記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
会社員をしながら、好きなテーマパークやお店を紹介するメルマガを出したいと考えています。施設名や他社の商品名を勝手に書いて、著作権や商標で問題になりませんか? 名前を出すたびに、いちいち許可をとらないといけないのでしょうか?

● 回答
他人の店名・施設名・商品名を、ふつうに文章の中で言及すること自体は、著作権でも商標でも原則として自由です。固有名詞を一つ出すたびに承諾を求めていたら、メルマガもブログも一行も書けなくなってしまいます。許可なく名前を出して紹介するのは、ほとんどの場合で問題になりません。
気をつける境界線は決まっています。主に注意したいのは「相手の文章や写真を丸ごと持ってくる」ときと「広告なのに広告だと隠す」ときです。著作権・商標・広告表示の三つに分けて、順番に見ていきましょう。
まず結論。引っかかるのは「転載」と「広告隠し」だけ
細かい条文に入る前に、全体像を整理しておきます。判断に迷ったときは、自分が書こうとしている内容が次のどれに当たるかを当てはめてみてください。
名前を出して感想を書くのは、原則そのままで問題ありません。「○○ランドが楽しかった」「△△社のこの商品が便利」は自由に書けます。注意が必要になるのは、相手の文章・写真・ロゴを持ってくるときです。パンフレットの文章やサイトの画像、ロゴマークの転載は、著作権や商標に触れることがあります。
そして禁止なのが、お金をもらった紹介を、ふつうの感想のように見せることです。広告であることを隠すと、2023年から景品表示法のステマ規制に当たります。
つまり、名前を呼ぶこと自体はとがめられません。大きな境界になるのは「相手の作ったものを無断で持ってくる」か「広告だと分かるようにしない」かです。それぞれの根拠を確認していきます。
著作権で気をつけるのは「名前」ではなく「中身の持ち出し」

施設名やお店の名前そのものは、ほとんどの場合、著作権の保護を受けません。短い名称は「著作物」と呼べるほどの創作性がないとされるためです。ですから「○○ワールドに行ってきました」と書くのは、まったく問題になりません。
引っかかるのは、相手が作った中身を持ち出したときです。パンフレットの紹介文、公式サイトのコピー、看板のデザイン、施設で撮られた写真などをそのまま載せると、著作権に触れる可能性が出てきます。名前を呼んだかどうかではなく、相手の創作物を勝手に複製したかどうかが分かれ目になります。
では、相手の文章を一切載せられないかというと、そうではありません。著作権法第32条は、一定の条件を満たした「引用」を正当な行為として認めています。
文化庁が示している引用の考え方によれば、おおむね次の四つが必要です。必然性として、自分の文章のためにその引用がどうしても要ること。区別として、どこからどこまでが引用かをかぎかっこなどではっきり分けること。主従関係として、あくまで自分の文章が主で引用は補助にとどめること。そして出所明示として、誰の・どこからの引用かを書き添えることです。
この四つを守れば、相手の本やサイトの一部を許可なく紹介できます。逆に、文章の大半が他人のパンフレットの丸写しになっていれば、それは引用ではなく無断転載です。迷ったら「これは自分の言葉が主役になっているか」を一度読み返してみてください。
商標で気をつけるのは「他社の看板として使う」とき
もう一つ心配なのが商標です。会社名や商品名の多くは商標として登録されていますが、登録されているからといって、第三者がその名前を口にできなくなるわけではありません。
商標権が及ぶのは「商標的使用」、つまり自分の商品やサービスの目印として他社の名前を掲げる使い方です。たとえば自社のサービス名であるかのように有名ブランド名を看板に出せば、これは侵害になります。一方で、単に文章の中で他社の商品名を話題として挙げるだけなら、出所を示す目印としての使用ではないので、商標権の侵害にはあたらないと考えられています。
この線引きは法律にも書かれています。商標法第26条は、商標権の効力が及ばない範囲として、普通名称や記述的な表示、そして商標として使っているとはいえない使い方を挙げています。「あの店のあの商品がよかった」という紹介は、相手の看板を借りて自分を大きく見せる行為ではないので、ここに含まれると整理できます。
注意したいのは、ロゴマークの画像を貼ること、相手のブランドと提携しているかのように見せること、検索で引っかけるためだけに他社名を羅列することです。これらは紹介の範囲を超えて、商標を目印として利用していると見られかねません。名前を文章で挙げるのは自由、ロゴやデザインの拝借は別問題、と覚えておくと迷いません。
2023年10月から、広告を感想に見せかけるのは禁止になった
ここまでは昔から変わらない話ですが、近年で最も大きく変わったのが広告表示のルールです。消費者庁は、令和5年(2023年)10月に、いわゆるステルスマーケティングを景品表示法上の不当表示として規制し始めました。施行されたのは、その年の10月1日です。
対象になるのは「広告であるにもかかわらず、広告だと分からない表示」です。告示の正式名称は「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」といいます。企業から報酬や商品の提供を受けて紹介しているのに、自分が見つけて勝手に勧めているふつうの感想のように書くと、この規制に引っかかります。
逆に言えば、対価をもらっている場合は「PR」「広告」「○○社から提供を受けています」と分かるように書けば問題ありません。報酬も提供も受けず、自腹で買って素直な感想を書く分には、そもそも規制の対象外です。紹介のたびに、これはお金をもらって書いているかを自分に確認するだけで安全側に立てます。もらっているなら、一言そえる。それを習慣にしておけば迷いません。
この規制で措置命令などの対象になるのは、広告主である事業者です。とはいえ、これから自分のメルマガで商品を扱っていくなら、紹介する側として表示のルールを知っておいて損はありません。最新の運用基準は、消費者庁の「ステルスマーケティングに関する表示」で確認できます。
よくある質問

Q.他社の商品名をハッシュタグに付けるのは商標権の侵害になりますか?
実際に使った商品の感想として付ける程度なら、商標的な使用とは言いにくく、ただちに侵害とはなりにくいと考えられています。ただし、無関係な投稿に有名ブランドのタグを大量に付けて注目を集めようとすると、別の問題が生じることがあります。投稿の中身とタグが結びついているかを基準にしてください。
Q.お店で自分が撮った写真なら、メルマガに載せても大丈夫ですか?
自分で撮った写真の著作権は撮影したあなたにありますが、施設によっては撮影や公開を禁止していることがあり、商用利用を制限している場合もあります。建物の外観などは比較的自由でも、館内や展示物は施設のルールが優先されます。看板やキャラクターが大きく写り込む場合は、念のため施設の撮影ルールを確認しておくと安心です。
Q.無料で紹介しているだけなら、ステマ規制は気にしなくていいですか?
報酬も商品提供も受けず、自分で買って自由に感想を書いているなら、ステマ規制の対象にはなりません。気をつけるのは、相手から何らかの便宜を受けているのに、それを伏せてふつうの感想のように書く場合です。提供を受けたなら「提供」「PR」と明示すれば心配いりません。
迷ったら「一言そえる」。それだけで気持ちよく書ける
ルールを並べると身構えてしまいますが、実務はとてもシンプルです。名前を出して感想を書く。相手の文章を使うときは引用の形を守る。お金が絡むときは広告だと明かす。まずはこの三つを押さえます。それでも心配な場合は、相手に一声かけておくと気持ちが楽になります。「貴施設を紹介させていただきます。差し支えがあればお知らせください」と添えておけば、わざわざ返信をもらう必要もなく、こちらの誠意も伝わります。
起業18フォーラムの会員さんに、栗原さん(仮名・40代)がいます。日用品メーカーに勤めながら、大好きな町の喫茶店を巡るメルマガを出したいと考えていた方でした。当初は「お店の名前を出したら怒られるのでは」という不安が先に立ち、なかなか最初の一通を送れずにいたそうです。
きっかけになったのは、ある店主との立ち話でした。「うちのことを書いてくれるなら、むしろありがたい」と言われ、紹介とは相手にとっても歓迎されうるものだと気づいたのです。そこから栗原さんは、紹介前に短いひと言メールを送る習慣をつけました。
名前を勝手に使う後ろめたさで止まっていたのが、先に断りを入れる形にしただけで、毎週ためらいなく配信できるようになりました。掲載を断られたことは一度もなく、むしろ次はこの新メニューもと店側から情報が届くようになったといいます。
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、情報発信は商品と発信と信用の三つで成り立つと紹介しています。読者の役に立つ紹介を、書く側も相手も気持ちよく続けられる形にすること。それ自体が、長く読まれるメルマガの信用を少しずつ積み上げていきます。
法律上の細かい判断に迷うときは、著作権なら著作権情報センターのQ&Aなどで一般的な考え方を確認できます。本の一部を引用するときの具体的な線引きは、こちらの記事も参考にしてください。

今日できることは、これから紹介したいお店や商品を一つ思い浮かべて、その公式サイトに撮影や引用についての記載がないかを一度のぞいておくだけで十分です。ルールが分かれば、好きなものを好きなだけ紹介する楽しさのほうが、ずっと大きくなります。
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