記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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埼玉県は東京通勤圏でありながら、住宅都市として独自の地縁が残るエリアです。さいたま市以外の62市町村にも、川越・川口・越谷・春日部・所沢など実需の積み上がる商圏が広がっています。
県内の民営事業所数は26万1,920事業所で全国第5位、開業率は4.6%と全国平均を上回るペースで動いている地域です。
本記事では、東京通勤の会社員が「都内勤務×地元商圏」の二刀流を取りに行くための準備手順を、産業構造・支援制度・体験談から整理します。
埼玉県で起業するメリット・首都圏マーケット中心の二刀流立地

埼玉県は首都圏4,300万人マーケットの中心に位置しています。東京・神奈川・千葉・群馬・栃木・茨城に隣接し、新幹線・在来線・高速道路でどこにも1時間圏内でアクセスできる立地が、住宅都市と商業エリアを同時に持てる埼玉ならではの強みです。
経済センサス令和3年(総務省・経済産業省)によれば、埼玉県内の民営事業所数は26万1,920事業所で、東京都・大阪府・愛知県・神奈川県に次ぐ全国第5位です。従業者数は260万2,009人で、首都圏マーケットを支える後背地として確かな積み上がりがあります。
経済産業省「小規模企業白書」(2024年版)では、2022年度の埼玉県の開業率は4.6%で、沖縄県・愛知県に次ぐ全国第3位に位置しています。新しく動き出す事業者の母数が多く、創業支援の制度・場・人脈が県内に広く張られているのが、この数字の背景です。
ただ、忘れてはいけないのは「埼玉に住んでいる会社員のほとんどは東京勤務」という構造です。埼玉県は首都圏マーケットの中心に位置しながら住宅都市の地縁が残る、通勤圏と地元商圏の二刀流が成立する希少なエリアといえます。在職のまま地元で動き出すと、東京勤務で得た専門性を地元の小規模事業者に「東京単価の専門サービス」として持ち込むという、独自のポジションが取れます。
- 首都圏4,300万人マーケットの中心立地
- 民営事業所数26万1,920事業所・全国第5位
- 開業率4.6%・全国第3位(2022年度・小規模企業白書)
- 東京通勤圏と地元商圏の二刀流が成立
- 新幹線・在来線・高速道路で都内1時間圏
県全域に広がる創業支援制度・特定創業支援等事業と渋沢MIX

埼玉県の創業支援制度は、県・市町村・公益財団法人埼玉県産業振興公社の三層で動いています。さいたま市以外の県内市町村に住んでいる会社員も、ほぼ全域でなんらかの支援が使える体制が整っています。
最初に確認したいのが「特定創業支援等事業」です。これは産業競争力強化法に基づく支援で、川越市・川口市・さいたま市など多数の市町村が国から認定を受けています。1ヶ月以上かつ4回以上のセミナー・個別相談を受けて支援証明書を取得すると、株式会社の設立登録免許税が15万円から7.5万円(資本金の0.7%から0.35%)に半額になります。在職中の休日でも要件を満たせるカリキュラムが組まれているのが、利用しやすさの理由です。
次が、創業・ベンチャー支援センター埼玉(公益財団法人埼玉県産業振興公社)です。創業前後の個別相談・専門家派遣・女性起業支援ルーム「COCOオフィス」を提供しており、県内のどの市町村に住んでいても利用できます。川越駅前のウェスタ川越創業支援ルーム、春日部のふれあいキューブ創業支援ルーム、狭山のさやまインキュベーションセンター21(狭山工業団地内)など、県内各地のサテライト拠点も展開されています。
そして2025年7月25日、さいたま新都心駅直結のekismさいたま新都心5階に渋沢MIXがオープンしました。約500社の創立に関わった渋沢栄一翁の「人と人をつなぐ」精神を引き継ぐ、埼玉県のイノベーション創出拠点です。Canvasインキュベーションプログラム・オープンイノベーション支援・スタートアップ成長支援などを展開しており、平日10:00~21:00・土曜10:00~18:00で利用できます。
埼玉県の創業支援は、ここまで紹介した「制度(特定創業支援等事業)」「相談(ベンチャー支援センター埼玉)」「拠点(渋沢MIX・ウェスタ川越ほか)」の三層で構成され、ほぼ全市町村のどこに住んでいても活用できる体制が組まれています。
ただし、補助金や支援施設は「何をやるか」がぼやけたまま使うと迷子になります。情報収集に走り回って結局動き出せなかった、というパターンが地名別起業の相談でも多い類型です。補助金・支援施設は「何を売るかの方向性」が固まったあとに使う道具と捉え、まずは居住する市町村の特定創業支援等事業の有無と日程を市の産業振興課ホームページで確認するところから始めるのが、現実的な順番です。
- 市町村の特定創業支援等事業(登録免許税半額・支援証明書)
- 創業・ベンチャー支援センター埼玉(個別相談・COCOオフィス)
- ウェスタ川越・ふれあいキューブ春日部・さやまインキュベーションセンター21
- 渋沢MIX(さいたま新都心・2025年7月開設)
- 埼玉県「事業者のためのビジネス神器」ポータル
埼玉県で会社員が始めやすいビジネスアイデア・産業構造から逆算する

産業構造から逆算するのが、地域起業のセオリーです。経済センサスで埼玉県の業種構成を見ると、事業所数は卸売・小売51,720事業所で全体の22.5%、建設25,560事業所で11.1%、製造23,810事業所で10.3%を占める構造です。住宅都市に密集する生活密着サービスの需要と、ものづくり中堅企業の集積が同居しているのが特徴です。
製造品出荷額の構成比では、食料品16.0%(約2兆565億円)、輸送用機器15.7%(約2兆233億円)、化学12.5%(約1兆6,089億円)が県のものづくりを支える三本柱です。県内には食品工場・自動車関連工場・化学プラントが広範に散らばり、東京の本社機能を支える生産・物流の中堅企業が、地元の取引先として顔の見える距離にあります。
ここから埼玉県の会社員が取りやすい起業アイデアを地域別に整理すると、次のような像になります。
- 川越(小江戸観光):蔵造り街の体験コンテンツ・観光客向け予約型サービス
- 川口(鋳物産業集積跡地):デザイン業・写真スタジオ・職人向けITサービス
- 越谷・春日部・所沢(住宅都市):家事代行・整理収納・親子向け教室
- 熊谷・本庄(北部工業集積):中堅製造業向けの業務効率化・採用支援
- 秩父・飯能(自然資源):観光ガイド・林業体験・自然療法
- 戸田・蕨(東京隣接):通勤圏の会社員向けキャリア相談・コーチング
ここで効くのが「東京の会社員スキルを地元に持ち込む」発想です。財務分析・IT・人事制度設計・マーケティングといった、都内本社で当たり前に使われている専門性は、地元の小規模事業者から見ると貴重で手の届かない領域に映ります。自分が普段の業務で当たり前にやっていることを1枚の紙に書き出し、地元の小規模事業者に「東京単価の専門サービス」として届けられないかという視点で並べ直すのが、最初のアイデア発掘になります。
起業18フォーラム会員さんの体験談・川越在住の40代会社員Fさん

起業18フォーラムの会員Fさん(仮名・40代後半・川越市在住・大手金融系SE・妻と中学生の娘)は、東京都港区の本社まで往復2時間半をかけて通勤していました。月収48万円、地元の知人ネットワークはほぼゼロ、起業準備の時間も取れない状態からのスタートです。
転換点は、最初の3ヶ月の使い方でした。Fさんは勉強会めぐりを止め、朝晩30分の作業時間を平日固定でブロックする方法に切り替えています。朝出社前の30分でアイデアの言語化、夜の30分で地元商店向けの業務改善Excelの試作という分担を半年続け、6ヶ月目にアウトプットの型が固まりました。
大きな転機になったのが、ウェスタ川越の創業支援ルームでの個別相談です。相談員から「川越の小規模商店から見ると、東京勤務のSEは普段会えない人材。その距離感のままサービスにしてみては」と指摘を受け、地元の蔵造り通りの飲食店向けに売上分析サービスを月3万円で初受注したのが12ヶ月目でした。
そこから紹介で広がり、2年目には月10万円の継続収入に到達しています。拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』にこんな言葉があります。「朝晩30分のリズムを最初に作れた人が、最後まで残る」。Fさんの軌跡そのものといえる結果です。
注意点もあります。起業を決めた直後に異業種交流会のはしごに走ると、名刺だけ増えて売上にはつながらず、貴重な平日夜と週末を弱い人脈に吸われて消耗するパターンに陥りやすい傾向があります。Fさんも初期に数回参加しましたが、地元商圏には届かないと判断して撤退しました。
最初の3ヶ月は朝晩30分のリズム化に集中し、勉強会・交流会・SNS広告といった「外向きの活動」は型が固まってから足すのが、在職中スタートの定石です。
まとめ・起業18フォーラムで全体像をつかんでから補助金へ進む

埼玉県は首都圏マーケットの中心にいながら、地域コミュニティの距離感が残る住宅都市群を抱える地域です。東京通勤の会社員が「都内勤務と地元商圏」の二刀流を取りに行くなら、これほど条件が揃う県は多くありません。
ただ、開業率4.6%という数字の裏側には、補助金や支援施設の情報を集めるだけで時間切れになる人も一定数います。「制度から入る」のではなく「方向性から入る」順番が、結果として最短ルートです。

起業準備のスタート時に最も効くのは、断片的な情報集めではなく「全体像をつかむこと」です。起業18フォーラムの動画講座やセミナーで、知・人・金の3チカラと180日のロードマップを最初に押さえ、自分が埼玉県内のどこにポジションを取れるかが見えてきたタイミングで、市町村の特定創業支援等事業や渋沢MIXに足を運ぶ。この順番で動く会社員ほど、補助金も支援施設も「使う側」になっていきます。
埼玉に住んでいるという立地の利点を、二刀流のスタート資本として使い切ってください。
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