起業したら社員を雇うべきか? それとも一人社長のまま業務委託で進めるべきか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

起業して軌道に乗り出した方から、よく受ける質問があります。

「社員を雇った方がいいのでしょうか?」

この質問、実はとても重要です。なぜなら、社員を雇うか雇わないかで、経営の安定性が大きく変わるからです。

今回は、私がなぜ「1人起業」を強く推奨するのか、その理由を具体的に解説していきます。
 

ポイント 1人で、どこまでビジネスを拡大できるのか?

社員を雇わなくても、驚くほど大きな売上規模を実現できます

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まず知っておいていただきたい事実があります。業務委託を上手に活用すれば、1人経営でも年商数億円規模のビジネスを運営することは十分可能です。

私がこれまで見てきた起業家の中にも、外部パートナーを活用しながら驚くような売上を達成している方が何人もいます。

売上規模別に考えると、実は以下のような傾向が見えてきます:

  • 年商2千万円規模:完全に1人でも達成可能
  • 年商5千万円規模:家族や親戚を巻き込んで何とかする
  • 年商1億円規模:外部スタッフの協力で対応

多くの起業家が考えているよりも、社員を雇う必要性は実は低いのです。
 

社員を雇うべき人とは?

もちろん、社員を雇うこと自体が間違っているわけではありません。

人材育成や雇用創出に情熱を持っている人、チーム作りにやりがいを感じる人は、積極的に社員を雇うべきです。

ただし、私が見てきた限り、多くの経営者が最終的に抱える最大の悩みは「人の問題」なのです。
 

ポイント 社員を雇わないメリット

採用・教育・資金繰りのストレスから解放されます

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社員を雇わないことで得られるメリットは、想像以上に大きいものです。
 

1. 人材獲得競争に巻き込まれない

世間では「人手不足」が叫ばれていますが、社員を雇わない経営スタイルなら、この問題とは無縁です。求人広告を出す手間も、面接に費やす時間も、採用活動にかかるコストもすべて不要になります。
 

2. 人材育成の負担がない

仮に良い人材を採用できたとしても、次に待っているのが育成の課題です。近年の若手社員の中には、わずかな時間外労働でも手当を強く要求するなど、権利意識が非常に強い傾向が見られます

本来のあるべき姿は「まず貢献してから対価を得る」という順序ですが、最近は「対価が先、貢献は後」という考え方の人も少なくありません。

こうした価値観のギャップがある人材を育てていくのは、想像以上に困難です。
 

3. 経営判断の自由度が高まる

社員を抱えると、経営者の行動や投資判断に対して、従業員の視線を意識せざるを得なくなります

  • 「繁忙期なのに社長は海外出張か」という不満
  • 「会社の資金で接待して、従業員の待遇は後回しか」という批判

こうした従業員の不満や批判は、組織がある限り避けられません。しかし1人経営であれば、誰の目も気にせず、ビジネスに必要な投資や行動を自由に選択できます。
 

4. 財務体質が強固になる

社員雇用で発生する固定的な人件費は、経営を圧迫する最大の要因です。

給与は、売上の多寡に関わらず毎月必ず支払わなければなりません。特に中小企業は収益の変動が大きいため、売上が低迷する月でも人件費負担は変わらず、これが深刻な資金繰り問題を引き起こします。

さらに、人件費は給与だけではありません:

項目 内容
法定福利費 給与の約15%相当が追加負担
設備投資 デスク、PC、各種備品の購入費
オフィスコスト 増床に伴う賃料上昇
管理コスト 給与計算システムや担当者の人件費

給与そのもの以外にも、関連する様々なコストが発生するのです。
 

ポイント 固定費と変動費・潰れない経営の本質

コストを変動費化することで、倒産リスクを劇的に下げられます

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ここで、経営において極めて重要な「固定費」と「変動費」の概念について説明します。
 

正社員の人件費=固定費

正社員に支払う給与は典型的な固定費です。業績の好不調に関わらず、毎月決まった金額を支払う義務があります。
 

業務委託費=変動費

一方、外部スタッフへの業務委託費は変動費として扱えます。必要な業務量に応じて支払額を調整できるため、売上が減少した時期には委託量を減らすことで、人件費をコントロールできるのです。
 

どちらが経営を安定させるか?

極論を言えば、すべてのコストを変動費化できれば、会社は倒産しようがありません。

企業の赤字は固定費によって生まれます。固定費を超える損失は出ませんが、固定費がある限り赤字リスクは常に存在するのです。

だからこそ、倒産しない強い会社を作るには、できる限りコストを変動費化することが重要なのです。
 

税務面での利点もある

さらに付け加えると、給与には消費税が課税されませんが、業務委託費には消費税が含まれます。

これは一見不利に思えますが、実際には仕入税額控除により消費税の納税負担を軽減できるという税務上のメリットがあります。
 

ポイント 実践例:業務委託で何ができるのか?

コンテンツ制作も、イベント運営も、すべて外部パートナーで実現できます

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私自身、そして私の周りの成功している起業家たちは、業務委託を積極的に活用しています。

実際に外部委託できる業務は驚くほど幅広いのです:

  • 動画コンテンツ制作:撮影、編集、チャンネル管理など一連の業務
  • セミナー・講座運営:ファシリテーションや事務局機能
  • SNSマーケティング:各プラットフォームでの発信サポート
  • コンテンツライティング:記事作成や書籍の共同執筆
  • スケジュール管理:秘書業務的なサポート
  • 資料作成:プレゼンテーション資料の制作代行

ポイント 業務委託にもデメリットはある

柔軟性と引き換えに、一定の制約も理解しておく必要があります

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もちろん、業務委託にも限界があることは認識しておくべきです。

最も大きな違いは、「正社員なら急な予定変更や臨時の業務にも対応してもらいやすいが、業務委託では契約範囲外の依頼がしにくい」という点です。

確かに、雇用関係にある従業員であれば、突発的な仕事にも柔軟に対応してもらいやすいでしょう。しかし、見方を変えれば、業務委託には労働時間という概念がないため、早朝や深夜の対応が必要な場面では逆に融通が利く場合もあります。

経営者の仕事は、夕方以降の商談や会食が多いもの。そう考えると、時間的制約の少ない外部スタッフの方が、かえって都合が良いケースも少なくないのです。
 

ポイント まとめ:なぜ私は「1人起業」を勧めるのか

倒産しない経営、自由な経営、ストレスフリーな経営

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ここまでお読みいただき、私が「1人起業」を強く推奨する理由をご理解いただけたでしょうか?

  • 採用や人材育成の負担から解放される
  • 固定費を抑えて変動費中心にすることで、倒産リスクを最小化できる
  • 経営判断の自由度が大幅に高まる
  • 業務委託を戦略的に活用すれば、大規模なビジネスも1人で運営可能
  • 税務面でも有利な側面がある

繰り返しになりますが、社員雇用自体が悪いわけではありません。人材育成や雇用創出に情熱を持つ方は、ぜひ積極的に採用していくべきです。

しかし、多くの経営者が人材関連の課題に苦しんでいる現実を見ると、業務委託を中心とした経営スタイルは非常に有効な選択肢だと言えます。

まずは外部パートナーを賢く活用しながら、倒産しない強固な経営基盤を築くことです。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。


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