転職して半年、起業準備が止まった。今は仕事に集中して中断すべき?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

半年前に教育研修の会社へ転職しました。いつか自分で起業したい気持ちはずっとあるのですが、新しい仕事を覚えるのに精一杯で、机に積んだ起業準備の本も一行も進められていません。

今は起業準備をいったん止めて、新しい仕事に集中したほうがいいのでしょうか。それとも、無理にでも続けるべきでしょうか?

起業前質問集

● 回答

転職を機に起業準備をいったん止めたら、そのまま一年以上、一度も再開できなくなってしまった。そういう相談が、実は少なくありません。だからこそ先にお伝えしたいのは、止まること自体は失敗ではない、ということです。本当に気をつけたいのは、止まった自分を責めて、起業の気持ちごと手放してしまうことのほうです。

正直に言うと、私自身も会社員時代、環境が変わるたびに「今こそ進めなければ」と焦り、かえって何も手につかなくなった時期があります。問題は意志の弱さではなく、進め方の選び方にありました。

転職直後に準備が止まるのは、なぜか

転職した直後は、新しい職場のやり方、人間関係、専門用語を一気に覚える時期です。頭の中の容量が、新しい環境を理解することでほぼ埋まります。その状態で起業準備という別の負荷を無理に乗せると、どちらも中途半端になりがちです。

  • 本業の習得と準備を同時に詰め込み、どちらも進まず自己嫌悪になる
  • 「止まっている=才能がない」と思い込み、起業の気持ちごと手放す
  • 焦って前職時代のアイデアに固執し、今いる環境の素材を見落とす

転職直後に準備が止まるのは意志が弱いからではなく、新しい環境を理解することに頭の容量を使う、ごく自然な時期に入っているからです。この時期に必要なのは、無理に進めることではなく、進め方のギアを一段落とすことです。

止まった時期を「観察期」に変える

では、ギアを落としてこの時期に何をするか。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』で、起業には知・人・金という3つのチカラが要ると書いています。転職直後というのは、このうち「知」、つまり新しい業界知識や現場の困りごとが、これから一気に増えていく貴重な時期なのです。本を読んで進めるより、今いる職場をよく観察するほうが、ずっと大きな準備になります。

観察期にやっておきたいこと

  • 新しい職場で「これ、不便だな」と感じた瞬間をメモに残す
  • 同僚が時間をかけて困っている作業を、ひとつずつ書き留める
  • 前職の経験と、今の職場で見えたことの重なりを探す

机の上の起業準備の本はいったん閉じて、かわりにスマホのメモアプリに「今日、職場で不便だと感じたこと」を一行だけ書く習慣を、今夜から始めてみてください。これなら新しい仕事の負担になりません。

日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査によると、開業した人のほとんどが勤務経験を持ち、いま手がけている事業と関連する仕事の経験がある人も8割を超えています。今あなたが覚えている新しい仕事は、そのまま将来の起業の土台になります。

教育研修の会社へ転職したYさん(仮名・30代前半・男性・独身)も、転職を機に準備を完全に止め、半年ものあいだ本を開けずにいました。転機は、起業18フォーラムの勉強会で「環境が変わった時期は観察期と考えていい」と聞いたことです。

Yさんは焦って進めるのをやめ、新しい職場で気づいた「研修資料の作り直しに毎回時間がかかる」という困りごとをメモし続けました。その観察が起点になり、夜の時間で研修資料の整え方を伝える小さなサービスを始め、転職から12ヶ月目に月5万円ほどの継続収入になりました。

転職か起業準備かで迷っています。40代会社員が知っておくべき判断基準とは?
● 質問 40代の会社員です。今の会社に将来性が感じられず、転職か起業準備かで迷っています。転職した友人の話を

今は無理に進めなくて大丈夫です。新しい職場で感じた小さな違和感を、一日ひとつ書き留めることだけ続けてみてください。観察を続けていれば、ある日ふと「これ、商品になるかもしれない」と思える場面に出会います。止まっている時間は、あきらめではなく、次のタネを拾う時間になります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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