記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
まだ何をやるかは決まっていないのですが、学生時代からの友人と、いまの会社の同僚と、自分の3人で起業したいねと飲むたびに語り合っています。
友達同士の起業は良くないとよく聞くので不安なのですが、やる前提で、共同起業のときに気をつけることはありますか?

● 回答
3人で起業するときにいちばん気をつけてほしいのは、組み方そのものです。仲間と組むなら「一緒の会社を1つ作る」のではなく、それぞれが独立した立場で取引先として組むのが最も安全です。
気心の知れた3人で夢を語り合う時間は本当に楽しいものですし、その関係そのものを否定する気はありません。ですが、同じ財布・同じ看板で1つの会社を始めた瞬間に、楽しさは責任の押し付け合いに変わりやすいのです。
私はこれまで26年、延べ60,000人の会社員の起業準備を見てきました。その中で「友達や同僚と一緒に会社を作りたい」という相談は毎月のように届きます。そのまま3人で1社を立ち上げたケースの多くが、お金・スピード感・熱量・遠慮・責任分担という5つの火種でつまずいてきました。所詮は他人同士という前提に立てるかどうかが、共同起業の分かれ目です。

なぜ仲が良いほど壊れやすいのか
意外に思うかもしれませんが、データの上でも「仲良し起業」はリスクが高いと示されています。米国の起業研究者ノアム・ワッサーマンが著書『The Founder’s Dilemmas』(2012年)で約1万人規模の創業者データをもとに分析したところ、友人や家族といった親しい間柄のメンバーが1人増えるたびに、共同創業者の誰かがチームから抜ける確率がおよそ28.6%ずつ上がっていたのです。
赤の他人で組んだチームより、友人や家族で組んだチームのほうが不安定になりやすい、という直感に反する結果です。
理由ははっきりしています。仲が良いと、言いにくいことを言わずに済ませてしまうのです。
「君のほうが時間を割いていないよね」「この支出は無駄では」といった指摘を、友情を壊したくない一心で飲み込む。その遠慮が積もって、ある日いっきに不満が爆発します。
日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」(2024年度)を見ても、開業時の平均従業者数は2.9人にとどまり、ここ数年は3人を下回っています。経営者本人を含めての人数ですから、実際には一人か少人数で立ち上げる人が中心で、最初から複数人が対等に会社を構える形はむしろ少数派なのです。小さく一人で始め、後から人を巻き込むほうが、撤退も方向転換もしやすくなります。
1つの会社で組むなら、先に決めておく実務4点
それでも「どうしても3人で1社を作りたい」という場合は、楽しい話を始める前に、もめる前提で次の4つを書面で決めてください。中小機構のJ-Net21「起業仲間との共同経営上の留意点」でも、役割・責任・持分の事前合意と書面化が公的に推奨されています。
- 持株比率を全員均等にする:
意見が割れたとき誰も決められず、会社が止まる - 役割と担当範囲を口約束のままにする:
「やってくれると思っていた」が常態化し、仕事量が偏る - 報酬・利益の分け方をあとで考えるにする:
売上が出た瞬間にいちばんもめる火種になる - やめるときのルールを決めずに始める:
誰かが抜けたいと言い出したとき、株の買い取りで泥沼化する
逆に、最初に決めておくべきことは次のとおりです。特に「最終決定者を1人に決める」ことと「やめるときの株の買い取りルールを先に書く」ことは、会社を作る前に必ず文章にしてください。
- 最終決定者を1人決める:
持株もその人がわずかに多く持つ(例:51:49) - 役割分担表を作る:
誰が何の責任を負うかを書き出して全員で署名 - お金の計算式を先に決める:
役員報酬・利益配分の決め方を起業前に明文化 - 解散ルールを契約書に書く:
脱退・解散時の株の買い取り価格の決め方を明記
続けられるかどうかが、すべてを決める
拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』でも「継続可能ゾーン」という言葉で同じことを書きました。やる気満々で大きく構えるより、無理なく続けられる小さな範囲から始めた人のほうが結局は勝ち残る、という現場の実感です。
共同起業がこわいのは、人間関係の摩擦が「続ける力」を真っ先に削ってしまうからです。同じ本で取り上げた「80%ルール」、つまり自分が動かなくてもいい仕組みを8割、自分で動く仕事を2割以下に抑える考え方も、ここで効いてきます。3人で同じ作業を奪い合うより、それぞれが別の役割で動くほうが、長く回るのです。
起業18フォーラムの会員さんに、製造業勤務の田村さん(仮名・30代後半)という方がいました。最初は同期2人と「一緒に会社を作ろう」と意気込み、自己流で動き出したものの、誰がいくら出すか・誰が代表かを決めないまま準備だけが半年止まってしまったのです。
転機は勉強会で「まず一人で小さく出してみては」と言われたこと。三人で会社を作る計画はいったん解散し、田村さんだけが先に月1万円台の小さなサービスを始めたところ、12ヶ月目には月12万8千円まで伸び、いまは同期2人を外注パートナー(取引先)として巻き込んでいます。一緒の財布をやめたら、かえって仲良く組めるようになった好例です。
仲間は「増やす」もの。同じ船に乗せるものではない
誤解しないでほしいのは、起業仲間そのものは積極的に増やしたほうがいい、ということです。商品や業界が違う、競争関係にない仲間なら、損得抜きでお客様や外注先を紹介し合えますし、辛いときに励まし合えます。水泳選手がお相撲さんに嫉妬しないのと同じで、土俵が違えば感情は乱れません。職場では難しい「全力で相手を応援する関係」を、ほどよい距離感の起業仲間とは作れるのです。
北京冬季五輪で銀メダルに輝いたカーリング女子日本代表ロコ・ソラーレが、試合中に「いいと思う!」「ナイッス!」と掛け合っていたのを覚えている方も多いでしょう。あの心地よさは、対等で、しかし別々の役割を持つ仲間だからこそ生まれます。一緒の会社で評価や報酬を奪い合う関係では、なかなかああはいきません。

まずは「3人で何を作るか」ではなく「自分は何を一人で始められるか」から考えてみてください。それぞれが独立した足場を持ってから組み直すほうが、友情もビジネスも長続きします。
よくある質問

Q.共同経営で出資比率を50:50にしてはいけないのはなぜ?
- 意見が割れたとき最終決定者が不在
- 会社の重要事項が何も決められず停滞
- 関係悪化時にデッドロック(膠着)化
意見が真っ二つに割れたとき、誰も決められず会社が止まってしまうためです。代表者を1人決めて持株をわずかに多く(51:49など)するか、議決権を調整しておくと、いざというとき事業を進められます。
Q.友達と組むなら、どんな相手や組み方がいい?
- 商品・業界が違い競争関係にない相手
- 同じ会社ではなく取引先として対等に組む
- 役割・責任・お金の分け方を先に書面化
同じ財布で1社を作るより、それぞれが独立してから取引先として組むのが安全です。組む相手は、土俵が違って嫉妬が生まれにくい人が向いています。どうしても1社でやるなら、役割と報酬と解散ルールを起業前に契約書にしておきましょう。
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