会社員のまま顔出しせず起業する3ルート2026年版|特定商取引法11条と26条の使い分けを支援現場から解説

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

会社員のまま起業準備を進めたいのですが、ネットで顔や名前を出すと会社にバレてしまいそうで不安です。匿名で起業準備を進めるには、どんな方法がありますか?

起業前質問集

● 回答

会社員のまま顔出しせず起業準備を進める実装ルートは、大きく3つあります。配偶者・親族を代表者にする業務委託ルート、BASE等の販売プラットフォーム経由で前面に出ないルート、ネット決済を避けて対面・メール商談で完結させるルートです。

判断の根拠は特定商取引法第11条(通信販売における広告の表示義務)と、第26条第1項第1号(適用除外)です。2022年1月20日からBASE株式会社が「特定商取引法に基づく表記」の所在地・連絡先を非公開化する運用を開始したため、選択肢は2017年当時より大きく広がっています。

ルートA:配偶者・親族を代表者にする業務委託形式

43歳のIT営業職Bさんは、自宅住所をネットショップに記載して起業準備を始めたところ、社内の同僚が偶然商品ページを見つけて噂になり、起業準備が頓挫しました。名義貸しは行政が厳しくチェックしていますし、所得税法第56条により同一生計親族への支払いは原則として経費として認められません。

Bさんは1年間休止した後、起業18フォーラムに参加。勉強会で「奥様が代表者として開業届を出し、Bさんは無償で業務協力する形」を学びました。事業所得はすべて奥様の確定申告に集約し、Bさん自身の所得は発生させない構造です。この設計に切り替えて2年目で月22万8千円の家計プラスを実現し、現在は6年継続中です。

ただし注意点として、奥様自身が事業者として責任を果たせる体制(電話対応・契約判断ができる)が必要です。完全な名義貸しと判定されると追徴課税のリスクがあります。

ルートB:BASE等の販売プラットフォーム経由で前面に出ない

BASE株式会社は2022年1月20日から、消費者庁・経済産業省との協議を経て、個人事業主向けに「特定商取引法に基づく表記」の所在地・連絡先を非公開にする運用を開始しました。事業者名(屋号または個人名)は引き続き表示が必要ですが、住所と電話番号はBASE側が代替表示します。

同様の対応を取っているプラットフォームは増えており、STORES・minne・Creemaなどでも一部非公開オプションが利用できます。販売代理店として独立済みの個人事業主に商品を卸し、自分は仕入れ・製造のみ担当する形式も有効です。

ただし「事業者名」までは隠せないため、本名と異なる屋号を最初から登録しておく必要があります。屋号と銀行口座名義は完全に一致させなくてもよいケースが多いですが、税務署と銀行に事前確認を取ってください。

ルートC:ネット決済を避け対面・メール商談で完結

特定商取引法第26条第1項第1号は「販売業者・役務提供事業者が訪問販売・通信販売・電話勧誘販売を業として営む場合を除く」と規定しており、ネット上で「資料請求のみ受付」「個別問い合わせ後にメール商談」とする形式は、特定商取引法の表示義務から外れます。

知恵系・コンサルティング系・場所系のサービスではこのルートが現実的です。ただし「お問い合わせ受付後すぐに事業者情報を開示する」運用が前提で、開示拒否は法令違反となります。

3ルート比較(2026年現在)

  • ルートA:業務委託形式 — 完全匿名性◎/設計の難易度高/青色専従者給与は不可
  • ルートB:プラットフォーム経由 — 屋号公開のみ/審査あり/2022年以降選択肢が拡大
  • ルートC:ネット決済回避 — 知恵系・場所系で有効/問い合わせ後の開示は必要
どのルートでも共通する「住民税の特別徴収」対策

会社員の起業準備が会社にバレる経路として最も多いのが、住民税の特別徴収(給与天引き)です。起業準備での所得が増えると、翌年の住民税が増額され、給与額に対して税額が不自然になることで経理担当者に気づかれます。

確定申告書の第二表「住民税に関する事項」で「自分で納付」(普通徴収)を選択すれば、起業準備分の住民税は自宅に請求書が届くため会社経由の発覚を防げます。毎年の確定申告で必ずこの欄をチェックしてください。

3つのルートを組み合わせる発想が現実的

支援現場で26年見てきて思うのは、ルートA・B・Cを単独で使うより、組み合わせるパターンが多いということです。「起業準備の最初はルートB(プラットフォーム経由で小さく始める)」「規模が拡大したらルートA(家族を代表者にし業務委託形式)」「コンサル領域だけルートC(ネット決済を避ける)」という組み合わせが、リスクを抑えながら成長させる典型的な道筋です。

契約を約束した会社から連絡がきません。どうすれば良いですか?
● 質問 ある家電製品を、独占的に仕入れられることになりました。メーカーの社長と契約の約束をしたのですが、その

拙著の中でも取り上げているのですが、起業準備では「闘争力より逃走力」、つまり「攻めの戦略」より「会社員の安定を守りながら次の出口を確保する設計力」が重要です。顔出しを避けるという制約は、ビジネス設計を逆に磨く好機にもなります。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!