記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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今回は、伝説の番組「マネーの虎」から、起業で絶対にやってはいけない典型的な失敗パターンを学んでいきましょう。
カナダ発のスイーツフランチャイズ展開を夢見た若き志願者。しかし、彼の前に立ちはだかったのは、虎たちの容赦ない現実の突きつけでした。
この志願者の失敗から見えてくるのは、「資金さえ集まれば何とかなる」という起業家として最も危険な思考パターンです。

ビジネスプランから見えた甘さ

志願者が持ち込んだのは、カナダの会社が展開するスイーツショップの日本での権利を6,000万円で購入し、フランチャイズ展開するというプランでした。
虎:「本社ってのはどんな会社? 売上高はどのぐらい?」
志願者:「日本円で約336億円と聞いてます。」
虎:「最初の1号店ってどこに出すんですか?」
志願者:「新宿の伊勢丹地下一階、食料品売り場に出したいです。」
一見、しっかりした計画に見えます。本社は336億円規模の企業、出店場所は伊勢丹という一等地。しかし、虎たちはすぐに矛盾点を突いてきました。
志願者:「そちらにお店を出されている方は知ってる方でいらっしゃいます。」
安田社長:「路面店じゃなくて?」
志願者:「この企画は、路面店は僕は通らないと思ってますから。季節感に左右されてしまうと思うんです。デパートの中を歩き回るとですね、それなりにやはり体温が上がってくるんですよ。で、その時にちょっとデザートとして冷たいもの食べたいわっていう気になる。」
この説明、一見もっともらしく聞こえますが、実は具体的な根拠が何もありません。デパートを歩けば体温が上がるから冷たいものが売れる。これは単なる思い込みに過ぎないのです。
ちなみに、今回の虎たちの顔ぶれは、こんな感じでした。
- 堀之内九一郎(54歳当時)年商56億
(株)生活創庫 代表取締役 - 安田久(39歳当時)年商18億
(株)エイチ・ワイ・ジャパン 代表取締役 - 加藤和也(31歳当時)
(株)ひばりプロダクション社長 - 杉本博彦(45歳当時)
(株)ピー・ジー・エム 代表取締役 - 高橋がなり(43歳当時)年商60億
ソフト・オン・デマンド(株)社長
虎の南原会長と、株式会社LUFTホールディングス事務所にて、パチリ。

過去の成功体験という落とし穴

志願者は自信の根拠として、過去のタトゥーシール事業での成功を語りました。
堀之内社長:「たくさん儲けたの?」
志願者:「印刷物なので金額としてはそれほどでもないですけども、残ったのはその当時で大体1,000万ぐらい残りました。」
確かに素晴らしいアイデアです。しかし、タトゥーシールの成功とスイーツビジネスは全く別物。過去の成功体験が、むしろ今回のビジネスの見通しを甘くさせていたのです。
最大の問題点は交渉力の欠如

ここから虎たちの追及が本格化します。
志願者:「彼らは権利は6,000万で……。」
堀之内社長:「6,000万の裏付け持ってくってわけ?」
志願者:「そうです。今は6,000万で止まっておりますけれども、6,000万、あまりにも高すぎる。内容からいってですね。当然交渉の中で妥当な数字、いきなりそれを1,000万にしろとは言えませんけども、最低でも半分、もしくは2,500万円から3,000万円ぐらいで交渉させていただいて、なんとか理解を得たい。」
堀之内社長:「それが6,000万だと、あるいは5,000万だって言ったらどうすんの?」
志願者:「僕は向こうの副社長を説得する自信はあります。」
ここに起業家として致命的な問題が露呈します。
彼は「お金さえ出してもらえれば交渉できる」と言っているのです。しかし、本来なら先に交渉して金額を下げてから出資を募るべきでした。
虎が見抜いた「甘え」の構造

虎が核心を突きます。
高橋社長:「あなたの場合、多分ね、頭の中にあるのがね、お金出してくれれば動けますってことなんですよ。お金を出してもらえる方が今決まってないから動けないって言ってるんですよ。それだとねあなたの気合が感じられないの。」
この指摘は本質を突いています。
真の起業家は、資金がなくても動く。むしろ、動いた結果として資金が集まってくるのです。
ここに「資金依存型」の起業家の典型が見えます。お金があれば何とかなる、お金がないから動けない、この思考パターンこそが、最大の失敗要因なのです。
商品の実食で明らかになった真実

志願者は切り札として、カナダから取り寄せた商品を虎たちに試食してもらいました。
虎たちは実際に試食します。
虎B:「なんかスペシャリテっていう感じないんですよね、これ。どっかで食べたような……。」
堀之内社長:「こんなもん、すぐ作れるよ。」
この堀之内社長の一言が全てを物語っています。
6,000万円払ってまで買う価値のある商品ではなかった。これが虎たちの結論でした。
虎の「愛のある」投資提案

最後に、虎が衝撃的な提案をします。
志願者:「ありがとうございます!」
堀之内社長:「その代わり1年間。1年後、5,000万、現金で返せる。利子も何にもいらない。自信ある? 今日投資しますから、5,000万。1年経った今日、5,000万バチッと返せますかって言って。」
志願者:「返します。」
堀之内社長:「返せないよ、そんなことじゃ。返せるわけないじゃないですか。お金を使ったらビジネスが成功するってことは僕ありえない。5,000万収入がなかったら返せないんだよ。」
これは一見投資のように見えて、実は「無理だ」と突きつける厳しいメッセージでした。
高橋社長が語る「失敗の価値」

最後に、高橋社長が自らの失敗体験を語ります。
結果は、ノーマネーでフィニッシュ。これは単なる拒絶ではなく、成長への期待を込めたメッセージでした。
この事例から学ぶべき起業の教訓

この志願者の失敗から、私たちは何を学ぶべきでしょうか。
「資金さえあれば」思考の危険性
お金を集めてから動くのではなく、動いた結果としてお金が集まる。これが起業の大原則です。会社員のまま起業する場合も同じ。資金がなくても、今できることから始めるべきなのです。
交渉は「前」にやる
権利料6,000万円を「お金が集まったら交渉する」のではなく、先に交渉して2,000万円まで下げてから出資を募るべきでした。これは会社員起業でも同じ。取引先との条件交渉は、先にやっておくべきなのです。
商品の独自性を見極める
「こんなもんすぐ作れるよ」と言われてしまう商品に、高額な権利料を払う価値はありません。会社員が起業する際も、本当に独自性のあるビジネスなのか、冷静に見極める必要があります。
過去の成功体験に頼らない
タトゥーシールの成功とスイーツビジネスは全く別物。会社員時代の成功体験が、必ずしも起業で通用するとは限りません。常にゼロベースで考える姿勢が大切です。
具体的な根拠を持つ
「デパートを歩けば体温が上がるから売れる」という説明には、何の根拠もありませんでした。会社員が起業する際も、思い込みではなく、データに基づいた判断が必要です。
会社員のまま起業するなら、なおさらです。リスクを最小限に抑え、確実に前進する姿勢こそが、成功への近道です。
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