記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
彼氏が「会社を辞めて起業したい」と言い出して、もう3ヵ月になります。応援したい気持ちはあるのですが、これといったスキルも実績もなく、貯金も多くありません。本気なのか勢いなのかも正直わからず、このまま交際を続けてよいのか不安でたまりません。
反対すれば関係がぎくしゃくしますし、黙って見守るのも怖いです。彼女としてどう向き合えばよいでしょうか?

● 回答
まず、見る場所を変えてみましょう。見極めるべきは「起業するかどうか」ではなく「彼が勤めながら数字を残せるかどうか」です。ここが反対と応援の分かれ目になります。
反対したくなるのは自然な感情です。けれど、その不安の多くは正しい手順を共有することで小さくできます。私は26年間で見てきた相談のなかで、うまくいくカップルとそうでないカップルの差は、辞めるタイミングをめぐる会話の質にあると感じています。
彼の本気度は感情ではなく行動で測れる
本気かどうかは、雰囲気や口数では測れません。判断材料になるのは、勤めを続けながら今すでに動いているかどうかです。次の3点を静かに見てください。
本気度を測る3つの行動サイン
- 勤めながら小さく動いているか:
辞める前の今、週末や夜の時間を使って試作や受注に手をつけているか - 家計をふたりで話し合おうとするか:
生活費の試算や貯蓄の見通しを、あなたと共有しようとしているか - 売り方を具体的に話せるか:
「自由になりたい」ではなく、誰に何をいくらで売るかを言葉にできるか
3つとも当てはまるなら、かなり本気です。逆に辞めることだけが先走り、準備が空っぽなら、少し待ってもらう提案が現実的になります。辞表を出す前に最初の1件を受注できる人は、独立後の立ち上がりも速い傾向があります。
反対も全面賛成もしない「第三の立ち位置」
多くの彼女が、全面的に賛成するか全面的に反対するかの二択に追い込まれます。けれど有効なのは、その中間の立ち位置です。
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』の第1章「ドリームキラーたち」では、家族やパートナーの反対は悪意ではなく心配から生まれると紹介しています。だからこそ、反対をぶつけ合うのではなく、心配の中身を一緒に減らす方向へ会話を向け直すことが近道になります。
「辞めるのは、勤めながら最初の売り上げを立ててからにしよう」と伝えること自体が、反対ではなく現実的な愛情表現です。在職のうちに小さな実績、つまり数字が出ると、家族の反対は応援へと変わっていきます。
実際に、こんなケースがありました。
黒田さん(仮名・31歳・医療事務)の場合
交際していた彼(33歳・法人営業)が、ある日「半年以内に独立する」と宣言しました。スキルも実績も乏しく、貯金も心もとない状況で、黒田さんは最初「絶対にやめて」と即座に止めたそうです。
口論を重ねても関係が冷えるだけで、状況は変わりませんでした。転機は2024年の春でした。彼が勤めを続けながら週末だけで提案活動を始め、同年6月に1件目として月12.8万円の業務委託を獲得したのです。
「漠然とした不安が、数字を見た瞬間に手触りのある現実に変わりました」と黒田さんは振り返ります。彼はそのまま在職を続けて受注を2件に増やし、2025年の初めに独立しました。黒田さん自身も起業18フォーラムのセミナーに通い、今は自分でも月6万円の収入をつくり、ふたりで稼ぎを持ち合う形に落ち着いています。
それでも不安が消えないなら、あなた自身の収入という保険を持つ
起業家のパートナーとして暮らすうえで、心を最も安定させるのは、あなた自身も収入源を持っていることです。彼を信じることと、家計のリスクを下げることは矛盾しません。
日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」(2024年11月公表)によると、開業費用は中央値で580万円、平均で985万円でした。10年以上前と比べて少額化が進み、250万円未満での開業が2割を占めています。ここから読み取れるのは、まとまった資金がなくても始められる一方で、立ち上がりの1〜2年は収入が安定しにくいという現実です。
同じ日本政策金融公庫の調査では、開業者に占める女性の割合が25.5%と、1991年度の調査開始以来もっとも高くなりました。起業がふたりにとって他人事でない時代に入っているとも言えます。だからこそ、あなたが収入を持つことには2つの意味があります。
- 家計の支え:
彼の起業初期の不安定な時期を、あなたの収入が下から支えられる - あなたの自立:
収入源を持つこと自体が、あなた自身の将来の選択肢を広げる
ふたりで収入を持ち合う関係は、彼の挑戦を止めずにリスクだけを下げられる、もっとも現実的なパートナーシップです。


彼の起業プランの現実味を一緒に確かめたい方、あるいはあなた自身が収入づくりを始めたい方は、セミナーにもお越しください。それぞれの状況に合わせた現実的な進め方を紹介しています。
今日できることは、彼に「勤めながら最初の1件を受注してみよう」と提案してみるだけで十分です。
よくある質問
Q.起業家の彼と結婚したら、自分も収入を持った方がよいですか?
はっきり言えば、ふたりで稼ぎを持ち合う方が家計のリスクは大きく下がります。独立直後の1〜2年は収入が不安定になりやすいため、片方が安定収入を持っていると精神的にも経済的にも余裕が生まれます。あなた自身の収入源は自立にもつながり、ふたりにとってプラスに働きます。
Q.彼に「起業資金を貸してほしい」と言われました。どうすればよいですか?
個人間のお金の貸し借りは、どんな関係でも後からこじれる火種になりやすいです。「応援したいけれど、貸し借りは関係に響くから避けたい」と正直に伝えましょう。資金は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」など、公的な創業支援制度を一緒に調べる方が健全です。
Q.彼の準備が本気かどうか、まだ判断がつきません。もう少し様子を見るべきでしょうか?
様子を見るだけでは時間が過ぎていくだけです。本記事の3つの行動サインに照らして、実際の動きが伴っているかを確かめてください。動きがなければ「まず勤めながら1件動いてみて」と提案するタイミングです。それだけで、ふたりの会話の質は変わっていきます。
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