会社の外の収入が勤め先に知られる3つの経路

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

会社の外で少し収入が出はじめると、「これ、会社に気づかれるんじゃないか」という心配が急に大きくなります。給与明細を見るたびに落ち着かない、SNSの投稿を消そうか迷う。そんな声をよく聞きます。

ただ、会社に伝わる道筋は、無数にあるわけではありません。仕組みを先に知っておけば、やみくもに怖がる必要はなくなります。

この記事では、収入を得たときに会社へ伝わる3つの経路を制度に沿って整理し、辞める前に何から手をつけるかの順番までお伝えします。

ポイント 会社に伝わる経路は「税・発信・人」の3つ

伝わる道筋は制度と情報の3経路に整理できる

経理

会社の外の収入が勤め先に伝わる道筋は、大きく3つに絞れます。税金の通知(住民税)、自分の発信(SNSや実名活動)、そして人を介した情報の伝わり方(社内での噂・書類のうっかり)。この3つのうち、制度で決まっているのは住民税だけで、あとの2つは自分の行動でリスクを下げやすい領域です。

だからこそ、まず「どの経路が制度で、どの経路が自分でコントロールできるのか」を切り分けることが大事です。3つの経路のうち、勤め先が自動的に情報を受け取るのは住民税の1つだけです。残りの2つは、あなたの取り扱い方しだいで大きく変わります。

  • 経路① 住民税の通知:
    所得が増えると翌年度の住民税額が変わり、その通知が勤め先に届く
  • 経路② 自分の発信:
    SNS・実名でのサービス公開・知人への告知など、自分で外に出す情報
  • 経路③ 人を介した伝わり:
    同僚への口伝え、取引先との重なり、書類やメールの取り違え

ポイント 経路① 住民税は「所得の種類」で扱いが変わる

給与以外の所得なら自分で納める道を選べる

経理

いちばん多い心配が、この住民税です。仕組みはこうです。前年の所得が増えると、翌年度の住民税が上がります。会社員の住民税は毎月の給与から天引き(特別徴収)されるため、他の人より税額が高いと経理が気づく、という道筋です。

ここで鍵になるのが、給与以外の所得にかかる住民税の扱いです。多くの自治体では、確定申告の際に「自分で納付(普通徴収)」を選ぶことで、事業所得や雑所得にかかる住民税を給与天引きと分けられる場合があります。ただし自治体の運用や所得の内容で扱いが変わるため、申告前に自分の自治体の案内を確認しておくのが安全です。

「給与」で受け取ると切り離せない

ただし、注意したい落とし穴があります。外の収入を「給与」として受け取っている場合、この切り離しは難しくなります。2か所以上から給与を受け取ると、住民税は全部を合算して主たる勤め先で天引きする扱いが基本になるためです。アルバイト契約など給与の形で受け取る場合は、普通徴収にできるかを自治体の最新運用で先に確認してください。

だから、会社の外で収入を得るなら、雇われる形なのか、業務委託や自分の事業として受け取る形なのかを最初に分けて考えると段取りがスムーズになります。ここは制度の分かれ道なので、始める前に押さえておきたい一点です。

ポイント 経路② 発信は「自分で出す情報」だから止められる

実名や勤務先が特定される投稿を先に見直す

経理

2つ目は、自分の発信です。制度と違ってこちらは完全に自分の管理下にあります。実名でサービスを公開する、勤務先が分かるプロフィールで宣伝する、同業のつながりに告知する。こうした情報が回り回って社内に届くケースが、実際にはいちばん多い伝わり方です。

発信そのものを止める必要はありません。準備段階では、勤務先が特定される要素を外しておけば十分です。屋号での活動、本業と離れた分野での発信、勤務先名を出さないプロフィール。この3点を最初に整えるだけで、勤め先に特定される確率はぐっと下がります。

  • 実名アカウントで勤務先と外の活動を両方公開している
  • プロフィールに会社名や部署が分かる情報を残している
  • 本業の取引先と重なる相手に、外の活動を直接告知している

上のような状態は、自分では気づきにくいものです。準備を始めた日に一度だけ、外に出ている自分の情報を見返しておくと安心できます。

ポイント 経路③ 人と書類の「うっかり」が抜け道になる

同僚への口外と書類の取り違えを避ける習慣

ネットショップ

3つ目は、人や書類を介した伝わり方です。制度でも発信でもなく、日常のちょっとした油断から広がる経路になります。よくあるのは、仲のいい同僚につい話してしまう、社用のパソコンやメールで外の作業をしてしまう、請求書の送り先を取り違える、といったパターンです。

これらは制度の問題ではなく、習慣の問題です。外の活動は社内では一切話さない、社用の機器や連絡先は私用に使わない。この2つを最初のルールとして自分に課しておくと、抜け道の大半はふさげます。

もう一点、就業規則の確認も欠かせません。会社の外で収入を得る活動が禁止されているのか、申請すれば認められるのか。ここを知らないまま進めると、後から立場が弱くなります。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は2018年に策定され、その後も改定されています。会社ごとに運用は違うので、想像で判断せず、自社の就業規則と申請手順を先に読んでおきましょう。

ポイント 勤めながら整える順番は「知・人・金」で決める

リスク管理を先に整えてから収入づくりに進む

フリーランス

経路が分かると、次は順番です。ここで役に立つのが、拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』で紹介している「知・人・金」の3つのチカラという考え方です。多くの方は、いきなり「金(収入をつくる)」から動き出します。でも、会社を続けながら進めるなら、順番を入れ替えたほうが安全です。

先に整えるのは「知」、つまり制度と規則を知ることです。就業規則を読み、住民税の扱いを確認し、伝わる経路を把握する。この土台ができてから「人」に相談し、最後に「金」を動かす。収入をつくる前にリスク管理を先に済ませておくと、後で慌てて取り返しのつかない事態にはなりません。

海老原さんが順番を入れ替えて落ち着いた話

電機メーカーの総務で働く海老原さん(40代・男性)は、外の収入が月3万円ほどになったころ、急に不安が膨らんで手が止まってしまいました。「住民税で会社に伝わるのでは」と検索しては消し、投稿しては消しを繰り返していたそうです。自己流で情報を集めるほど、かえって怖くなっていったといいます。

転機は、起業18フォーラムの会員同士の相談でした。先に同じ道を通った会員から「経路は3つしかないし、住民税は自分で納める道がある」と具体的に整理してもらい、ようやく地図が手に入った感覚だったと振り返ります。そこから就業規則を読み、確定申告で普通徴収を選ぶ段取りを確認し、発信のプロフィールを整えました。

リスク管理を先に片づけたことで、収入づくりに使える気持ちの余裕が戻ってきたそうです。半年後には外の収入が月7万円ほどで安定し、いまも勤めを続けながら落ち着いて事業を育てています。総務という立場柄、制度に一度きちんと向き合えたことが、いちばんの支えになったと話していました。

  • 知(先に整える):
    就業規則・住民税の扱い・伝わる経路を確認する
  • 人(次に頼る):
    先に進んだ人に、具体的な段取りを相談する
  • 金(最後に動かす):
    土台ができてから、収入づくりに本腰を入れる

この順番なら、怖さの正体が先に消えます。地図を持って歩けるので、余計な体力を不安に使わずに済みます。

ポイント よくある質問

経路と手続きでつまずきやすい疑問への回答

起業前質問集

Q.普通徴収を選べば、絶対に会社に伝わらないのでしょうか?

事業所得や雑所得であれば、確定申告で「自分で納付」を選ぶ道があります。ただし自治体によって運用に幅があるため、確実にしたい場合は、申告前にお住まいの市区町村の住民税担当に一度確認しておくと安心です。

  • 給与以外の所得なら普通徴収を選べる場合がある
  • ただし自治体の運用で例外もある

Q.まだ収入がゼロですが、今からやっておくことはありますか?

収入が出る前にこそ、土台づくりが向いています。就業規則の確認と、勤務先が特定されないプロフィールの整理は、収入ゼロの段階でも今日から進められます。

  • 就業規則の該当条項を読んでおく
  • 発信のプロフィールを先に整える

ポイント 今日できる最初の一歩

給与明細と就業規則の該当条項を一度だけ見る

point

経路の全体像がつかめたら、あとは自分の状況を一度だけ確かめるところからです。制度は変わりませんが、あなたの勤め先の規則は勤め先にしか書いてありません。

会社員が起業前に確認すべき10項目チェックリスト
会社員のまま起業準備を始めたいと思ったとき、最初の一歩を何にするかで、その後の半年が大きく変わります。多くの方

今日できることは1つだけで十分です。給与明細で住民税の欄がどうなっているかを見て、就業規則のうち会社の外で収入を得る活動に関する条項を1か所だけ探して読んでみてください。金額を計算する必要も、申請を出す必要もありません。自分の会社が何と書いているかを知るだけで、次の一歩の重さがずいぶん軽くなります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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