記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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終身雇用、年功序列はすっかり無くなったかと言えば、まだそうでもない日本。ですが、従業員側が自ら新天地を探して組織を去っていくことは当たり前になりました。
会社にしがみつくよりは、リスクがあっても、自分の力で未来を切り拓いていきたいという人も増えているのです。
ですが、独立には、事業に失敗するリスクや、収入が不安定になるという心配が付いて回ります。そのリスクをできるだけ抑えるために必要なのが「経営計画」です。
ここでは独立を考えている人、具体的に動き出している人に向け、ヒントとなる情報や気をつけたい「経営計画」のポイントを解説します。
独立するなら経営計画を立てることが必須
独立を考えるのであれば、経営計画を必ず策定しましょう。
独立をすると自分自身にすべての責任がかかってきます。「あれをしなさい」「これをしなさい」と言ってくれる人はいません。自分自身で考えて、自分自身で決定していかなければなりません。
独立後に自分自身の判断の拠り所となるものであり、事業の目指すべき点を示すものが経営計画です。
経営計画とは?
経営計画とは、会社の中長期的なあるべき姿を全社的・戦略的・中長期的な目線からまとめた計画のことです。簡単に言うと「こういう事業をしたい」「将来こういう会社にしたい」という計画です。
経営とは「継続的に事業を行うために必要な手立てを打つ」ことですが、何かある毎にその場限りの対応を繰り返していても、前に進みません。「将来こういう会社にしたい」という姿に近付いていくためには、将来なりたい姿を明確に描いて、そこに向けて活動していく必要があります。
もちろん、経営計画はなくても独立することはできます。会社を退職して、開業届を税務署に提出すれば開業できます。融資を受ける予定がなければ、最初はそれでも良いかもしれません。
ですが、それは地図を持たずに航海に出るようなもの、設計図を作らずに家を建てるようなものです。もちろん、頭の中にあれば良いのですが、忘れてしまったり、いつの間にかおかしな方向に行ってしまう可能性もあります。
独立するということは、一人ですべての責任を負うということです。これまでは上司に判断を仰いでいたもの、マニュアルに従って判断していたものを、自分自身で判断しなければなりません。忙しい中、次々判断を求められる中でブレないようにするには、ざっくりでも計画が必要なのです。
経営計画のメリット
経営計画を策定することのメリットは、大きく4つあります。
頭の中を整理できる
独立にあたっては、検討しなければならないことがたくさん出てきます。事業のことはもちろん、家族のこと、現勤務先のことについても考えなければなりません。
これからの展開に期待や希望が膨らむだけでなく、不安な気持ちも広がり、プレッシャーで押しつぶされそうになるかもしれません。
経営計画を策定することで、混乱する頭の中を整理することができます。どんな人でも、頭の中だけで全てのことを整理するのは不可能です。課題を書き起こしていくことで、しっかりと検討できている点と、これから詰めなければならない点が明確になり、不安を解消できるきっかけになります。
理念が明確になる
なぜ独立するのか、将来的にどういう会社にしたいのか、繰り返し考えるなかで、理念やビジョンがよりブラッシュアップされます。
本当にやりたいことを突き詰めて考えることで、モチベーションを高めることもでき、より伝わりやすいメッセージにすることができます。
独立すると、常に順調というわけにはいきません。苦しい場面もあれば、どうしたら良いのか分からなくなる場面もでてきます。規模が大きくなった時や、忙しくなった時、方向性にブレが生じ掛けた時にも、もう一度「なぜ独立するのか」「将来どんな会社にしたいのか」を振り返り、立ち位置や目指すべき場所を確認することができます。
取り組むべき課題が明確になる
現状の把握や分析を行う中で、あるべき姿とのギャップが浮かび上がってきます。
売上を5年後にここまで持っていくのに必要なものは何か、新たな取引先を開拓する必要があるのか、既存の取引先を深堀するのか、プロモーションを強化するのかなど、取組課題の優先順位をつけやすくします。
がむしゃらに目の前の問題に当たっていくだけではなく、現在の姿とあるべき姿を示し、そのギャップを明確にしていきます。経営資源も時間も有限です。その中でまずはどこから手を付けるかを整理することができます。
関係者に対する説得力が高まる
独立に当たっては、自分で考えるだけではなく、関係者に対して「これから何をしようとしているか」「なぜ独立するのか」などの説明が必要になる場面があります。
まずは家族に対して「どんなことを考えているのか」「将来どのようにしたいのか」を説明しなければなりません。また金融機関や取引先に対しても、良好な関係を築き、支援をしてもらわなくてはなりません。
口頭で説明するだけでは、部分的にしか伝わらないことがあります。経営計画を策定し、筋道立てて丁寧に説明することで、より理解してもらえるようになります。
経営計画策定のデメリット
経営計画策定は、戦略をまとめる上で欠かせませんが、反対にデメリットもあります。
時間がかかる
経営計画の策定には、時間も労力もかかります。税理士やコンサルタントなど、慣れている人が策定しても時間が掛かるものです。会社員としての本業をやりながら、自分の事業の経営計画の策定に取り組むということは、中々大変な作業です。
考えすぎてしまう
計画の中身を真剣に考え過ぎてしまい、身動きが取れなくなってしまうことがあります。分析に時間をかけるのは悪いことではありませんが、机上の議論であることも事実です。やってみないとわからないポイントだらけですので、答えを出すことにこだわり過ぎないようにしましょう。
計画だけで満足してしまう
経営計画をまとめた達成感で、満足してしまうことがあります。
重要なことは計画を実行することであり、目標を達成することです。経営計画自体は、あくまでもスタート地点であるということを、肝に銘じなければなりません。
経営計画と事業計画の違い
「経営計画」と似た言葉に「事業計画」があります。この2つはどこが異なるのでしょうか?
経営計画とは、会社の「中長期的なあるべき姿をまとめた計画」なのに対して、事業計画は「経営計画で立てた目標を達成するための部門別計画」を作成するものです。経営計画→事業計画→行動計画に落とし込まれます。
独立の際に作る経営計画の場合は、経営計画と事業計画に大きな違いはありません。創業計画・創業時事業計画と呼ばれることもあります。
経営計画の立て方4つのポイント
経営計画に盛り込む項目は、以下のようになります。
- 会社概要(代表者の経歴・資格)
- 経営理念
- 自社のアピールポイント
- ビジネスモデル
- マーケット分析
- 主な販売先
- 主な仕入先
- 取引金融機関
- 取扱商品
- 収支計画
- 資金調達計画
経営計画は、それを提出する相手より、少しずつ盛り込む内容が変わることがあります。中心となる部分は変わりませんが、内容についてポイントの置き方が変わります。
たとえば、家族に説明する時には、独立の動機にウエイトが置かれたものが必要になります。どうして独立したいのか、将来どんな会社にしたいのかという点です。出資者や金融機関に説明する時には、数値計画の部分にウエイトが置かれたものになります。どのような収支計画なのか、その根拠となるものは何かといった具合です。
経営計画は、将来なりたい姿を示すための行動計画と、現実的に数値として達成すべき目標を示す数値計画から成り立ちます。行動計画を示すためには現状分析と、あるべき姿を明確にし、そのギャップに対するアクションプランを示します。
経営計画を立てるには、大きく4つのステップに分けて考えましょう。
内部分析
まずは経営理念を始めとした、自社の内部分析を行います。
◆経営理念
経営計画の元になるのは経営理念です。経営理念とは、経営者の仕事に対する考え方を言葉にしたものです。経営理念を明確にすることで、出資者や取引先、従業員や顧客に対して、自社のメッセージを伝えることができます
◆独立の動機
なぜ独立するのか、どんな会社にしたいのかを定義することから始めます。独立する動機を突き詰めて考えていくことで、会社の将来なりたい姿が可視化されてきます。家族に説明する際や、現在の勤務先に説明する際には、この辺りのポイントが大切になります。
◆概要
代表者の経歴や実績、所在地、従業員数、資本金など基本的なデータを示します。独立したばかりの人は、何も信用がない状態からのスタートなので、これまでの仕事や、それによって身につけた能力をアピールすることは、相手から信頼を得るための重要な情報になります。
◆マネジメント
独立すると「会社の力=経営者自身の力」と捉えられます。これまでの経歴や実績を棚卸し、どんな点が強みとして活かせるのかを把握しておくと良いでしょう。
- 会社員として学んだスキルは?
- どんな場面でそのスキルを活かせるか?
- どんなコネクションを持っているか?
- 楽しいと感じることは?
- やる気が高まるのはどんな時か?
こうして考えていくことで、自分自身の強みがわかってきます。友人や知人からフィードバックを受けることも、自己分析に役立ちます。
◆事業内容
取り扱う商品やサービスには、どんな特徴があり、他社の商品やサービスに比べて、何が優れているのか、または劣っているのかを分析します。
- 販売先
- 単価設定
- 販売数量
などの分析を行います。
すでに顧客を獲得している場合は、アンケートやインタビューを行うと、よりリアルな分析が可能になります。仕入や販売方法の特徴も分析すると、他社との差別化がしやすくなります。
◆主な販売先
大口の取引先があるのか、購入者の年齢層はいくつなのか、シェアはどのくらいかなどを調査します。この販売先に対して深めていくのか、新たな販売先を見つけなければならないのか、見極められるようになります。
◆主な仕入先
原材料や仕入れのルートについての情報です。安定的な商品供給のためには、仕入れルートの安定が欠かせません。また、支払い条件についても整理しておきましょう。
外部分析(環境分析)
次に自社を取り巻く環境を分析します。
市場全体のボリュームがどれくらいあるのか、市場は今後拡大していくのか、競合他社の動向はどうなっているのか、などの分析を行います。
◆マーケット分析
人口動態などは、オープンデータから導き出すことができます。また業界誌などでも、分析データを掲載していることがあります。
- 市場規模はどれくらい見込めるか
- 今後の成長性はどれくらい見込めるか
自社での調査には限界もありますが、大まかな流れは掴んでおきましょう。
◆競合調査
店舗であれば、近隣にライバル店がどれくらいあるのかは、しっかり調査しましょう。実際に足を運んで、競合店の品ぞろえや特徴、接客、客単価などを含めた情報を得ておきましょう。
自分自身の目で見て集めた情報には説得力があります。
将来の目標
将来的に目指すべき地点を示します。年数のスパンとしては、10~20年先よりは3~5年の方が現実的でしょう。10年、20年先となると、環境も大きく変わってしまい、今策定している経営計画の前提条件が変わっている可能性があります。まずは3~5年先を見据えて、自社の売上規模や従業員数などの数値目標を立ててみましょう。
ポイントは「できるだけ具体的な数字を掲げること」です。目標は具体的であればあるほど、経営計画の効果が期待できます。その数字の根拠となった算出方法を記載しておけば、達成や未達の要因がわかりやすくなります。
たとえば、売上が計画に届かなかったとしても、売上=単価×数量×リピート回数であれば、どのパラメーターが足らなかったのかが見えてきます。仮に数量が足らなかった場合には、どのセグメントの数量が足らなかったのか、単価が足らなかった場合には、平均単価が低かったのか、価格帯によるばらつきはあったのかなど、分析の足掛かりができます。
目標を達成するまでの手順
立てた目標をどのように達成していくかを考えます。
- 自社の強みを生かす
- ごく狭い分野や専門分野に特化していく
- 差別化できるエリアや年齢層、チャネルなどを絞り込んでプロモーションする
- 認知度を上げる
- ネット広告やSNSを活用する
- 対面営業を強化する
自分だけで考えるのに限界がある場合は、税理士やコンサルタントとも相談し、アイデアを練り上げることも必要です。
収支計画
事業の収支計画を作成します。
提出する先により項目は変わってきますが、売上・原価・経費内訳・利益は記載しておきましょう。それぞれの数字には、根拠の計算式を入れておくと理解しやすくなります。
独立後2~3期程度の収支計画を作成します。無理に最初から黒字の計画を作成する必要はありません。一般的に、独立当初は、収支は厳しくて当たり前です。単なる数字合わせでは意味がありません。
特に金融機関宛の場合は、根拠のある数字を元に作成しましょう。
まず、売上の根拠となる単価・数量を記載します。可能であれば商品別・顧客別などの分析があると理解しやすいです。売上が増加していく計画の場合、その要因(数量・単価・商品)などを補記します。
次に仕入原価です。想定している原価率も記載します。給料と福利厚生費を含めた人件費は「従業員人数×一人あたりの年収」を記載します。
販売管理費とは、家賃や水道光熱費などの経費です。わかる範囲で結構ですが、想定している経費を記載します。
最後に、売上から経費項目を差し引いた金額が利益です。金融機関に提出するものであれば、下に行を追加、借入の年間返済額を記載し、計画している利益の金額で借入返済が可能であるかどうかがわかるようにします。
資金計画
独立に伴う資金計画を記載します。資金計画は、必要な資金(要資)の内訳と、その資金の調達方法に分けて記載します。
設備資金は、事務所や店舗の改装資金や、自動車、インテリア、什器、パソコンや事務用品の購入に掛かる資金を記載します。運転資金には、材料仕入、経費支払いや給料などに必要な資金を記載します。
自己資金の欄には、預貯金など本人が準備した資金を記載します。返済の必要がない資金です。
銀行借入には、金融機関からの借入資金を記載します。返済方法も記載しておくと理解しやすいです。その他借入欄には、金融機関以外の借入(親族・知人など)をが記載します。返済方法も記載しておくと理解しやすいです。
経営計画を立てた次にやるべきこと
経営計画を立てたら、次にして頂きたいことがあります。現在の勤め先を退職する前に抑えておきたいポイントです。
家族の理解を得る
経営計画を立てたら、まずしたいのが「家族の理解を得る」ことです。大きなハードルの一つでもあり、家族の反対で独立を断念する人も少なくありません。本人はチャレンジしたいという気持ちがあっても、家族にとっては生活を維持できないかもしれないリスクになるからです。
独身であれば本人だけの問題ですが、特に子供が生まれていたら、それだけでは済みません。家族に説明する際には「なぜ独立を考えているのか」「こういう仕事をしたい」「将来、利益はこれぐらい出せる」という、まさに経営計画を丁寧に説明する必要があります。
また、独立当初は従業員を雇うことは難しいです。家族の力を借りる場面も出てくると思います。実際、家族の協力なしでは成り立たないのです。
会社員という立場は、多少不自由で窮屈かもしれませんが、給料以外にも目に見えない点で恵まれている点があります、健康保険や厚生年金、会社の福利厚生などです。独立したらこれらの恩恵は受けられません。全額自分で負担です。
また、開業直後から会社員時代と同じ収入を得ることは簡単ではありませんし、売上が立っても、現金化するまでには時間が掛かるので、資金繰りに苦労することもあるでしょう。経費支払いは、毎月お構いなしにやって来るからです。
「大丈夫だから任せておけ」では通用しません。反対に収入が下がるかもしれないことを話し、協力をお願いする方が良いでしょう。
現在の勤め先の理解を得る
また現在の勤め先との関係についても同様です。
これは転職の際にも言えることですが、後ろ足で砂を掛けて出ていくような退職の仕方は避けるべきです。「立つ鳥後を濁さず」で、円満退職すれば、元の職場の人が良き応援者となってくれる可能性もあります。仕事のスキルを生かしての独立であれば、業務委託などで関係を続けられることもあるでしょう。
そのためには、後任者との引継ぎを丁寧に行うことや、退職までは独立後の話を内外でしないこと、独立準備と思われることを周りから指摘されないように気を付けましょう。
撤退するラインを決めておく
一応、最悪のシナリオを想定しておきましょう。
万一、事業が失敗した場合、何年間は頑張る、もしくは、預金残高がこれくらいになるまでは続けるなど、撤退ラインを決めておきましょう。逆に考えると、そのラインに達する前に必死で取り組まなければなりません。
ローンは早めに組んでおく
これは経営計画とは少し離れますが、住宅ローンやカードローンの申込みは、独立までに済ませておきましょう。
独立するとローンの審査は通りにくくなります。独立直後はほぼ無理と考えて下さい。何かの購入にローンを組みたい場合には、早めに申し込みをしておきましょう。
また、万一のための借入枠として、カードローンを設定しておくことも検討してみましょう。
計画性のない独立のリスク
計画なく独立をすると、どうなってしまうのでしょうか? ここからは計画性のない独立のリスクについて説明します。
計画性のない独立のリスク
計画性のない独立のリスクについては、言うまでもありません。地図を持たずに山登りをするようなものです。十分な準備をせず、近所を散歩する格好で富士山に登っても、無事に帰ってくることはできません。
もちろん、計画がなくても独立することはできます。行き当たりばったりでも、その場その場で判断しながら進めていけば、うまくいくこともあります。
たとえば・・・
- カンが良い
- 運が良い
- 環境が恵まれている
- 有力なコネクションがある
上のような人もたくさんいるため、計画性のない独立が必ず失敗するとは言えませんが、一部の天才に限られたことです。
計画性のない独立とは?
ここからは、計画性のない独立をしてしまう、典型的なタイプをご紹介します。
現実逃避型
「今の会社が合っていない」「自分がやるべき仕事ではない」「これを続けても未来がない」と、逃げからスタートして独立を検討するタイプです。それ自体は強いモチベーションになるため問題ないのですが、気持ちが落ち着いたら、独立後に視点を当て、しっかり準備することが大切です。
ひらめき型
「良いアイデアが思いついた!」「絶対に儲かる!」と、ひらめきを頼りに、勢いで独立してしまうタイプです。アイデアは良いのですが、リサーチ不足だったり、誰に・いくらで・どうやって提供していくか、どのように展開するかという戦略作りが後回しになっていることがあります。
理想追求型
「こんなお店を作りたい」「こだわりを実現したい」と、理想の姿に関心が向き過ぎて、現実的な数字が分からなくなってしまうタイプです。初期投資額が大きくなり過ぎることがあり、結局、動き出せないことがあります。
計画性がないまま独立すると?
計画性がないまま独立すると、事業に歪が生まれます。ここでは、その歪を具体的に見ていきましょう。
判断の軸がぶれる
行き当たりばったりで仕事をしていくと、物事の優先順位が分からなくなり、判断がブレやすくなります。忙しくなっても、将来の目標や、あるべき姿は、しっかりと定めておきたいところです。
不要な投資が増える
無計画な経営をすると、結局は使わないものに投資してしまったりと、無駄が増えます。限られた資金ですから、不要な投資は避けたいところです。何にどれくらいの資金が必要か、しっかり見極めておかなければなりません。
余計な時間がとられる
ビジネスは百発百中はあり得ませんし、トライアンドエラーが必要です。
ですが、先ほどの不要な投資と同じように、行き当たりばったりの経営では、資金だけではなく余計な時間も取られることになります。自分で穴を掘って埋めるような仕事をしていては、コア業務に集中する時間が確保できなくなります。
勝ち目のない戦いに臨んでしまう
過当競争になっている市場に参入していく場合は、上手に差別化を図ってかなければ、生き残れません。市場全体が縮小傾向にある場合は、いくら頑張っても売上を増やしていくことが難しくなる場合があります。
消耗する
不要な資金や余計な時間を取られ、結局は振り出しに戻るようなことを続けていると、やがて心身ともに消耗してしまいます。
会社員とは違い、安定的な収入もなく、日々減っていく預金残高を見るのは想像以上につらいものです。「何のための独立だったのか」と考えてしまい、前向きな発想ができなくなってしまいます。
勝ち続けることができない
仮に、スタートダッシュは上手くできたとしても、続かなくては仕方ありません。独立は短期決戦ではありません。楽観的に進めることも重要ですが、ある程度リスクシナリオも考えておかなければなりません。
計画性のない独立をしないために
計画を一気に全部作ろうと思うと、時間も労力もかかります。まずは、できるところから作ってみましょう。箇条書きでも良いので、頭の中を少しずつ整理してみましょう。
幅広い項目を網羅する
経営計画にはテンプレートがあります。経営の全体像を把握する上で必要な項目が設定されています。必要な項目は一通り埋めて、空欄は作らないようにしましょう。
完璧を目指さない
最初から完璧な計画はできません。完璧を目指さず、まずは頭の中で考えていることを出していきましょう。他の項目について考えたり、何度も読み返したりするなかで、完成に近づけていけば良いのです。
時間をかけて練り上げる
一度作成した計画も、後日改めて読み返すと、追加したい点などが出てきます。作成してそれで終わりとせず、何度も修正、追加をしながら計画を練り上げましょう。
他人のアドバイスを受ける
他の人にも見てもらいアドバイスをもらってみましょう。他人からのフィードバックを受けることで、自分では気付けなかった部分が発見できます。
また、完成してからアドバイスを受けるよりも、50~70%の段階の方が軌道修正しやすいので、途中でも構わず意見を求めてみましょう。
独立する前に事業を始めるとは?
独立を考える時に気になるのは「失敗した時のリスク」と「収入の不安定さ」です。会社員であれば、多少仕事でミスがあったとしても、解雇されることはありません。また、歩合制の人を除けば、成績が悪くてもお給料がもらえます。
一方で、独立をすると、うまくいった時には、仕事の成果が収入としてダイレクトに反映されます。反対に、上手くいかなければ、事業として立ち行かなるだけでなく、日々の生活にも大きく影響してしまいます。
こうしたリスクや不安材料を減らしながら、事業を立ち上げる方法が、会社員のまま始める独立準備です。毎月の給料を受け取りながら、副業としてビジネスを立ち上げて、独立のタイミングをうかがうやり方です。
もちろん、副業をするのは独立を目指す人だけではありません。お小遣い稼ぎの人もいれば、スキルアップのためにやる人もいます。独立を目指す場合には、目先の利益をポケットに入れるのではなく、事業に再投資し、独立に向けて準備を進めていくことになります。
独立前にビジネスを始める
副業で独立に向けて準備をするとは、どういうことでしょうか? 副業は会社員として働きながら、本業以外の仕事を行うことですが、独立を目指す場合には、その進め方が異なってきます。
副業は、下請け仕事を引き受けたり、転売をしたり、一時的なお小遣い稼ぎです。独立を目指す場合には、そのような働き方ではなく、自ら事業を興し、仕組み作りをしていくことになります。
会社を辞める前に事業を始めるメリット
会社員として働きながら、副業として独立の準備をすることですが、それにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
独立前に顧客を確保できる
独立したら、売上がなければ生活が成り立ちません。独立する前に事業を始めておくことで、顧客を集めておくことができます。
独立はしたが、顧客が集まらずに苦労するケースは多くあります。そうした不安をなくすためにも大切なポイントです。採算ラインまでいく期間を短くできれば、資金の負担も少なくなります。
収入が増える
独立前に事業を始めておけば、そこからの所得も発生します。
もちろん、本来は事業に再投資して欲しい売上ですが、多少のお金が手元に残った方がモチベーションも上がるというものです。
軌道修正できる
事業は、実際にやってみると学ぶ事がたくさんあります。一見華やかに見える仕事でも、実際にやってみると、課題がたくさん見つかるものです。雑務に追われることもあります。
会社を辞めていなければ、軌道修正は簡単です。学びなおす時間も確保できます。
本業でもスキルが生きる
本業と近い業務であれば、自らの事業を通して、さらに知識の深堀りができます。
規模は小さいにしても、実務を全て一人ですることになりますので、これまでとは異なった視点で仕事を見ることができるようになります。
デメリットも理解しておこう
独立をする前の事業立ち上げには、デメリットもあります。このデメリットを理解しておかないと、計画が頓挫する恐れがあります。
体力的・精神的負担が増える
副業に充てられる時間は、会社員の仕事が終わって帰宅してからの時間や、休日の時間に限定されます。おのずとプライベートの時間が削られ、場合によれば睡眠時間も削られことになります。
またこちら側は副業ですが、取引する相手にとっては本業も副業も関係ありません。納期や締め切りは、厳守しないと信用問題です。当然、仕事の質も求められることから、精神的にもプレッシャーがかかります。
独立するタイミングが延びることがある
事業が軌道に乗ると「会社員のままでもできる」ことが分かると思います。独立に対する思いがなくなるかもしれません。
「なぜ独立するのか」ということに立ち返りますが、独立に対しての強い意志がない場合には、本業の収入を断って独立するのがもったいなくなり、独立するタイミングは延びてしまうことがあります。
独立に適したタイミングとは?
独立を考える際に一番迷うのが、そのタイミングです。事業の成否が生活に大きく影響することから、独立を考える際には、収入の安定が大きなネックとなります。では、独立に適したタイミングとは、どんなタイミングでしょうか
簡単に言うと、自分のタイミングで独立を決断しても、独立は成功しません。まずは、売上が立つこと、そして、必要な資金が確保できることです。
独立に年齢は関係ない
まず、独立に適したタイミングを考える上で、年齢は関係ありません。どんな年齢でも独立に適した時期があり、反対に気をつけなければならない時期もあります。
年齢により、独身・結婚・子育て・退職後、介護など、様々なライフサイクルに分けることができ、それぞれの年代に特長があります。
- 若く体力がある
- 新しいものへの吸収が速い
- 扶養家族が少ない
- 固定観念が少ない
- 社会人経験が浅い
- 体力的には問題ない
- 業務知識や経験を積んでいる
- 新しいものにも対応できる
- プライドが高い
- 時間がない
- 業務知識や経験が豊富
- 人生経験が豊富
- 資産の蓄積がある
- プライドが高い
- 頭が固い
- 根気がない
このように、特にどの年齢が良いという訳ではありません。
売上の見込みが立ったら辞め時
独立するからには、売上が立たないことには話になりません。売上の見込みが立ってから独立することが大切です。どのくらいの売上が立てば良いのかですが、個人事業ならば、目安は本業の収入との比較です。
手残りが本業の収入を上回ったら、一つのタイミングです。副業の時間当たりの収入が、本業の時間当たりの収入を上回っていることが確認できて、さらに、顧客数を増やせる見込みがあれば、絶好のチャンスです。
売上の柱となる顧客との契約ができているならば、もう迷うことはないでしょう。
外部環境が整ったら辞め時
たとえば、オリンピック前のタイミング、万博前のタイミング、インバウンドが好調なタイミングなど、大きなイベントが予定されている時や、トレンドに合わせて大きなチャンスが回ってくる場合です。
こうした場合は、専業となり一気に売り上げを増やす、シェアアップを図らないと、チャンスを逸してしまいます。
人との巡り合わせでも判断できる
独立には、人と人とのつながりが大切です。一人で独立すると言っても、現実には人とのつながりの中で仕事は展開していきます。営業にしても、資金調達にしても、独立前に培った人脈や人間関係から、ご縁をいただくことがとても多いのです。
そうした人脈も旬があり、タイミングを逃してしまうと、影響はどんどん薄れていきます。私も経験があるのですが、独立した瞬間に離れていく人もたくさんいます。会社を辞める前に信頼関係を構築しておくことが大事です。
必要な資金が確保できた時
たとえば、割増の退職金がある場合、助成金や補助金が受け取れる場合、出資が受けられる場合、金融機関からの融資が受けられる場合などです。
ただし、これはあくまでも、売上の見込みがある程度立った上でのお話です。資金があっても売上の見込みが立たなければ、意味がありません。
また、投資に必要な資金の他にも、家族の生活費の一年分は確保しておきましょう。
支払いは毎月やってきます。売上があっても無くても支払いが発生します。経費によっては掛けでの購入もできますが、人件費や外注費は、現預金から支払わなければなりません。
経費の支払いは早く請求が回ってくる一方で、売上の回収には予想より時間がかかります。仕事が大きくなればその分、入金も遅くなると覚悟しておかねばなりません。
独立前に会社員のまま始めてみましょう
人生設計の中に「独立」の2文字がある人は、早く稼ぎたいと思うでしょう。ですが、そのためにも準備なのです。まず、ここで示しした「経営計画」であり「会社を辞める前に事業を始めること」です。
独立はゴールではなく、あくまでもスタート地点です。独立してからが本当の勝負になります。その勝負のための現状分析と、目標を達成する手段をまとめたものが「経営計画」です。
できるだけリスクを抑えながら、独立を成功させるために「経営計画」を作り、会社を辞める前に実践してみましょう。
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