マネーの虎【神回】カオソーイの大学生と安田社長から学ぶ! 起業する人にとって大切なこと

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

カオソーイとは、タイやラオス北部でよく食される麺料理で、カレーラーメンのようなものです。テレビ番組「マネーの虎」で、キッチンカー開業に大学生がチャレンジした放送回は、神回と呼ばれるまでになりました。
 

カオソーイ

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また、志願者さんのご本名もここでは伏せさせていただきます。予めご了承くださいませ。

今回は「カオソーイの大学生」の行動や、社長の後日談を通して、起業について学べる大切なことをまとめてみます。
 

ポイント 伝説の番組「マネーの虎」とは?

マネーの虎【神回】カオソーイから学ぶ!

マネ虎
 

今や伝説になっているテレビ番組「マネーの虎」は、2000年代になって放送された超人気番組。当時は飲食店希望者が多かったですが、起業したいと考える志願者が、投資家(虎と呼ばれる社長たち)の前でプレゼンを行い、出資や融資を勝ち取りにいくマネー系エンタメ番組です。

志願者は「希望金額」を提示。それが出資なのか融資なのか、社内ベンチャーなのか、リターンは何なのか、当時は曖昧になっていましたが、社長たちの後日談では「広告宣伝費のつもりで帰ってこない前提で出していた」と語っています。

社長が机に積み上げた札束(おもちゃ)が希望金額に達すれば「マネー成立」となる真剣勝負です。
 

ポイント 「カオソーイ」とは?

マネーの虎【神回】カオソーイから学ぶ!

カオソーイ
 

カオソーイとは、上述のように、タイ北部、ラオス北部の地元麺料理で、ココナッツ風味のカレーラーメンのようなものです。当時の志願者の説明では、茹で麺の上に、お米の麺(センヤイ)の揚げたものを乗せる(2種類の麺を使う)ココナッツミルクを使うラーメンで、辛み、酸味、甘味が融合されたカレー味のスープを使い、最初は揚げた麺でサクサクの触感、次第にスープに浸りお米の麺が柔らかくなり、触感が変わる珍しい料理ということでした。

志願者が大学1年生の夏休みにタイに放浪の旅に出かけ、チェンマイで出会ったこのカオソーイ。日本人は、カレーも麺類も好きだということで流行るのではないかと思ったそうです。さらに、チェンマイでは卵麺を使うのが一般的ですが、この志願者は「パスタのカッペリーニ」を使いたいと言うのです。

志願者は言います。「男性はもちろんのこと、女性もターゲットにするので、パスタの方が良いのではないか、また、カッペリーニはカレーにも合うと思う。」しかし、ここで虎の貞廣社長が反論します。
 

「変えてはいけないものがある。麺を変えるのは心臓を変えるようなことにならないか?」
 

志願者も引きません。彼は、日本人に合わせたローカライズであるということをアピールします。「現地のままのラーメンを持って来ても売れない」と言い切ったのです。一気に、面白い展開になります。

市場調査の結果まで提出し、虎にアピールする志願者。いよいよ試食に進んでいきます。
 

ポイント 出演した虎(社長)たちはどんな人?

マネーの虎【神回】カオソーイから学ぶ!

出演した虎
 

カオソーイの回には、5人の虎(席順に左から/貞廣社長・尾崎社長・安田社長・川原社長・樋口社長)が出演しました。

<虎のプロフィール(当時)>
  • 貞廣一鑑(40歳当時)年商25億
    (株)ラヴ 代表取締役
  • 尾崎友俐 (35歳当時)年商10億
    炭火焼肉店 ビール輸入 レストラン経営
  • 安田久(40歳当時)年商18億
    (株)エイチ・ワイ・ジャパングループ 代表取締役
  • 川原ひろし(39歳当時)
    行列のできる有名とんこつラーメン店
  • 樋口道也(40歳当時)年商16億 
    (株)ドリーム 代表取締役

樋口社長以外は、皆、飲食店経営者。マネー成立への期待は高まりますが、何と試食前に波乱が起こります。
 

「どうしても食べなくてはいけないですか?」
 

声の主は貞廣社長。彼は、市場調査の結果を見て「本場の卵麺が良いと言っている人間が40%もいる以上、食べたくない」と「ノーマネー宣言」をしたのです。すかさず川原社長が「貞廣さんの言うこともわかるが、食べてみないとわからない」と助け舟を出します。そして試食は進んでいきます。

注文から3分以内で出すという志願者。ラーメンを作り、ナンプラーのニンニク醤油で味付けした鶏むね肉を乗せ、レモンを絞って食べるように説明します。貞廣社長は終始、微妙な表情です。

そして、実食・・・。

尾崎社長は「全体的には美味しかった」とコメントしつつ「でも、違和感があるので、パスタと打ち出さない方がいい」とアドバイスします。志願者は複雑な表情を見せます。

そして、麺のプロである川原社長が言います。
 

「好きだけど、この麺は好き嫌いがはっきりするからブームにならないと思う。」
 

これは起業家にとって非常に悩ましい問題です。次郎系のように、尖って一部のファンをしっかり掴むか、万人受けするブームになり得るものを仕掛けるか、飲食においては実に悩ましいところです。
 

安田社長の一言でマネー成立!

続いて、安田社長がコメントします。
 

「魅力を感じる。失敗してもいいから、全額(404万円)投資します。」
 

驚きの展開になります。そして、吉田栄作さんが言います。「この時点で合計額があなたの希望額に届きましたので、マネー成立です。」
 

安田社長が、志願者に声をかけます。
 

「失敗してもいいですから、思い切ってやってください。人生長いですから、以上。」
 

安田社長、かっこよすぎます。
 

ポイント カオソーイ・マネー成立! その後・・・

マネーの虎【神回】カオソーイから学ぶ!

カオソーイ
 

志願者は安田社長の投資によりマネー成立したものの、貞廣社長の麺に対する意見が頭に残っており、麺選びに悩んでしまうことになります。タピオカ入り麺など、様々な麺を試食しながら、一番良いものを提供できるように試行錯誤していきます。

キッチンカーの手配も進めながら、出店場所の交渉も進めていきます。目を付けたのはアウトレットモールの駐車場。サラリーマン担当者は、起業した若者に容赦ありません。直接そうは言っていませんが、
 

「うちの場所を貸すんだぞ。お前なんかにできんのか?」
 

起業したら、こんな風に扱われることは当たり前です。私も、某レンタル会議室の会社の若者に「おい業者!」のような対応をされた時に「二度と、カウンターパートが社長(事業主)じゃない会社とは取引しない」と決めました。

ちなみに、動画に出てくる風景から、出店場所は「三井アウトレットパーク 多摩南大沢」ではないかと思います。


 

貞廣社長の呪縛は続く・・・

志願者は、最終的に麺を「卵麺」「米麺」「カッペリーニ」の3点に絞り込んでいきます。ですが、どれが本当に適した麺なのか答えがでません。

安田社長にも相談しますが、経営者の厳しい言葉で跳ね返されます。
 

「迷ってんじゃねーよ。そんなことでは失敗するぞ。俺はカオソーイに投資したんじゃなく、お前に投資したんだ。」
 

安田社長、熱い。
 

ポイント カオソーイ・キッチンカーの開業初日はどうだった?

マネーの虎【神回】カオソーイから学ぶ!

キッチンカー
 

カオソーイは、200食、売上10万円を目標に、初日をスタート。麺は結論が出せず、3種類「卵麺」「米麺(クェイティオのセンレックというタピオカ入り中太麺)」「カッペリーニ」を出すことになりました。

開店後、カオソーイは順調に売れていきますが、次第に暗雲が立ち込めます。オペレーションがうまく回らなくなるのです。なぜかチャーシューも切れてしまい、100円値下げする始末。待ち時間が長くなり、クレームも出始めます。
 

目標達成した志願者に安田社長が言った言葉

安田社長は、志願者に当日の様子を確認します。志願者は、お客様を待たせてしまったことを反省し、次に生かすことを約束します。そして、オープン初日の売り上げは・・・・、なんと「217杯、11万5,300円」でした。目標達成です。

しかし安田社長は、さすがの経営者です。
 

「今日の結果は望んでいなかった。失敗した方が良かった。その方が学べたはず。」
 

安田社長。すごい人です。本質過ぎて、涙がでそうです。
 

営業終了後、貞廣社長乱入!?

安田社長の素晴らしいアドバイスで番組が終わるかと思いきや、ここでなぜか、貞廣社長が登場します。そして、麺を試食。最後に笑顔で「美味しいです」と言い、番組のエンディングを全てかっさらっていくのです(笑)

貞廣社長に言われた一言が引っかかっていた志願者には、最高の言葉だったことでしょう。しかし、メンツを潰されてしまったのが安田社長です。

後日談で安田社長は「何でこんなことになるの?」と不満をぶちまけています(笑)

ポイント カオソーイ・キッチンカー失敗から学ぶ大切なこと

マネーの虎【神回】カオソーイから学ぶ!

キッチンカー
 

「え? 成功したんじゃないの?」と思われたかもしれません。しかし、この話には後日談があるのです。
 

実は、その後失敗していた志願者

実は、カオソーイラーメンの彼は、上に貼った動画によると、2019年3月時点で行方不明だというのです。インタビューしている岩井社長も驚いています。

安田社長曰く、キッチンカー経営の後、実店舗も手がけたという彼は、半年ほど経営した後にノイローゼ気味になってしまったのだそうです。そして、ビジネスをやめる結果になってしまったとのこと。

ですが、カオソーイの彼が立派だと思うのは、安田社長に、お金を返したということ。出資ではなく融資だったということですが、元金だけ返したのだそうです。これは立派です。お金をきちんと返すって、本当に大切なことなんです。
 

ポイント おわりに

マネーの虎【神回】カオソーイから学ぶ!

カオソーイ
 

突然いなくなってしまったとしても、きちんとお金を返していたことが、カオソーイの彼に対する現在の安田社長が持つ印象や、それを聞いた岩井社長が感じることに大きく影響しているのだと思います。お金をきちんと返したことが、彼の信用として糸一本繋がっているのです。
 

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ビジネスをしていれば、お金を持ったまま逃げてしまった、お金について質問すると急に態度が変わった、払わずに逃げられた、などの話をよく聞きます。そういう人に対して周りが持つ印象は当然、最悪なものになります。

人は生きていれば、うまくいかないこともあります。心が不安定になってしまうことも、誰にでもあることです。そんな時でも、このカオソーイの彼のように、お金に関する問題さえ綺麗にしておけば、次に繋がるチャンスはやってくるのかもしれません。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。


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