起業ネタは「好きなこと」では足りない! 副業の落とし穴

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

今、多くの会社員の方が「自分の好きなことをして生きていきたい」と考えるようになり、その手段として「起業」が注目されています。

それだけ、会社生活が窮屈であるのかもしれませんし、増えないお給料に失望してしまっているのかもしれません。年金もこんな状況ですから、将来が不安だからということもあるでしょう。

※ 廃業率などの数字については、以前書いたこちらのブログ記事「起業で失敗する割合は10年後で30%!失敗事例やその対処法を解説」をご覧ください。
 

ゴール

そして「起業する」といったときに、皆さんがやりがちなのが「副業」です。

  • 会社を辞めずにスタートしよう
  • まずは小さく始めよう
  • お金をかけずに始めよう

起業にあたっては、こういった言葉をよく聞くと思います。私も、いつもそう言っています。副業から起業をスタートできるのであれば「自分もやってみよう」と、行動が後押しされるからです。しかし、その「副業」という言葉は、やっかいです。上に挙げた3つの行動を「副業」と考えるか「起業準備」と捉えるかによって、あなたがいつか起業できるかできないかが、決まってしまうのです。
 

ポイント 「副業」思考の落とし穴

起業ネタは「好きなこと」では足りない!

競争
 

たとえば、Aさんという人がいました。飲食店で起業しようとしたのですが、いきなりお店を開業するのはリスクが大きい。そこで、副業でバーを経営しようとしました。バーは自分も大好きで、バーであれば小さい店舗を借りることができれば、コストを安く済ませることができますし、いざとなったら、自分が営業時間にお店に入って仕事をすればいいと考えていたそうです。

ところが、結果は大失敗。毎月、赤字をたれ流し、家賃も払えずにお店は潰れてしまいました。なぜそうなってしまったのでしょうか? 理由は、簡単です。「副業」で(甘い考えで)始めたからです。まず、副業で小さく始めたために、売上原価率が高くなり過ぎたということが言えます。
 

ポイント 小さく始めることに意味があるのではなく・・・

起業ネタは「好きなこと」では足りない!

しくじり先生
 

確かに数坪の小さいお店ですから、家賃は安いかもしれません。しかし、お店が小さいということは、売上も小さくなるということです。実際に、家賃や材料費、光熱費を払うだけで一杯になってしまったそうです。加えて人件費です。その方は、当初、知り合いのバーテンダーに依頼して、お店を任せました。しかし、バーテンダーの彼は、サービスの向上を名目として、新たにアルバイトを雇ったり、利益率の悪い材料を購入したり、自分のやりたい放題やり始めたのです。最終的には、オーナーである自分がバーテンダーとなり、接客をしたのですが、(時間管理の想定が甘かったために、)本業と両立できずに、苦しくなって撤退することにしました。

もちろん、起業ですからリスクを最小限度にすることが必要です。「リスクを見極める上で、アンテナショップ的に小さくスタートする」ということと「何でもいいから、小さく始める」ということでは、意味が大きく違ってきます。ビジネスをスタートして、そこから得られる利益があまりに少ないのでは、再投資をすることもできません。そして、続けていこうというモチベーションも上がりません。結果的に副業で終わってしまうのです。(人任せにしすぎても、失敗してしまいます。)
 

ポイント 小さく始めて、改良することに意味がある

起業ネタは「好きなこと」では足りない!

ライター
 

しかし、最初から起業準備から独立を前提としていたら、どうだったのでしょうか? 最初の一歩は素晴らしかったと思います。まず副業からやってみる。会社員のまま始めるのですから、それがイチバンです。違いはその後ですね。バーが赤字であったのなら、もう少し真剣にその対策を講じなければなりませんでした。

たとえば、小さいお店のメリットばかりではなく、デメリットも考慮に入れるべきでした。売上規模を考えれば、もう少し客単価を上げるための施策を考える必要があったでしょう。飲食店起業のノウハウがなければ、専門家の意見も取り入れる必要もあったかもしれません。独立を想定していれば、安く小さく始めたら、次には、利益を残すことができるビジネスモデルをつくることを考えなければなりません。
 

ポイント 「好きなこと」の意味を取り違えると失敗する

起業ネタは「好きなこと」では足りない!

ノウハウ
 

「好きなことで起業をしたい」という人が増えているのですが、覚えておきたいのは「好きなことで起業」の意味を取り違えると、起業成功率が低くなるということです。旅行が好きだからと言って、ずっと旅行をしていて、起業できるでしょうか? ディズニーが好きだからと言って、毎日ディズニーランドに通っているだけで、独立できるでしょうか? 副業から始めるとは言え、ビジネスです。

たとえば、起業18のホームページに、こんな問い合わせがありました。

私は現在フリーターの21歳です! 資金を用意して友達と2人でアパレルブランドを立ち上げネットショップ運営しようと考えてるのですが、フリーターでも助成金など貰えますか?

助成金がもらえるかどうかは、申請して審査を受けてみればよいこととして、まず「友達と2人でアパレルブランドを立ち上げるということが、果たして可能なのか?」を冷静に考えてみていただきたいと思うのです。立ち上げは可能でしょう。ですが、売れるかどうかは全く別問題です。センスと資金があれば、ということですね。

自分たちで立ち上げたブランドを、アパレルビジネスとして成立させるためには、「売れる商品」「マーケティング」「セールス」「利益の管理」が必要です。友達と2人で、好きな服を作っていれば「商品」はできあがるかもしれません。ですが「成功」させるには、それでは不十分です。それを「売れるようにする」ために取り組まなければなりません。助成金や補助金をもらうのなら、成功させなくては、貴重な税金を無駄にすることになってしまいます。
 

ポイント 「やりたいこと」だけでは成り立たない

起業ネタは「好きなこと」では足りない!

ノウハウ
 

「好きなことで起業をする」という意味は「やりたいことだけをやる」という意味ではありません。やりたいことをやるために、それでお金が稼げるようになるために「ビジネスをクリエイトする」ということです。たとえば「ディズニーランドが好きだから毎日行きたい」というならば、ディズニーランドに毎日行く商品をクリエイトし、それで食べていけるようにマーケティング、セールス、利益の管理をするのです。

仕事はひとつの作業だけでは完結しません。ラーメンが大好きなラーメン屋さんも、ラーメンを食べているだけでは起業できません。お店を借りて、掃除をして、仕入れをして、ラーメンを作って、サービスをして、会計をして、経営をして、採用をして、宣伝をして、、、数えきれないほどの仕事があります。それでも好きなことが大事な理由は、ラーメンが好きなら、モチベーション高く、味の追及やお店の繁盛のために頑張り続けることができるから、ということです。
 

ポイント 「好きなこと」を一部に組み込む

起業ネタは「好きなこと」では足りない!

ビジネスモデル
 

たとえば、前述したバーを開業した人は、バーが好きだからという理由で副業をスタートさせました。しかし、後に自己分析をしてみたところ、実際は「バーに飲みに行くことが好き」だったということがわかりました。バーを「経営」することではなかったのです。

彼は、好きなことをで起業したいのなら「バーに飲みに行く」仕事(商品)を開発すればよかったのです。その時「テストのため」という目的を持って小さく始めていれば引き返すこともできましたが、大きくしてしまっていたために、赤字を引きずることになってしまいました。

実は、会社員時代、彼はレジを販売するメーカーのトップ営業マンでした。実は、彼がトップ営業マンになれたのは「仕組み」をつくるのが上手かったからでした。

彼は、新規開拓で、ある業界のことを調べたくなったら、Aさんに相談する。商品説明で迷ったら製造部のBさんに、顧客のクレーム対応は、Cさんが得意などと、自分の仕事をスムーズに回すための仕組み作りを、普段から行っていたのです。自分の仕事を進める上で、いつでもアドバイスを受けられる専門家集団をバックヤードに作り、仕事を楽しく、楽に進める仕組みを無意識のうちに構築していたのです。

彼は、今後きっと「バーに飲みに行く」ということを、新しいビジネスのフローに組み込み、小さく始めてテストを重ねることで、成功できるようになると思います。好きなことを「仕組みを作り」という得意なことと組み合わせて発展させれば、需要のある商品・サービスを追求し続けるパワーも生まれるはずです。
 

ポイント まとめ

起業ネタは「好きなこと」では足りない!

ビジネスモデル
 

小さく副業から始める、それはとっても正しいことだと思います。それは、小さければよいということではなく「テストのため」という目的があってこそです。それをきちんと、独立の準備として捉え、テストで得た結果を反映させて改善していきましょう。また、ビジネスは、好きなことだけをしていて回るものではないことを知り、売れる商品の開発、マーケティング、セールス、利益の管理をしっかりと行うことが大切です。

好きなことをビジネスに組み込んでいれば、その道を追求することが苦ではなくなります。実際、自分のビジネスのためにいろいろと挑戦することは、やってみると楽しいものです。面白くもないことをやらされている感覚ではなく、自分の未来、将来を創り出すための試行錯誤は、実にワクワクします。副業ではなく、本業にしたい! と思うようになるでしょう。

そういう気持ちで小さく始められれば、成功間違いなしです!


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全11冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。


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