育児中の時短ワーママでも、起業準備の時間って捻出できる?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

IT企業で時短勤務をしながら、保育園に通う子どもを育てています。いつかは自分で小さく仕事を持ちたいのですが、朝はバタバタ、日中は仕事、夜は寝かしつけまで気づけば終わっていて、準備の時間がまったく取れません。

そもそも子どもとの時間を削ってまで、自分のことに手をつけていいのかという迷いもあります。育児と時短勤務のなかで、起業準備の時間はどう作ればいいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

今やっているそのやりくりは、「お小遣い稼ぎ」の準備でしょうか、それとも「自分の仕事」を持つための準備でしょうか。まずここを分けて考えると、時間の作り方が見えてきます。

時間が取れないというお悩みには、実は性質の違う3つの詰まりが混ざっています。物理的な時間の詰まり、家事に手が回らない詰まり、そして子どもとの時間を削る後ろめたさの詰まりです。この3つを一緒くたにすると「無理だ」で終わってしまいますが、分けてみると、手をつけられるものが見えてきます。時間を先に確保するのではなく、詰まりの正体を分けてから、対処できるものだけを潰していきます。

まず「時間・家事・罪悪感」に分けてみる

漠然と「時間がない」と感じているときほど、頭の中では複数の問題が団子になっています。時短勤務のワーママの方から届く相談も、ほどいてみると必ずこの3つに分かれます。

時間の詰まりは、可処分時間そのものが少ないという話です。家事の詰まりは、時間があっても家事に飲まれて自分の作業に入れないという話です。そして罪悪感の詰まりは、時間も家事も片付いたのに、子どもの寝顔を見て「私は何をやっているんだろう」と手が止まる話です。この3番目を放置したまま時間術だけ工夫しても、続きません。

  • 時間の詰まり:
    そもそも自分だけの時間が1日のどこにも見当たらない
  • 家事の詰まり:
    時間はあっても洗い物や翌日の支度に飲まれて作業に入れない
  • 罪悪感の詰まり:
    子どもとの時間を削ってまで自分のことをやっていいのかという迷い
対処できる詰まりから、順番に潰す

3つに分けたら、対処できるものとできないものに仕分けます。時間の詰まりと家事の詰まりは、実は「対処できる」側に入ります。

時間の詰まりには、まとまった時間を探すのをやめる、という手があります。夜の寝かしつけのあとに1時間を確保しようとすると、たいてい自分が先に寝てしまいます。そこで拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』に「朝晩30分=1日1時間」という考え方を書きました。朝の20分と夜の10分のように、細切れの枠をあらかじめ決めて固定してしまう方法です。

この「枠を固定する」ことには、もう一つ大事な意味があります。開始と終了を先に決めておけば、その30分以外は堂々と子どもと過ごしていいと自分に許可できます。時間を無制限に侵食させないための線引きなので、家庭の時間を削る設計にはなりません。

家事の詰まりは、家族との分担で軽くします。全部を一人で抱えたまま作業時間だけ増やそうとすると破綻します。今週の家事のうち、誰かに渡せるものが一つでもないかを見直すところから始めてください。

残った「罪悪感」との向き合い方

問題は3番目の罪悪感です。これは時間術では消えません。ただ、見方を一つ変えると軽くなります。

あなたが準備しているのは、時間を切り売りする内職ではなく、自分の名前で続けていく仕事の土台です。子どもが少し大きくなったとき、母親が自分の足で立って働いている姿は、削られた30分よりずっと大きなものを子どもに残します。後ろめたさは、まじめに子どもと向き合っている方ほど強く感じるものです。その感度は、悪いものではありません。

時間を「量」でなく「向け先」で考える

起業18フォーラム会員の七海さん(仮名・30代後半・IT企業で時短勤務)は、以前は思いつくままにあれもこれも手を広げ、限られた準備時間を散らしていました。けれど的が絞れないまま予定は崩れ、思うように進まないことに一人で焦っていたそうです。

転機は、起業18フォーラムの勉強会でのことでした。自分の発表ではなく、隣の会員さんへの講師のひとことが胸に残ったといいます。「それ、誰の困りごとを消すの?」という問いでした。帰り道、七海さんは立ち止まって考えました。自分はずっと時間の量を増やすことばかり考えていて、その時間を何に向けるかを決めていなかった、と気づいたのです。

そこから七海さんは、平日の夜30分を「同じ悩みを持つ働く母親向けの、書類整理の代行」という一点だけに向けました。あれもこれもをやめた途端、伝える言葉がはっきりしたそうです。最初は知人の一件から。そこから紹介で二件、三件と受注が続き、いまでは毎月決まった数の依頼を無理なく回しています。作業に使う時間はほとんど変わっていません。変えたのは、時間の向け先だけでした。

七海さんが変えた3点

  • 休日にまとめて、をやめて平日夜の30分に枠を固定した
  • やることを「働く母親向けの書類整理代行」の一点に絞った
  • 時間の量ではなく、その時間を何に向けるかを決めた
数字が示す、時短で働く母親の現在地

時短で働きながら、というと少数派に思えるかもしれません。けれど総務省の労働力調査(詳細集計)2024年平均によると、共働き世帯は1,300万世帯にのぼり、そのうち妻が週1〜34時間の短時間で働く世帯が536万世帯と、共働きの中で最も多い形になっています。時短で家庭と両立しながら働くことは、いまや例外ではなく主流の一つです。その日常の延長線上で、自分の仕事の芽を育てている人は着実にいます。

だからこそ、時間を増やそうと自分を追い込む前に、いまある30分をどこに向けるかを一つだけ決めてみてください。初期費用ゼロで始められる形を1つ選んで、平日の夜に試してみるところからで十分です。失っても痛くない規模から始めるのが、両立しながら続けるコツです。

子育て中で時間が取れません。起業準備の時間はどう作りますか?
● 質問 未就学児を育てながら起業準備をしたいのですが、自分の時間がほぼ取れません。夜中に起きて作業すると体が

時間が足りないのではなく、詰まりの正体がほどけていないだけかもしれません。今夜の30分を、まず一点に向けてみてください。

よくある質問

Q.時短勤務で毎日くたくたです。夜の30分すら取れないときはどうすれば?

疲れている日に無理をすると続きません。夜にこだわらず、朝の10分や通勤の15分に枠をずらしてください。週に2〜3回、決めた枠だけ動けば十分です。動けなかった日は堂々と休んでください。

Q.子どもとの時間を削ることに、どうしても罪悪感があります。

後ろめたさは、まじめに向き合っている証拠です。開始と終了を決めた枠にすれば、それ以外の時間は堂々と子どもと過ごせます。時間を無制限に侵食させない設計にすれば、家庭の時間はきちんと守れます。

Q.準備できるのは平日の夜だけ。それでも間に合いますか?

時間の量より、その時間を何に向けるかを一点に絞るほうが先です。初期費用ゼロで試せる形を1つ選び、まず知人の一件から始めてみてください。量を増やすより、向け先を決めるほうが早く手応えが出ます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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