記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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マネーの虎で放送になった数ある神回の中でも〝超大作〟となったのが、2002年10月に放送された新しい洋菓子「フランスロール」回とその後のシリーズです。虎も志願者も、素晴らしく輝いている伝説のエピソードになっています。
伝説の番組「マネーの虎」とは?
「マネーの虎」とは、起業したいと志願者が、投資家(虎と呼ばれる経営者たち)にプレゼンを行い、出資や融資を勝ち得ていくエンタメ番組です。今ではパワハラとも言われかねない虎たちからの厳しい言葉が視聴者を興奮せ、夢中になってしまう魅力を持っている番組でした。
虎が机に積み上げる札束が希望出資額に達すれば「マネー成立」。そのお金が志願者に事業資金として渡されます。プレゼン内容、そして人間性が厳しく問われる大人の真剣勝負。実に見応えがありました。
今回登場している社長たちは、当時30代後半~40代前半。十分すぎるほどの貫禄、ある意味の威圧感たっぷりです。志願者は飲食店希望者が多めですが、虎側は飲食はもちろん様々な業種から成功者として選ばれた人物が登場します。このフランスロール回では、南原社長、岩井社長、川原社長など、私が大ファンだった社長が揃いました。
志願者の長谷部文康さんは当時27歳。虎たちに「食べてもらえればわかる。負ける気がしない」と強気に出ます。
番組出演当時、福島ではすでに40分待ちにもなるほどの人気店(移動販売車3台)のオーナーであった長谷部さん。東京進出のための現金800万円の資金を得るために、移動販売車でマネーの虎のスタジオに乗り込んできました。プレゼンの途中、虎たちに車のある外まで出てもらっての実食。4人の虎が「美味しい!」と絶賛する中、スタジオに戻った南原社長の言葉は・・・
「美味しくなかった」
- 南原竜樹(42歳当時)年商55億
名古屋を代表する高級輸入車ディーラー - 尾崎友俐(34歳当時)年商10億
炭火焼肉店 ビール輸入 レストラン経営 - 加藤和也(31歳当時)
ひばりプロダクション 社長 - 川原ひろし(38歳当時)
(株)なんてんかんでん 社長 - 岩井良明(42歳当時)年商10億
名古屋で躍進する名門学習塾
この放送回では、厳しい指摘と愛情にあふれていた南原会長とのツーショットです。
フランスロールとは?
実家がお菓子屋さん。そして、パティシエを目指し洋菓子の修行をした長谷部さん。フランスロールとは、そんな長谷部さんがクレープにヒントを得て開発したオリジナルスイーツです。福島では既に固定客もいて、平日2.5~3万円、週末は7~10万円/日を売り上げると言います。東京では月300~500万円を目指すと意気込んでいます。
実食の場でクレープとは異なる触感、見た目を存分にアピールした志願者。南原社長も最初は笑みを浮かべて食べていたように見えましたが・・・
しかし意外な虎がマネーを積む!
まず動いたのは、1枠、南原社長。「自分には合わない味」「重たい」「あなたの事業の半分しか理解できない」と酷評するも「なので半分出す」と早々に400万円を積み上げます。さすが南原佐長。
続いて、岩井社長。岩井社長は志願者に鋭い質問をぶつけます。
「なぜ今ある3台のうちの1台を東京に持ってくることから始めないのか?」
経営者なら当然出る質問です。試してみたらいいじゃないか。しかし、長谷部さんは食い下がります。今、利益が出ている、そして、その利益が必要であると。岩井社長は首をかしげます・・・。
長谷部さんはFC(フランチャイズ)展開も視野に入れ、また「そちら(虎)側に座りたい!」と発言しました。つまり、この28歳の青年は、今回の出資によって東京進出を成功させるというだけではなく、経営者として大成功を収めたいという野望を持っていたのです。
南原社長に続き、尾崎社長、岩井社長が札束を積む!
驚きの南原社長からのマネーに続き、2枠の尾崎社長が300万円を出します。岩井社長と尾崎社長の後日談では、ここで自分が400万円を出してしまうと合計800万円となりマネーが成立してしまう。そうすると、後枠の社長たちがお金を出せなくなってしまうといけないので、敢えて300万円にした。とのことでした(笑)
その後、加藤社長と川原社長はノーマネー。5枠の岩井社長は、1/8に過ぎない100万円を出して、何か意味があるだろうか・・・でも、出さないとマネー成立しないし・・・と、当時複雑な胸中であったことをお話くださっています。結果、岩井社長も100万円を出すことになりました。
後日談を見ると・・・
尾崎社長は飲食店のコンサルタントでもありました。よって、長谷部さんが失敗するようなことになれば信用問題。出店の度に現地に出向いたり、コックコートの襟の高さ、腕時計を外すことまでアドバイスをしていたそうです。
番組は、フランスでの挫折と修行、東京、横浜への出店と、長谷部さんの躍進を追い続けます。東京出店を狙った当初、出店場所を確保できず土下座までしたこと、次々とやってくる困難を乗り越え、結果、長谷部さんは最盛期63臆円まで売上を伸ばし、11億円の利益を出したとか。「リターンが少ないなぁ」と尾崎社長が冗談を言う気持ちもわかりますね(笑)
長谷部文康さんの現在は?
長谷部さんは事業を急成長させました。しかし、若くして成功すれば誰もがそうなってしまう可能性はありますが、遊びが過ぎたようで奥様とも離婚してしまいました。そして、所得税約7000万円の脱税、シンナー吸引などの事件を起こしてしまいます。
そんな挫折、失敗を経験した長谷部さんですが、彼は現在、株式会社ROMANDO ROLL JAPAN(ロマンドロールジャパン)代表取締役会長として活躍されています。(Twitter | Instagram)
以前は本も出されたようです。
長谷部さんは失敗もしましたが、夢であった虎側としても出演も果たし、さらに、フランスロールをFCで世界に広めたいと次の夢に向かっていらっしゃいます。
この放送回から学べたこと
後日談を含め、長谷部さんのフランスロールと共に歩んだ人生は、私たちにとっても非常に多くの学びがありました。
「東京って厳しい所だよ」「生き残れる人間は100人に1人」「もっと知れよ 勉強しろよ 大きくなれよ」と、終始厳しい姿勢で彼に接した南原社長の言葉。そして、虎側に座りたいとそれを受け止め、本気で事業に取り組んだ長谷部さん。岩井社長曰く〝瞬間的成功〟ではありますが、売上63億円はお見事としか言いようがありません。
そして、失敗を経て復活し、アラフィフになった長谷部さんが、なお追い続ける夢を持っているということ。たくさんの人に迷惑をかけてしまったかもしれないけれど、それでも今もたくさんの人が長谷部さんの周りにいるという事実。
28歳の青年のチャレンジ、全国100店舗からの挫折、そして復活。実に見応えのある、学びの多い長谷部さんのストーリーでした。
個人的には、このバナナフランスロール、めっちゃ食べてみたいです!
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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