記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
銀行口座の通帳記帳ですが、これは事業をしていく上で必ず行わなければいけないものなのでしょうか?
私は物販を中心にやっていて入出金の件数がやたらと多く、通帳記帳のためだけに毎週銀行へ行くのが正直しんどいです。何かよい方法はないでしょうか?

● 回答
「記帳は銀行に行ってやるもの」という思い込みがある方は意外と多いのですが、これは古い感覚なのです。今はネットバンキングとクラウド会計を連携させれば、記帳作業はほぼ自動化できます。物販のように件数の多い業態こそ、自動化のメリットが大きい領域です。
MM総研の調査によると、個人事業主のクラウド会計ソフト利用率は2024年3月末の33.7%から2025年3月末には38.3%まで拡大しました(株式会社MM総研「個人事業主のクラウド会計利用実態調査・2025年3月末」)。背景にあるのは、銀行明細の自動取得とAIによる勘定科目の自動推測が実務に耐えるレベルまで進化した点です。記帳のために窓口へ通う時代は静かに終わりつつあります。
毎回銀行に行く必要はない・できることを正しく知る
そもそも、記帳の本来の目的は「誰から、いつ、いくら入金があったかを正確に把握する」ことであって、紙の通帳に印字すること自体ではありません。入出金の事実が記録として残り、税務調査で説明できる状態になっていれば、紙の記帳は法律上必須ではないのです。
- ネットバンキングのWEB明細・CSVダウンロード(過去1〜2年分は閲覧可・銀行による)
- クラウド会計(freee/マネーフォワード/弥生オンライン)の銀行明細自動取得
- カード明細・ECモール売上の自動連携(Amazon・楽天・BASE等)
- 領収書のスマホ撮影+AI読み取り(OCR仕訳)
これらを組み合わせれば、入金が起きた瞬間にメール通知が飛び、夜のうちにクラウド会計が仕訳候補を作り、翌朝に確認するだけ、という流れが普通に作れます。物販で件数が多くても、最初のルール設定さえしてしまえば、月末の作業時間は激減します。
クラウド会計+ネットバンキングで記帳を自動化する具体ステップ
事業用口座を1つ開けるところから始める
まず、生活口座と事業の入出金が混ざっている状態を解消します。物販のように件数が多い場合、生活費と事業のお金が同じ口座を流れていると、月末の仕分けに半日以上吸い取られます。事業専用の口座を1つ用意し、ネットバンキング契約をセットでつけるのが第一歩です。
選び方の目安はシンプルで、メガバンクなら法人インターネットバンキングの月額手数料、ネット銀行なら振込手数料と入金通知メールの早さで比較します。物販なら入金通知が即時で届くPayPay銀行や楽天銀行、GMOあおぞらネット銀行が選ばれやすい印象です。
クラウド会計と連携させて「触らない仕訳」を作る
事業口座が決まったら、クラウド会計側で銀行連携を設定します。最初の1週間で勘定科目の推測ルールを覚えさせれば、似た取引は自動で同じ仕訳に振られるようになります。
会員さんの中にハンドメイド系の物販を手がけているIさん(40代前半・元アパレル販売)がいらっしゃいます。Iさんは起業準備を始めた頃、月末になると通帳記帳と仕訳入力で月30時間ほど取られ、本業の発送作業が後回しになる悪循環に悩んでいました。会員になって最初に取り組んだのが、ネットバンキングとマネーフォワードクラウドの連携設定です。起業準備6ヶ月目には記帳・仕訳作業が月3時間まで圧縮され、空いた時間を新作の撮影と発信に振り向けました。起業2年目に入った現在は月収15万円から月収40万円超まで伸びています。記帳の自動化は、ただの効率化ではなく売上を伸ばす時間を作るための投資なのです。
80%ルールで考える「自分が銀行に行く時間」
手を動かす作業は20%以下に
拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』に「80%ルール」という考え方が出てきます。自分が直接動かなくても回る仕組みを80%、自分でやる仕事は20%以下に抑えると、起業準備期でも安定して時間が確保できる、という時間投資の原則です。
記帳作業はまさに、この20%から外したい代表例なのです。銀行往復・記帳・仕訳入力を1枚に並べてみると、本人にしかできないのは「最後にOKを出す確認」の部分だけで、それ以外は仕組みやツールに置き換えられます。通帳記帳のために自分の足を運ぶ作業は、80%側に回せる典型作業と捉えてください。
- 銀行明細の取得:ネットバンキングが自動取得
- 勘定科目の推測:クラウド会計のAIが学習
- 領収書の入力:スマホ撮影+OCRで自動化
- 月次レポート:自動生成・税理士と共有
- 本人がやること:月末に異常値だけ確認・承認
この形に持っていけば、記帳の悩みは「銀行に行けない」ではなく「ルールを最初に決めるだけでいい」ものに変わります。
税理士に丸投げする前に整えておくこと
「税理士さんに任せれば全部やってくれる」と考える方もいるのですが、丸投げ前提で銀行口座が乱雑なままだと、税理士側の作業時間が膨らみ顧問料が高くなります。事業用口座を1つに絞り、ネットバンキングとクラウド会計を連携した状態で渡すのが、最もコストの低い依頼の仕方です。月1万〜3万円台の顧問料で個人事業を見てくれる税理士事務所も増えています。

記帳のために毎週銀行に通うのは、起業準備の時間配分として最ももったいない使い方です。今日この記事を閉じたあと、ネットバンキングの未契約があれば申し込みフォームを開く、クラウド会計を未契約なら30日無料体験のページを開く、それだけでも次の一週間が変わります。本業の発送と発信に時間を戻していきましょう。
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