結婚するならサラリーマンと起業家どっち? 家計と将来から考える第三の選択肢

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

結婚や家庭を考えるとき、相手がサラリーマンか起業家かで将来の家計や暮らし方が変わる気がして、迷う方は少なくありません。安定を取るなら会社員、夢や伸びしろを取るなら経営者、という構図で語られることが多いテーマです。

ただ、この記事ではあえて違う見方をご提案します。安定か挑戦かは、本当は二者択一ではありません。会社員という土台を保ったまま、外で小さく起業準備を進めれば、安定と挑戦の両方を少しずつ手元に置けるからです。

ここでは婚活的な比較に終始せず、家計や将来設計という事実の側面から両者を整理します。そのうえで、二択を超える「第三の道」を、地に足のついた現実的な選択肢としてお伝えします。

ポイント サラリーマンの安定とは具体的に何を指すのか

毎月の固定収入と社会保険による下支え

サラリーマン

サラリーマンの安定という言葉は便利ですが、中身を分けて考えると理解しやすくなります。大きく言えば、毎月決まった額が振り込まれる収入の予測しやすさと、社会保険による下支えの2つです。

厚生年金や健康保険、雇用保険といった制度に勤め先を通じて加入できる点は、家計の安心材料として大きな意味を持ちます。病気で働けない期間の傷病手当金、産休育休中の給付、失業時の基本手当など、暮らしの土台を守る仕組みが用意されています。

一方で、安定という言葉には注意したい一面もあります。毎月の収入が読めることと、その収入が今後伸びることは別の話です。昇給の幅が小さい職場では、家計が予測できても、教育費や住宅費の増加に給与の伸びが追いつかない場面が出てきます。安定の正体を「予測しやすさ」と「伸びしろ」に分けて見ておくと、後の判断がぶれにくくなります。

ポイント 起業家・経営者の収入と時間の実態

伸びしろの大きさと振れ幅の表裏

起業家

起業家や経営者と聞くと、収入が青天井で自由に時間を使えるイメージを持つ方もいます。実際には、伸びしろが大きいことと、収入の振れ幅が大きいことは表と裏の関係にあります。事業が育てば家計に余裕が生まれますが、立ち上げ期は逆に資金が出ていく時期でもあります。

ここで一つ、事実ベースの数字を見てみます。日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」では、開業者のうち現在の事業に関連する仕事の経験を持つ人の割合が83.1%にのぼると報告されています。つまり多くの開業者は、思いつきではなく、勤務経験という土台を持ったうえで事業を始めているということです。

同じ調査では、開業時の資金調達額は平均1,197万円で、長期的には少額化の傾向にあるとされています。少額化が進んでいるとはいえ、まとまったお金が必要になる場面があるのは事実です。経営者の家庭では、収入が伸びる可能性とともに、事業に再投資する時期や時間の使い方が読みにくい時期がある、と理解しておくのが現実的です。

会社員のまま起業するのは本当にできますか?
● 質問 会社員のまま起業するという方法に興味があるのですが、本当にそれで起業できるのか半信半疑です。 周りを

ポイント 「安定か挑戦か」の二択がしんどい理由

どちらを選んでも片方を手放す構図

家計

結婚や家庭を考える世代にとって、サラリーマンか起業家かという問いがしんどく感じられるのは、どちらを選んでも片方を手放すように見えるからです。安定を選べば伸びしろをあきらめた気持ちになり、挑戦を選べば家計の不安と背中合わせになります。

下の整理を見てください。二択の枠で考えると、こうした見え方になりがちです。

  • サラリーマンを選ぶと、収入は読めるが伸びしろへの不安が残る
  • 起業家を選ぶと、伸びしろは大きいが立ち上げ期の家計が読みにくい
  • どちらを選んでも、選ばなかった側を「我慢した」と感じやすい

起業18フォーラムでは、26年にわたり延べ60,000人を超える方々の起業準備と向き合ってきました。その現場で見えてきたのは、安定か挑戦かの二択で立ち止まったまま動けなくなる方がとても多いということです。本当は両方ほしいのに、二択の枠が「どちらか一方」を迫ってくるため、決めきれずに時間だけが過ぎていきます。

けれども、この二択は崩すことができます。会社員という収入の土台を保ったまま、外で小さく起業準備を進めれば、安定をあきらめずに挑戦の手応えを少しずつ持てます。次の章で、その具体的な進め方をお伝えします。

ポイント 第三の道は会社員を続けたまま小さく起業準備をすること

土台を残しながら外で挑戦を試す進め方

将来設計

第三の道とは、勤め先を辞めずに、勤務時間の外で小さく事業の準備を進める進め方です。いきなり独立して家計を賭けるのではなく、会社の収入を生活の土台として残しながら、月数万円という小さな規模から手応えを確かめていきます。

規模の感覚をつかむうえで、参考になる考え方があります。拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』に、会社を辞めず、会社の外でまず月5万円を生み出すところから小さく始めるという考え方が出てきます。月5万円という金額は、家計に少し余裕を生む現実的な目標であり、同時に「自分で稼ぐ感覚」を体で覚えるための入口でもあります。

この進め方なら、社会保険や毎月の給与という安定の土台はそのまま残ります。事業の手応えが見えるまで独立の判断を先送りでき、家計に無理をかけずに挑戦を試せます。うまくいかなければ準備を見直せばよく、家計が傾く前に方向転換ができます。

  • 勤め先の収入は土台として維持し、家計の予測しやすさを保つ
  • 勤務時間の外で、月数万円の規模から事業の手応えを試す
  • 関連する仕事の経験を生かし、ゼロからではなく強みの延長で始める
  • 独立するかどうかは、準備の結果を見てから落ち着いて判断する

先ほどの新規開業実態調査が示すとおり、開業者の多くは勤務経験という土台を持って事業を始めています。会社員時代に培った経験は、辞めてから役立つのではなく、続けながら準備するときにこそ生きてきます。

ポイント 会社員を続けながら準備した会員さんの歩み

自己流の停滞から学び直して安定と挑戦を両立

起業18フォーラムの会員さんに、メーカー勤務で30代後半の藤田さんという方がいます。結婚を控えて将来の家計に不安を感じ、何か始めたいと考えていた頃のお話です。

当初の藤田さんは、自己流で物販を始めようとして空回りしていました。何を売るかも決めきれないまま情報だけを集め、半年たっても1円も生み出せず、家計の不安だけが募っていったそうです。このままでは結婚後の生活も見通せないと感じ、起業18フォーラムの勉強会に参加されました。

そこで藤田さんは、勤務経験を生かして始めること、そして月5万円という小さな目標から動くことを学びました。やみくもに広げるのをやめ、勤め先で身につけた品質管理の知識を生かせる分野へ準備をしぼり込みます。準備を始めて10ヶ月目に外での収入が月5万円を超え、結婚後の家計に小さな余裕が生まれました。

現在の藤田さんは、会社員を続けながら外での収入を月15万円ほどまで育てています。安定の土台を保ったまま挑戦の手応えを持てたことで、独立するかどうかを夫婦で落ち着いて話し合えるようになったそうです。焦って会社を辞めず、土台を残したまま小さく試す順番が、結果として家計と気持ちの両方を守りました。

ポイント 夫婦・家庭でこの道をどう話し合うか

小さく試す前提を共有して不安を減らす対話

話し合い

第三の道は、本人ひとりで進めるよりも、パートナーと前提を共有しておくほうがうまくいきます。起業準備という言葉だけが先に伝わると、相手は「いきなり辞めるのでは」と身構えてしまうからです。話し合うときは、次の3点を具体的に伝えると不安が減ります。

  • 会社を辞めるのではなく、勤めながら外で小さく試す前提であること
  • 家計の土台になるお金には手をつけず、生活に影響しない範囲で進めること
  • 独立するかどうかは、準備の結果を一緒に見てから決めること

この3点を最初に共有しておけば、起業準備は家計を脅かす話ではなく、将来の選択肢を増やす話として受け取ってもらいやすくなります。月にいくらまで準備に使うか、どのくらいの期間で手応えを判断するかを、数字と期限の形で一緒に決めておくと安心です。

結婚相手がサラリーマンか起業家かという問いも、この前提に立てば見え方が変わります。大切なのは肩書きそのものではなく、家計の土台を守りながら将来の伸びしろをどう作っていくか、という設計を二人で共有できているかどうかです。

ポイント まとめ 二択を超えて将来設計を組み立てる

安定の土台を残しながら挑戦を少しずつ重ねる

point

結婚するならサラリーマンと起業家のどちらがよいか、という問いには、肩書きで割り切れない部分があります。サラリーマンには収入の予測しやすさと社会保険という土台があり、起業家には伸びしろという可能性があります。どちらにも家計の面で長所と短所があるのが事実です。

そして安定か挑戦かは、会社員を続けたまま外で小さく起業準備をすることで、二択ではなくなります。土台を残しながら月数万円の規模から手応えを確かめれば、家計に無理をかけずに将来の選択肢を広げられます。結婚や家庭を考える世代にとって、これは現実的で落ち着いた進め方です。肩書きで相手を選ぶのではなく、二人で将来設計を組み立てる視点を持っていただければと思います。

ポイント よくある質問

結婚と起業準備をめぐる疑問への回答

起業前質問集

Q.結婚するならやはりサラリーマンのほうが安心ですか?

収入の予測しやすさや社会保険という点では、サラリーマンに安心材料が多いのは事実です。ただ、収入が読めることと今後伸びることは別の話です。勤め先の土台を保ちながら外で小さく起業準備を進めれば、安心材料を手放さずに伸びしろも持てます。肩書きだけで判断せず、将来設計まで含めて考えるのがおすすめです。

Q.起業家と結婚すると家計が不安定になりますか?

立ち上げ期は資金が出ていく時期があり、収入の振れ幅が大きくなりやすいのは確かです。日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」でも、開業時にまとまった資金調達が必要な実態がうかがえます。一方で、勤めながら準備を進める進め方なら、家計の土台を残したまま事業を育てられるため、不安定さをかなり抑えられます。

Q.会社員のパートナーが起業準備を始めると言い出しました。止めるべきでしょうか?

頭ごなしに止める前に、辞める前提なのか、勤めながら小さく試す前提なのかを確認してみてください。後者であれば、家計の土台は維持されたまま将来の選択肢が増える話です。月にいくらまで準備に使うか、どのくらいの期間で判断するかを一緒に決めておけば、家庭への影響を抑えながら見守れます。

Q.起業準備はどのくらいの規模から始めれば家計に響きませんか?

生活費の土台になるお金には手をつけず、外での収入を月数万円つくることを最初の目標にすると、家計に響きにくくなります。まず月5万円という小さな目標から始め、手応えを見ながら判断していくと安心です。経験のある分野を選べばゼロから学ぶ負担も小さく、無理のない範囲で進められます。

サラリーマンか起業家かという二択にとらわれず、会社員という土台を生かしながら将来を設計していく。その第一歩を、家庭の話し合いから始めていただければと思います。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!