記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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今回のマネ虎レポートは、リストラされた夫を救いたいという33歳の主婦のお話です。
語り継がれるスタートアップ支援番組「マネーの虎」。新規事業を立ち上げたい志願者が、虎と呼ばれる成功社長5人を前に事業計画を披露。社長から支持され、提示された金額が志願者の希望額を超えれば「マネー成立(出資または融資を受けられる)」、時間内に1円でも足りなければ「マネー不成立」となり、虎からの支援を受けることはできないという企画です。
志願者の言う「リフレッシュモール」とは、子供を連れて外に出る母親が気を遣わずにいられる場所であり、ファミレスですら「うるさい」と言われて肩身の狭い小さな子供を持つ母親たちに、誰にも気を遣わずに楽しんでもらえる新しいショッピングモールを意味しています。
子供を気にせず楽しめる方法とは? 番組曰く、それは世の母親たちの理想とする形であるということですが、具体的な展開を考える虎たちには利用者のイメージがわかない様子です。
ちなみに、今現在でこの「リフレッシュモール」という言葉は、どの施設にも使われておらず、Wikiにも出ず、商標登録もされていないようでした。
モールを丸く設計し、真ん中に子供を一時預かりできるアスレチックを作る。そこは、母親がどこにいても子供の所在を確認できるようにアクリル板の様な透明な壁になっていて、安心であるといいます。
子供を預けた母親はモール内の、サロン、エステ、オイルマッサージ、美容院などでサービスを受けられるほか、日常子供と一緒にいるとゆっくりと見ることができないコスメショップなどで買い物を楽しめるということでした。
ここまで話を聞いていた岩井社長が、想定顧客、ペルソナについて尋ねます。
志願者は、お金のない方でも気軽に来れるようにしたいと望んでいます。ですが、お金に困っている方達が、エステやマッサージの様なサービスを気軽に受けるのか? という疑問が次々に上がってきました。
- 南原竜樹(42歳当時)年商55億
名古屋を代表する高級輸入車ディーラー - 尾崎友俐 年商10億
炭火焼肉店 ビール輸入 レストラン経営 - 加藤和也(31歳当時)
美空ひばりの長男・音楽プロデューサー - 川原ひろし(38歳当時)
(株)なんてんかんでん 社長 - 岩井良明(42歳当時)年商10億
名古屋で躍進する名門学習塾
ちなみに、現在の南原会長です。虎ノ門・株式会社LUFTホールディングス事務所にて。
人生を変えたかった志願者の経歴
虎の厳しい考察が飛んできます。それに対して志願者は、「母親であっても女性であり、女性は一生そのようなサービスは受けることであるし、一生女性であるのだから、エステやサロンに通いたいという感覚を忘れてほしくない」と言います。
志願者は、根拠を示すことなく願望で断言しました。その様子に虎たちは首をひねり、志願者に大きなビジネスができるのかという観点から、現状の確認を始めます。
南原社長が口火を切ります。
志願者「33です。」
南原社長「結婚してからお仕事はしていないのですか?」
志願者「してません。」
南原社長「専業主婦ということで?」
志願者「はい。」
おそらく加藤社長「ご主人はどんな仕事をされているのですか?」
志願者「サラリーマンです。今は無職です。」
川原社長「子供さんは?」
志願者「ひとりおります。」
岩井社長「会社がなくなったんですか?」
志願者「いえ、なくなってはいませんけど、移転をするということで半分リストラということで、うちの主人が含まれました。」
岩井社長「で、今無職でいらっしゃるんですか?」
志願者「はい。」
南原社長「ご主人はそのお仕事は手伝われるんですか?」
志願者「はい、社員として。」
虎たち「・・・。」
今の時代においては結構きわどい質問の連続です。その後も、詳細の確認が続きます。
- モールの大きさは?
駐車場込みで400坪、建物が300坪で駐車場が100坪 - どこでやるのか?
倉庫や工場の跡を借りてやりたい
南原社長の質問に答える志願者に、川原社長が問題点に気づき、口をはさみます。
そこにさらに南原社長が切り込みます。
志願者「だいたい1500万です。」
南原社長「300坪の建物の内装が1500万?」
虎の本質を見抜く目は、鋭く切り込み始めます。
志願者は現実を突きつけられます。その30倍の規模のモールを作る内装費用が1500万と言われれば、ビッグビジネスを手掛けようとするには、あまりにも世間知らずと言われても仕方ありません。
虎の顔が引き気味です。
南原社長の質問で事態は急変。岩井社長も激怒!
南原社長がさらに志願者のプランを深掘りします。
志願者「私は中のアスレチックルーム、もうひとつ、お子さんが寝れるスイートルームを作ります。そこをチケット制にして1時間いくらという形で。」
南原社長「自分の収益はそこだけってこと?」
志願者「はい。」
その収益額はどう計算していたのでしょうか?
ここがビジネスの核心です。
収益見込みの根拠を要約すると、アスレチックに集まる子供の人数が1日に300人。親も入れたら一日に600~1000人という計算です。
この話をしたところで、、、虎達が一斉に吠え始めます。ご自身も託児所を経営するなど子供を愛する岩井社長が口火を切ります。
想定の広さがあれば、常に100人の子供がいる状態を見込んでいるという志願者に、岩井社長が怒りをあらわにします。
憤りの表情で論外だと切り捨てます。しかし、志願者は「そうですかね・・・」という反応。
岩井社長の経験では、子供は2坪に1人の割合で精いっぱいだとのこと。あまりに計画性がないと言うのす。
重ねて川原社長からも、学校もあって9時から夕方まで児童が来られない時間帯もあるだろうと言われると、志願者は、「最低でも午前中に50人は来ると思う」と反論します。
岩井社長が切り込みます。
志願者「4人です。」
岩井社長「そんなの、今社会問題になってる託児所よりもひどいじゃない!」
志願者の説明は一蹴されます。夢や発想は誰にでもあるが、それだけでは何も始まらないと切り捨てられ、志願者は言葉もありません。
志願者が、「保育士が監視員兼警備員になり安全を考えている」と言うと、託児所の現場を知っている岩井社長には、「事故の対処について聞かれているのに、安全にするでは答えになっていない」と、さらにきつい言葉を言われてしまいます。
南原社長からも、「あなたの失敗を一緒に手伝う気にはなれない」と、事実上この話に乗る気がないという言葉を聞くことになりました。
他の虎たちもしらけ顔になっていき、下を向いてしまいます。
尾崎社長のアドバイス
その時、番組内で発言のなかった尾崎社長が話を始めました。
エステやサロンなどモールに入る店舗が10店舗なら、協賛金で賄えるのではないか。尾崎社長の友人にも、子供を連れていくところがないという声もあり、構想自体はいいものだと思うが、一人で考えると偏っていくので何人かでアイデアを出しあっていくようにしたらどうかといういうアドバイスでした。
その話を受けて、少し落ち着いた様子の南原社長も、「主婦の気持ちがわかるコンセプターとして、施設やモール展開をしている企業に提案を持っていくことから始めてみたらどうか」と、アドバイスしてくれました。
そして、「厳しいことを言って申し訳ない。あなたが過ちを犯さないための言葉のつもりだった」と、南原社長からの心使いの言葉。起業を甘く見ることなく現実を伝えたいという虎たちの情熱が、時に厳しい言葉となって相手に伝わることもあります。南原社長、尾崎社長、加藤社長らのフォローの言葉に、志願者は救われたことでしょう。
虎たちに罵倒されながらも、凛とした態度でプレゼンに臨む志願者は、このアイデアはご主人がリストラを受けてからずっと考えてきたことで、うまくいかない人生で終わるのは嫌だったと言いました。
それを踏まえて加藤社長も、「もっと自分のメンタル的な状況をよくしていかないと、つまらないから人生をガラッと変えたいという発想だけでは失敗する気がする」と、アドバイスをくれたのでした。
結果はノーマネーとなりましたが、「本当に魂からくる夢ならば、いろはから勉強して叶えてください」という吉田栄作さんが志願者にかけた言葉も、あきらめずに頑張れというエールを感じました。
まとめ
起業に際して情熱は必要。やりたいことをやるのも大事なことかもしれません。ですが、基本的なことを知らずに自分の思いだけではビジネスは成り立たないということ。
ひとりよがりでは集客はできない。ましてサービスや内容のクオリティを見誤ってしまうと、今回の様に子供の安全を守る様なビジネスは過ちではすまないことになりかねません。
志願者の発想自体は素晴らしいものでした。今では託児所付きの施設も増え、時代の最先端を行くアイデアだったと思います。ですが、当時の彼女にはビッグビジネス過ぎました。
壮大な夢を持つ人はたくさんいます。それはとても素晴らしいことですが、現状を見たときに、どうしても無謀であり無理であることもあります。
一歩一歩、基本を知り、足元を固めていく重要性、そして本当の夢であるなら諦めずにできることからやっていく、そんなことを学べた回であったと思います。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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