記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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起業したいと漠然と思うようになったけど、どうやって始めたら良いのか、初めての人には当然分からないと思います。
起業したいビジネスの規模によっても、個人や法人などの形態によっても、やり方は全部異なると言っても過言ではありません。
そして「多額の元手が必要になりそう」「失敗したときのリスクが大きそう」とネガティブに考えてしまい、行動が止まってしまう人も多いでしょう。起業は確かにハイリスクなやり方もありますが、方法は1つだけではありません。ローリスクな起業もできますし、自己資金がなくても起業できるやり方はあります。
大切なことは、選択肢を吟味したうえで、自分に合った起業方法を選ぶこと! です。自分に合うやり方を見つけ、粛々と進めていきましょう。
この記事では、起業する3つの方法や、起業方法の最適な選び方を具体例付きで解説します。「起業ってどうやって始めるの?」と思った方は、ぜひ参考にしてください。
起業にはどんな種類がある? 個人事業主・法人設立・副業の3つを解説
起業する方法は1つだけではありません。起業には大きく分けて「個人事業主」「法人設立」「副業」の3つの種類があります。
個人事業主 | 法人設立 | 副業 | |
開業手続き | 税務署での手続きのみ | 法務局や税務署での複雑な手続きが必要 | とくになし |
---|---|---|---|
初期費用 | 少額の資金で十分 | 多額の資金が必要 | 自己資金ゼロからでもOK |
税金の支払い | ・個人で確定申告を行う ・節税効果は少ない |
・決算期ごとに決算書の作成・申告が求められる ・ある程度の事業所得があれば、大幅な税制上の優遇を得られる |
・20万円以上の所得(売上-経費)があれば個人で確定申告を行う ・給与所得がある場合は、損益通算などで節税対策も可能 |
社会的信用 | 低い | 銀行からの融資や大手企業との取引で有利 | 低い |
ここでは、それぞれのメリットやデメリット、事業を始めるための手続きを解説します。
1. 自ら事業を営む「個人事業主」になる
個人事業主とは、税務署に開業届を提出し、独立して事業をする人のことを指します。会社と雇用契約を結び給与所得を得るサラリーマンと違い、自らの事業で事業所得を得ることが目的です。
また「個人」事業主と呼ばれるように、法務局での法人設立登記を行わず、あくまでも「個人」で事業を行う人のことを意味します。個人といっても、会社や法人を設立していなければ、少人数の家族や友人との経営も含まれます。
最近は、個人でクライアントと契約し仕事を受注契約する「フリーランス」という働き方が広がっていますが、個人事業主という言葉は、こうしたワークスタイルではなく税務上の区分を示すためのもの。フリーランスも、税務署に開業届を出していれば「個人事業主」に該当します。
個人事業主として起業するメリットは、開業するまでのコストやスピードの面で、法人設立よりも優れていることが挙げられます。
必要な手続きは、近くの税務署窓口での開業届の提出のみ。トラブルがなければ、その日のうちに手続きが完了しますし、申請の際に費用は一切かかりません。国税庁の電子申告・納税システム「e-Tax」を利用すれば、オンラインで手続きを済ませることもできます。
個人事業主としての税金の支払いは、その年の事業所得を計算し、自分で確定申告を行います。支払う税金は、主に次の4つです。
所得税 | 1月1日〜12月31日までの事業所得に応じて国に支払う税金 累進課税制度によって、所得が増えれば増えるほど税率が大きくなる |
---|---|
住民税 | 住民票がある都道府県や市区町村に支払う地方税 所得税の確定申告を行った後に送られてくる「住民税決定通知書」で金額がわかる |
消費税 | モノやサービスを消費者に販売する際にかかる税金 ただし、売上が1,000万円を越えた事業者のみ支払う また、開業1年目は消費税の納税義務はない |
個人事業税 | 個人の事業所得に応じて、各地方自治体に支払う地方税 ただし、1年間の事業所得が290万円を越えたときのみ支払う |
免税事業者
消費税の納付義務を免除される免税事業者となるのは、以下のいずれかの条件にあてはまる場合です。
- 開業1年目
- 基準期間および特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていない
事業を開始してからの1年間は、判断材料となる基準期間や特定期間の課税売上高がないため、自動的に免税事業者となります。2年目の場合、基準期間はありませんが、前年の1月1日~6月30日にあたる特定期間に課税売上高が1,000万円を超えた場合は、課税事業者になりますので注意しましょう。3年目以降は、基準期間と特定期間の課税売上高で判定され、どちらも1,000万円を超えなければ免税事業者となります。新たに、課税対象者に該当した場合は「消費税課税事業者届出書」に記入して税務署に提出しましょう。
節税対策という点では、法人と比べると個人事業主は不利になります。しかし、複式簿記の作成が可能な場合は、青色申告制度を利用して所得控除を受けられるため、一定の節税メリットを得られます。
また、事業所得が赤字だった場合は、3年間まで繰り越し、翌年度以降の黒字部分と相殺することができます。(参考:freee株式会社「青色申告者は赤字を3年間繰り越せるって本当?注意点とその方法」)
2. 株式会社や合同会社など「法人設立」を行う
法人設立とは、自らが発起人となり、会社を立ち上げて事業をスタートさせることを意味します。
会社には様々な形態がありますが「株式会社」「合同会社」の2つが主流です。
「株式会社」とは、株式を発行して資金調達を行う日本で最もメジャーな会社形態です。一方、ベンチャー企業やスタートアップ企業に好まれるのが、2006年の新会社法により可能になった「合同会社(LLC)」。
法人設立までのハードルが低く、スピーディな意思決定が可能なため、市場への新規参入を目指す起業家のニーズに合致しています。
個人事業主と違い、個人ではなく会社を単位として事業を行うことになりますが、株式会社や合同会社は発起人が1人だけでも設立可能です。(参考:freee株式会社「株式会社と合同会社の違いとは?それぞれのメリットとデメリットまとめ」)
いきなり法人を設立して起業するメリットは何でしょうか?
ある程度の事業収益を見込めることが前提ですが、法人なら様々な節税対策を打つことが可能です。
法人が支払う税金には、主に次の6種類があります。
法人税 | 法人の場合、事業所得に応じて法人税が課せられる 所得税と違い、所得金額に対して税率の上昇が穏やか。 |
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法人住民税 | 個人事業主における住民税に相当し、会社の所在地がある都道府県や市区町村に納付する地方税 |
法人事業税 | 個人事業主における個人事業税に相当し、事業を営む都道府県に対して納める地方税 |
地方法人特別税 | もともと法人事業税の一部で、2014年に地方財源の捻出を目的に新設された 法人事業税と一緒に支払う |
消費税 | 個人事業主と同様、モノやサービスを消費者に販売する際に支払う 創業してから2年間は納付の必要がなく、売上が1,000万円以下であれば免除される |
固定資産税 | 法人が所有する土地・不動産・機械・車両などの固定資産に対して課せられる地方税 原則として、税率は固定資産税評価額の1.4% |
個人事業主として起業した場合は4種類の税金を支払うのに対し、法人を設立した場合は少なくとも6種類の税金を支払わなければなりません。
しかし、事業所得の金額に応じて支払う法人税は、所得税よりも税率の上昇が緩やかなため、900万~1,000万円以上の事業所得を見込める場合は、個人事業主よりも税金の支払いを抑えられます。
また、個人事業主よりも経費として計上できる項目が多く、社長としての給与や、加入している生命保険の全額なども対象です。経費を多く計上することによる事業所得の圧縮が可能なため、節税対策の面でも優れています。
その他、個人事業主では事業所得の赤字を最大3年間しか繰り越せないのに対し、法人では最大8年間の繰越が可能です。税金の支払いという観点では、法人を設立した方がお得になるケースが多くなります。
但し、個人事業主と比べると手続きが煩雑で、費用も掛かるのがデメリットです。また、法人を作る場合は、法務局の窓口で設立登記を行わなければなりません。設立登記の際には登録免許税が必要になるため、合同会社なら最低でも6万円~、株式会社なら最低でも15万円の出費が発生します。
また、株式会社を設立する場合は、予め定款を作成して、公証人役場で認証を受ける必要があります。認証手数料として別途5万円が必要です。合同会社であれば比較的スムーズに設立できるものの、法人を作る場合は、一定の手間とコストが掛かることを覚えておきましょう。
参考:freee株式会社「【会社設立にかかる費用】会社形態によって費用は変わる?」
3. 会社で働きながら副業する
副業とは、アルバイトや会社員として働きながら、本業の片手間に事業を起こすことを意味します。
最近は、副業は本業の収入を補う目的ではなく、ローリスクに起業するための方法としても脚光を浴びています。特に平日はサラリーマンとして働き、休日に事業を営む「週末起業」は、忙しいサラリーマンでも起業できる新たなスタイルとして定着しつつあります。
「時間的に両立は難しいのでは」「会社の人にあまり良い顔をされないのでは」と感じる人が多いかもしれません。しかし「働き方改革」や早期退職推進の影響なのか、副業を解禁する企業は増えています。
実際、マイナビが2020年に行った調査では、全体の49.6%が副業を容認していることがわかりました。
現在、副業・兼業を認めている企業は全体で49.6%。また「現在認められており、将来的にも拡充する予定」(19.4%)「現在一部認められているが、将来的には拡充する予定」(22.4%)「現在は認められていないが、将来的には認められる予定」(15.2%)と、将来的に認める・拡充する予定の企業は合計で57.0%となった。
もちろん、会社の顧客と個人的に商談をする、会社の事業を通じて知り得た機密情報を利用するなど、会社に対して不利益を与える副業は法律で禁じられています。それでも一昔前と比べて、会社勤めをしながら起業する道が広がりました。
副業がローリスクといわれる理由は、本業の収入があるため、事業が軌道に乗らなくても生活を守れるからです。独立した場合は、自分で稼いで生計を立てなくてはなりません。赤字を出してしまうと、お金のみならず精神的にもとても苦しくなっていきます。
また、副業で時間をかけて準備できるなら、自己資金が少ない場合でも大丈夫です。スモールビジネスでスタートし、資金をためつつ少しずつ事業を大きくしていくことができるので、失敗しにくい方法と言えます。
副業の場合でも、税務署に開業届を提出して、個人事業主として活動する人もいます。その場合、税金の支払いについては、個人事業主の場合と同様のメリット・デメリットがあります。
開業届を出して事業所得で確定申告をするなら「損益通算」という節税対策も可能です。損益通算とは、立ち上げた事業で赤字が出てしまった場合に、給与所得と相殺して所得税の支払いを抑えられる仕組みのことです。
【パターン別】自分に合った起業方法の選び方4つ
起業には様々なやり方がありますが、失敗しないためには、自分に合ったやり方を選ぶことが大切です。
ここでは、4つのシチュエーションを取り上げ、それぞれのパターンにおいてベストな起業方法をご紹介します。
1. 十分な自己資金がないケース
多くの人が起業をためらうのは、上手くいく確信がないから。正解とやり方を教えてもらわないと、何もイメージできないから。もっと言えば、そもそも挑戦するためにお金を投資する意識が無い、これが大きな理由です。
会社で一生懸命働いてお給料をもらい、少しずつ貯金をしてきて、それをリターンが保証されないものに使えない。そこが最大のボトルネックになっているのです。
ですが、実際は、お金はある場合が殆どです。あるのです。小さなお金で大丈夫なのに「1円も使いたくない=自己資金が無い」と言っているだけなのです。
2019年の日本政策金融公庫の調査によると「まだ起業していない理由」として「自己資金が不足している」という項目を選んだ人は全体の53.1%に達しています。(データ:日本政策金融公庫「起業と起業意識に関する調査」)
たしかに、店舗や事務所の取得費、機械や車両の購入費などのイニシャルコストがかかる事業や、いきなり法人を設立する場合は、ある程度の自己資金が必要です。でも、そんなことをしなくても起業はできます。
自己資金が少ないからといって、無理な資金調達を行うのはおすすめしません。(※そもそも、信頼性が高いメガバンクからの融資や、金利の低い政府系金融機関からの融資は、起業したてで業歴がない状態では審査に通ることは困難です。)
消費者金融は比較的審査に通りやすいものの、事業向けではないため金利が割高で、利子の支払いだけでも大きな負担になります。思うように事業収益が出ず、毎月の返済が困難になると、雪だるま式に借金が増えてしまう人も少なくありません・・・。
「自己資金がない」と思う人は、小さく事業をスタートさせましょう!
2. 大きなリスクを避けたいケース
起業失敗のリスクを恐れる人も少なくありません。同じ日本政策金融公庫の調査によると、起業しない理由として「失敗したときのリスクが大きい」という項目を選んだ人が、全体の35.5%も存在しています。(データ:日本政策金融公庫「起業と起業意識に関する調査」)
しかし、世間的なイメージと違って、起業家はハイリスク・ハイリターンのみを追求しているわけではありません。最初はローリスクな起業方法を選び、状況を見ながら少しずつ拡大していくのが、近年主流となりつつある起業方法です。
日本政策金融公庫の調査では「事業に投下した資金を失うこと」が80.3%「借金や個人保証を抱えること」が74.2%「安定した収入を失うこと」が70.5%と、主に経済的な不安がトップ3を形成しています。(データ:日本政策金融公庫「起業と起業意識に関する調査」)
現実は、副業や週末起業、初期投資が少ない業種を選べば、損失はそれほど大きくなりません。
3. 家事・育児をしながら働きたいケース
最近は、家事や育児をしながら「プチ起業」をする専業主婦・主夫の方が増えています。そんな方におススメなのは、在宅で可能なネットビジネスで起業する方法です。
ネットビジネスには、アフィリエイトや、スキルシェアサイトでデザインやライティングなどの仕事を得る方法もあります。好きな時に好きなだけ働けるため、時間の制約がある子育てや介護をされている方にも向いています。掃除や洗濯の合間、幼稚園や小学校の送り迎えの後など、スキマ時間を活用できます。
専門的な知識やスキルを持っているなら「自宅教室」を開く方法もあります。たとえば、料理が得意なら料理教室を開く、英語が得意なら英会話教室を開くなどです。自宅の空きスペースを利用すればコストは掛かりません。
ちなみに、配偶者控除に入っている方は、収入要件に注意しましょう。起業する場合は「年間の事業所得が条件を超えないこと」を計算する必要があります。
配偶者控除と聞くと「年間103万円の収入要件」の方をイメージする方が多いですが、こちらはパートとして「給与所得」を得ている場合に該当します。個人事業主として起業すると、給与所得ではなく事業所得を得ることになるため、年間48万円の条件のほうが適用されます。どうしても配偶者控除を利用したい方は、事業所得が48万円を超えないか注意する必要があります。
個人事業主でも扶養範囲内になるケース
個人事業主、つまり開業しても、税法上の扶養に入れるケースについて説明します。
扶養者が配偶者の場合
上述した通り、旦那(または妻)の扶養に入っていて、個人事業主として開業した場合、所得合計額の条件を満たせば、所得税と住民税については、配偶者控除または配偶者特別控除の適用があります。開業した人の年間合計所得が48万円以下であれば配偶者控除、133万円以下であれば配偶者特別控除の範囲になります。
ただし、配偶者控除と配偶者特別控除を両方適用すること、旦那と妻がお互いに控除枠を利用することは認められていません。
4. 在学中に起業するケース
大学や専門学校などに通いながら起業する人もいます。学生が起業する場合にネックになりがちなのが自己資金です。クラウドファンディングや補助金を取れるなら良いのですが、融資は慎重に検討してください。
もし、起業を諦めて会社に就職するなら廃業届を出しておきましょう。
出資金を集めて大きく起業したがる学生も多いのですが、その前にまず、アルバイト替わりに、元手がかからないビジネスができるかどうか、学生のうちに試してみましょう。
起業が向いている人に共通している4つの特徴
起業して上手くいく人と、そもそもやめておいた方が良い人には、どのような違いがあるのでしょうか? 成功している起業家には共通した特徴があります。
ここでは、起業が向いている人の4つの特徴を解説します。もし当てはまらない人がいても大丈夫です。ここで挙げている特徴は決して特別なものではなく、少しずつ日々の意識や行動を改善していけば身につけられるものばかりです。
1. 行動や決断にスピード感がある
ビジネスで成功している人の多くは「行動する前に悩む人」ではなく「悩みながら行動する人」です。行動や決断にスピード感があり、1つの選択にクヨクヨ考えません。起業家にとって、スピーディに動くことには明確なメリットがあります。
起業家は、上司に判断してもらうのではなく、自分自身で正解を決めなければなりません。何かを思いついても「これで良いですか?」なんて聞く相手がいないのです。
決断のリスクを過剰に恐れたり、正解を求めて実行までに時間をかける人がたくさんいます。考えている間に同業者が同じことを思いつき、あなたの利益を全部奪っていくかもしれないのに・・・。
また、アイデアを実現するまでの間は、経営上は1円の利益も発生していない時間です。Time is Money. 行動を先延ばしにせずアイデアを実行していれば、その時間で収益を生み出せていたかもしれません。
もちろん、何も考えずに即断即決するのではなく、中長期的なプランを立て、経営リスクに対して備える必要はあります。しかし、決断までの時間を必要以上に長引かせることは、プラスどころかマイナスになることを覚えておきましょう。
もし、スピーディに決断できない場合、物事の決定までの「期限」を決めることをおススメします。「○○日までにあれをやる」「これの決定をするのは○○日まで」と期限を設定しておけば、決断材料を揃える癖がつき、フットワークが向上します。
2. 「できない理由」よりも「できる方法」から探す
何かあるとすぐ「できない理由」を探す人がいます。「自分のスキルでは実現できない」「実行するまでに時間がかかる」とチャレンジを恐れていては成長できません。
逆に「不足している部分のスキルアップに取り組もう」「もっと効率的にできる方法がないか探してみよう」とポジティブに考えることで、新たな知識やスキルを身につけ、業務効率や生産性を向上させることができるようになります。
起業してから数ヵ月~1年は、手探りの状態が続くことになります。特に、起業するのが初めての方は、できない理由探しなどすぐにやめ、トライアンドエラーを繰り返しましょう。安全で消極的な選択を続ける人は、成長していくチャンスにほとんど恵まれません。
「できない理由」を探す天才には「できる方法」は見つけられません。もし、そんな人がいるなら、考えてみてください。そういう自分を変えるために起業したいのではありませんか?
3. 自己実現や社会問題解決への意欲がある人
日頃から「起業することで何かを変えたい」「社会の問題点を解消する事業を起こしたい」と考えている人も起業に向いています。実現したいことや、社会問題を解決したいという意欲を持っている人には、強い「当事者意識」があります。
当事者意識は、起業の資質のひとつです。個人事業主であれ、副業や週末起業であれ、起業する以上は自ら意思決定を行います。会社員と違って、事業の行く先を決められるのは自分自身しかいないのです。
最近は「ソーシャルビジネス」での起業を目指す人が増えてきました。ソーシャルビジネスとは、社会問題の解決を通じ、事業収益を上げることを目的とした新しいビジネスのことです。
ソーシャルビジネスの具体例としては、地球環境に優しい素材を使った製品開発、銀行口座を持てない人向けのモバイル送金サービスなどがあります。「起業することで何かを変えたい」という強い責任感を持っている方は、ソーシャルビジネスの分野で起業するのもおすすめです。
4. 既存のやり方に疑問を持てる人
「なんでこんなやり方してんの?」「なんでこうしないの?」と考えられる人も、起業する力を持っています。既存のやり方に疑問を持つことが、新しい発想のトリガーになることが少なくありません。
既存のモノやサービスの改善点を考えることが、新しいビジネスアイデアを思いつくきっかけになります。モノやサービスの使いづらいところを見つければ、それを改善するだけで良いのです。
普段からそのような視点を持っていない人は、日常生活で「面倒くさい」と思うことがないか探してみましょう。「面倒くさい」ことは、改善できる部分があるということです。
起業は高額な資金なしでも始められる! 副業から始める3つのメリット
起業ってどうやってするの? その感覚を掴めるまでは、副業で少しずつ始めてみるのがおススメです。副業なら、会社を辞めて起業するリスクを負う必要がありませんし、ローンを組んだり、引っ越ししたりする必要が出ても問題ありません。ビジネスを学ぶ時間も確保できます。
ここでは、いきなり独立せず、副業から始めた方が良い理由を3つご紹介します。
1. 副業にしかないリスクマネジメントができる
いきなり独立したり、法人設立したりせず、本業を続けながら起業する最大のメリットは、経済的な安定を得られる点です。事業収入が赤字だとしても本業の収入があるため、ダメージを受けずに生活を続けることができます。
試してみて「やっぱり違うな」と思ったとしても、何も問題ありません。独立した場合は、そんなことをすれば生活できなくなってしまいますが、副業なら本業があるため、どんどん自分の納得できる道を探すことができます。
最初は「副業」「週末起業」がおススメです。「起業する=仕事をやめる」という固定観念を捨てましょう。
2. ローンや引っ越しの際も副業なら安心
起業したてで業歴が無い場合、社会的信用が高くありません。自営業者になると、住宅ローンや自動車ローンの審査、引っ越しの際の入居審査で不利になってしまうのです。サラリーマンという身分を維持していれば、こうした審査の際でも安心です。
起業を考えるのは30代や40代の人が多いですが、これは車やマイホームの需要が高まる時期とも重なっています。何も考えずに会社を辞めてしまうと、取り返しがつきません。大きな買い物をする場合は、サラリーマンのうちに済ませておきましょう。
3. 本業と副業の収入で開業資金を貯められる
将来的に事業規模を大きくしたい場合は自己資金が必要です。具体的には、店舗・事務所の取得費や機械・車両の設備投資などのイニシャルコストのほか、法人を設立するなら登記や定款認証などの開業手続きだけでも数十万円の初期費用が必要となります。
また、事業が上手くいかなかった場合の保険として、開業してから半年分ほどの生活費も用意しておく必要があります。事業を続けていくためのランニングコストも考慮すると、自己資金ゼロで開業するのは現実的ではありません。
副業から始めれば、こうした資金をスピーディに貯めることができます。家族や知人からの借金や、消費者金融からの借入など、無理な資金調達をする必要もなく、健全経営のまま自己資金を増やすことができます。ある程度の時間は必要ですが、ローリスクで進めたい方には副業がおすすめです。
起業を成功させる4つのポイント
起業の成否を分けるポイントは4つあります。誰でも実行できる内容ですので、これから起業を考える方はぜひ参考にしてください。
1. 先行投資を抑えてスモールスタートを目指す
失敗のリスクを抑えるには、スモールスタートが基本です。「固定費」「先行投資」をかけないことを心がけましょう。
たとえば、飲食店を始める場合、店舗の取得費、店舗内装費、什器・厨房機器の購入費、従業員の人件費などが、固定費や先行投資として必要になってきます。飲食店ではスモールスタートが難しく、事業がうまくいかずに店舗を畳んだときのリスクも大きくなります。
逆にネットビジネスのように、パソコンとネット環境さえあればできるビジネスなら、失敗したときのリスクを最小化できます。すぐに事業を転換することもでき、次のチャレンジまでの時間も殆ど空きません。
固定費は、重たい出費です。十分な事業収益を得られた場合でも、固定費をかけた分だけ、最終利益が減少し続けます。もちろん、これらを確定申告の際に経費として計上し、税金の支払いを抑えることはできますが、手元に残るお金は減ってしまいます。
お金を使う時は優先順位をつけて、本当に必要なものから購入するようにしましょう。別のもので代用できるなら、購入しないという選択をすることも重要です。たとえば、事務所を構える場合、建物の内装や外装にこだわり、必要以上に資金を使ってしまう方もいます。どうしても必要なものでなければ、後回しにすることもできるはずです。
2. 自分の経験やスキルを活かす
起業するなら、自分の経験を活かすことを考えましょう。人よりも優れている点があれば、それが自分の強みになります。
たとえば、BtoBビジネスに従事してきた人なら、かつての人脈を利用し、起業してからの顧客を獲得できるかもしれません。また、Webマーケティングやコピーライティングのスキルがある人なら、WebやSNSを利用して、モノやサービスをより効率的に宣伝することができます。
よい起業アイデアが思いつかなければ、自分の好きなことや得意なことを思いつく限りリストアップして、ネタ探しをするのもひとつの方法です。
もちろん、やりたいことがそのままビジネスになるとは限りません。別のアイデアへ連想を広げたり、アイデアを組み合わせたりすることで、だんだんビジネスモデルの骨格が生まれてきます。たとえば「掃除や洗濯が得意」という特技でも構いません。実際に「掃除や洗濯が苦手な人のために自宅へ出向いてやってあげる」のが「家事代行サービス」です。
ビジネスになるかどうかを考える前に、たくさんリストアップしておくことが大切です。アイデア同士が化学反応を起こし、思わぬ相乗効果を得られるかもしれません。
3. PDCAサイクルを回す
仕事を成功させるためには、PDCAサイクルが大切です。PDCAサイクルには「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」の4つの段階が存在します。PDCAサイクルは生産管理や品質管理の現場だけでなく、事業の健全経営のためにも欠かせません。
まやってみたいことの計画を立てたら(Plan)、実際にやってみて(Do)「何が悪かったのか」を分析して(Check)、具体的な改善策を実行してみましょう(Act)。
最初のうちは慣れないかもしれませんが、継続的にPDCAサイクルを意識することで、成功率が高まっていきます。
4. SWOT分析で事業の強みと弱みをしっかり分析
事業計画や経営戦略の強み・弱みを客観的に分析するためには、SWOT分析も効果的です。SWOT分析では、知識やスキルなど自分自身でコントロールできる「内部環境」景気やマーケット、社会情勢によって外的に左右される「外部環境」の2つの因子を使います。
まず、内部環境を「強み(S)」と「弱み(W)」の2つに分け「自分のどのような知識やスキルが強みになるか」あるいは「競合他社と比べて自分の事業のどこがウィークポイントか」を分析します。さらに外部環境を「機会(O)」と「脅威(T)」の2つに分け「自分にとってビジネスチャンスがある情勢かどうか、あるいは「自分の事業にとって不利益となる変化がないか」を分析します。
内部環境と外部環境、プラス要素とマイナス要素の両面から総合的に分析し、表にまとめることで、視覚的にわかりやすい自己分析が可能です。
「自分の強みや弱みがはっきりしない」「今がチャンスなのかピンチなのかわからない」という方は、SWOT分析のフレームワークを借りてみましょう。強み・弱みとして書き出す要素は選り好みせず、どんな些細なことでも抽出することが大切です。
起業するのに最低限必要な4つのもの
最低限必要になるものは4つあります。早めに準備しておきましょう。
1. ざっくりと事業計画書を作成しておく
計画的な経営をするためには、ざっくりでも事業計画を立てることが大切です。そのためには「事業計画書」の作成が役立ちます。
事業計画書は、銀行融資などの資金調達を行う企業が作成するものですが、副業や個人事業主であっても作っておくと便利です。ざっくりでも、作成する過程でビジネスプランが明確になり、中長期的な視点で事業を考えられます。
事業計画書では、主に「経営方針」と「収支目標」の2点を設定します。経営方針とは「事業をどのように成長させていくか」「モノやサービスをどうやって消費者に売るか」など、経営の軸となるものを意味します。
たとえば、これから始める事業の概要はもちろん、販売する製品やサービスの詳細、参入を狙うマーケットの分析など、事業収益を伸ばすための具体的な戦略や実行プランを書き込んでいきましょう。
収支目標とは「どれだけの利益を得ることを目標とするか」「どれだけの資金を調達し、どれだけの経費を支出するか」など、健全な経営をするための目標を意味します。事業年度ごとの収支目標だけでなく、月ごとの収支目標を立てて、クリアできているかチェックしましょう。
どんぶり経営では、お金がどんどん出ていってしまいます。原材料の仕入れ代金の振込期限や、税金や保険料の支払日になって、手元に残っているお金がないという事態にもなりかねません。
2. 自己資金を用意しておく
必ずしも多額の自己資金が必要なわけではありませんが、持続可能な経営のためには、手元に多くのお金があるに越したことはありません。事業計画書を作成したら、必要な資金を確保しましょう。
地方自治体が起業家向けに提供している補助金を申請するのもひとつです。補助金は原則的に返済不要のため、条件に当てはまる方は検討しましょう。
たとえば「創業・事業承継補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などは、個人事業主でも利用可能です。書類を用意するのには手間がかかりますし、申請しても必ず受理されるわけではありませんが、もし利用できれば大きな助けとなります。
3. ビジネススキルを身につけておく
実際に起業してみないとわからないこともたくさんありますが、基本的なITスキルや、顧客との関係構築に欠かせない営業スキル、集客や販路開拓に役立つマーケティングスキルなどは必ず役に立ちますので、良書を読んでおくと良いでしょう。
ITスキル | 基本的なパソコンやオフィスソフトの操作をはじめとして、システム開発やWebサービスの運営を仕事にしたい方は、プログラミング言語やサーバーサイド言語、データベースなどの知識が必要 |
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営業スキル | 顧客やサプライヤーなど、事業を経営するうえで欠かせないステークホルダーとの関係構築に役立つ とくに法人顧客を対象としたBtoBでの起業をするなら重要 |
マーケティングスキル | モノやサービスを「誰にどうやって売るか」の戦略を立てるスキル とくにWebやSNSなどを活用したWebマーケティングスキルや、インターネット広告の知識があると便利 インターネット広告は広告業界のなかでも急成長を続けており、モノやサービスを宣伝するのに役立つ |
4. お金と法律の知識を身につける
ビジネススキルと同じくらい大切なのが、お金や法律の知識です。個人事業主であれ、副業や週末起業であれ、独り立ちする以上、税金や会計、経理の最低限の知識は欲しいところです。
特に税金の知識は、手元に残るお金が変わってくるため重要です。「いつまでにどんな税金を支払うか」「どれくらいの税金を支払えば良いか」といった基本的な知識は、どうしても必要になってきます。
複雑な帳簿を作成できなくても「毎月どれくらいお金が出ていって、どれくらいお金が入ってくるのか」がわかれば、お金を管理するうえでは十分です。大まかなキャッシュフローを把握していれば、毎月、毎年の利益計画を立てることができます。
法律の知識は、起業後のトラブルを避けるために必要です。事業の種類によって関わってくる法律が異なるため、起業したい業種が決まっている場合は事前に調べておきましょう。
たとえば、モノやサービスを販売する場合は、消費者に誤解を与えかねない表示を禁止する「景品表示法(景表法)」の配慮が必要です。扱う商品が化粧品や健康食品の場合は、さらに薬機法の規制にも注意する必要があります。
こうした法律に反してしまうと、最悪の場合は業務停止を命じられることもあります。知らなかったでは済まされないため、トラブルを避けるためにも事前に調べておくことが大切です。
起業するなら副業から小さく簡単に
起業の始め方は様々です。個人事業主や法人設立、本業を続けながらの副業・週末起業など、色々なやり方がありますので、自分に合うやり方を探すことが大切です。
起業経験がない方は、座学で学んでも分からないことだらけだと思います。実際にやりながら学んでいくのが一番理解できます。そのためにも、小さく始めて、少しずつ進めていくのが、リスク管理の面でも、知識を得る面でも、とってもお得なのです。
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