記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
セミナーを主催することになり、参加者の方から領収書の発行を求められそうです。私はまだ開業届を出していないため、屋号で領収書を出すことができず、個人名にすると後から税務上のトラブルが起きないか不安があります。
但し書きは「セミナー代として」で問題ないでしょうか?
また、参加費が5万円を超える場合の印紙の扱いや、最近よく耳にするインボイス制度との関係も合わせて教えていただけませんか?

● 回答
結論から先にお伝えします。開業届を出していなくても、ご本名で領収書を発行して問題ありません。但し書きは「セミナー代として」または「研修費として」で大丈夫です。受講者の方が経費計上する際にも、これで困ることはほとんどありません。
領収書の発行者は本名で問題ない理由

屋号は必須ではない
領収書は、お金を受け取った事実を証明する書類です。発行者の氏名は本名でも屋号でも有効で、開業届の有無は領収書の効力に影響しません。受講者の方が経費にする時に必要なのは、日付・宛名・金額・但し書き・発行者情報の5点で、これさえ揃っていれば本名発行で問題ないのです。
逆に、まだ開業届を出していないのに屋号だけで領収書を発行すると、屋号に紐づく事業実態が無いと税務署側から見えてしまうケースがあります。最初の1年は本名で発行し、開業届と屋号が確定した時点で屋号入りに切り替える方が、後の混乱が少なくなります。
但し書きは「セミナー代として」「研修費として」

「セミナー代として」「研修費として」「講座受講料として」のいずれでも、受講者側の経費処理に支障はありません。大切なのは、受け取ったお金が何の対価であったかが第三者にも一目で分かることです。
受講者の方が法人なら教育研修費、個人事業主なら研修費や福利厚生費の科目で計上されることが多いですが、これは但し書きではなく受講者側の処理判断によって決まります。但し書きは「セミナー代として」とシンプルに書く方が、誤解を生まずに済みます。
印紙税のルール(5万円以上は要注意)

紙の領収書なら5万円以上で200円
受け取った金額が5万円以上(消費税抜きの本体価格)になる場合、紙の領収書には収入印紙を貼る必要があります。5万円以上100万円未満の領収書なら200円の収入印紙が1枚必要です。金額が大きくなると印紙代も上がっていきます。(出典:国税庁「印紙税額の一覧表」)
クレジットカード払い・電子データなら印紙不要
クレジットカード決済の場合、領収書ではなく「クレジット販売票(売上票)」扱いとなり、収入印紙は不要です。PDFやメールで電子データとして領収書を発行する場合も、印紙税の対象外となります。近年は電子発行を選ぶ主催者の方が増えていて、印紙コストと貼付の手間を省ける利点があります。
インボイス制度との関係

2023年10月に始まったインボイス制度は、領収書の有効性そのものを変える制度ではありません。ただし、受講者が法人や課税事業者の場合、消費税の仕入税額控除を受けるには「適格請求書(インボイス)」の発行が求められるようになりました。
主催者が免税事業者(インボイス未登録)でセミナーを開催する場合、領収書自体は発行できますが、受講者側は仕入税額控除を一部受けられないことがあります。受講者層が法人中心であれば、インボイス登録事業者になっておく方が選ばれやすくなります。個人受講者中心であれば、必ずしも登録は必要ありません。
登録するかどうかは受講者層で判断
新井一の著書『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』の中に、起業初期の判断は「100点を目指さず、まず25点から50点に上げる」という考え方が出てきます。セミナー領収書もインボイス登録も、最初から完璧な体制を作ろうとするのではなく、開催回数を重ねながら段階的に整える方が現実的です。
起業18フォーラム会員さんの発行事例

30代・会社員のDさん(仮名・人事部)は、起業準備として年に数回ビジネスセミナーを開催しています。スタート時は開業届なし・本名発行。3カ月目に参加費5万円超のコースを企画した時、印紙の貼付ルールを知らずに発行してしまい、後から200円の印紙を追貼したそうです。
転機は、開催を重ねてリピーターが増えた9カ月目。開業届を提出して屋号を取り、領収書も屋号入りに切り替えました。現在は会社員のまま月平均15万円の受講料収入があり、領収書発行は電子データに切り替えて印紙コストを完全にゼロにしています。
よくある質問
Q:領収書に押す印鑑は必要ですか?
A:法律上、領収書への押印は義務ではありません。ただし慣習として、認印やシャチハタを押す主催者が多いです。電子発行の場合は電子印鑑画像で代用しても効力は変わりません。
Q:本名発行から屋号発行に切り替えるタイミングは?
A:開業届を提出して屋号が確定した時点で切り替えるのが最も自然です。受講者ごとに発行者名が変わると混乱を招くので、ある月から一斉に切り替える方が運用は楽です。
Q:受講者から「インボイス対応してほしい」と言われた場合、必ず登録しなければいけませんか?
A:強制ではありません。受講者の構成(法人比率・個人比率)と、自分の年間売上規模を見て判断します。年間売上1,000万円以下の方は免税事業者を維持する選択も合理的です。
ご自身のセミナーが順調に育って、領収書発行が日常業務になってくると、開業届・屋号・インボイス登録のタイミングをいつにするかが次の課題になります。焦って全てを完璧にしようとせず、受講者の方からの声を聞きながら段階的に整えていくのが、長く続く起業準備の進め方です。
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