記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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私のお勧めしている「会社員のまま起業して準備を進めていく」スタイルでは、基本的には、最初から法人化を考えるよりは、まずは個人事業から始めて「会社を辞めてから法人化すれば良い」とお話ししています。
もちろん、許認可の問題や取引先の都合で法人化が必要になったり、節税目的で法人化を急ぐ人もいると思いますので、その人次第です。
ちょっと視点を変えてみて、「個人事業主のままでいると、どのような不都合が発生するのか?」を考えてみれば、まず言えるのは「信用」です。個人と法人では、同じ一人カンパニーでも雲泥の差があります。そして「責任」です。法人は出資の範囲内の有限責任であるのに対して、個人は無限責任です。そして、事業を拡大したい、或いは、売却したいと考える場合なども、やはり法人化は必須です。
参考:
近い将来、日本の「企業」の数は激減するのではないか。先ごろ中小企業庁がまとめた2016年版「小規模企業白書」を見ると、そんな未来図が予想できる。日本企業の85%は、大企業でも中規模企業でもない、小規模な事業者だ。その6割を法人化していない個人事業者が占めている。(中略)近い将来、日本の雇用形態は、一定以上の規模を持つ企業の正社員と、非正規雇用やフリーランスに二分化されるのだろうか。ただし、小規模な事業者が増えている分野がある。
頑張れ個人事業主(眼光紙背)2016/05/05 日経産業新聞 12面
法人化するメリット
個人事業の場合、取引先の規模や資本が大きい場合、こちらが取引したいと思っても応じてくれないことがあります。代理店やフランチャイズ契約なども、法人のみとしているところは多いです。
ビジネスにおいて、取引先からの信頼を獲得するためには、資本のバックアップは欠かせません。要は個人商店から「株式会社」にすることで、会社の規模がある程度分かり、出資者がいるということになりますので、その分、信用を得やすいということです。
また、もう一つのメリットとして、個人事業は1月1日~12月31日の一年間の収支になりますが、法人の場合は、事業年度を自由に設定できます。繁忙期と閑散期などを知った上で、都合のよい時を決算月にすることができますし、それにより、在庫整理をする時期を決めたり「とにかくこれは売り切る」と経営計画を立てたりなど、動きがわかりやすくなります。
法人化のデメリット
法人化の最大のデメリットは、会社にバレやすくなること、そして、経理・財務処理が非常に煩雑となることです。会社資産の整理、管理から始まり、株式であれば配当金や、出資額の増減、加算と減算による不算入額や超過額の記載、利益を資本に加算することも、明細の提出が求められます。このため、中小企業も含めた多くの会社は、こうした事務処理を外部の会計事務所に頼っていることが多いのです。その経費がかかってくるわけですね。
また規模が大きくなれば、自社で財務、経理部門を持つ必要がありますが、それも人件費が発生します。会計事務所や税理士に全てを丸投げしていると、お金の流れが見えにくくなる、経営者本人が経理や財務に詳しくない場合には、経営実態がわかりにくくなることもあります。そんなどんぶり勘定の会社は、意外と多いのです。
そもそも法人化するべきなのか?
ネットでは「法人化することで節税ができる」という解説がよくありますが、本来、節税とは「不良在庫に税金を払う無駄」や「使わない車両にかかっている税金」などの、無駄なものを削減することなのであって、事業の所得を操作することでは決してありません。
それよりも、事業拡大を考えているとか、新規事業を立ち上げるなどの事業計画のために法人化を検討するといった、健全で前向きな経営をするべきだと思います。
あなたがすでに起業していて、会社を辞めていて、この先3年以内に会社を大きくしたいという計画があるのなら、今が、法人化を検討しておくよいタイミングだと思います。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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