記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
起業したての個人会社の事務代行で起業を考えています。
記帳代行・通帳整理・請求書発行・出張手配・ブログ代筆まで幅広く対応したいのですが、最初の進め方とお客様の集め方について、どうアドバイスをいただけますでしょうか?

● 回答
事務代行で軌道に乗せるには、進め方に明確なステップがあります。いきなり全メニューを掲げるのではなく、半年は1〜2メニューに絞り込み、その間に既存人脈で実績を積むのが王道です。順序を間違えると、案件は来ても消耗だけが増えていきます。
市場環境は追い風です。矢野経済研究所「BPO市場に関する調査(2025年)」では、2024年度の国内BPO市場規模は5兆786億5,000万円・前年度比4.0%増。非IT系BPO(経理・総務・労務などのバックオフィス業務)だけで1兆9,566億5,000万円に達しています。中小企業がコア業務に集中するため、ノンコア業務を外部委託する流れは年々強まっています。
ステップ1:メニューを2つに絞る
記帳代行・伝票整理・請求書発行・出張手配・ブログ代筆。すべて魅力的なメニューですが、最初から全部を出すと「何屋さんか分からない」状態になります。お客様は「ぼんやり何でもできる人」よりも「ここを任せれば確実な人」に発注します。
- 「すべて代行します」だけのチラシでは差別化できない
- 料金が時給ベースだけだと低単価競争に巻き込まれやすい
- 幅広く受けすぎて納期管理が回らず信用を失う
- 初回見積もりが毎回ゼロベースで時間ばかりかかる
絞り込みの目安は「自分が1時間あたり3,000円以上の生産性で動ける業務」「自分が会社員時代に最も得意だった業務」の2軸です。質問者様の場合、記帳代行と請求書発行の2つに絞るのが現実的でしょう。
ステップ2:既存人脈で実績3件を作る
事務代行は信用商売です。Web広告やSNSで集客しても、最初の半年はほぼ反応がありません。最初の3件は、必ず既存人脈の中から獲得してください。
具体的には、過去の同僚・取引先・地元商工会・経営者の交流会の中から、「個人事業を始めたばかりの社長さん」を探します。先方も最初の事務作業に困っている方が多く、相互に助かる関係になります。
- 過去の同僚・取引先で個人事業を始めた方に声かけ
- 地元商工会・税理士・社労士からの紹介ルート
- 無料相談1時間→単発見積もり→月次契約の段階提案
- 初月は割引でも月次契約で「次の月も発生する仕事」を確保
ここで意識したいのは、最初の3件は「単発の伝票整理」ではなく「月次定額の経理パートナー」へ最終的にスライドすること。単発仕事ばかりだと毎月集客が必要になり消耗します。月次定額契約こそ事務代行の収益基盤です。
ステップ3:STAGE Iから抜け出すための価格戦略
拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』に売上STAGE論という考え方が出てきます。STAGE Iは売上0〜1万円・最初のお客様獲得期、STAGE IIは1万〜10万円・プライドとの戦いの期間です。事務代行の場合、ここで値付けを誤ると半永久的にSTAGE Iから抜けられません。
料金は「時給制」ではなく「月額固定」「成果物単価」を基本にしてください。たとえば記帳代行は月100仕訳まで月3万円、請求書発行は月20件まで月1万5,000円、というように、相場と自分の処理速度から逆算した固定料金を提示します。AIチャットボットや海外外注では難しい「日本語ネイティブの細やかな対応」を訴求できれば、低単価競争に巻き込まれずに済みます。
会員さんの実例:3年目で月25万円に到達した元銀行員
起業18フォーラムの会員Wさん(40代後半・主婦・元銀行員の窓口後方事務)の歩みをご紹介します。子育てが落ち着いたタイミングで、在宅でできる記帳代行を始めたいとご相談を受けました。
1年目は知人会社1社の月5万円からスタート。Wさんは「これじゃ食べていけない」と焦りましたが、地元商工会の事務代行ボランティアを月1回引き受けたところ、半年で紹介が3件入りました。2年目には月15万円に到達。
転機は単発の伝票整理から「月次定額の経理パートナー」への料金体系変更でした。「Wさんに頼めば月次の数字がいつでも見える」という安心感が口コミで広がり、3年目には月25万円超。配偶者の扶養を外れ、事業所得として個人事業主登録をされました。大切なのは派手な広告ではなく、目の前のお客様の困りごとを解決し続ける誠実さです。質問者様もこの順番で進めれば、必ず光が見えてきます。

事務代行はAI時代に再評価されている分野です。だからこそ、価格と信用の設計を最初に間違えないことが、長く続く起業への近道になります。質問者様の最初の一歩は、扱うメニューを2つに絞ること。それが決まれば、お客様の像も自然に見えてきます。
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