契約を約束した会社から連絡がきません。どうすれば良いですか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

ある家電製品を、独占的に仕入れられることになりました。メーカーの社長と契約の約束をしたのですが、その後1ヶ月経っても何の連絡もありません。メールへの返信もなく、契約書もなく、途方に暮れています。起業準備でやっているため、嫌がられているのでしょうか?

その製品はとても良い商品で、現在はメーカー直販でネット販売を細々と続けている程度で、その会社には販売ノウハウがない様子です。大手が手をつけてしまう前に権利を抑えたいのですが、どうしたら良いでしょうか?

起業前質問集

● 回答

契約直前で連絡が止まる主因は「社内調整・温度差・契約書整備・撤回検討」の4類型に集約されます。1ヶ月までは静観、それ以降は別ルートを並走させるのが現実解です。

嫌がられている可能性はゼロではありませんが、社長が約束した案件であれば、社内調整や契約書整備で時間を取られているケースが圧倒的に多い印象です。これまで起業準備中の会員さんと法人取引の橋渡しを多く見てきた中での感触として、お話しします。

26年で見た「連絡が止まる取引先」4類型

26年の起業支援の現場で見てきた限り、契約直前に連絡が止まる原因はおおむね次の4つに分類できます。それぞれ、こちらが取るべき対応が異なります。

  • 社内調整型:法務部や役員の承認待ちで時間がかかる(中小企業ではよくある)
  • 温度差型:社長は前向きでも、現場担当が個人事業主との取引に慣れていない
  • 契約書整備型:契約ひな形を一から作っていて、リーガルチェックに時間を要している
  • 撤回検討型:他社からの提案が入り、優先度を再考している(最悪の想定)

この4類型のうち、4つ目だけが要注意で、残り3つは時間が解決するケースが大半です。最初から最悪を想定せず、まずは時間の経過と並走でリスクを抑えにいきます。

契約

1ヶ月音信不通の段階で取るべき4手順

連絡が止まってから1ヶ月。質問者様は今、ちょうどこのタイミングにおられるはずです。具体的に取れる手順を順番でまとめます。

  • 手順1:自分の送信履歴を再確認し、相手の返信が迷惑メールに紛れていないか確認する
  • 手順2:社長以外の窓口(広報・営業担当・代表電話)にも、丁寧で短いリマインドを入れる
  • 手順3:オンラインで会える時間を1候補だけ提示し、断られなければアポを再確定する
  • 手順4:並走で類似メーカーや代替商品の市場調査を進め、依存しない構造に切り替える

手順1と2は「自分側のミスを潰す」段階。手順3と4は「相手の返事を待つ間に、止まらない準備を進める」段階です。この4つを順番に進めると、相手から連絡が来るまでの時間が無駄になりません。

手順2のリマインドメールでは、決して催促調にせず、「商品への熱意」と「準備状況のご報告」を中心に書きます。「契約書はいつもらえますか?」ではなく、「販売開始に向けて、こちらで揃えている準備内容をお送りしてもよろしいでしょうか?」という言い回しが、心理的な負担をかけずに相手の反応を引き出してくれます。

契約

公的データから見る「個人 ✕ 法人」の力関係

中小企業庁「2024年版中小企業白書」第3部では、中小企業同士の取引でも契約書面を交わさないケースが一定割合存在し、特に新規取引先との初回案件で契約書の整備に時間がかかる傾向が示されています。法人 ✕ 法人でこれです。個人事業主や起業準備中の方が法人と取引する場合は、さらに整備に時間がかかると考えておきます

また、公正取引委員会「優越的地位の濫用」のガイドラインでは、契約交渉中に一方的な条件変更を強いる行為は規制対象になります。仮に4類型のうち撤回検討型であっても、口頭合意を理由に高額な損害賠償を請求できるわけではない一方、立証できる事実関係を残しておくことには意味があります。

口頭合意の経緯、メールのやり取り、第三者を介した会話のメモなど、時系列で整理した資料を1ファイルにまとめておきます。万一、後から法的検討が必要になっても、即座に動ける材料になります。

著者の貿易商社時代の経験:撤回検討型の現場

私自身、貿易商社の業務を担当していた時代に、メーカーから喫茶店に呼び出され、ランチを食べながら「今後の取引について見直しをしたい」と切り出された経験があります。相手も切り出しにくいのです。回りくどい話のあと、結局は別の代理店との交渉が進んでいるという内容でした。

契約

そのときに痛感したのは、「相手が言いにくそうにしている時間」こそ、こちらが代替案を準備しておくべき時間だということです。怒っても元には戻りませんし、感情的に詰めれば次のチャンスもなくなります。引きどきを逃すと、本来は新しい取引につながる関係まで切れてしまいます

会員Sさん(30代女性・個人EC運営)の軌道

起業18フォーラムの会員Sさん(30代女性・元事務職)は、独自の家電を扱うメーカーから「独占的に卸す」という口頭合意を得たあと、1ヶ月以上連絡が止まる事態に直面されました。質問者様とほぼ同じ状況です。

当初は催促メールを連投しかけたそうですが、起業18フォーラムの勉強会で「個人 ✕ 法人ではよくある現象」「待つ時間に並走するのが鉄則」と聞き、戦略を切り替えられました。具体的には、代替メーカー候補を33日かけて8社探索し、そのうち3社と試験的なサンプル取引を始められました。

結果として、最初に約束していた1社からの連絡は84日後に再開しましたが、Sさんはすでに別の3社の代理店モデルで月商を立て始めており、依存度が下がった状態で交渉に臨めました。現在は当初の1社を含めた3社の代理店として運営し、月商67万円・2年目で粗利率が28%まで改善しています。

Sさんが振り返っておっしゃっていたのは、「最初の1社がダメになっていたら、私は起業をあきらめていたと思う。並走で動いた33日が、いまの自分を支えている」という言葉でした。並走の効果は、契約成立後にこそ効いてきます。

起業準備中ほど、依存しない構造をつくる

拙著『起業神100則』でこの点を取り上げていて、「最初の取引先に懸ける」のではなく「並走できる体制で安心を確保する」発想が、信用と継続の両方を支えてくれると整理しています。1社の返事を待つ間に手元の選択肢を広げておく姿勢が、結果として最初の取引先との関係も健全に保ちます。

  • 1社のみと口頭合意した状態で開業届や仕入資金を動かす
  • 連絡が止まった段階で、毎日のように催促メールを送る
  • 代替メーカーや類似商品の市場調査を後回しにする
  • SNSや勉強会で愚痴を言い、相手企業名を匂わせる発信をする

これらは、いずれも今後の取引を狭くしてしまう典型例です。焦りを行動に変える方向は「催促」ではなく「並走」へ向けると、結果として最初の1社にも余裕を持って向き合えます

連絡が止まると不安になりますが、相手側も悪意なく時間を取られている可能性が高いです。質問者様は手順1から順番に進めながら、並走で次の選択肢を広げてみてください。1社に依存しない構えが整えば、結果として最初の取引先との関係も対等に進められます。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!