記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「コンサルとして独立したい」と思って情報を集め始めたものの、出てくるのは戦略ファーム出身者の華やかな成功話か、月単価200万円という現実離れした数字ばかり。自分のように事業会社で働いてきた人間が、本当に個人コンサルで食べていけるのか不安になっていませんか。
実は日本国内のコンサルティング市場規模は2024年度で2兆3,422億円・前年比17.0%増と拡大中で、ファームに属さない個人コンサルにも需要は確実に流れています。問題は「市場があるか」ではなく「自分の何をコンサル商品に変えるか」の設計です。
ここでは、ファーム出身ではない普通の会社員さんがコンサル起業に踏み出すための現実的な手順を、失敗パターンごと整理してお話しします。
なぜ普通の会社員でもコンサル起業が成立するのか

「コンサル=経営戦略ファーム出身者の仕事」というイメージが強いせいで、自分には無理だと早々に諦めてしまう方が本当に多いです。けれども実際にいま市場で動いているコンサル案件の多くは、戦略系ではなく現場改善・PMO・営業支援・採用支援といった「現場で困っている中小企業を助ける」種類のもの。ここで強いのは、ファーム出身者よりも、その業界・職種を10年以上経験してきた事業会社の中堅です。
市場の構造が個人コンサルに追い風になっている
経済産業省や民間調査によると、日本国内のコンサルティング市場は2017年から年率13.0%で成長を続けており、2024年度で2兆3,422億円規模。DX・AI投資・人手不足対策といった構造的な需要が、大手ファームでは拾いきれない中堅・中小企業案件として個人コンサルに流れてきています。大手にとっては小さすぎて受けない案件こそ、個人コンサルの主戦場です。
「名もなき強み」がそのままコンサル商品になる

拙著『起業神100則』で繰り返し書いているのが「あなたが社内で『またあれお願い』と何度も頼まれてきた仕事こそ、外で売れるコンサル商品の原型である」という考え方。本人は当たり前すぎて気づいていないけれど、他社・他部署の人から見れば確実に「お金を払ってでも教わりたい」スキルになっているケースがほとんどです。
たとえば営業企画部で15年やってきた方なら、新人の同行ロープレ設計、商談議事録テンプレ整備、見込み客リストのスコアリング基準づくりなど、無意識にこなしてきた業務の一つひとつが、中小企業にとっては喉から手が出るほど欲しいノウハウです。
- 同僚や後輩から「あの作業教えてほしい」と何度も頼まれた業務
- 異動してきた人に毎回口頭で説明している仕組み
- 他部署から「ちょっと相談に乗って」と呼ばれる領域
- 転職先・取引先から「うちにも欲しい」と言われた経験
この4種類の経験を過去5年分書き出すと、平均で20〜40件は出てきます。出てきた中で「3件以上重なる仕事」が、最初のコンサル商品の核になります。
ファーム神話の裏側にある「稼働率」という現実

ここで一つ厳しい現実を共有します。フリーコンサルのマッチング会社が公開しているデータによると、あるエージェントの登録コンサルタント14,760名のうち、月間で実際に稼働しているのは532人。割合にして約3.6%です。「フリーコンサル登録すれば月単価150万円」という言説は、登録できれば食えるという意味ではなく、稼働できた人の中央値という意味でしかありません。
つまりコンサル起業の成否を分けるのは「単価」より先に「稼働を取り続ける営業導線」です。これを在職中に作っておくことが、独立後の生存率を一気に引き上げます。
在職中に整える起業準備の5ステップ

コンサル起業で一番やってはいけないのは「とにかく退職して名刺を作って営業に出る」やり方。固定費がゼロのうちに、商品・実績・顧客導線を順番に作っていく方が、回り道のように見えて結果的に最短ルートです。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』でも繰り返し書いてきた、コンサル起業のための具体的な手順がこちらです。
ステップ1 指名された仕事を30件書き出す
過去5年で社内外から「あなたに頼みたい」と名指しで声がかかった仕事を、思いつく限り紙に書き出してください。営業先の業界・案件種類・解決した課題・かかった時間を一行ずつ。出てきた30件のうち3件以上重なるテーマが、コンサル商品の核になります。
ステップ2 その領域で困っている人を10人聞き取る
家族や知人を含めて構わないので、その業界・職種で実務をやっている人に「いまどこで時間を取られているか」「外注したら助かる作業は何か」を10人ヒアリング。聞き取った内容を「困りごとリスト」として一覧化します。提案ではなく聞くだけに徹するのが大事で、ここで売り込んだ瞬間に本音が出てきません。
ステップ3 モニター1件を在職中に納品する
10人の中から「お金を払ってもいいから頼みたい」と言ってくれた1人にだけ、モニター価格でサービスを提供します。最初は無料でも構いません。ほしいのは現金より「成果事例」と「お客様の声」です。完了後にビフォーアフターを文章化しておくと、独立後のセールス資料がそのまま完成します。
ステップ4 継続2社・スポット1社を半年以内に積む
モニター実績ができたら、同じ業界・同じ職種に限定して声をかけ続け、月額顧問契約2社・単発スポット案件1社を目標に積みます。固定費ゼロで月10〜15万円の継続収入が見えたら、退職判断の材料が揃ったことになります。
ステップ5 退職と同時に開業届・屋号口座を整える
ここで初めて開業届・屋号付き口座・請求書テンプレを揃えます。順番が逆になると、肝心の「売れる商品」が固まる前に手続きの完璧主義に時間を吸われ、半年以上が経過してしまうケースが本当に多いです。
- ステップ1:指名された仕事を30件書き出し
- ステップ2:困りごとを10人ヒアリング
- ステップ3:モニター1件納品で事例化
- ステップ4:継続2社+スポット1社
- ステップ5:退職と同時に開業届
この順序でいくと、半年から1年で「月10〜20万円の継続収入+スポット案件」という独立可能ラインに届く方が多いです。
経験タイプ別・コンサル起業の具体アイデア

「コンサル=戦略立案」というイメージから抜け出せないと、自分の職歴と接続できずに行き詰まります。実際に個人コンサルとして成立しているのは、もっと具体的で現場寄りの形です。フリーコンサル案件の月額単価は全体平均149万円・中央値150万円という調査結果がありますが、これはフルタイム稼働で稼ぐエージェント案件の中央値。在職起業段階や週数時間稼働の個人顧問契約だと、月5〜30万円の小さな契約を積み上げるのが現実的です。
① 現場業務改善コンサル(営業・人事・経理出身者向け)
中堅メーカーや小売チェーンの営業現場・人事現場に入り込んで、属人化している業務を仕組み化するタイプ。大企業出身者にとっては当たり前のExcel管理表・週次MTGテンプレ・KPIモニタリング表が、中小企業では「初めて整理された」と感謝される領域です。月額10〜15万円の顧問契約から始め、効果が出たら30万円に上げる流れが取りやすいです。
② PMO・プロジェクト推進支援(IT・基幹システム経験者向け)
社内システム刷新・基幹システム入れ替え・SaaS導入などで、社内側の取りまとめ役(PMO)を補完するタイプ。週1〜2日稼働で月60〜120万円のレンジが多く、エージェント経由で案件を取りやすい領域です。IT部門で10年以上ベンダーマネジメントをしてきた経験は、それだけで商品になります。
③ 採用・組織開発支援(人事・教育担当者向け)
中小企業の人事担当者の代わりに、求人原稿・面接設計・オンボーディング設計までを伴走するタイプ。月額5〜15万円の顧問契約を5〜10社積む形が成立しやすく、在職起業との相性も良い領域です。
④ 業界特化のセールスコンサル(営業マネージャー出身者向け)
特定業界の営業現場(医療機器・建材・素材・SaaS等)に詳しい人が、同業界の中堅企業に営業手法を移植するタイプ。業界特化することで「同業他社で成果が出た」という事例が直接効きます。月額20〜40万円の顧問契約が現実的なレンジ。
⑤ 経理・財務サポート(経理・財務出身者向け)
月次決算の早期化・資金繰り表整備・銀行折衝の準備支援など、税理士の手前を埋めるタイプ。税務ではない「経理現場の仕組みづくり」は税理士事務所がカバーしきれない領域で、需要が読みやすいニッチです。月額10〜20万円が中心。
- 業務改善:営業・人事・経理現場の仕組み化代行
- PMO:IT刷新の社内推進補完
- 採用組織:求人〜オンボーディング伴走
- セールス:業界特化の営業手法移植
- 経理財務:月次決算と資金繰り整備
起業18会員Sさんのコンサル起業V字事例
起業18フォーラムの会員Sさん(44歳・大手食品メーカー営業企画15年)の例です。最初は「経営コンサル」と名乗り、月額50万円・包括的経営支援というメニューで売り込みましたが、半年で問い合わせ0件。商品が大きすぎて、誰のどの困りごとを解決するのか伝わらない状態でした。
起業18フォーラムに参加して勉強会に通い、過去5年で社内外から指名された仕事30件を書き出し、そこから「中堅食品メーカーの新規卸開拓 営業現場PMO」1サービスに絞り込みました。同業界の経営者1人にモニター価格・月額10万円で3ヶ月伴走したところ、新規卸2社の獲得に成功。事例化した上で同業界5社に提案して、12ヶ月目で月額顧問契約3社・月45万円、18ヶ月目には継続顧問5社・月75万円の継続収入に到達しました。
最初に「全部やります」と広げたのが致命的で、業界×職種を1点に絞ったタイミングから案件が動き始めたのが、Sさんの一番の転機です。
コンサル起業で多い失敗パターン3つ

過去にコンサル起業の相談を受けてきた中で、特に再発しやすい失敗パターンを3つ取り上げます。中小企業診断士の登録者数は経済産業省発表で約2万7,000人、令和7年度1次試験申込者数は26,211人と過去最高を更新し、コンサル系の有資格者も増え続けていますが、資格があっても以下の罠にハマると独立後1年でフェードアウトしていきます。
失敗① 包括的経営コンサルから始める
「マーケティングも組織も財務も全部見ます」というメニューを掲げて売り出すパターン。中堅企業の社長から見ると「結局この人は何が一番強いのか」が判断できず、相談先候補から外れます。最初は業界×職種で1点突破、実績ができてから領域を広げる順序が鉄則です。
失敗② 最初から月額50万円以上で売り込む
ファーム時代の単価感覚を引きずって、最初から高単価で売り込むパターン。独立直後に必要なのは現金より「事例3件」です。月額10万円のモニター契約で半年走り、ビフォーアフターを記事化してから単価を上げていく方が、結果として早く高単価に到達します。
失敗③ マッチングサイト登録だけで稼働を待つ
フリーコンサルのエージェントに登録すれば仕事が降ってくると思い込むパターン。冒頭でお伝えした通り、登録者14,760名中で月間稼働は約3.6%。エージェントは選択肢の一つに過ぎず、メイン導線は前職の人脈・元クライアント・業界コミュニティから始める方が現実的です。
- 包括的経営コンサル名乗りで誰にも刺さらない
- 事例ゼロで高単価提示し問い合わせゼロ
- マッチング登録だけで稼働率3.6%の待機列
次の一歩:在職中に書き出す30件のリスト

ここまで読んでくださった方に、今夜から始められる作業を一つだけ提案します。過去5年で社内外から「あなたに頼みたい」と名指しで声がかかった仕事を、紙の手帳に30件書き出してください。
書き出すときのコツは、案件名だけでなく「相手の業界」「困りごと」「あなたが何を解決したか」「かかった時間」を一行ずつ並記すること。30件埋まったところで、3件以上重なるテーマを赤丸で囲みます。この赤丸の中にある業界×職種が、あなたのコンサル起業の最初の商品候補です。
退職してから商品を考え始めるのと、在職中に商品候補を1点に絞り込んでから退職するのとでは、独立後の生存率がまったく違います。コンサル起業はゼロから何かを発明する仕事ではなく、自分が無意識にやってきた仕事に名前をつけて売る仕事。手帳の30件のリストが、その出発点になります。
焦って退職届を出す前に、まずは紙の手帳と30分の時間を確保するところから始めてみてください。
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