記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
40代に入ってから転職活動を続けていますが、書類で落ち続け、面接まで進んでも見送りばかりです。年齢で弾かれているのを肌で感じます。
このまま転職を探すより、いっそ自分で起業したほうがいいのでしょうか?

● 回答
「もし起業に踏み出して失敗したら、もう転職市場にも戻れないのでは」。口に出しにくいこの不安こそ、最初にほどいておきたいものです。転職がうまくいかない時期の方ほど、起業を「最後の逃げ場」のように考えてしまいがちです。けれど、逃げ場として選んだ起業は、たいてい長続きしません。
ご質問は「転職か、起業か」の二択に見えます。私がこれまで延べ6万人の起業準備に関わってきて思うのは、この二択そのものを一度ほどいてしまったほうが、答えにたどり着きやすいということです。順番に見ていきましょう。
「転職を続けるべき」という声の中身
まず、転職を続ける道を冷静に見てみます。40代の転職が厳しいのは、あなたの能力の問題ではなく、求人の構造によるところが大きいです。厚生労働省の一般職業紹介状況によると、令和8年4月時点の有効求人倍率は1.18倍でした。ただしこの数字は全年代の平均で、年齢が上がるほど中高年向けの求人は絞られていきます。即戦力としての条件も厳しくなります。
つまり、書類で落ちる回数が増えているのは、あなたが選ばれていないのではなく、母数そのものが小さくなっているからです。ここを取り違えると、「自分には価値がない」という誤った結論に着地してしまいます。
- 転職を続ける利点:
収入が途切れず、生活の土台を保ったまま次を探せる - 転職を続ける難点:
40代は求人の選択肢が狭まり、希望条件との折り合いに時間がかかる
転職そのものを否定する必要はありません。条件に合う先が見つかるなら、それは堅実な選択です。問題は、「転職がうまくいかないから起業」という反動で動こうとするときに起こります。
「いっそ起業」に潜む落とし穴
反対側の「いっそ起業」も見てみます。転職活動の手応えのなさから、勢いで起業に切り替える方を、私は何人も見てきました。その多くが、ある共通したつまずき方をします。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、準備段階で足踏みしてしまう人を「起業難民」と呼んで、3つの型に分けて紹介しています。
- セミナー難民:
学ぶことだけで安心し、知識ばかり増えて一歩も動き出せない - 交流会難民:
名刺は集まるのに、いざというとき仕事を頼める相手がいない - 金ブロック:
お金を使うことに極端な抵抗があり、必要な投資もできず止まる
転職に行き詰まった焦りのまま起業に向かうと、この3つの罠にまとめてはまりやすくなります。焦りは「とにかく何かしている実感」を求めるからです。セミナーに通い、交流会に顔を出し、けれど肝心の「お金を払ってくれるお客様が一人いるか」だけが確かめられないまま時間が過ぎていきます。
起業が転職より優れているわけでも、その逆でもありません。逃げの動機で始めた起業は、転職活動と同じ「選ばれない苦しさ」を、今度は一人で背負う形に変わるだけです。
そもそも二択ではない、という第3の道
ここで視点を変えます。「転職か起業か」は、実は今すぐ選ばなくていい問いです。転職活動を続けながら、起業準備として小さな仕事を一つ受けてみる。この「両方を同時に試す」やり方が、いちばん回り道に見えて近道になります。
なぜなら、転職と起業の迷いは、頭の中だけでは決着がつかないからです。求人に応募し続けても「自分が外でいくらの価値になるのか」は見えてきません。同じように、起業を考えているだけでも「自分の経験にお金を払う人がいるのか」はわかりません。どちらも、動いてみて初めて手応えという情報が返ってきます。
日本政策金融公庫総合研究所の2025年度新規開業実態調査では、開業の動機として最も多かったのは「自由に仕事がしたかった」で、59.7%を占めていました。お金のためというより、自分で決められる働き方を求めて起業に向かう人が多いのです。
あなたが転職に感じている息苦しさの正体も、案外この「自由がほしい」に近いのかもしれません。だとすれば、起業準備として一件試すことは、その気持ちが本物かどうかを確かめる場にもなります。
谷口さんが「一件」で見つけたもの
起業18フォーラム会員の谷口さん(仮名・40代・営業職)も、まさに転職と起業のあいだで揺れていました。会社の先行きに不安を感じて転職活動を始めたものの、半年で20社近く落ち、自信をなくしていったそうです。
その焦りから、谷口さんは一度、高額な起業塾に申し込みました。けれど課題をこなすだけで精一杯になり、成果が出ないまま「やっぱり自分には無理だ」と、起業のほうもあきらめかけたといいます。今振り返ると、知識を詰め込む順番から入ったのが逆だったのですが、当時はそれに気づけませんでした。
転機は、フォーラムの無料相談で「まず知り合い一人に、有料で一件だけ引き受けてみませんか」と勧められたことでした。谷口さんは営業で培った提案書づくりを、知人の小さな会社に持ちかけ、数千円で請け負ってみました。すると相手から、面接では一度も言われなかった「助かりました、また頼みたい」という言葉が返ってきたのです。
転職活動では一度も得られなかった手応えが、たった一件の仕事から返ってきた。谷口さんにとっては、この感覚そのものが大きな発見でした。売上の額ではありません。会社の看板を外した自分の経験にも、頼ってくれる人がいるとわかったことが、止まっていた足を動かしました。
谷口さんは今も転職活動を完全にはやめていません。けれど「どこにも必要とされない」という思い込みは消え、依頼が少しずつ増えるなかで、自分のペースで進む道を選べるようになっています。
あなたが今日できること
転職と起業のどちらが正解かを、今日決める必要はありません。辞める前に、起業準備として知り合い一人から一件だけ仕事を引き受けてみてください。お金をもらって成立するかどうかが、転職を続けるか起業に進むかを比べる、いちばん確かな材料になります。
面接の合否は相手が決めますが、一件の仕事をやり遂げられるかどうかは、あなた自身の手の中にあります。その小さな成立体験が、二択で固まっていた気持ちを少しほぐしてくれるはずです。
転職が決まらない時期は、苦しいものです。それでも、応募を続けながら外で一件試せるあなたは、退路を保ったまま実験ができる、恵まれた位置にいるとも言えます。応募書類を送る手と同じ熱量で、外の一件にも一歩だけ手を伸ばしてみてください。

今すぐ起業に舵を切るのも、知識と手応えを蓄えてから動くのも、間違いではありません。大切なのは、誰かに迫られてではなく、自分で選んだという感覚です。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
