記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
起業の準備を始めたいのですが、iPhoneしか持っていません。仕事用のパソコンは、やはり必要でしょうか? もし買うとしたら、どんなものを選べばいいのか見当もつきません。
自宅には光回線がありますが、ポケットWi-Fiも用意したほうがいいですか?

● 回答
お答えする前に、ひとつだけ順番を入れ替えてみてください。「準備を始めるには、まず仕事用のパソコンを買わなければ」と考えていませんか。起業準備の最初の段階に限れば、いま手元にあるスマホと自宅のネット環境だけで、やれることの大半は始められます。高いパソコンを買うのは、もっと後で構いません。
かつては「起業=専用の高性能パソコンを一式そろえる」というイメージが当たり前でした。けれど、ここ数年でその前提は大きく書き換わりました。なぜそう言えるのか、順を追ってお話しします。
いま手元にあるもので、準備の入口は開く
起業準備の入口でやることは、実は「調べる・考える・人に伝える」が中心です。誰に何を売るのかを考える、似たことをしている人を調べる、知り合いに相談してみる。この段階は、スマホとメモ、それにメッセージアプリがあれば十分に回ります。
拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、起業は道具や資格をそろえることから始まるのではない、という考え方を紹介しています。本を読んで人のやり方を真似するくらいの軽さで、小さく始められるのが月5万円規模の起業です。立派な機材を先にそろえても、肝心の「誰の役に立つか」が決まっていなければ、その機材は宝の持ち腐れになります。
日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査(2024年11月27日発表)でも、開業費用が「250万円未満」だった人は20.1%にのぼり、中央値は580万円でした。大きな初期投資をせずに、小さく事業を立ち上げる人は決して珍しくありません。
生成AIとクラウドが「高いパソコン神話」を変えた
「でも、いざ仕事を始めたら結局パソコンが要るのでは」と思われたかもしれません。たしかに本格的な作業ではパソコンが活躍します。ただ、その中身も様変わりしました。

ChatGPTやClaude、Canvaといった生成AIやデザインのツールは、いまはほとんどがクラウド型です。自分のパソコンにソフトを入れる必要はなく、ブラウザとネット環境さえあれば動きます。画像づくりも文章の下書きも、こうしたツールが肩代わりしてくれる場面が増えました。
スマホ側の進化も見逃せません。動画の編集や写真の加工は、いまやスマホのアプリだけでもかなりの質に届きます。準備段階の発信やSNSの運用なら、パソコンを開かずスマホで完結することも多いのです。つまり、高性能なパソコンがなければ何もできない時代では、もうありません。
それでも買うなら、いつ・どの程度かを見極める
もちろん、事業が動き出せばパソコンがあったほうが楽な作業も出てきます。長い文章をまとめて書く、表計算で数字を管理する、請求書をきちんと作る。こうした場面ではキーボードと大きな画面が効いてきます。
買うタイミングは「準備の前」ではなく「必要だと自分で実感したとき」で十分です。会社で使い慣れた機種があるなら、まずは同じ系統を選ぶと迷いません。どうしても先に目安が欲しい方のために、一般的なビジネス用途で困りにくいスペックを挙げておきます。
- CPU:
Core i5、または同等のRyzen 5以上があれば安心です - メモリ:
16GBあれば複数の作業を同時に開いても重くなりにくいです - ストレージ:
SSDの512GB以上なら、起動も保存もきびきび動きます
文書作成やメール、表計算、Web会議といった一般的な用途なら、この程度で快適に動きます。画像や動画の編集を本格的にやる、あるいはプログラミングをするといった場合は、もう一段上の性能が要りますが、それは事業の中身が固まってから考えれば間に合います。
Wi-Fiについては、自宅に光回線があるならポケットWi-Fiを急いで用意する必要はありません。外で作業する機会が増えてから検討すれば十分です。
道具をそろえる前に、動き出した人の話
起業18フォーラムにいた矢吹さん(仮名・20代後半・男性・独身・アパレル販売の会社員)は、ハンドメイド雑貨の販売で起業準備を始めようとしていました。ところが「まずは作業用のパソコンと撮影機材を買わないと」と考え、何を買うか比較しているうちに、半年近く一歩も進めずにいたそうです。
流れが変わったのは、起業18フォーラムの勉強会のワークでした。自分の準備状況を書き出すうちに、「道具をそろえてから」という思い込みが自分を止めていたことに、本人が気づいたのです。後日、起業18フォーラムの先輩会員に相談したところ、「いま持っているスマホで一点だけ撮って出してみては」と背中を押されました。
矢吹さんはその日のうちに、手持ちのiPhoneで作品を撮り、フリマアプリに一点だけ出品しました。それが初めての受注になります。最初の一件をていねいに仕上げると、その購入者が知人を紹介してくれ、二件、三件と続き、半年後には毎月決まった注文が入る関係に育っていました。パソコンを買ったのは、注文が増えて手作業が追いつかなくなってからでした。
- 準備の入口は、スマホと手持ちのネット環境で開く
- 生成AIとクラウドで、高性能パソコンの出番は減った
- パソコンは「必要だと実感したとき」に買えば間に合う
パソコンが必要かどうかは、起業の入口を決める条件ではありません。今日できることは、手元のスマホで無料のクラウドツールを一つ触ってみて、思いついたサービスを実際に動かす感覚をつかむことです。

道具がそろっていないことを、始められない理由にしないでください。スマホしかない今のあなたにも、できることはもう十分にそろっています。
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