記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
再雇用が65歳で終わります。年金に少し足すくらいの起業なら、体力と時間の範囲で無理なく続けられるでしょうか?

● 回答
年齢を重ねたことは、こうした起業ではハンデではなく、むしろ一番の元手になります。これまで積んできた経験をそのまま使えるからです。再雇用という後ろ盾がなくなる不安はよく分かりますが、年金に少し足すくらいの規模なら、稼ぐ額を先に決めるより、無理なく続く形を先に決めるほうがうまくいきます。
長く、起業を志す方の相談に向き合ってきた立場から言うと、その現場で見ているのは、65歳から始める方ほど「いくら稼ぐか」より「どれだけ気持ちよく続くか」を軸にしたほうが、結果として長く収入が残るという事実です。決める順番を入れ替えるだけで、選べる仕事の幅が広がります。
65歳から働く人は、もう珍しくありません
まず、ご自身の状況を客観的な数字で見ておきましょう。総務省統計局が2025年9月に公表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、労働力調査(基本集計)をもとにした2024年の65歳以上の就業者は930万人で、21年連続の増加でした。就業率は25.7%、なかでも65〜69歳は53.6%と、半数を超える方が働いています。
つまり、65歳を過ぎて何らかの形で収入を得ることは、もはや特別なことではありません。そのぶん、勤めに戻る以外の選択肢も広がっています。雇われ直すのではなく、自分の経験を自分の名前で出す。年金という土台がある分、ここからは攻めるより「無理のない範囲で」設計できる立場だと考えてください。
稼ぎたい額から逆算して、形を仮置きする
ここで決め方の順番をお伝えします。最初に決めるのは「いくらまでなら稼げそうか」ではなく、「年金にいくら足したいか」というゴールの額です。月に3万円なのか、5万円なのか。その額が決まれば、必要な仕事量はおのずと見えてきます。
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、将来どんな暮らしを送りたいかというところから逆算して商売の形を決める考え方を紹介しています。送りたい暮らしと足したい額が決まれば、あとはそこに「これまでの経験」と「好きでいられること」を当てはめていくだけです。出口を先に仮決めし、そこから手前へたどる。これがシニア起業のいちばん楽な進め方です。
逆算の利点は、頑張りすぎを防げることにあります。月3万円が目標なら、毎日働く必要はありません。週に1〜2回、半日ずつでも届く規模です。体力と相談しながら稼働量を先に区切れるので、「気づいたら無理をしていた」という事態を避けられます。
65歳からの起業は、大きく3つのタイプに分かれます
これまで見てきた方を整理すると、再雇用を終えてから始める方は、おおむね次の3つのどれかに当てはまります。ご自身がどこに近いかを当てはめてみてください。
タイプ1:現役時代の専門を、相談の形で出す人
経理・総務・品質管理・技術職など、長く一つの分野を担ってきた方です。中小企業には、その経験をまるごと雇うほどの余裕はなくても、月に数回だけ相談に乗ってほしいという需要があります。フルタイムでは重い仕事を、薄く長く分けて引き受けるのが、この世代の得意な形です。
タイプ2:趣味や好きなことを、教える形にする人
家庭菜園、写真、書道、楽器、パソコン操作。長年続けてきた好きなことを、近所の方や同世代に教える形です。大きくは稼げませんが、楽しく続けられて、感謝される。「ありがとう」が原動力になるので、いちばん長続きしやすいタイプです。
タイプ3:体を動かす軽作業を、ほどよく請ける人
庭の手入れ、簡単な修理、買い物の代行、ペットの世話。地域に根ざした「ちょっとした手伝い」をほどよく請ける形です。体力との相談が必要ですが、稼働日を自分で決められるので、調子に合わせて量を加減できます。
どのタイプも、共通しているのは「これまでの自分の延長線上にある」という点です。新しい何かを一から覚える必要はありません。すでに持っているものを、無理なく出せる形に組み替えるだけです。
入江さんが、月収の最初の目標に届くまで
起業18フォーラムにいらした入江さん(仮名・65歳・男性・元メーカーの品質管理職)は、再雇用が終わる年に「何かしたいが、何から手をつけていいか分からない」状態で参加されました。年金に月5万円ほど足せれば、夫婦で旅行にも行ける。そんな漠然とした願いはあったものの、具体的な形は見えていなかったそうです。
転機は、フォーラムの勉強会で同年代の会員が「どうやって最初の受注を取ったか」を話すのを聞いたことでした。特別なことは何もしておらず、前職の取引先に「困りごとはありませんか」と声をかけただけ。その素朴さに、入江さんは「これなら自分にもできる」と背中を押されたといいます。
その後、会員どうしの個別相談で、品質管理の経験を「中小メーカー向けの工程チェック」という形に絞り込み、無理のない稼働として週2回ペースに設計し直しました。最初の客は、前職時代に面識のあった小さな部品メーカー。月に2回、半日ずつ工程を見て助言する仕事から始まりました。
動き出して10ヶ月目、入江さんは初めて月5万円を超えました。金額そのものより、「もう一社見てもらえないか」と先方から言われた瞬間が、何より嬉しかったそうです。必要とされていることが言葉で返ってくる手応えこそ、続ける力になります。
今では契約が2社になり、週2回の稼働を崩さないまま、当初の目標を安定して超えています。「稼ごうと力まなかったのが、かえって良かった」というのが、入江さんの実感です。
よくある質問

Q.年金をもらいながら働くと、年金が減らされてしまいますか?
厚生年金に加入して働く場合、給与と年金の合計額が一定の基準を超えると、年金の一部が止まる仕組みがあります(在職老齢年金)。ただし、自分で起業して厚生年金に加入しない働き方であれば、この調整の対象にはなりません。年金に少し足す規模の起業なら、基本的には気にしすぎる必要はありませんが、心配な場合は年金事務所で一度確認しておくと安心です。
Q.65歳から始めて、体力が続くか不安です。
だからこそ、稼ぐ額を先に決めて稼働量を区切る進め方をおすすめします。月3万円なら週に半日でも届きます。体調の良い日に動き、無理な日は休む。自分で量を加減できるのが、雇われる働き方との一番の違いです。続けられる範囲を先に決めておけば、体力を理由に辞めずにすみます。
Q.特別な資格や経験がなくても始められますか?
はい、始められます。長く生活してきた中で身についた段取りや気配り、人付き合いも、立派な元手です。資格そのものより、「誰のどんな困りごとを引き受けられるか」のほうが大切です。まずは自分が頼まれてきたこと、人に感謝されたことを思い出すところから始めてみてください。
今日できることは、ねんきんネットで受給見込みを一度確認し、そこに足したい額を一つ決めるだけで十分です。ゴールの額がはっきりすれば、必要な仕事の形は、そこから自然と見えてきます。

65歳は、立ち止まる年ではなく、働き方を選び直せる年です。年金という土台がある今だからこそ、稼ぐ額ではなく続けられる形を起点に、ご自身の経験を出していけます。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
