記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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起業に必要な資金を調達する方法の1つが、金融機関などから融資を受けることです。
しかし、融資を行う側は、相手が返済を滞りなく行えるか、利息を払い続けることができるか、そもそも信用できるのか・・・という点を徹底的に審査します。融資を受けようとする場合、そういった視点で見られていることを、きちんと自覚・理解しておく必要があるでしょう。
そこで今回は、融資を受けて起業する際に必要な知識を徹底解説します!
金融機関が融資審査でチェックするのは「資金の使い道」や「返済の財源」
融資を行うにあたって、融資先のどのような点を審査するかは、金融機関ごとに違います。ただ、決して外すことができない共通のチェック項目があるので、以下で詳しくみていきましょう。
希望している融資額と融資時期、資金の使い道
まず金融機関側は、相手がどのくらいの融資額を希望しているのか、いつ融資してもらいたいのか、そして何に使うのかを確かめます。
融資をする側が気にするのは、相手が何にどのくらい使おうとしているのか、という目的です。調達した資金をどのように使うのか、計画的・合理的な根拠に基づいて説明できる範囲内においてのみ、融資を行います。
融資の申し込みをする場合、あいまいな姿勢を取るのではなく、資金繰り表や売上計画、設備の見積書を根拠にして、これだけの資金がいつまでに必要という明確な説明を行うことが大切です。
何を財源として返済に充てるのか
金融機関としては、相手の返済計画が明らかでなければ、貸し倒れのリスクが高まるため融資はできません。そのため、返済財源が何であるかは、融資審査において最も重要な項目のひとつです。
起業後にあげる利益、将来新たに行う資金調達などを返済財源にする場合は、事業計画書や将来の損益計算書など、具体性のある計画を提示する必要があります。
融資を焦るあまり無謀な事業計画を提示しても、金融機関側もプロですから、決して説得はできません。無理のない、リスクが低い事業計画を示して、返済財源に問題がないことを説明することが大事です。
担保や保証人の用意
これから起業する場合は、金融機関側の信頼を十分に得られていないため、事業計画や将来の損益計算書を提示して返済財源を強調しても説得できない場合があります。その際、金融機関側が提示する条件となるのが、担保と保証人。
担保や保証人は、あらかじめこちらから提示する必要はありません。事業計画や、将来の損益計算書だけでは審査が通らない場合にのみ、準備できれば融資を行うとの条件が金融機関側から示されます。
担保と保証人の確保について具体的に検討するのは、銀行側から条件提示があってからでも問題ありません。
斯業経験があるか
業界内における知識、人脈、スキル、営業力などは斯業経験と呼ばれます。これから起業をするという場合、斯業経験を多く積んでいる人ほど金融機関による融資審査は通りやすいです。
どんな分野であっても、新規開業を行う場合はその業界・市場における経験や実績、技能が高いほど、成功しやすいでしょう。金融機関としても、融資先を選定するにあたってはその点を重視しています。
融資の金利は、金融機関の「調達金利」「経費」「貸し倒れのリスク」で決定
融資を受ける際の金利の大小は、企業の信用度や返済期間によって変わります。ですが、基本的には金融機関の預金者に対する金利、金融機関の経費、融資先の貸し倒れリスク、将来的に受ける銀行の利益などで決まります。
金融機関の預金者に対する金利
各金融機関が企業への融資に使用するのは、預金者から預かっているお金です。預金者に対しては利息を支払う必要がありますが、その利息額は融資先からの金利によってまかないます。
預金者に支払う金利の合計額が、融資先から受け取る金利の合計額を上回ると、銀行は立ち行かなくなるため、預金者に支払う金利によって、企業側が支払う金利は左右されます。
金融機関の諸経費
人件費や設備維持にかかる費用など、金融機関側も日々の経営において多大な経費が必要です。それら費用は原則として融資先からの金利で得た利益によって補うため、かかっている経費水準がどのくらいなのかによっても、金利は変わってきます。
融資先の貸し倒れリスク
貸し倒れが起こった場合、それまでに得た金利で損失を少しでも補うため、その分が上乗せされます。そのため、もし倒産し貸し倒れのリスクが高いと判断されたら、金利は高く設定されるのが通例です。
金融機関は起業家の事業計画や将来の損益計算書、さらに斯業経験などから、金融機関は融資先に貸し倒れが起こらないかどうかを厳しく審査します。
金融機関が将来にわたって受け取れる利益
融資先から受け取る金利は、金融機関にとって最大の収入源。融資を受ける際に支払う金利には、金融機関の利益分が上乗せされています。
ローンは返済額と返済期間をどうするかがポイント
創業後に事業が軌道に乗ったとしても、一定期間後に融資を受けた全額を一括で支払うのは難しいことも多いです。そのため多くの場合、5年や10年などの返済期間の間に、数回~数十回にわけて返済していきます。
ローンの返済額、返済期間を決めるポイント
通常、起業時に受ける融資の定期返済額と返済期間は、5~10年です。
支払いの分割回数は金融機関側と相談する必要もありますが、数十回の支払い回数にすることもできます。たとえば900万円の融資を受けた場合、毎月9万円の返済で100回払いということもできるわけです。
ローンを返済していくにあたっては、返済期間を決めることがポイントと言えます。というのも、期間によって毎月負担する返済額の量が決まってくるからです。
一般的に返済期間は、運転資金の場合は最長で7年、設備資金の場合は最長で10年と考えておくとよいでしょう。
続けて融資をお願いしたい場合は、返済実績を作ること!
もし最初の融資に続けて、2回目の融資を依頼するなら、返済期間が重ならないよう初回は短めにしておくのが望ましいです。
通常、3割以上返済すれば、追加融資を受けることができます。たとえば6年返済で融資のローンを組んだ場合、2年半ほど返済実績を作れば、金融機関から信用できる相手と認められ、追加で融資を受けやすくなります。
融資を受けるのに必要な自己資金について
日本政策金融公庫における創業融資や各自治体が実施している制度融資では、自己資金がどれだけあるかが融資先選定において重視されています。
自己資金は多いほうが金融機関からの融資は受けやすい
起業の際に融資を受ける場合、自己資金を多く保有しているほうが審査に通りやすい傾向があります。反対に、自己資金が少ないと、銀行の融資に資金面で依存する割合が高くなり、起業の準備に向けた努力、事業の計画性に乏しいとみられます。
また、必要な事業資金を融資でまかなうほど返済や利息に充てる費用が毎月多く発生するため、資金繰りが立ち行かなくなるリスクが高いとみなされてしまいます。
自己資金と認められるお金とは? 退職金や資産を売却して得られたお金もOK
金融機関から自己資金として認められるのは、預金通帳で確認できる、出どころが確かな現金です。法人の場合は資本金=自己資金とみなされると誤解されやすいですが、そうではないことに注意しましょう。
具体的には、自身の預金通帳にある金額、他社から贈与されたお金、退職金、株券などの金融資産や車などの自己資産を売却して得たお金などです。なお、タンス預金は出どころが不明確なお金として、自己資金とは認められないのが通例となっています。
金融機関から融資を受ける場合は基本的な知識を得てから行いましょう
これから起業をしようとする人に対して金融機関が融資を行う場合、資金の使い道、返済の財源、担保・保証人、斯業経験などを考慮して、融資の是非を決定します。
ローンを組む場合は、毎月いくら返済するのか、どのくらいの期間で返済していくかを決定することが大事です。また、融資を銀行から受ける際の審査では、自己資金が多いほうが有利となる傾向があります。
ただし、融資は借金ですから、無理をして借りると利息も大きくなり、返済が大変です。
最初は無理に資金調達せず、小さく始めていくことをおすすめします。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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