マネーフォワード クラウドで起業の数字を記録する

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

会社の外で仕事を受けるようになり、通帳の残高は少しずつ増えてきた。ところが、去年いくら稼いで、経費にいくら使い、手元にいくら残ったのかと問われると、はっきり答えられない。確定申告が必要なのかどうかも、あいまいなまま時間だけが過ぎている。数字まわりだけを後回しにしてきた方は、たぶん今そんな場所に立っています。

マネーフォワード クラウド確定申告(株式会社マネーフォワード提供)は、その宙ぶらりんな状態を、記録という土台に変えてくれる道具です。ここでは、会社の外の収入の数字をどこから記録し始めればいいのかを、順番に見ていきます。

ポイント マネーフォワード クラウド確定申告を起業準備に活かす全体像

確定申告を先の準備の土台として捉え直すための全体像

経理

多くの方が、確定申告や帳簿づけを「事業が軌道に乗ってから考えること」だと思っています。売上がまとまってきたら、そのとき税理士に相談すればいい、と。その気持ちはよく分かります。ただ、記録は稼いでから始めるより、稼ぐ前から始めておくほうが、あとがずっとラクになります。

国税庁の案内(No.1900)では、給与を1か所から受け取り、その全額が源泉徴収の対象となっている人が、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計で年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。会社の外で受けた仕事も、売上から必要経費を引いた所得で判断します。20万円という線は、思っているより早くまたぐことがあります。そのときに一年分の領収書を前にして青ざめるか、記録が手元に整っているかで、確定申告の重さはまるで違ってきます。

残された時間から逆算して記録を始める

拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』に、4,500日という考え方があります。人生はおよそ3万日、そのうち睡眠や仕事の時間を除くと、自分で自由に動かせるのは約4,500日ほどだという見方です。

この限られた時間の「今」から数字を記録し始めるかどうかで、確定申告の慌てぶりも、数年後に手元へ残る事業の記録も変わってきます。完璧な帳簿ができるのを待つ必要はありません。動かせる時間があるうちに、まず一件の入金から記録に載せていく。それが会社の外の仕事のお金まわりの土台になります。

確定申告は、稼いでから向き合うものではなく、記録から始まるものです。

ポイント 記録の仕組みが向いている人・向いていない人

クラウドで記帳する仕組みが合う人と合わない人の違い

経理

道具には、合う場面と合わない場面があります。優劣ではなく、今の自分の状況に合うかどうかで選ぶのが確かです。

クラウドで記帳する仕組みが向いているのは、会社の外の所得が20万円に近づいてきた人、入金と支払いの回数が月に何件もある人、そして数字が苦手で手作業の集計を続けたくない人です。銀行口座やクレジットカードと連携しておけば、明細が自動で取り込まれ、手入力の手間が大きく減ります。

反対に、収入がまだ年に数回で数千円という段階なら、ノートやメモで十分に管理できます。すべてを紙で把握し切れている人も、無理に切り替える必要はありません。ただし、収入の件数が増えて手作業が追いつかなくなる前に、仕組みへ移す準備だけはしておくと安心です。

主なクラウド会計を並べて比べる

会計クラウドは、いま主要な選択肢がfreee会計、弥生会計オンライン、マネーフォワード クラウド確定申告の三つです。

freee会計は簿記の知識がなくても進められる設計で、経理経験がない人ほど迷いにくい面があります。弥生会計オンラインは長年にわたる会計ソフトの実績と初年度無償キャンペーンで、コストを抑えて始めたい人と相性がいい選択肢です。マネーフォワード クラウド確定申告は、銀行・カード・証券口座など2,400以上の金融機関サービスと連携できる広さと、家計簿サービスとの地続きさが強みで、複数の口座やカードにまたがって数字を追いかけたい人に向いています。なお、2026年5月にセキュリティインシデント(GitHubへの不正アクセス)の影響で銀行連携が一時停止しましたが、同年6月5日にすべての銀行との連携が再開しています。

会社の外の入金経路が複数の口座やカードにまたがりやすい会社員には、この連携先の広さがそのまま手作業の少なさになります。

ポイント お金の記録で会社員がつまずく3つの失敗

記帳の準備でよく起きる失敗とその抜け出し方

経理

数字を後回しにしてきた方が、確定申告の直前につまずくところは、だいたい決まっています。先に知っておけば避けられます。

  • 領収書をためて直前にまとめて処理しようとする:
    半年前の支払いが何のためだったかは、意外と思い出せません。経費の入れ忘れが起き、払わなくていい税金まで払うことになります。入金と支払いは、その都度取り込むのが結局いちばん早い方法です。
  • 事業のお金と生活のお金を同じ口座で混ぜる:
    どれが仕事の経費で、どれが私用の買い物かが分からなくなり、仕分けに時間を取られます。会社の外の入金と支払いをまとめる口座を、一つ分けておきます。
  • 完璧な帳簿を目指して手が止まる:
    簿記を全部覚えてから、と構えるほど、始める日が遠のきます。まず先月の一か月分だけを記録し、分からない項目は動かしながら整えていきます。

三つのうち、今日すぐ直せるのは口座を分けることです。事業用の入金と支払いを一つの口座にまとめるだけで、あとの記録が驚くほど軽くなります。

ポイント 和久田さんが数字と向き合えるようになるまで

記録を後回しにしていた会員が土台を作るまでの記録

経理

起業18フォーラムの会員に、和久田さん(仮名・30代)という方がいます。メーカーに勤めるかたわら、頼まれてWebサイトやチラシの制作を請け負ってきました。制作の入金は1件5〜15万円台、月に1〜3件のペースで、年間で30〜80万円ほどの副収入が動くようになり、素材やソフトへの支払いも重なっていきます。

ところが、そのお金の記録は、ばらばらのままでした。入金は通帳に残るだけ、経費の領収書は封筒に押し込むだけ。一年が過ぎたとき、和久田さんは自分がいくら稼いでいくら残したのか、まるで説明できないことに気づきます。確定申告が要るのかどうかも判断がつかず、封筒の中身を数えては、ため息をつく日が続きました。

手応えが出はじめたのは、起業18フォーラムの勉強会に足を運ぶようになってからです。会場では、売上がまだ固まらないうちから入金や支払いを都度数字に残している会員が何人もいて、記録が”稼いだあとに整えるもの”ではないと目の前で示されました。

数字は、稼いでからまとめるものではなく、動いたその都度、数として残しておくものだと知ったのです。確定申告を軌道に乗ってからの話にして先送りしてきた自分の癖が、そこではっきり見えたといいます。残された4,500日という話も、そのとき腑に落ちました。

勉強会のあと、和久田さんはマネーフォワード クラウド確定申告に事業用の口座とカードを連携し、明細を自動で取り込む形に切り替えます。月に一度、30分だけ数字を見る日を決めました。

9ヶ月目には、月ごとの売上と経費の推移が一画面で追えるようになり、確定申告の書類づくりも慌てずに終えられました。積み上がった記録は消えずに残り、翌年は開業届と青色申告に進む土台になりました。数字が読めるようになったことで、次にどの仕事をいくらで受けるかも、感覚ではなく記録を根拠に決められるようになっています。

ポイント クラウド確定申告と組み合わせて準備を進める3つの行動

記録の仕組みを確定申告の前進につなげる三つの行動

経理作業をする女性

記録の道具は、置いておくだけでは働きません。次の三つと組み合わせると、確定申告の準備が前に進みます。

  • 事業用の口座を一つ用意して連携する:
    会社の外の入金と支払いを一本化し、銀行やカードと連携しておくと、明細が自動で取り込まれます。仕分けの手間が減り、記録が続きます。
  • 月に一度、数字を見る日を決める:
    30分でかまいません。売上と経費をその月のうちに確認する習慣が、確定申告直前の山積みを防ぎます。
  • 所得が20万円を超えそうなら申告方法を早めに決める:
    継続して事業として伸ばすなら、開業届と青色申告承認申請も検討します。正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳し、貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付のうえe-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存の要件を満たすと、令和8年分(2026年)は最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。なお令和8年度税制改正により、令和9年分(2027年)以降は最大75万円に引き上げられることが決まっています。また、青色申告承認申請書は申告しようとする年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内)に税務署へ提出する必要があるため、伸びてから慌てないよう手前で準備しておくと安心です。

まずは先月の一か月分だけ、口座を連携して明細を取り込んでみてください。ひと月分を入れてみるだけで、自分の収入と経費の形が数字で見え、この方法を続けられそうかどうかも判断できます。年払いなら月900円から使える料金プランもあり、始めの一歩の負担は重くありません。

数字が苦手なままでも、起業準備は進められます。手作業で完璧を目指すのではなく、記録は仕組みで自動化して、自分は月に一度それを眺める。その形さえ作っておけば、確定申告は身構える相手ではなくなります。

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ポイント よくある質問

記帳や確定申告の準備でよく寄せられる疑問

起業前質問集

Q.会社の外の収入がまだ少なくても、今から確定申告ソフトを使う意味はありますか?

あります。記録は稼いでから始めるより、稼ぐ前から続けておくほうが、あとがラクになります。給与所得・退職所得以外の所得合計が国税庁の定める年間20万円の線を超えたとき、記録が手元に整っていれば、確定申告は書類をまとめるだけで済みます。年払いなら月900円から使えるプランもあるので、金額の面でも早く始める負担は大きくありません。

Q.マネーフォワード クラウド確定申告を使えば、税理士に頼まなくても確定申告できますか?

多くの方は、銀行やカードを連携して明細を取り込み、案内に沿って青色・白色どちらの申告書類も作成し、電子申告まで進められます。ただし、税額の判断や特殊な取引の扱いで迷う場面は出てきます。そこは無理をせず、管轄の税務署の相談窓口や税理士に確認してください。道具と専門家は、どちらかではなく組み合わせるものです。

Q.青色申告と白色申告、起業準備の段階ではどちらがいいですか?

収入がまだ数千円で年に数回なら、白色申告や簡単な記録で十分です。会社の外の所得が20万円に近づき、これから伸ばしていくつもりなら、青色申告への切り替えを考える価値があります。正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳し、貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付のうえe-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存の要件を満たすと、令和8年分(2026年)は最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。さらに令和8年度税制改正により、令和9年分(2027年)以降は最大75万円に引き上げられることが決まっています。青色申告には事前の届け出が必要(申告しようとする年の3月15日まで、または開業日から2か月以内に承認申請書を提出)なので、伸びてから慌てないよう、手前で準備しておくと安心です。

Q.最初に何から確認すれば失敗しにくいですか?

会計ソフトを入れる前に、まず直近1か月の入金と支出を、通帳とカード明細を並べて紙に書き出してみてください。件数と金額の傾向、事業のお金と家計が混ざっている口座、月の中で忙しくなる時期がはっきりします。それが分かってから、どの口座・カードを連携するか、どの費目から仕分けを整えるかを決めると、導入した日から回り始めます。順番を逆にすると、明細だけが山積みになって、二度目に開くのが億劫になります。

ポイント 今日できる一歩を決める

読み終えた今日に確認する最初の行動を決める

point

口座を連携する前でも、今日から動ける手前の一歩があります。会社の外の入金や支払いのなかには、家計の支出と地続きになりやすい費目があります。連携より前に、その混ざりやすい場所を頭のなかで一つ思い出しておくと、あとで仕組みを入れる作業が軽くなります。

今日は、この一か月の支出のなかから、事業のお金と混ざりそうな費目を一つだけ思い出してみてください。通信費でも交通費でも、頭に浮かんだ一項目でかまいません。混ざりやすい場所が具体的に見えれば、口座を分ける優先順位も自然と決まります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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