記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
お酒が好きで、海外のワインを輸入して売る形で起業できないかと考えています。イタリアに友人がいて、個人輸入なら仕入れられそうなのですが、私は酒の販売免許を持っていません。
個人輸入したお酒なら、そのまま転売してもよいのでしょうか?

● 回答
個人輸入したお酒の転売はできず、お酒を売るには酒類販売業免許が必要です。免許なしでお酒を販売すると酒税法違反(酒税法第54条・第56条)になります。好きなものでの起業は長続きしやすく、お酒は良いテーマです。だからこそ、入口でつまずかないように順番を正しく押さえておきましょう。
お酒の輸入販売には、ふだんの物販にはない関門が二つあります。一つは「売る側の免許」、もう一つは「輸入する側の手続き」です。藤巻さんという会員さんも、ここを取り違えたまま進みかけて、危ういところで引き返した経験があります。順に整理していきます。
そもそも「個人輸入」と「販売目的の輸入」は別物
まず言葉の整理からです。個人輸入は、自分で使うために本人が海外から取り寄せる輸入を指します。税関も「自己使用のための輸入」と位置づけていて、販売や営業に使うものは個人輸入には含まれません。つまり、個人輸入で取り寄せたお酒を他人に売った時点で、それは販売目的の輸入(業務上の輸入)として扱われます。
販売目的でまとまった量を仕入れる輸入は、よく「小口輸入」と呼ばれます。少量でも目的が販売なら、酒税法や食品衛生法などの規制がそのままかかってきます。「個人輸入の名目で取り寄せて、こっそり売る」という抜け道は存在しません。ここを誤解したまま進むと、後で取り返しがつかなくなります。
もう一つ、コスト面でも個人輸入の扱いが近く変わります。個人使用目的の輸入には、海外小売価格の60%を課税価格とする特例(0.6掛け)があり、現時点ではまだ使えます。ただし関税定率法等の改正でこの特例の廃止が決まり、2028年4月1日(令和10年4月1日)に廃止される予定です。
背景にあるのは越境ECの急増です。輸入許可件数全体の約9割が課税価格1万円以下の少額貨物になっていて(令和6年時点)、国内の小売との不均衡が問題視されました。いずれにせよ、個人輸入を仕入れに都合よく使うことはできない、と覚えておいてください。
お酒を売るには「酒類販売業免許」が要る
お酒を継続して販売するには、販売場ごとに酒類販売業免許が必要です。根拠は酒税法の第9条から第11条で、税務署(国税庁)が所管しています。そして、この免許は「誰に売るか」で種類が変わります。輸入ワインを扱う場合の代表的な区分を並べてみます。
- 一般酒類小売業免許:
一般の消費者や、料飲店・菓子製造業者などへ小売りする場合の免許です。実店舗での販売や、同じ都道府県内に限ったネット販売はこちらで対応できます。 - 通信販売酒類小売業免許:
2都道府県以上の広い地域の消費者へ、インターネットやカタログで販売する場合の免許です。輸入酒類は品目や数量の制限なく扱えます。 - 輸出入酒類卸売業免許:
自分が輸入したお酒を、酒屋など他の酒類販売業者へ卸す場合の免許です。消費者ではなく業者に売るならこちらになります。
「イタリアのワインをネットで全国に売りたい」という今回のケースなら、通信販売酒類小売業免許が中心になります。どの免許かは扱う酒の範囲や売り先で決まるので、自分のケースに当てはめて先に確認しておくと迷いません。免許の要件には経営の基礎や申請者の適格性なども含まれるため、思いつきで即取得とはいきません。準備期間を取れる会社員のうちに動く意味は、ここにあります。
なお、自分のバーや飲食店でその場で飲んでもらう提供は、酒類販売業免許の対象外です。「輸入したワインを店で出す」のと「ボトルとして売る」のは別の話になります。
輸入の入口でも、届出・酒税・関税の関門がある
免許とは別に、輸入そのものにも手続きがあります。販売や営業に使う食品・飲料を輸入するときは、食品衛生法第27条にもとづいて、検疫所へ食品等輸入届出を出す必要があります。これは厚生労働省が所管する制度で、自分で飲むだけの個人輸入なら不要ですが、売るために輸入するなら避けて通れません。

ワインのように成分表示や添加物の確認が要る品目では、原材料表や製造工程表などの書類もそろえます。ラベルの表示事項も決まっているので、東京税関の「酒類の表示方法の届出について」のような公的資料で先に確かめておくと、通関で慌てずに済みます。あわせて、輸入時には酒税と関税もかかります。
こうして並べると関門が多く感じるかもしれません。けれど拙著『起業神100則』では、成果が出ない原因の多くは「漠然」にあると紹介しています。お酒の輸入販売も、ぼんやり「難しそう」と恐れるより、必要な許認可を一つずつ具体的な手続きに分解してしまえば、進める道筋は見えてきます。
会社員のうちに踏んでおく、現実的な順番
藤巻さんは、もともと輸入雑貨の物販を手がけていた40代の会社員でした。お酒も同じ感覚で「個人輸入で安く仕入れて売ればいい」と考え、見よう見まねで取引先と話を進めかけたそうです。流れが変わったのは、起業18フォーラムの勉強会で「お酒は免許が要るし、その輸入は届出も別に要る」と指摘されたことでした。
そこから会員仲間との個別相談で、自分は誰に売りたいのかを整理し直しました。最終的に決めたのは、地域の飲食店向けに通信販売酒類小売業免許で少量から扱う形です。
雑貨のときのように「安く仕入れて数を売る」発想をやめ、扱う本数は減らしても、産地の話まで添えて選んでもらう売り方に切り替えました。結果として一本あたりの利益が上がり、無理なく続く商いになっています。「先に免許の種類を確かめてから動く」、この順番ひとつで遠回りを避けられました。
会社員の立場は、この準備期間を持てることが強みです。免許の要件確認、輸入の届出、表示のルール。どれも一日では終わりませんが、給料が入っているうちなら落ち着いて一つずつ片づけられます。法令や手続きの正確さが要るテーマだからこそ、慌てて始めないことが、いちばんの安全策になります。まずは国税庁の酒類販売業免許のページで、自分が「誰に売るのか」に合う免許がどれかを一つだけ確認してみてください。
お酒の輸入販売は、免許という壁こそありますが、超えてしまえばそのまま参入のしにくさが守りにもなります。今日いきなり申請する必要はありません。仕組みを正しく理解してから判断しても、十分に間に合います。

好きなお酒で会社の外に自分の看板を持つ。その入口で大事なのは、勢いより、合法に始められる順番を知っておくことです。
よくある質問

Q.個人輸入したお酒を、フリマアプリで少しだけ売るのも違法ですか?
はい、量が少なくても違法です。お酒の販売は継続・反復する事業として酒類販売業免許が前提になり、免許のない販売は酒税法違反(酒税法第54条・第56条)にあたります。個人輸入は自己使用が前提なので、転売した時点で目的が変わり、免許も輸入時の手続きも必要になります。
Q.ネットで全国に輸入ワインを売りたい場合、どの免許になりますか?
2都道府県以上の消費者へインターネットやカタログで販売するなら、通信販売酒類小売業免許が中心になります。販売先が同じ都道府県内に限られるなら一般酒類小売業免許で対応でき、酒屋など業者へ卸すなら輸出入酒類卸売業免許です。売り先によって変わるので、先に決めておくと申請がぶれません。
Q.免許のことは、どこに相談すればよいですか?
酒類販売業免許と酒税については、所管の税務署が相談窓口です。国税庁の酒税やお酒の免許に関する相談窓口の案内から、最寄りの税務署を確認できます。輸入時の食品等輸入届出は検疫所、関税の扱いは税関が窓口になります。迷ったら、まず税務署に一本問い合わせるところからで十分です。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
