会社の外の収入は住民税で通知される?|「自分で納付」を選ぶ条件と限界

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

会社の外で少し収入が増えると、住民税で会社に気づかれると聞きました。仕組みを具体的に知りたいのと、防ぐ方法はあるのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

「もし気づかれたら、もう元の生活には戻れないのでは」。口に出せないこの不安こそ、最初に解いておきたい部分です。結論から言い切らず、まずは仕組みを一段ずつ見ていきましょう。住民税で会社に気づかれる主な経路は、会社に届く住民税決定通知書(特別徴収義務者用)に記載された「天引き税額」が、同じ年収水準の同僚と比べて不自然に高いことに担当者が気づくことで生じます。

会員の榊さんも、この仕組みを知らないまま会社の外の収入を続けていた時期がありました。転機は、フォーラムの勉強会で先輩会員が私物パソコンと個人口座を本業と完全に分けて動かしている話を聞いたことです。「そこまで分けるのか」と驚き、翌週から自分の運用を組み直しました。

住民税で会社に伝わる仕組みは「通知書の税額の変化」で気づかれる

会社員の住民税は、原則として給与から天引きされる「特別徴収」で納めます。仕組みの根拠は地方税法第321条の3です。市区町村が5月頃に会社へ「住民税決定通知書(特別徴収義務者用)」を送り、そこに書かれた税額どおりに毎月天引きが始まります。

問題はこの通知書の中身です。住民税決定通知書には「会社用(特別徴収義務者用)」と「本人用(納税義務者用)」の2種類があります。会社に届く通知書(特別徴収義務者用)には特別徴収税額(年額)と毎月の納付額が記載されます。本業の給与のほかに会社の外の所得があると、その分が住民税に上乗せされ、会社用通知書の税額が高くなります。担当者が通知書を確認したときに「同僚と年収は近いはずなのに、この人だけ住民税が高い」と気づかれる。ここが最初のきっかけです。

ソリマチが2022年に公開した給与担当者向け解説では、会社が副業チェックを行う際のポイントとして、「①住民税額が例年より多いか」「②増えた所得はどれか」「③所得額と住民税額が妙に少ないか」の3点が挙げられています。担当者側にとっては業務の一部として想定されている確認項目なのです。

「自分で納付」欄で分けられるケースと、分けられないケース

確定申告書の第二表には「給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」という欄があります。ここで「自分で納付」に丸をつけ、自治体側で普通徴収として処理されると、会社の外で得た所得ぶんの住民税だけは自宅に納付書が届き、自分で納める形に分かれます。本業の会社に届く通知書への税額の上乗せが抑えられるため、税額の不自然な増加は表面化しにくくなります。

この「自分で納付」が選べるのは、会社の外の所得が事業所得や雑所得など「給与所得以外」の場合に限られます。会社の外の働き方がアルバイトやパートなど給与所得の形になっていると、地方税法上は全ての給与所得を合算して本業側で特別徴収する扱いが原則です。水戸市の案内でも「副業分の給与所得に係る税額のみを普通徴収(納付書で納付)にすることはできません」と明記されており、西宮市でも「いずれも給与所得であり、一部の支払者からの給与に係る税額のみを普通徴収とすることは法律上はできません」と案内されています。

  • 選べる:
    会社の外の働き方が業務委託・自分の商品販売・原稿料など、事業所得や雑所得に区分される場合
  • 選べない:
    アルバイトやパートで給与明細が出る場合。原則として本業と合算されます
  • 切替の相談ができる:
    特別徴収が始まった後でも、事情があれば市区町村へ普通徴収への切替を申し出る道は残されています(地方税法第321条の3第3項)

市区町村によっては、事務処理の都合で普通徴収の希望を受け付けても特別徴収に一本化されるケースがあります。西宮市や水戸市の案内では、確定申告書第二表の「給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄で「自分で納付」に丸をつける方法に加え、住民税申告書でも同様の選択ができることが案内されています。「自分で納付に丸をつけたから絶対分かれる」と過信せず、住んでいる自治体の市民税課に事前に手順を確認する一手間が最終的な安心につながります。

実務で分ける:会員・榊さんの9ヶ月

ここで冒頭に触れた榊さんの経過をたどります。榊さんは大手メーカー勤務の40代で、休日にオリジナル雑貨のネット販売を続けていました。年間の収入が20万円を超えたあたりから確定申告を始めましたが、当時は本業の会社支給パソコンでも取引先のメール返信をし、口座も生活費と混ざったままでした。

きっかけは、フォーラムの勉強会で会員の分別運用を聞いたことです。先輩会員が「私物パソコン・個人口座・作業時間の三点を本業と完全に分けている」と話していて、榊さんは自分の運用の甘さを実感しました。翌月から私物のノートパソコンを1台買い直し、屋号を付けた個人口座を新たに開設。取引先のメール・領収書・売上入金を全てその一式に寄せました。

道具と経路を先に分けておくと、聞かれたときの説明が短く済みます。9ヶ月目、住民税決定通知書が届く時期に総務部から呼び出しがあり、通知書の税額について尋ねられました。榊さんは「私物パソコンと個人口座で完全に分けて動かしています」と実態を説明できたため、会社としても就業規則との照合がすぐに済み、榊さんはそのまま活動を継続できています。

拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』では「屋号・専用口座で本業と分ける」という運用ルールを紹介しています。売上STAGE Iを抜ける前の会員さんに繰り返し伝えている実務です。分ける目的は節税でも隠蔽でもなく、質問されたときに自分の言葉で経路を示せる状態を保つことにあります。説明できる状態を先に作っておくと、会社との関係を壊さずに続けられます。

きっかけを大切にしてください

そのきっかけを大切にしてください。「なんとなく」で始めた人より、明確な理由を持つあなたのほうが、ずっと続けやすいはずです。今日は、私物パソコンと個人口座を本業と分けて動かせているかを、いま手元で見直すだけで十分です。

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● 質問 会社員のまま起業準備を始めて、ようやく月1万円ほどの収入が出るようになりました。社内規定で兼業申請が

住民税は会社に伝わる経路がはっきり決まっている数少ない項目です。仕組みを知っていれば、慌てず一つずつ手を打てます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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