし、翻訳ツールで実務上は十分です。むしろ差がつくのは語学力ではなく、商品説明で現地の背景をどれだけ語れるかという商品知識のほうです。
Q.インボイスの登録は最初から必要でしょうか?
主なお客さまが一般消費者なら、開業時点で慌てて登録する必要はありません。売上が伸びて法人や店舗への卸を始めるときに検討すれば間に合います。輸入時の消費税の控除は前述のとおり輸入許可通知書で対応できます。
Q.友人に仕入れを頼む場合、何に気をつければいいですか?
輸入者はあくまで日本側のあなた自身で、関税や消費税の納税義務も自分にあります。「贈り物」として送ってもらって税を逃れる形は申告漏れになりますから、販売目的であることを前提に、内容と価格を正しく申告してください。グレーに感じる点は税関の事前教示制度で確認できます。

輸入雑貨は、規制と関税の線引きさえ最初に押さえれば、小さなロットから試せる息の長い商売です。まずは売れている輸入雑貨のショップを三つ選び、「お客の目」ではなく「価格と売れ筋を見る目」で見比べてみてください。扱う1ジャンルは、その見比べの中から自然に浮かび上がってきます。
あなたのショップで買う理由を、いつか商品ページの言葉で語れるようになったとき、この事業は楽天やアマゾンと違う土俵に立っています。その日までの試行錯誤を、私たちも一緒に伴走します。
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