記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
「起業は若くて野心のある人がするもの」というのは事実ではありますが、一方で、将来不安や人生最後の挑戦として、50代で起業を目指す人も増えています。
果たして、50代で起業することは、現実的なのでしょうか?
まず、起業に年齢は関係ありません。年齢ではなく、気力と体力です。シニアが不利なのはこの部分です。正直言いますと、スタートのタイミングに関しては、遅れてしまったと言わざるを得ません。遅れを取り戻すために、20代の倍は頑張らなければなりません。
とは言え、50代には強みがあることも事実。起業をおすすめしたい理由もあるのです。
本記事では、50代から起業することのメリットと注意点を解説します。
50代からの起業は決して遅くない
冒頭でも触れたように、起業と言えば20~40代が中心。確かにそうなのですが、50代から起業を目指す人も多く、強みを十分に生かすことで、それは不可能なことではありません。
実際に日本政策金融公庫が行った「2020年度新規開業実態調査」によると、開業時の年齢が「50歳代」の割合は19.7%であり、起業している人の5人に1人は50代であることがわかります。
また、開業時の平均年齢は43.7歳であり、1991年度の調査開始以来もっとも高い年齢となっています。つまり、50代からの起業でも、数字上は遅くないのです。
テレビなどで取り上げられるスタートアップの代表者は20代、30代が多いため「あれだけ若くて勢いがないと起業は無理か」と考えてしまいがちですが、50代からでの起業でも「本気になれば何とかなる可能性がある」ことを、今一度しっかりと認識することが重要です。
ですが、気力、体力、スピード感、何をとっても不利なことは事実です。だからこそ「本気になる」ことが大切です。
50代から起業する4つのメリット
20代や30代から起業を目指すことと、50代から起業を目指すことでは、享受できるメリットがそれぞれ異なります。50代は50代なりのメリットを生かして起業しなければなりません。
50代から起業することのメリットとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
- これまでに培ってきた経験や人脈を生かすことができる
- ある程度資金に余裕がある状態でチャレンジできる
- 利用できる助成金や支援金の制度が多い
- 充実した毎日を過ごすことができる
それぞれについて、説明します。
1.これまでに培ってきた経験や人脈を生かすことができる
50代にもなると、すでに社会人としてかなりの時間を過ごし、様々なことを経験し、幅広い人脈を形成できている方も多いでしょう。
事業を興すにあたって、経験や人脈は非常に貴重な財産であり、重要な差別化要因、武器でもあります。特に、信頼できる協力者を探す際には、人脈が頼りになるでしょう。
2.ある程度資金に余裕がある状態でチャレンジできる
50代になるまで働き続けてきた方であれば、ある程度の貯金や蓄えがあると思います。自己資金に余裕があることは、起業する上で非常に有利です。
手元のお金に余裕がない状態で起業すると、資金繰りに窮した際に、冷静な判断を下すことが難しくなります。自己資金が豊富にあることは大きなメリットと言えます。
3.利用できる助成金や支援金の制度が多い
利用できる助成金や支援金制度が多いのも50代ならではのメリットです。
利用可能な助成金のひとつに「生涯現役起業支援助成金」というものがあります。
生涯現役起業支援助成金は、厚生労働省が実施している助成金で、起業する方の年齢が40歳以上であることなどのいくつかの条件を満たすことで、雇用創出措置助成分として最大150万円、生産性向上助成分としてさらに雇用創出措置助成分の25%の支援を受けることが可能です。
また、55歳以上であれば、日本政策金融公庫が実施している「シニア起業家支援資金」を利用可能で、新たに事業を始める場合もしくは事業開始後7年以内であれば、最大7,200万円の融資を受けられます(運転資金は4,800万円まで)。
シニア世代が利用できる助成金や支援金はほかにもたくさんあるので、制度をフル活用することで、資金面での不安をある程度解消することができます。
4.定年後も充実した毎日を過ごすことができる
起業して自分のやりたいこと・好きなことを仕事にすることで、毎日が充実するというのも大きなメリットです。
自分が主体となって事業を前に進めていく感覚は、サラリーマンとして働いている限りなかなか感じられないものかもしれません。人生にハリと活力を与えてくれるきっかけにもなるでしょう。
また、起業して事業主として働き始めると「定年」という概念もなくなるので、自分が働きたいと思い続ける限りいつまでも働き続けることも可能です。
50代から起業する際の5つの注意点
上述しましたように、50代からの起業にはいつくかのメリットもありますが、もちろん注意点の方が多いわけで、事前に対策を考える必要があります。
50代から起業する際の注意点としては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 資金計画は念入りに立てる
- 若くはないということを自覚する
- スモールスタートで様子を見る
- 客観的な視点を持つことを忘れない
- 怪しい勧誘に引っかからない
それぞれについて、説明します。
1.資金計画は念入りに立てる
50代は、養わなければならない家族を抱えている方も多いでしょう。いきなり起業を目指すというと、家族の方が不安に感じるのも仕方ありません。
これくらいの資金が必要、今後の収入と支出はこれぐらいになりそう、万が一事業が上手くいかなくても、これくらいの期間は問題なく生活できる、ということを家族に説明しておく必要があります。
入念な資金計画を立てられるかどうかが、その後の事業の成否を大きく左右するので、できるだけシビアに推測することが重要です。
2.若くないということを自覚する
失礼ながら、、、現実なので敢えて書きました。
起業したての頃は、やらなければならないことが山積みです。また、アイデアも湧いてくると思いますので、働ける限りは働きたいと考えている方が多いでしょう。体力には自信があるとおっしゃる方も少なくありませんが、20代や30代の頃とは違うという点は、自覚しておかなければなりません。
自分の体力で働ける時間を過信せず、健康に気を付けながら動くことを意識しましょう。
3.スモールスタートで様子を見る
起業にはある程度のお金や時間が必要となりますが、50代で全てを失うような事態を回避するためにも、スタートは小さくした方が良いと思います。
50代にもなったら、やり直しはききません。慎重に、様子を見ながら進め、規模を拡大していく方がベターです。
年齢を重ねている分、焦る気持ちも出てきますが、成功させてこそ起業する意味があるというものです。
4.客観的な視点を持つことを忘れない
起業に対する思い入れが強すぎると、自分の意見だけを信じて暴走してしまうこともあります。経営者として責任は自分にあるので、悪いこととは言いませんが、判断が常に上手くいくとも限りません。
一方で、周囲のアドバイスを参考にすることは重要ですが、そういったアドバイスに流され過ぎるのもよくありません。代表者という立場ではあるものの、自分が行っている事業に対して客観的な視点を持つことは、常に念頭に置いておくべきです。
5.怪しい勧誘に引っかからない
50代は資金力はありますが、会社員思考が染みつきすぎてしまい、経営者の発想ができないということがあります。
シニア世代のマニュアル思考(固い頭)を狙って「この通りやればできる」と、いかにもそれらしい高額商材を購入させたり、ネットワークビジネスに誘い込んだり、悪質な勧誘も多いので注意が必要です。
50代からの起業を成功させる4つのポイント
起業する時には、やりながら修正をすることが重要になるのですが、50代ともなると時間も体力も限られる、また、知恵もついていることから、効率、省力化、そんなことばかりを重視してしまう傾向があります。
何よりも行動が大切なのが前提ですが、やはり20代、30代には勝てませんので、50代起業で活かすべきリソースもご紹介しておきます。
- 経験や人脈を生かせる分野で起業する
- 任せられる部分は人に任せる
- 「やりたいこと」と「必要なこと」を意識する
- フランチャイズでの起業も視野に入れる
それぞれについて、説明します。
1.経験や人脈を活かす
先ほどもメリットとして挙げましたが、それはあくまでも、これまでの経験や人脈が生かせる分野や事業内容で起業した場合です。初めての分野で起業する場合は、そういった恩恵を受けることはできないので、厳しい勝負を強いられることになるでしょう。
なるべくなら、これまでの経験や人脈を生かせる分野での起業が賢明です。
2.任せられる部分は人に任せる
50代にもなると、体力はかなり落ちているということは、上でお伝えした通りです。
長年社会人として働いてきた経験から、自分の得意、不得意は、ある程度客観的に判断できるようになっているはずです。不得意なところは、安心して任せられる人がいるのであれば、任せてしまった方が良いです。
外注費は掛かりますが、得意なことに注力する方が、結果として上手くいきます。
3.「やりたいこと」と「必要なこと」を意識する
自分の意思を貫き通すだけでは、事業は上手くいきません。自分が「やりたい」ことと、社会が「必要としている」ことが交わる部分を見極めることが、成功の秘訣です。
前者と後者の交差点が見つけられない場合、見極めが甘い可能性と、そもそも交差している部分がない可能性があります。後者の場合は、視点を変えて考え直す必要があります。
4.フランチャイズ起業も視野に入れる
フランチャイズを利用して起業すれば、ゼロからよりは早く経営ノウハウを学ぶことができますし、ブランドの力を利用してスムーズなスタートを切れる可能性も高くなります。本部から支援を受けられるので心強い味方となるでしょう。
50代まで副業すらしたことがなかった方などには、フランチャイズは有力な選択肢になり得るでしょう。ただし、それなりの資金が必要になりますので、よく検討してから加盟を決めるようにしてください。
50代からの起業はスモールスタートで
50代にもなれば、会社でも責任のあるポジションに就いて、ある程度の高収入をもらえている年齢です。会社にまだ10年、15年いることができるのなら、最後までしがみついていることも、一つの立派な選択肢です。
ですが、そうもいかない事情があるかもしれませんし、定年後の準備も考えなくてはと不安を感じている人もいるでしょう。そういう人こそ、会社員のまま準備を始めてください。
50代で会社を辞めてしまうと、やり直すのが難しいです。消極的になってしまうのは当然です。今から準備をすれば、最初は会社を辞めずに小さな事業を始め、その後徐々に拡大していくことができます。
副業の形で試すことで、自分が会社を辞めたらどうなるのかをイメージすることができますし、実際に経験することができます。最初は、自分がいかに通用しないか、壁を感じることでしょう。それは大きな、貴重な経験です。
50代ならではのメリットもたくさん!
50代で起業。確かに遅いですが、手遅れではありません。50代だからこそのメリットもたくさんあります。
大変なのは事実です。会社では部下の年代の20代、30代に歯が立たないことばかりで、驚くことでしょう。50代の恩恵を最大限に享受できる分野を探しつつ、人生最後の花を咲かせてください。
私たちも応援しています!
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
★会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!【セミナー@東京/オンライン】
★自分のタイミングで学びたい、セミナーは苦手、というあなたは【動画版】起業セミナー(特典付き)