記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「フリーランスの廃業率は3年で62.4%」という数字を見て怖くなった方へ。その数字は古い統計をもとにした計算値としてよく引用されますが、読み方を一つ間違えると、必要のない恐怖だけが残ります。
ネットで「起業 廃業率」と検索すると、1年で37.7%、3年で62.4%といった強い数字が並びます。これを読んで「やっぱり起業は無謀だ」と感じる方は少なくないでしょう。
起業18フォーラムで26年・延べ60,000人の起業相談を受けてきた現場から、はっきりお伝えできることがあります。廃業率の数字の中身を分解すると、それは「誰でも6割が潰れる」という話ではなく、「準備の段階と中身で、リスクは全く変わる」という事実です。
今日は、廃業率の数字の正しい読み方と、起業18フォーラムの現場で実際に見えた廃業パターン、そして廃業を避けるための条件をお話しします。
廃業率62.4%の正しい読み方

まず数字の出所から整理しましょう。「個人事業主の3年廃業率62.4%」は、中小企業庁の中小企業白書2006年版などに示された個人事業者統計をもとにした計算値として流通している数字です。最新の白書に載る年次の開廃業率とは、対象も計算方法も違います。
起業から1年経過時の生存率62.3%、2年目までの継続生存率75.9%、3年目までの継続生存率79.5%を掛け合わせると、3年後まで継続している人は約37.6%、廃業した人は約62.4%という計算になります。
一方、雇用保険事業年報ベースの年間廃業率を見ると状況は違います。2026年版中小企業白書によれば、2024年度の廃業率(非一次産業ベース)は3.7%で、開業率は3.8%でした。個人事業主の累積廃業率とは、対象も期間も全く違います。
| 統計の種類 | 数字 | 注意点 |
|---|---|---|
| 個人事業主の3年累積廃業率 | 62.4% | 休業・転業・別事業へのシフトも含む |
| 雇用保険事業年報ベースの年間廃業率(2024年度) | 3.7% | 出典:2026年版中小企業白書 |
| 2025年の企業倒産件数 | 10,300件 | 休廃業・解散とは別の倒産件数 |
出典:2026年版中小企業白書(中小企業庁)・中小企業白書2006年版(個人事業者ベース)
62.4%という数字は「100人起業したら62人がすぐ失敗する」という意味ではありません。この計算で見れば「3年間、同じ形で事業を続けている割合が37.6%」ということです。廃業の中には休業・別事業へのシフト・ライフステージの変化による自発的な転換も含まれており、倒産や経営破綻だけの話ではありません。
現場で見えた廃業3パターン

起業18フォーラムで60,000人の相談を受けてきた経験から言えば、廃業に至るケースには驚くほど共通するパターンがあります。期間ごとに整理すると、次の3層に分かれます。
パターン①:創業1〜2年で廃業するケース(ニーズ確認不足型)
「この商品は絶対に売れる」と確信してスタートしたものの、お客様へのヒアリングを省略したために、資金が尽きる前に撤退するパターンです。商品やサービスを作り込む前にニーズの確認をしないのが特徴で、リサーチ不足と集客力不足が同時に起きるため、回復のチャンスがほとんどありません。
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』にも書いているのですが、「最初の1人のお客様を徹底的に満足させれば9割成功」という考え方があります。最初から100人を集めようとする前に、たった1人から本当に必要とされているかを確かめる工程が、このパターンを防ぐ鍵です。
パターン②:創業3〜5年で廃業するケース(集客の壁突破失敗型)
最初の2〜3年は知人・前職の紹介で乗り切れていたのに、その先で「自分で新規集客する仕組み」が作れずに縮小・廃業を選ぶパターンです。
SNS・ブログ・口コミ紹介制度のどれかで継続的に新しいお客様との接点を作れているかどうかが、3年後の生存率を大きく左右します。人口減少・景気変動の時代に、紹介のみに依存する集客は「いつか詰まる」構造を持っています。
パターン③:5年以上続いた後に廃業するケース(環境変化への適応遅れ型)
長年続いた方でも、コロナ禍・生成AI普及・業界再編のような環境激変期に適応できないと廃業が近づきます。「以前は売れていた」が口癖になり、過去のやり方を変えられなくなっている状態です。2025年の企業倒産件数が10,300件に達していることを見ても、環境変化への対応は無視できない論点です。
廃業を避けるための3つの条件

3つの廃業パターンを見ると、それぞれ防ぎ方が見えてきます。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では「3つのチェック」という考え方を紹介しています。廃業しにくい人とそうでない人の差は、このチェックを習慣にできているかどうかに集約されます。
- チェック①:ニーズ確認 作る前にお客様候補に直接ヒアリングし、「お金を払う意思があるか」を確認できているか
- チェック②:集客経路 新規集客の接点を2つ以上、自分で継続的に運用できているか(紹介のみに依存していないか)
- チェック③:変化への再点検 3年に一度、商品内容とお客様像を見直す仕組みが自分の事業に組み込まれているか
この3つのチェックを毎年実行しているフリーランスは、私の知る限り10年以上ほぼ廃業していません。逆に、1つでも「やっていない」が続くと、徐々に苦しくなっていきます。
今日できることは、この3項目を自分の事業に当てはめて、「弱い」と感じる一項目を特定することだけで十分です。3ヶ月以内に手を打てる出発点が見つかります。
会員Kさんの事例:廃業の一歩手前から月収38万円へ

起業18フォーラムの会員Kさん(40代・元大手食品メーカー営業管理職)は、独立後2年目に売上が急減し、「あと3ヶ月で廃業しかない」という状況になりました。
前職の紹介で初年度は月商50万円を達成していましたが、紹介元が転職し、新規の入り口がゼロになったのです。手持ちの案件は尽き、貯金の残りは6ヶ月分。「自分で集客したことが一度もなかった」と気づいたのは、その時が初めてでした。
「廃業を考えていた時期に、起業18フォーラムの勉強会に参加しました」とKさんは振り返ります。勉強会で「チェック②:集客経路を2本以上持つ」という考え方に出会い、自分が完全に紹介一本足打法で動いていたことを客観的に認識できました。
そこから8ヶ月間、中小企業向けに特化したメールマガジンを月4回配信し、営業管理職経験を軸に「コスト削減と売上管理の両立」をテーマにしたコンサルティングとして打ち出し直しました。問い合わせが増え始めたのは6ヶ月目。24ヶ月目には月収38万円が安定するようになりました。
「最初の2年は紹介が途絶えない環境にいたので、自分が集客できていないことに気づけなかった。フォーラムの仲間が同じ壁を越えている話を聞いて、自分だけじゃないと分かったことが一番大きかったです」とKさんは語っています。

よくある質問:廃業率Q&A

Q.廃業率の「62.4%」と「3.7%」は、どちらが正しい数字ですか?
- 62.4%:
個人事業者の「3年後の累積廃業率」。休業・転業・別事業へのシフトを含む計算値 - 3.7%:
雇用保険事業年報ベースの「年間廃業率」(2024年度・2026年版中小企業白書)。非一次産業の年次ベース - 前提が違う:
どちらも出所と対象が違うため、文脈に合わせて使い分ける
数字の対象が違います。「自分の廃業リスク」を知りたいなら、62.4%を「全員の平均」と読まず、「準備不足で始めた人を含む全体」として参照しましょう。
Q.廃業の一番の原因は何ですか?
- ニーズ確認不足:
お客様に聞く前に商品を作る、の繰り返しで資金が尽きるパターン - 集客の一本足:
紹介・口コミのみに依存し、自分で集客する仕組みを持っていない - 環境変化への適応遅れ:
市場や顧客ニーズが変わっても、商品・発信方法を変えられていない
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査でも、開業時に苦労したことは「資金繰り、資金調達」(56.9%)と「顧客・販路の開拓」(49.9%)が上位でした。これらは起業後の仕組み設計の問題であり、起業前の準備段階で対策を打てるものです。
Q.廃業経験者が再起業する場合、成功しやすいですか?
- 失敗の分析次第:
なぜ廃業したかを「戦略・集客・資金」の3軸で整理できると、次は格段に手応えが変わる - 廃業は終わりではない:
中小企業庁の白書や施策でも、事業の再構築・承継・再挑戦に関する支援が継続的に扱われている - 現場の実感:
廃業経験のある方が起業18フォーラムに参加すると、同じ失敗を繰り返さない方が多い
廃業は「怖い経験の記憶」ではなく「次の起業の設計図」になります。ただし、原因を「運が悪かった」で終わらせると、同じパターンが繰り返されます。
Q.退職前にできる廃業リスク低減の準備はありますか?
- ニーズ確認:
退職前に最初の顧客候補に直接ヒアリングし、お金を払う意思があるか確かめておく - 集客経路のテスト:
SNS・ブログ・ニュースレターのいずれか1つを退職前から運用し、「自分で動かせる」手応えを得ておく - 生活防衛資金:
月の最低生活費×6ヶ月分の現金を確保してから退職する
退職前に「自分で集客して1件受注できた」という体験が1回あると、独立後の廃業リスクを大きく下げやすくなります。半年後に独立を考えているなら、今月中に退職前の顧客候補1人にヒアリングの約束を取っておきましょう。
まとめ:廃業率を怖がるのではなく、準備の精度へ


フリーランスの廃業率は、数字だけ見ると確かに高く見えます。しかし廃業の内容を分解すると、「ニーズ確認不足」「集客の一本足」「環境変化への適応遅れ」という3つのパターンに集約されます。
この3つは、いずれも「気づいて動けばリカバリーできる」課題です。統計の数字は、起業を止める材料ではなく、どこに穴があるかを事前に知るための地図として使うものです。
起業18フォーラムでは、廃業の一歩手前から立て直した会員さんの事例を、年間を通じて勉強会でシェアしています。同じ壁を越えた人の話を生で聞くことが、次の一歩への確実な助走になります。
廃業率62.4%は、怖がるだけの統計ではありません。3年後まで同じ形で続けている人が37.6%という数字は、準備と仕組み次第で読み方が変わります。数字を味方にして、準備の精度を上げていきましょう。
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