記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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少し前に流行った「ポータルサイト」ってご存知でしょうか?
インターネットの玄関口となるWebサイトのこと。もともとは、検索サービスを提供するサイトがジャンルごとにWebサイトへのリンクをまとめたことから始まり、その後、さまざまなコンテンツ(天気予報、翻訳、辞書、経路探索など)が追加され、インターネットの総合サービスのような形態をとるようになった。現在は検索サービスだけでなく、プロバイダーやオンラインショッピングサイトが、アクセスするユーザーを確保するために、ポータルサイト化する傾向が強くなっている。
コトバンク「ポータルサイトとは」 より引用
時代が変わり、最近、あまり聞かなくなった「当たり前になり過ぎた古い言葉」のような印象があります。(今は似たような言葉では「オウンドメディア」の方がよく聞きますね。)起業の手法として、意外と人気のあるポータルサイト起業。しかし、その実態は・・・。
今回は、私が見てきたそのポータルサイト起業の実際にして、書いてみたいと思います。
ポータルサイトで起業とは?
ポータルサイトとは、いわゆる「玄関」のような、会社の総合受付のようなサイトのことです。
日本語のおもなポータルサイトには、検索エンジンが基盤のYahoo! JAPAN(ヤフージャパン)やGoogle(グーグル)、インターネット通信サービス会社が運営するSo-net(ソネット)やBIGLOBE(ビッグローブ)、Excite(エキサイト)、AOL、ソフトウェアやインターネット総合サービスの会社が運営するMSN、Infoseek(インフォシーク)などがある。
コトバンク「ポータルサイトとは」 より引用
上記のようにポータルサイトは様々な種類があるのですが、現実的には「ポータルサイト=検索サイト」と言っても良いと思います。
日本では、Google、Yahoo!の2トップがほとんどのシェアを占めています。 直近1年間のデータを見ると、Googleが約76%、Yahoo!が約15%、Bingが約8%となっています。
ちなみに、過去にはこんな情報を引用していました。
パソコン経由のポータルサイトへの訪問回数は2015年、前年と比べ2・2%減って34億9617万回だった。スマートフォン(スマホ)普及の影響が出ている。ヤフーがニュースや天気のコンテンツを強化し、2年ぶりに米グーグルから首位を奪回した。米調査会社コムスコアがポータル・検索の主要11サイトについて、パソコンからの平均月間総訪問回数を算出した。首位ヤフーのシェアは44・5%で、4・5ポイント上昇した。主力のニュースサイト「ヤフー!ニュース」のなかに都道府県別のニュースコーナーを設け、自分の出身地のニュースを読みたい人の需要を掘り起こした。天気情報サイト「ヤフー!天気」を5年ぶりに刷新した。雨雲が近づくと自動で知らせる。施設名で周辺の天気を検索できるなど機能を追加し、ポータルサイトの吸引力を高めた。
2016/08/12 日経産業新聞 5面
さて、起業をしようとする人の中には、このポータルサイトで起業しようと考える方がいます。確かに、ホームページから情報を配信することで起業するわけですから、また、ポータルサイトはアクセスを集めやすい(という誤解がある)ということで人気があります。広告収入を得たり、情報掲載料を得たり、会費を得たりするのですが、その実態はそう甘くはありません。
ポータルサイトビジネスモデルは儲かる?
個人が検索エンジンを開発することは不可能ですから、代わりに価値ある情報を掲載し、アクセスを集めて広告費を集めるというシンプルなビジネスモデルになります。ネットの入り口を獲得して、アクセスさえ集められさえすれば・・・。
SEO対策や口コミなどで、何とかなると思う人がいてもおかしくありませんが、実際にそんなことは可能なのでしょうか?
広告費の相場の話をすれば、1PVあたりの収益は0.1~1円程度です。そして、一個人が作る、情報量も少なく信頼性も低いサイトが、果たしてどの程度のアクセスを集められるでしょうか?
私も、掲示板は閑古鳥、更新は途中で止まり「しかばね状態」になっている残骸ポータルサイトを山ほど見てきました。特定のテーマでサイトを作ったところで、PVが伸びずに挫折してしまうのです。
ポータルサイトの作り方を習ったところで、作れるわけではありません。ポータルサイト構築の講座などは、結局は、サイト制作の売り込みの場ですから、数万円の参加費の後に、数十万円の請求が待っています。
そう考えれば、ポータルサイトで儲けられるかどうかの判断は、魅力的なコンテンツでスタートページを獲得できるか、そして、以下の出費をカバーできるかどうか、投資判断をする必要がありますね。
- サイト構築系講座参加費用 3~5万円
- サイト(システム)構築費用 50~200万円
- カスタマイズ費用 10万円~内容による
- コンサルティング費用 2~5万円/月
- データ収集・リサーチ費用 3~10万円/月
- サーバー・ドメイン費用等 0.1~1万円/月
- 更新作業 2~5時間/日
ポータルサイト構築、運営の最大の壁は「初速をいかにつけるか」です。考えてみれば、情報集約型サイトなのに掲載されている情報が数百件程度では話にならず、二度とそんなサイトに来ませんよね。食べログに100件しかレストランが載っていないとして、誰が使うでしょうか? 公開の段階で数千をはるかに超える信頼性の高い情報を掲載しておかなければ、成立しないビジネスなのです。
オウンドメディアとは違う?
現在では「ポータルサイト」という言葉よりも「オウンドメディア」という言葉をよく耳にすると思います。ポータルサイトが「玄関」「(二次情報の)データベース型」を目指すホームページとして登場し、検索エンジン企業に独占されてしまったのとは異なり、オウンドメディアは、自社独自のコンテンツ(一次情報)配信の連続によって、読者との信頼関係を構築していく「専門メディア」であることが特徴です。
検索エンジンとして圧倒的な性能、信頼性があるグーグル、検索機能以外にも様々なコンテンツを配信しているヤフー、居酒屋やランチのお店を探す際、もはやほとんどの人が利用していると言っても過言ではない食べログ、価格を調べたいときの価格.comなど、機能、情報量、信頼性も高いポータルサイトは、もはや個人が参入できるビジネスではなくなりつつあります。
よほど珍しい、ニッチな切り口を作ったとしても、ヤフーがひとつカテゴリを作ってしまえば、あっという間に吹っ飛んでしまいます。
オウンドメディアは、上述のように自社のオリジナルコンテンツ、情報を配信するメディアです。よって、他社との違いという切り口を持っていれば(持っていなければそもそも起業できていない)、一人型起業、小規模ビジネス、それこそ副業ベースでも、構築できてしまいます。ポータルサイト起業とは異なり、まだ、弱者の戦略が通用するのです。
また、ポータルサイトと似て非なる存在で、キュレーションサイトというものがあります。キュレーションとは「情報を収集しまとめること」という意味です。情報が溢れる現代において、キュレーター(キュレーション)の役割は重要です。
キュレーションとは、単なる情報の集約ではありません。情報自体は誰かの発信したものの並べ替え(二次利用)ですが、キュレーターの意志により分かり易くまとめられたり、ランキングされていたりして、新たな価値を創造しています。大量の情報のデータ化が必要となるポータルサイトと異なり、個人のセンスだけでも運用でき、やり易いことが大きな特徴になっています。
ポータルサイトを作り方は?
ポータルサイトは、ネットの「玄関」になるサイトです。ブラウザを開いた時の最初のページを、Googleやヤフーから入れ替えてもらう価値を持たなければなりません。或いは、あることに関する情報が必要になったとき確実にスタートサイトになること、つまり、居酒屋を予約しようと思った人の多くが食べログのサイトやアプリを開くように、たくさんの情報が集約されており、それを条件に合わせて自由に検索することができるサイトでなくてはなりません。
サイトの仕組み自体は、検索エンジンのようなデータベース機能、サーバーの処理機能があれば、簡易的なものは成立するでしょう。問題はむしろ、いかにして情報を集め続けるか、信頼性を検証するかです。
ポータルサイトの創世記に、たくさんの検索エンジンサイトが生まれましたが、全てが(Googleのような)ロボット型のエンジンに集約されていきました。原因はいろいろとあると思いますが、一つひとつのサイトの検証、登録作業、リンク切れなどを管理し続けることができないということが根本的な課題だったのでしょう。
検索できる、或いはユーザーが情報を登録できる項目を指定し、その情報に自由にアクセスできるようにすること自体は、ワードプレスなどのCMSを利用すればそれほど難しいことではありません。繰り返しになりますが、いかに公開時までに情報を集めるか、信頼性を保つかがポータルサイト製作、運営の最大の課題になります。ちなみに、利用者が書き込む、データを登録することは、まず期待できません。ほとんどのネットユーザーは書き込みなどしないのです。
ポータルサイトの製作費は?
ワードプレスなどを利用すれば、ある程度のサイトは自分で作れますので0円でも可能です。ワードプレスには様々な無料テンプレートやプラグインが用意されていますので、そのようなものを使い簡易的なものを作ることは可能でしょう。ですが、実際、そのような素人作りのサイトは信頼性に欠け、掲載されている情報の信頼性も失われてしまうため、やはり本格運用の際にはプロに依頼することは避けられないでしょう。
ホームページ制作の価格は内容によってピンキリですが、一般的なポータルサイト制作を外注すれば、50~200万円程度はかかります。プラグインのカスタマイズやデザインの変更などがあれば、その分加算されていきますので、予算を立てる際には要件定義をきちんとしておきましょう。
上述「2.ポータルサイトビジネスモデルは儲かる?」で、ざっくりとした目安を示しましたように、大がかりなサイト構築にはお金がかかります。私個人的な考えですが、起業を目指す人は「初期投資をなるべく小さくする」こと、そして、最初はWEBの機能やデザインなどにはこだわらずに「コンテンツで勝負」することが大切です。
つまり、大型のポータルサイトなどは目指さす、専門性に特化したオウンドメディア始めるのがベターだと思います。コンテンツが明確になっていない場合には、ペライチやjimdoで仮サイトを作り、辞めたくなったら捨てれば良いと思います。
起業に役立つポータルサイト一覧
単に情報収集に使うのもよいですが、今、世の中で何が起こっているのか、この先何が起こるのかは、このトップページからおおよその情報を得ることができます。それこそ、起業を目指す人に必要な情報と言えます。
日本人の心の中にある知りたいこと、疑問に思っていることが全てデータベースになっています。ネットビジネスを始めるのでしたら、ここで質問をされていることに対する答えを発信することから始めるのが手っ取り早いです。
◆ ドリームゲート
起業したい人のためのあらゆる情報が詰まっている起業No1ポータルサイトです。弁護士・会計士・税理士・コンサルタント・ベンチャー支援者・起業経験者「ドリームゲートアドバイザー」が、様々な相談に応じてくれます。
まとめ:ポータルサイトで起業できる?
ここまで、ポータルサイトについて、そして、ポータルサイトで起業するということの可能性についてお話してきました。
結論として言えることは「ポータルサイトは、中規模以上、大企業の戦略になった」ということだと思います。個人、一人型、小規模ビジネスでは、システム開発、情報収集、アップデート、信頼性、全ての面で、もはや競争できません。数多くのしかばね状態の放置サイト、そして食べログを始めとする各ジャンルのパイオニア企業のサイト、大手ポータルサイトの盛況ぶりが、その現状を表しています。
敢えて言うのならば、これからは、オウンドメディア起業、コンテンツマーケティングの時代です。自社サイトからの積み上げ式の情報発信をベースにして、読者との関係性を深め、ペイドメディア、マスメディアと連携させていく。この戦略こそが、一人型起業、小規模ビジネスに必要とされています。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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