特別な資格がなくても強みは語れる? 作業の名前で終わらせない言い換えのコツ

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

職場では資料づくりや会議の段取りをよく頼まれますし、お礼を言われることもあります。ただ、起業準備のプロフィールを書こうとすると、自分の強みがうまく言葉になりません。

特別な資格もないのに、「何ができる人」だとどう説明すればよいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

「名刺交換のたびに、結局『何でもやります』と言ってしまいます」。プロフィールづくりの相談の場で、何度も聞いてきた言葉です。頼まれ事はあるのに説明が出てこない、という悩みはあなただけのものではありません。

ここで疑ってほしいのは、「自分には強みがない」という思い込みのほうです。足りないのは強みの中身ではなく、相手に伝わる説明の形です。同じ作業をしてきた人でも、何と名乗るかで相談のされ方は変わります。

そもそも、特別な発明を引っさげて開業する人は少数派です。多くの人は、これまでの仕事で身についたものを持ち込む形で始めています。

日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、現在の事業に決めた理由として「これまでの仕事の経験や技能を生かせるから」が43.8%で最多、「身につけた資格や知識を生かせるから」も20.6%でした。入り口が経験の持ち込みなのですから、その経験をどう説明するかが、そのまま最初の差になります。

言葉にならない詰まりは3つに分かれる

相談の場で見てきた詰まり方は、だいたい次の3つのどれかです。自分がどれに近いかを先に見分けると、直す場所がはっきりします。

  • 謙遜型:
    「大したことではないので」と、自分で価値を値引きしてから話す
  • 全部列挙型:
    できることを10個並べて、結局「何の人」なのか伝わらない
  • 作業名型:
    「資料作成ができます」のように作業の名前で止まり、相手に何が起きるかを言わない

型が分かれば、直すのは一部分だけで済みます。

  • 謙遜型の直し方:
    値引きの前置きを言わずに、頼まれた事実から話し始める
  • 全部列挙型の直し方:
    頼まれた回数がいちばん多いものを1つ残し、ほかは名乗りから外す
  • 作業名型の直し方:
    作業のあとに「だから相手はこうなる」を続けて言い切る

中でも効き目が大きいのは、3つ目です。作業の名前で止めず、それを頼んだ人に何が起きるかまで言い切ってみてください。「資料がつくれます」より「会議にそのまま出せる形まで仕上げます」のほうが、頼む場面がはっきり浮かびます。

才能の問題ではなく翻訳の問題

拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、「才能のない人は一人もいない」という考え方を紹介しています。どんな人にも何かしらの能力や技術が身についている、というのが出発点です。だとすれば、残っている課題は説明の仕方、つまり何と名乗るかだけです。

つまり、強みを言葉にする作業は、自分を大きく見せることではありません。頼んでくれた人がすでに知っている価値に、あとから名前を付けるだけです。材料は自分の頭の中ではなく、これまで受けてきた相談の中にあります。

説明だけを変えた会員さんの8ヶ月

起業18フォーラム会員の梶原さん(仮名・40代前半)は、産業機械メーカーの法人営業です。社内で「提案資料の組み立てを見てほしい」と声がかかることが多く、そこを入り口に準備を始めましたが、プロフィールには「資料作成・PowerPoint・営業サポート全般」と書いていました。相談は月2件ほどで止まっていました。

きっかけは、フォーラムの勉強会で、経歴の近い会員さんの自己紹介を聞いたことでした。その方は「私は、営業の方が社内で決裁を通しやすい資料に組み替える仕事をしています」と、一言で説明していました。同じような作業なのに、伝わり方がまるで違いました。

その後の会員さん同士の相談で「頼んでくる人は、何と言って頼んできますか?」と聞かれ、思い出したのが「これ、部長がそのまま会議に出せる形にしてくれる?」という言われ方でした。そこで名乗りを「営業資料を、決裁が通る形に組み立て直します」に書き換えました。

8ヶ月目には、相談が月2件から10件になっていました。やっている作業は前と同じで、変えたのは説明の一文だけです。今も会社の仕事と並行しながら、指名で頼まれる範囲を広げています。

件数が動いた理由は単純です。「決裁資料の人」のように一言で言える説明は、聞いた人がそのまま別の誰かに伝えられます。紹介する側は、長い説明を覚えていられないからです。

説明の材料集めは、今日から始められます。まずは1週間、仕事で「ありがとう」と言われた瞬間を数えてみてください。あわせて、何に対しての「ありがとう」だったかをひと言だけ控えておきます。そこに残った言葉が、そのまま説明文の下書きになります。

1週間分がたまったら、いちばん多かった場面を一文にしてみます。うまい言い回しである必要はありません。頼んだ人が使った言葉に近いほど、次の相手にも伝わります。

40代・実績ゼロで何を売る? 過去の頼まれ事から商品の種を見つける手順
● 質問 40代に入って独立を意識するようになりましたが、資格も実績も何もありません。周りには専門職や独立した

強みは、新しく身につけるものではなく、もう頼られてきた事実に名前を付けるものです。名乗りの一文が決まった日から、同じ頼まれ事が仕事の入り口に変わっていきます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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