記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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今回は、マネーの虎でとても珍しい展開となった「モテモテ志願者」、家具職人の菊野慶吾さん(有限会社カントリーウッドガーデン代表取締役)についてのお話です。
伝説のテレビ番組「マネーの虎」。起業したい志願者が、強面成功社長5人を前に事業計画をプレゼン。「マネー成立」となれば、希望額を出資または融資してもらえるという番組です。2001年から約3年ほど、日本テレビで放送されていました。私も大ファンでした。
マネーの虎に出てくる虎は、極めて厳しい目で志願者を評価します。ちょっとでも考えが甘い、素直じゃない、発言が矛盾しているなどの点を見つければ、激しい怒りと共に志願者を罵倒したりもします。しかし、この家具職人の菊野さんには全く違う反応に。。それは、番組冒頭、自己紹介部分から緊張でカミカミ、汗だくの田舎から出てきた不器用な青年職人に、人の好さを感じ、好感を抱いた虎が多かったからです。
マネーの虎では極めて珍しいタイプの志願者・・・、この記事で紹介する「家具職人さん(菊野慶吾さん)」です。
菊野さんは、「自分の作った一生使えるハンドメイド家具を低価格でお客様に提供したい」との思いで番組にやってきました。全く新しい形で家具を提供したい・・・菊野さんの差別化アイデアは、自分の作った椅子やテーブルを並べた〝カフェスタイルの家具店〟でした。
家族で経営していた小さな家具店をたたんで、この新しいビジネスに賭けたいという菊野さん。実際の家具の写真を見せると、真っ先に食いついたのは「生活倉庫」を経営していた堀之内九一郎社長でした。小売価格や利益を質問し始めます。そして、木材の原価が大体10%以下とわかると、すぐに、堀之内社長が動きます。
- 堀之内九一郎(55歳当時)年商67億
全国規模のリサイクルショップチェーン - 吉川幸枝
よし川グループ 代表取締役 - 加藤和也(31歳当時)
(株)ひばりプロダクション 社長 - 貞廣一鑑(39歳当時)
人気ダイニングバーを全国で展開 - 岩井良明(42歳当時)年商10億
名古屋で展開する名門予備校
ちなみに、、この放送回には出演されていませんが、現在の南原会長です。虎ノ門・株式会社LUFTホールディングス事務所にて、パチリ。
直感で志願者の才能を見抜いた社長たち
菊野さんは、カフェ風家具屋の開業資金として500万円の出資獲得を目指します。しかし、まだ自己紹介と簡単な商品説明が終わったばかりの冒頭に、事態は思いもよらぬ展開を見せます。
菊野さん「はい?」(虎も茫然・・・)
堀之内社長「もう見てわかりました。あなたの人間性もぴったりわかりましたんで」
生活倉庫は200店舗ほどある。そういうもの(家具)は右から左に100個でも200個でも売れる、堀之内社長は自信たっぷりに語ります。そこに、貞廣社長、そして岩井社長がストップを掛けます。
岩井社長「もうちょっと聞きましょうよ。僕も聞いてて一緒に何かやりたいなって感覚を持っているんだけど、もうちょっと説明してくれないかな」
菊野さんは、わざわざ車で運んできたという大きな椅子をスタジオに運び入れます。2年前に作り、3カ月前に売れた商品をお客様から借りてきたというのです。そのプレゼンに賭ける熱意・・・。
社長たちはその椅子に実際に座ります。そして、手作り家具の感触、温もりを確かめます。吉川社長が座った際、椅子に塗ってあるものは何かを訪ね、その答えに虎は驚きの表情を見せます。それは菊野さんこだわりの植物性の特殊なニスだと言うのです。体に害がないとしてぺろりと舐めて見せたのです。
続いて菊野さんが見せたのが、実際に彼の息子さんが使っているという小さな椅子。同じ木材なのに、新しいので色が違います。クラシックギターのように、年月と共に色が少しずつ深みを増してくるのだそうです。まさに高級手作り家具です。しかし低価格。
虎の目が一層輝きます。
ここで、カフェも展開する貞廣社長が出資したいと正式表明します。堀之内社長、岩井社長、貞廣社長の3人が出資の意思を示した形になりました。そして、貞廣社長は「堀之内社長と一緒に出資したい」との意向を示しましたが、堀之内社長はそれを拒否。3人の虎による菊野さん独占権の奪い合いになります。
堀之内社長は、船頭が複数いる船は進まない、そんな趣旨の説明をされました。「烏合の衆はダメ」この言葉は真実だと思います。(※貞廣社長が「城之内社長」と間違えて呼んだから断ったのではなさそうでした。)
虎たちが本気に! しかし衝撃の告白が
ついに、堀之内社長が直球ど真ん中に投げ込みます。
菊野さん「(苦笑い)社長さんのところが嫌という訳ではないのですけれども、全て僕のことを話しているわけではまだないので・・・」
嫌われているなら商売は上手くいかない。堀之内社長の発言は、ごもっともだと思います。しかし、菊野さんは、まだ話していないことがあるから、それを聞いてから判断して欲しいと言うのです。そして、衝撃の告白が・・・
堀之内社長「いくらあるの?」
菊野さん「一億あります」
場が凍り付きます・・・。菊野さんの話によれば、その借金は叔父の会社が倒産し、父親が保証人をしていたものであり、自分に支払う義務はない。だが、人に迷惑を掛けたくないので返したい、とのことでした。
堀之内社長の意志は変わりません。
ここで貞廣社長が菊野さんに声を掛けます。自分も友人の借金を背負わされた経験があること、そして、それはチャンスであるということ。一人娘が菊野さんが見せてくれた子供用の椅子に座っている姿が目に浮かぶ、本当にいいものなんだろうと思う、そんな気持ちを伝えたのです。
貞廣さんの情緒的な語りに対して、堀之内社長が切り込みます。
ここで、岩井社長が入ってきます。
岩井社長らしい言葉です。だから岩井さん好きです。そして、岩井社長は、返済をきちんとしれくれるならば、口は出さないと明言します。
堀之内社長がくぎを刺します。堀之内社長側をじっと見る岩井社長。緊迫のシーンです。堀之内社長は、自分はマネージメントをする、社長は技術者の菊野さんに任せると言います。次いで貞廣社長は、経営的な口出しはしないと明言します。
堀之内社長は、真剣なまなざしで菊野さんに訴えかけます。
虎のやや高圧的告白タイムが終了します・・・
志願者は誰を選んだのか?
吉田栄作さんが、菊野さんに決断を促します。汗をぬぐう菊野さん。そして・・・
複雑な表情を見せる堀之内社長と岩井社長、ですが、誰であったとしても、誰もが祝福するハッピーエンドだったと思います。決め手は商品に対しての愛情、それだけだったようです。
しかし想定外の展開が待っていた・・・
しかしこのドラマはここでは終わりません。衝撃の事実が発覚します。プレゼンの内容に嘘があったことが判明し、マネー成立が取り消されるかもしれない事態となるのです。
プレゼンの最中に、自分には借金を返す義務がないと名言していた菊野さんでしたが、実は会社の中を調べていくうちに、その義務があることが判明したのです。そして、貞廣社長のもとを訪れた菊野さんは、投資の辞退を申し入れます。
そんな菊野さんに、貞廣社長はこう言ったのです。
胸が熱くなりました。
まとめ
番組では開店準備の状況も放映されていましたが、開店1週間前の段階では家具もほとんど準備されておらず、目標達成は非常に厳しい状況でした。しかし、貞廣社長のやさしいアドバイスが菊野さんを動かします。
菊野さんは、テレビ出演により関係がギクシャクしてしまった職人たちに頭を下げます。ここから皆が団結して、100以上の家具を作り出し、開店を迎えるのでした。オープン初日には、目標であった50万円の売り上げを達成。出資した貞廣社長も大満足でした。
菊野さんのカントリーウッドガーデンは、家具やミニチュア家具の製作と販売を行っています。
この記事を書いた時点、2022年10月は、GO★CAFEなどのInstagramが閉鎖されているのと、カントリーウッドガーデンのYouTubeやホームページの更新が1年以上止まっていたので心配したのですが、Twitterで最新のご活躍を見ることができました。
菊野さんは誠実であったことで多くの人々の心をつかみました。開店準備の段階では、職人さんや仲間たちの思いを大切にすることを、一生懸命になるばかりに忘れてしまっていましたが、大事なことを思い出した菊野さんは成功をつかみます。
家具職人・菊野さんのエピソードは、起業家に学びを与えてくれます。どんな物事に対しても常に誠実であることは、成功を引き寄せる鍵になるのではないでしょうか?
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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