久米島起業ガイド|既存産業と組んで会社員スキルを売る現実的な始め方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

那覇空港から飛行機で30分。沖縄本島から西へ約100キロに浮かぶ久米島は、2025年1月時点で人口7,140人の小さな町でありながら、海洋深層水を活かした産業集積がすでに動いている島です。海ぶどう養殖、化粧品、車エビ、飲料水。年間入域観光客もコロナ前で約10万人前後。

「ここで起業したい」「家族と海の近くで暮らしたい」と思ったとき、久米島は他の沖縄離島と少しちがう答えを持っています。離島の多くは「ゼロから何かを作る」発想で語られますが、久米島はすでに育っている産業と組む道のほうが、会社員のスキルを早く形にしやすい島です。

ポイント 久米島という島の前提:人口7千人台・那覇30分・海洋深層水の島

人口7千人台・那覇から飛行機30分の島の輪郭

久米島

久米島は、沖縄離島の中で「会社員のままで関わりやすい距離にある島」のひとつです。那覇空港から日本トランスオーシャン航空(JTA)と琉球エアコミューター(RAC)が1日合計6〜7便、所要時間は約35〜40分。フェリーも那覇泊港から運航しており、所要時間は直行便で約3時間、渡名喜経由で約3時間30分です。

羽田からだと那覇経由でドアtoドアおおむね半日。八重山や与那国にくらべて、東京の会社員が「年に何度も通う」運用が現実的なエリアです。

町のサイズ感と人口動態

久米島町の年齢別人口資料(令和7年1月、外国人含む)によると、町の総人口は7,140人。男性3,820人、女性3,320人。65歳以上が33.0%で、人口の3.3人に1人が高齢者という構成です。

なお、久米島町の住民基本台帳年報では令和7年3月末の日本人住民は6,934人となっており、人口減少は続いています。海洋深層水産業や観光、新規就農の受入で「働く場所がある離島」として認知され始めています。人口7千人台というのは、東京の感覚だと小さい商店街1つほどの規模ですが、離島としては中規模クラスで、生活インフラ(医療・スーパー・学校)がそろう最低ラインを超えている島です。

海洋深層水という独自の産業基盤

久米島の特徴は、ほかの離島にはない「海洋深層水産業の集積」です。経済産業省・JICA関連の報告によると、久米島町の海洋深層水を使った事業全体の売上は約25億円規模、雇用は約140人。海ぶどうの陸上養殖は生産量日本一。

「球美の海ぶどう」「久米島の天然水」「海洋深層水化粧品」などの商品が、実は東京のドラッグストアや百貨店にも並んでいます。

つまり「島の中だけで完結する事業」をゼロから作るより、すでに動いている海洋深層水・養殖・観光の産業群と組むほうが、起業準備の入口としては入りやすい構造です。

補助金は「国境離島」ではなく町と沖縄県の制度を確認する

内閣府が公表している特定有人国境離島地域は15地域71島で、久米島はその一覧には含まれていません。そのため、久米島での創業準備では「国境離島補助金」を前提にせず、久米島町・沖縄県・中小企業庁の創業支援、空き家活用、離島特産品の販路支援などを年度ごとに確認する必要があります。

「離島だから自己資金だけで勝負しないといけない」というより、使える制度の種類と所管を取り違えないことが重要です。

ポイント 久米島で使える創業・移住の支援メニュー

特定創業支援・空き家活用・町独自施策の地図

久米島

会社員のまま起業準備を進めるなら、補助金や支援施設は「最初に駆け込む場所」ではなく、「方向性が固まったあとで使う道具」として知っておくのが正解です。窓口に行く前に、まず何をやるかの輪郭を自分の中で言葉にできているかを点検してください。

久米島で確認したい創業・事業化支援

久米島で使える支援は、年度ごとの公募で内容が変わります。2026年時点で確認しやすいものとしては、特定創業支援等事業、空き家活用支援、沖縄県の離島特産品マーケティング支援、町の商工観光課や島ぐらしコンシェルジュ経由の相談があります。補助金を先に決めるのではなく、事業の輪郭が固まってから該当制度を照合する順番が安全です。

  • 特定創業支援等事業:登録免許税の軽減や創業融資面の優遇を確認
  • 空き家活用支援:令和7年度は補助対象経費の3分の2以内・上限100万円の公募例あり
  • 離島特産品マーケティング支援:沖縄県の年度公募を確認
  • 申請窓口:久米島町商工観光課(TEL 098-985-7131)
特定創業支援等事業(中小企業庁・産業競争力強化法)

久米島町商工観光課で所定の研修を受けると、特定創業支援等事業の証明が出ます。株式会社設立時の登録免許税が15万円から7万5,000円に半減、合同会社なら6万円から3万円。日本政策金融公庫の創業融資の対象範囲も広がります。島で法人を立ち上げるなら、知っておかないと損する制度です。

移住・就農・子育て支援

久米島町は移住者向けの「島ぐらしコンシェルジュ」窓口を設けており、住まい紹介から学校情報まで一括相談できます。

新規就農なら国の経営開始資金は原則50歳未満・年間最大165万円・最長3年が基本です。出産助成金は宿泊形態に応じて15万円〜25万円、出産・子育て応援交付金は妊娠時・出生後に各5万円、出産祝品贈呈事業はおむつ券6万円と案内されています。

ポイント 会社員のままで動かしやすい久米島ビジネス4系統

プロダクト・スキル・ノウハウ・スペースの島内応用

久米島

何を売れるかが分からないまま「島に行けば道が拓ける」と思って移住すると、半年で詰まります。拙著『リスクゼロで小さく起業 会社を辞めずに「あと5万円!」稼ぐ』では、ビジネスを「プロダクト/スキル/ノウハウ/スペース」の4分類で整理しているのですが、久米島はこの4系統のどれにも入口があります。

プロダクト型:島の素材を都会に運ぶ

海洋深層水化粧品、海ぶどう、車エビ、泡盛、シーグラス雑貨など、すでに島で生産されているプロダクトを「会社員のまま、東京で売る」モデルです。島の事業者の商品を仕入れて、自分のECや法人ルートに乗せる卸ベースから入ると、在庫リスクを最小にできます。商品開発の経験がある人なら、島の事業者にOEM企画を持ち込む形も成立します。

スキル型:会社員の専門技術を島に届ける

久米島の中小事業者の多くは、Webマーケ・採用・経理・知財・補助金申請といった、東京の会社員が日常業務で使っているスキルを内製化できていません。島の既存事業者と業務委託契約で組むことで、移住前から関係性ができ、会社員のままで月数万円規模の収入を作れます。これが久米島では特にハマる入口です。

ノウハウ型:島の暮らし・産業を発信する

島での暮らし、移住の段取り、海洋深層水の使い方、観光客が知らない久米島の歩き方など、自分が現地で体験して整理した情報を、note・YouTube・有料コミュニティで発信するモデルです。発信を1年続けると、移住相談・関係人口づくりの仕事につながる人が出てきます。

スペース型:島の空間を活用する

空き家を借りてゲストハウス・コワーキング・体験プログラム拠点にするモデル。ただしいきなり物件を取得するのではなく、まずは既存施設の運営支援やイベント共催から入るのが現実的です。久米島町は空き家活用と移住定住の連動施策を進めており、町商工観光課に相談すれば物件マッチングの窓口を案内してもらえます。

  • 島に着いてから事業の中身を考える
  • 島内市場だけで売上を完結させようとする
  • 移住補助金や創業補助金の獲得を最初のゴールに置く
  • 既存事業者を「競合」とみなして関係性を結ばない

逆に言えば、久米島で会社員のスキルが速く形になる人ほど、最初の半年は「島で売る」のではなく「島の事業者と組む」入口を選んでいます。これが、移住しなくても始められる現実的な答えです。

ポイント 起業18フォーラム会員さんの久米島ストーリー

中野さんが12ヶ月で月10万円継続まで届いた道筋

久米島

たとえば、起業18フォーラム会員の中野さん(仮名・40代後半・大手食品メーカーの商品開発職・既婚で小学生のお子さん1人)は、年に1度の家族旅行で久米島に行くたびに、ホテルや道の駅で見る商品を眺めながら「自分の本業のスキルが島で使えないか」と感じていたそうです。

最初は「島で何かやりたい」という気持ちだけで、具体的に何を売るかは決まっていない状態でした。

転機は勉強会で4分類の整理に出会ったこと

中野さんが起業18フォーラムに参加したのは、年明けの「会社員のまま始める起業準備」勉強会。そこで「プロダクト/スキル/ノウハウ/スペース」の4分類の話を聞いて、自分の食品開発キャリアは「スキル型」に振れること、移住しなくても島の事業者と組めば成立することに、はじめて手応えを感じたそうです。

12ヶ月の動き方

そこから中野さんは、無理に休職せず会社員のまま、年に5回久米島に通う運用に切り替えました。初回は観光協会経由で島の事業者3社と名刺交換。2回目は無料で商品リニューアルの相談を1社受け、3回目に小規模な業務委託契約(月4万円・販路開拓レポート)に発展。

12ヶ月目には島の事業者2社からの業務委託で月10万円の継続収入になり、東京の会社員を続けながら「島と関わる仕事」が手元にできあがりました。

  • 属性:40代後半男性・大手食品メーカー商品開発職・既婚・小学生子1人
  • スタート時:島は好きだが何を売るか未確定・移住も未決
  • 時系列:勉強会参加→年5回通島→1社業務委託→12ヶ月で2社月10万円
  • 転機:起業18フォーラム勉強会の「4分類」整理
  • 現在地点:月10万円継続・会社員継続中・2拠点居住の検討段階

中野さんが選ばなかったのは「会社を辞めて移住して、島で新しい事業をゼロから作る」というルートです。代わりに「会社員のまま、年に何度か通って、島の既存事業者にスキルを売る」道を選びました。この道なら、家族の生活基盤を崩さず、自分の会社員スキルを島で磨くことができます。

ポイント 久米島で動きはじめる順番

学びから関係人口・補助金活用までの動き出し順序

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久米島で起業準備を進めるなら、順番が大事です。窓口・補助金・物件は道具です。道具の前に「何で食べていくか」を自分の言葉で持っておかないと、せっかくの支援メニューも生きません。

①まず起業18フォーラムで「何で食べていくか」を整理する

4分類のどこに自分が振れるのか、会社員のスキルのうち何が島で売れるのか、無料で動かせる時間はどれくらいあるのか。ここを言葉にできていない段階で島に行くと、目の前の景色に流されます。

②関係人口として、年に数回通うところから始める

いきなり移住しません。観光プラスαで島の事業者と接点を作り、無料相談やモニター案件を経て、業務委託に育てます。年に4〜5回の通島で十分です。

③方向性が固まったら、産業振興課と特定創業支援を活用する

仕事の輪郭が見えてから、町商工観光課(TEL 098-985-7131)で特定創業支援等事業の研修や、年度ごとの町・県の支援メニューの確認に進みます。

④お試し移住・二地域居住を経て、家族の合意で本移住

家族がいる場合、移住は「全員の合意」がスタートライン。お試し移住やワーケーション制度を使って、家族にも久米島の暮らしを体験してもらってから決めるのが現実的です。

久米島は、会社員のまま関係人口として関わり始められる距離と産業基盤を持った島です。まずは起業18フォーラムで自分の「4分類」の振れ先を言葉にすることから始めてください。

移住起業と在職起業はどちらが先? 判断軸はどこに置けばいいですか?
● 質問 都心の通勤に疲れて地方移住を考え始めました。移住先で起業する人の体験談記事をたくさん読みましたが、い

那覇空港から30分の海の上で、すでに動いている産業に手をつなぐ。久米島の起業準備は、勇気よりも「順番」と「組み方」の話です。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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