記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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新規事業の成功率は決して高くはありません。フリーランスが10年生き残るケースは3~5%程度とも言われています。
普通のやり方、つまり、いきなり会社を辞めて起業する場合、どんなに成功する自信があったとしても、失敗するリスクがある以上、起業と廃業はセットで考えなければいけません。状況によっては思い切って撤退し、次のステップへ移った方がいいこともあるでしょう。
ここでは、起業前に知っておきたい、事業失敗の判断基準について見ていきます。
事業失敗・撤退を判断する基準は?
事業撤退を判断する基準は・・・
- いついつまでに◯◯件の仕事が取れなかったら
- いついつまでに◯◯円の収益がでなかったら
- 投資額◯◯円を使い切ったら
- いついつまでに月に◯◯円の安定した収益がでなかったら
といったように、期限と実際の金額まで設定した具体的なものにしましょう。そしてもしも廃業を決めた場合に、その後どうするかも考えておかなければいけません。
事業計画を作る上では・・・
- こうなったら人を増やす
- こうなったらオフィスを大きくする
というような事業拡大の計画だけでなく・・・
- こうなったら撤退を考慮する
- こうなったら必ず撤退する
という事業縮小、撤退のプランもたてておく必要があるということですね。
ストップをかける基準を4つのケース別に紹介
起業の目的や方法は、個々によって違います。
いきなりお金を借り入れて、固定費が掛かるもの、たとえばオフィスを構えて形から入ることもありますし、私たちが推奨するように、会社員のまま小さく週末副業のような形で起業する方もいらっしゃいます。
そのため、当然ながら事業撤退を決めるタイミングはケースごとに異なってきます。そこで4つのケース別に詳しく解説していきます。
1.投資予定金額を超えた時
ある程度資金を要する形での起業は、用意していた資金が尽きるか、借金をしているならば追加の借金ができなくなることで、自動的に廃業に追いやられます。
たとえマンションの狭い一室であっても、オフィスを構えると毎月それなりの出費があるもの。しかも、営業で遠出が必要ならば交通費も大きな出費となります。人を雇えば用意していた資金はすぐに底をつくかもしれません。
このような形で大きな起業に失敗した場合は、復活も困難な場合が多いでしょう。
このようなケースの場合、事業失敗の判断基準もわかりやすいです。「その事業に投資すると決めていた金額を超えてしまう見込み」になったところで、事業失敗と判断できます。
借入金のある場合には特に、深追いしない時点で冷静な判断が必要ですから、あらかじめ廃業を判断するための具体的な投資額を設定しておきましょう。
2.目標値に達しない時
逆に、借り入れをし、オフィスを構えて大きく起業した場合で、それでも1~2年以上にやっていけているということは、資金的にはそれなりの成果がでているということでもあります。
ただし、働きに対する収支が見合わない場合には撤退した方が良い場合もありますから、一概に「事業が成功した」とは言い切れません。
参入する事業にいる他の起業家の実績をもとに、実際にどれくらいの成果が出れば成功といえるのか、試算しておくとよいでしょう。具体的な数字で目標値とボーダーラインを決めておけば、周囲の人にも撤退を説明しやすく、冷静な判断ができるでしょう。
既にある程度投資した事業の撤退を決めることは、実は起業を決めるよりも難しい経営判断です。
3.赤字が出続けている時
本業で生活費をまかなっており、副業でビジネスをしている場合には、もう少し長いスパンで計画していることが多いでしょう。
事業に割ける時間が週末の数時間だけ・・・といった場合は、成果がでるまでに時間がかかります。その分経費もあまりかかりませんから、細く長く続けることが可能です。
ただし、時間が掛かるのはともかくとして、2年も3年も思ったような成果がでない場合には、事業を変える判断が必要なこともあります。
起業に費やした時間も無料ではありません。「他にもいくつか試してみたい事業がある」という方はなおさら、起業に対するモチベーションが落ちる前に切り替えたほうがいい場合もあります。
4.資金が底をついた時
副業の場合でも、人を雇っていたり、作業を外注していたりして資金がかかる事業もあります。その場合は、副業に回せる資金がなくなった時点をボーダーラインとしましょう。
何ヶ月、何年とあらかじめ期間を決めておき、その時点で、投資以上の成果がなければ撤退すると決めておいても良いですね。もちろん、努力が大前提です。口を開けてボーっとして「不労所得がない」などと考えるのは間違いです。
また「いずれ本業を辞めることで自由な時間を手にしたい」と考えて起業した場合、いつまでたっても本業以上の収入が得られなければ、起業に要する時間を無駄にし、かえって自由な時間が減ってしまっていますよね。
起業する目的や事業内容によってボーダーラインは異なってきますから、当初目指していたものを忘れずに、冷静に見極めましょう。
ただ、会社員のまま副業から始めている場合には、廃業というよりも事業を修正、転換すればいい話なので気は楽ですね。
優れた起業家は撤退の判断を恐れない!
前述のとおり、一般的には新規事業の成功率は低いものです。現在活躍している有名な起業家や世界の有名な成功者も、最初の起業で成功した人ばかりではありません。何度も失敗し、挫折を繰り返したあとに、大きな成功をつかんだ人も多いのです。
例えば、世界的に人気の高いテーマパークを作ったウォルト・ディズニーが自己破産や失業、倒産などの経験もあることは有名ですね。また自動車王として知られるアメリカ・フォード・モーターのヘンリー・フォードは5度も破産をしましたが、結果的に成功しました。そして、なんと65歳でケンタッキーフライドチキンを創業したカーネル・サンダースも、レストラン経営やガソリンスタンド経営に失敗した経験があります。
ただし海外と日本における破産の仕組みは全く違います。破産しても復活できる風土のある国と違い、現在の日本では、完全に破産してしまった状態からの再起は難しい場合が多いでしょう。
だからこそ、あらかじめ撤退基準を明確にしておき、大きなダメージを受ける前に撤退の判断をすることが重要なのです。
事業失敗と判断したらスムーズに次のステップへ!
起業する時には誰しも、成功を夢見ています。ですから、事業失敗を認めるのは当然つらいものです。また、実際に事業失敗の判断をすると、後退したような気持ちになってしまうことでしょう。
ですが、起業をしたこと、また失敗したことさえも、今後に活かせる経験値となることは間違いありません。
「失敗は成功のもと」という言葉もあります。せっかくの経験を活かすためにも、撤退を決めた際には、借入金の返済スケジュールを早めに決めてスムーズに事業を精算し、次のステップへの足かせにならないようにしましょう。
事業撤退の判断には、冷静かつ客観的な視点が求められます。撤退か継続か、判断に迷った時には専門家に相談することも検討したいですね。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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