起業したいと思っているけれど、正直いくらお金を準備しておけば安心でしょうか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

起業を考えています。正直いくらお金を準備しておけばいいのでしょうか?

独立前に必ず理解しておくべき資金計画の考え方を教えてください。

また、自己資金・借入・資金繰り・現金管理の観点から、どのような点に注意すべきかを具体的に知りたいです。
 

起業前質問集
 

● 回答

ポイント 起業は「ガソリン残量」を見ながら走るもの

理想だけでは前に進めない、現実の資金設計

起業って、長距離ドライブに似ています。

目的地だけ決めて、ガソリンの残量を一切見ないで走り出したら? 資金計画は、そのガソリンメーターに相当するものなのです。

情熱や理想だけでは前に進めません。現実の経営では、毎月の支払いがあり、仕入れがあり、人件費があり、広告費があります。それらを無視して「やる気」だけで乗り切ろうとするのは、正直に言って無謀です。
 

ポイント 自己資金は多いほど、経営は安定する

お金があれば焦らない、判断を誤らない

自己資金が多いほど、起業後の経営は圧倒的に安定します。その理由を、利点と欠点の両面から整理しておきます。

利点 欠点
判断を焦らなくて済む 貯めるまでに時間がかかる
価格競争に巻き込まれにくい 準備に慎重になりすぎて動けなくなる可能性
精神的余裕が生まれる

資金に余裕があれば、安売りせずに済みます。粗悪な顧客に振り回されることもありません。自分のペースで、自分の理想に近い仕事ができるのです。
 

借入は否定しません

ただし、すべて自己資金で賄う必要はありません。

信用金庫、政策金融公庫、公的な制度融資、補助金、家族からの一時借入など、現実的な選択肢は複数あります。

大事なのは、「借りること」ではなく、借りたお金をどう使うか、そしてどう返すかを事前に設計しておくことです。
 

ポイント 「0円起業」の落とし穴

お金をかけない代わりに、時間を現金で支払っている

「お金をかけずに起業する」という言葉に、魅力を感じる人は多いでしょう。でも、実態はこうです。

  • ホームページを自分で作る
  • 名刺やチラシも自分でデザインする
  • 広告は一切出さない
  • 人を雇わない、外注もしない

これは節約ではありません。時間を現金で支払っている状態です。

時間は増えません。1日は24時間です。その限られた時間を、本来プロに任せるべき作業に使ってしまえば、肝心の「売上を生む活動」ができなくなります。

結果として、立ち上がりが遅くなり、収益化も遠のきます。
 

ポイント 資金繰りで最も怖いのは、支払い遅延

赤字よりも恐ろしいのは、信用を失うこと

経営で最も怖いのは、赤字そのものではありません。支払いが遅れることです。

支払いが遅れると、以下のような事態が起こります。

  • 信用を失う
  • 人間関係が壊れる
  • 取り返しがつかなくなる

「人生はお金じゃない」という言葉は、支払い期限の前では通用しません。

仕入先、外注先、スタッフ、税金、社会保険。すべてに期限があります。その期限を守れなければ、どれだけ良い商品を持っていても、どれだけ熱意があっても、信頼は失われます。
 

ポイント 利益と現金は、別物である

帳簿上の黒字と、口座の残高は一致しない

ここは、多くの起業初心者が混乱するポイントです。利益が出ていても、現金がないということは、実際に起こります。

その理由は、売掛金と買掛金のタイムラグです。
 

入金と支払いのタイミングがズレる

たとえば、商品を納品しても、入金は1か月後。でも、仕入れ代金の支払いは今月末。このズレが積み重なると、帳簿上は黒字でも、口座には現金がない状態になります。

だからこそ、未来の支払い予定と入金予定を、必ず管理する必要があるのです。

会計ソフトや簡易的な表でも構いません。毎月の現金の動きを「見える化」することが、資金繰りの第一歩です。
 

ポイント 借金が多い状態での起業は、高リスク

生活コストを背負ったまま、不確実性を乗せる行為

住宅ローン、教育ローン、クレジットカードの残高。これらを抱えたまま起業すると、資金繰りは一気に苦しくなります。

起業は、「今ある生活コスト」を背負ったまま、さらに不確実性を乗せる行為です。毎月の返済が固定であればあるほど、事業の柔軟性は失われます。

もちろん、すべての借金を返してから起業する必要はありません。

ただし、最低限、毎月の固定支出がどれくらいあるのかを把握しておくことは必須です。その上で、事業の収益計画を立てなければ、破綻は目に見えています。
 

ポイント まとめ:資金計画は夢を縛るものではなく、安全装置

夢を最後まで走らせるための、現実設計

ここまでの内容を整理します。

  • 自己資金は多いほど経営が安定する
  • 事業投資にはお金が必要
  • 0円起業は時間コストが重い
  • 支払い遅延は致命的
  • 利益と現金は別物
  • 既存ローンが多い状態での起業は高リスク
実務への落とし込み視点

実際の起業準備では、次の3点だけでも意識すると大きく変わります。

  • 毎月の固定支出を「起業前」に洗い出す
  • 最低6か月分の生活費+事業費を見積もる
  • 「売上につながる支出」を惜しまない

資金計画は、夢を縛るためのものではありません。夢を最後まで走らせるための、安全装置です。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。


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