記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
将来はセミリタイア気味に沖縄やハワイなど南の島で起業したいと考えています。観光業の波が大きいと聞きますが、現地での開廃業率や使える補助金、ビザの状況など、最新の数字で実態を知るにはどう調べればよいでしょうか?

● 回答
沖縄県は2024年版中小企業白書(2022年度データ)で開業率全国1位、廃業率も上位常連という「入れ替わりの激しい県」です。事業を立ち上げやすい一方、続けるための条件が本土とは異なり、観光業依存・物流コスト・人口構成という3つの構造リスクを最初に押さえる必要があります。
順番に整理していきますね。
沖縄県の最新開廃業率(2024年版中小企業白書)
中小企業庁が公表した2024年版小規模企業白書によると、2022年度の都道府県別開業率は沖縄県が全国1位で、愛知県・埼玉県が続きます。廃業率では山口県・愛知県・長崎県・沖縄県の順で上位を占めています。業種別では「宿泊業,飲食サービス業」が開業率・廃業率ともに最も高く、沖縄の経済構造とぴたり重なります。
2025年版中小企業白書では、2024年の倒産件数は全国で約10,006件、2021年を底にしっかり増加トレンドに乗っていることが報告されました。沖縄県も飲食・宿泊の倒産件数が前年比で増えており、開業のしやすさ=続けやすさではないという基本構造は2026年現在も続いています。
現地で起業する場合の3つの構造リスク
沖縄県内で起業した先輩起業家から実際に伺った内容を整理すると、リスクは大きく3つに集約されます。
- ①不動産コストが本土並み or 本土より高い:那覇・浦添など主要都市部のテナント賃料は東京近郊の郊外駅と同水準。空き店舗は多いが20坪以下が少なく、敷金は本土の1.5倍前後。事業規模を絞れない構造
- ②物流コストと納期の壁:本土からの仕入れは輸送費・日数が嵩み、生鮮・冷蔵品はさらに不利。逆に観光客向けの「島で消費される」消費財に偏ると、季節変動の波をもろに受ける
- ③人口構成と労働市場:商店街の通行人が高齢化しており、若年層をターゲットにした業態は集客が難しい。若年労働者は本土流出が続き、人材確保にプレミアム賃金が必要
このリスクを踏まえると、沖縄での起業は「現地完全移住型」「本土オペレーション型」「移住パートナー型」の3類型から自分の体力に合った形を選ぶことになります。
沖縄の起業類型と適性早見(3分類)
- 類型①:現地完全移住型(飲食・宿泊・観光体験)
店舗・スタッフ・在庫すべて現地。観光客向けの単価は取りやすい一方、季節変動と物流コストを丸ごとかぶる。初期投資1,000万円超の覚悟が必要 - 類型②:本土オペレーション型(EC・コンサル・支援業)
本部は東京や大阪に置き、沖縄は商品仕入れ・撮影・現地ガイドの拠点に。固定費を抑えつつ全国市場に売れる。サイバーエージェント系の起業家支援事業もこの型 - 類型③:移住パートナー型(マリンスポーツ・ツーリズム)
経営者は本土にいながら、現地の親族・信頼できるスタッフ・業務委託インストラクターに運営を任せる。芸能人・スポーツジム経営者がよく取る方法
50代以降のセミリタイア起業なら、いきなり類型①ではなく、まず類型②か③で軌道に乗せてから移住を検討する流れがリスクを抑えやすいです。
2025年現在使える沖縄県の支援制度
沖縄県は公式に複数の創業支援制度を公開しています。令和7年度の沖縄県スタートアップ起業支援金(県公式・再公募中)、創業者・事業承継支援資金(創業者支援貸付)、特定創業支援等事業の認定による登録免許税の半額減免など、本土の制度と組み合わせて使えます。
創業者支援貸付の主な要件は、県内に居住して県内で事業を開始すること、または事業開始から一定期間以内であること。事業開始予定の業種で通算3年以上の勤務経験があるか、商工会等の創業セミナーを修了していることが条件になり、商工会の創業セミナーは無料で受講できるので、移住計画と並行して受講しておくと手続きが進めやすくなります。

ハワイで起業を考える場合の制約
ハワイは沖縄と似た「観光と軍事の二重経済」を持ちますが、起業の入口の難しさは別格です。米国でのビザ要件(E-2投資家ビザは最低でも10万米ドル前後の投資実績が必要)、法人設立の手続き、ハワイ州独自の労働法・建築規制が壁になります。
ハワイで起業した日本人経営者の取材記事を複数読み比べると、観光客視点で立ち上げて短期間で撤退するケースは少なくありません。物価・人件費・規制の三重苦を読み違えると、観光気分の延長で動いた結果として早期撤退に巻き込まれます。
もし本気でハワイ起業を狙うなら、JETROホノルル事務所の海外進出支援や、現地の日本人会計士・弁護士ネットワークを最初に組み合わせるのが現実的です。
会員Oさん(仮名・元都内IT企業マーケ)の事例
会員のOさん(仮名・41歳・元都内IT企業のマーケティング部門・勤続11年)は、沖縄移住に憧れて土産品ECで自己流に飛び込まれました。最初の3ヶ月はSNS広告とInstagramで150万円を回し、それなりの反応があったのですが、現地物流コストと配送日数を読み違え、4ヶ月目に在庫滞留と返金対応で赤字に転落しました。
そこで起業18フォーラムに参加。勉強会で「沖縄完全移住ではなく本土本部・沖縄サブ拠点の類型②に組み直す」「商品ラインを観光客向けではなく本土の固定客向けに絞る」と方針転換。本部を都内のシェアオフィスに残し、沖縄は仕入れと商品撮影の拠点に再設計しました。
13ヶ月目には新ライン(沖縄県産モリンガ・島とうがらし・琉球泡盛のセット)が定期便で月220セット出荷となり、月35万2千円の安定売上に到達されました。完全移住の夢は維持しつつ、最初の3年は本土オペレーション型で軌道に乗せるV字回復の事例です。
拙著『起業神100則』に「闘争力より逃走力」というフレームワークがあります。観光業の波と正面から戦うのではなく、波の外側に逃げ道を用意しながら現地に関わる方法を、Oさんは見事に体現されました。
沖縄・ハワイ起業のよくある質問

Q1.移住前に何ヶ月くらい現地調査するべきですか?
最低でも累計60日、できれば90日以上を分散滞在するのが目安です。特に台風シーズン(8〜10月)と閑散期(1〜2月)を必ず体験しておくと、観光のピークだけを見て決めてしまう失敗を避けられます。沖縄の場合、台風で2週間営業休止になっても回せる固定費に抑えられるかが、初年度の生死を分けます。
Q2.沖縄スタートアップ起業支援金は誰でも申請できますか?
令和7年度(2025年度)の公募要件では、県内で事業を開始する個人または法人で、革新性・成長性のある事業計画が求められます。再公募ですので採択枠は当初より絞られている可能性があり、申請前に沖縄県中小企業振興公社や、Startups Okinawaのコーディネーターに事業計画を相談してから出すと採択率が上がります。
Q3.現地で雇用するときの注意点は?
沖縄県の若年完全失業率は本土平均より高い時期がありましたが、近年は改善傾向にあります。ただし本土水準の賃金提示でも応募が集まりにくい職種(語学対応・専門技術職)があり、人材確保の難易度は那覇圏とそれ以外で大きく違います。本土からの遠隔チームと組み合わせて、現地は最小人員で回す設計が現実的です。
Q4.撤退ラインはどこに引けばいいですか?
初年度の月次赤字が6ヶ月連続、または貯蓄・出資金が当初予算の6割を消費した時点で、事業のピボットまたは撤退を真剣に検討するタイミングです。沖縄は再起業のチャンスは多い土地なので、傷を浅くたたんで本土に戻り、本土オペレーション型で組み直すという撤退戦も「失敗」ではなく「再設計」と捉えてください。
まとめ
沖縄県は2024年版小規模企業白書で開業率全国1位の「起業しやすい県」ですが、廃業率も上位で「続けにくい県」でもあります。観光業依存・物流コスト・人口構成という3つの構造リスクを最初に理解し、現地完全移住型・本土オペレーション型・移住パートナー型の3類型から自分の体力に合った道を選んでください。

ハワイは入口のビザと労働法の壁がさらに大きく、現地伴走サービスの活用が前提です。いずれの土地でも、「移住で起業した先輩」の事例を最低5件は具体的に聞いてから動くことを推奨します。
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